アイテム番号: SCP-2262
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-2262はサイト-73の標準保管庫に保存されています。SCP-2262への接近は、規定に従って研究目的を提出することによってのみ許可されます。またすべての研究者はあらかじめ質問群SCP-2262-Aに完答して、その得点が25%未満である必要があります。異常な振る舞いはどのようなものであれ、担当者らの決定のもと心理鑑定または記憶処理が行われる根拠になります。添付画像は、これを見ることによる認識災害またはそれに準ずる効果が報告または観測されていないことから、自由に閲覧することができます。
説明: SCP-2262は29mm × 20mmに破られた紙の小片です。標準的な█████社製のノートの右下の角から破り取られたもので、黒いインクで大文字の'B'がただ一文字だけ書き込まれています。試験ではノートの組成や構造に異常な点は発見されず、インクは██社製の標準的なボールペンに由来するものであることが確認されています。実験SCP-2262-02により、紙そのものに異常な効果はないことが示されています。
SCP-2262は、ドイツの███████出身の27歳の植字工であり、しばしば漫画家としても活動している██████ █████████氏の机から回収されました。
SCP-2262の認識災害をもたらす特性は、本人が認識しているか否かを問わず、植字組み、デザイン、漫画本、その他あらゆる書体様式や構成の美観に関する高度な鑑賞に関心がある個人がSCP-2262を見たときに発生します。SCP-2262を見た人物は次第に苛立ちはじめ、かつ文字に執着するようになります。また、現実のものであれ想像上のものであれ、SCP-2262とその美観上の欠点に対して段階的に敵対的になってゆきます。この敵対感情は対象者が好む、芸術または審美に関してこれまで培ってきたものやその傾向に大きく依存しており、また自身が最も多くの知識を持っている文字に対してどのような見方をしているかに焦点が置かれていると見られています。これまでに観測された敵対感情の焦点は、フォントの外観、色、文字間の空白、'調和'、スクラブル1で'B'の文字の得点が単語へのくっつきにくさに対して比較的低いことなどがあります。
インシデントSCP-2262-1
対象は模範的な労働者であるとの評価を得ており、このことは回収された個人的な文書、所得税申告書等によって裏付けられている。しかしインシデントSCP-2262-1の数週間前から、対象は公然とかつ定期的に職業的停滞2に関する不満を述べるようになった。さらに、「何か奥深いもの」を作り出すことで名声を確かなものにしたいという欲求を口にするようになった。この執着は次第に深まってゆき、また同時にあらゆる通常の作業を全面的に嫌うようになった。対象は複数の締め切りを破り、遅刻するようになり、不衛生になり、上述の計画以外に集中するように言う上長に対して逆らったり、さらには暴力的になった。インシデントSCP-2262-1時点で、いくつもの懲戒の手続が取られた。████年██月██日、きっちりとした服装をした█████████氏は早めにデスクに着き、席につくと静かに仕事を始めた。7時44分から14時08分までの間(これはCCTVとコンピュータの記録から確認された)、対象は事務長や同僚に直接話しかけられたとき以外は会話をしなかった。この間、対象は自分の私物をデスクから小さな段ボール箱に移し、ノートと筆記用具を手に取り、文字を一文字だけ書いてはその紙片をちぎって丸めるということを始めた。14時08分になると、対象は仕事用コンピュータで文書を開き、簡易なメモを書いた。(コンピュータはその後すぐに破壊されたが、証言によれば「ほらよクソッタレども。お高く止まりたいんだったら、完璧になりたいんだったら、これを見な」と書かれていた。)そして立ち上がり、事務室じゅうに向かって大声で「たった今俺が作ったものを見ろ」と言った。その後デスクの下に静かに横たわり、それ以上は動くことも音を立てることもなかった。
次に起こったことの説明は表面上において異なっていた。しかし、SCP-2262をスタッフらが視認したときにそれぞれ異なった認識災害の影響を見せたという点においては、一定の合意を得た。それからの2分間で、苛立ちや嫌悪感の表出から、大声を出して説明を求める行為を経て、周囲の家具などのものに対する暴力へと発展した。集団は█████████氏に向かってゆき、説明を求めた。何も説明が得られないと、スタッフらは集団で対象を掴み、バラバラの方向に引っ張り、最終的に関節の脱臼と四肢の切断に至り、死亡した対象を置いて離れた。この間、隣接する部署の職員は警察に通報していた。警察は7分後に到着し、職員らを逮捕し、ライオットシールド3を机の上に置かれた紙片を覆うように置いたことで、偶然にも事態を沈静化した。
補遺: 以下は現地で行われた█████研究員と、かつての同僚であり、友人でもあった████ ██████氏の間で行われたインタビューの転記です。(ここでは本来のドイツ語から翻訳したものを示します。)
研究員: さて、██████さん。気分はいかがですか?
██████氏: いいと思うか? イカれてるだろう、あんなもん。あんた警察か?
研究員: 違います。我々はここで起こったことを明らかにするために来ました。我々は……
██████氏: (遮って)何があったか教えてやるよ! あのクソみたいなBだ! あの狂ったクソッタレがやったんだ、どうやったのかは知らないが、あのBだ!
研究員: (ポケットから、マイラーバッグ4に入っていたSCP-2262を取り出す)この文字のことですか? これの何が問題なのですか?
██████氏: (取り乱しながら)おい、何してんだ!? それをどっかにやれ、イカレ野郎! 何が問題かだと? 問題しかないだろうが! カーニング5、組立て、下の方の染みみたいなの……何なんだよそのクソみたいな染みは!? なんでそんなに傾いてるんだ!? それに線に重なってるのも、おかしいだろうが、ええっ!?
研究員: どうか、██████さん、落ち着いてください。最初からおっしゃってください。
██████氏: ああ、ただ……その忌々しいものを俺から遠ざけてくれ、頼むから。さて、今朝██████が来て……あいつは賢くて、髭を剃っていて、俺の友達のように見えて…でもあいつは何も話さなかった。それでも、それが正しいと俺は思いました、仕事はあいつに丸投げでした。あいつは席について、走り書きをし始めました。何度も何度も、ひたすら走り書きしては紙を破り取っていました。ちょっと目をやったら、ちぎった紙を、あいつは全部、食べていたんです! ひたすらちぎった紙を食べていたんです、一日中……
研究員: なるほど、それからどうなりましたか?
██████氏: [躊躇] ええと、あいつは急に立ち上がって、「おいお前ら、ちょっとこっちに来て、俺が作ったものを見ろ!」と言ったんです。私たちがそこに行くまでにはあいつは倒れていて、あの紙が机の上にありました。あの小さな切れ端です。最初は意味が分からなくて、数秒間は誰もそれが何なのかも分かりませんでした。全ての切れ端が、とにかく間違っていました。全部です。ひどく醜くて、信じられませんでした。それに、ええと、みんなそれで狂ったんだと思います。あれが何なのか理解しようとしましたが、誰かがきっかけになって、私たちは……
この時点で、██████氏は突然落涙し始め、その話はぼそぼそとした謝罪と説明の要求と思われる部分以外は支離滅裂になりました。このインタビューの後、スタッフらと警察の両方に対して記憶処理が施され、職場自殺に関連するカバーストーリーが適用されました。現時点まで、あらゆるメディアは関心を寄せていません。