SCP-2265-JP
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アイテム番号: SCP-2265-JP Level 4/2265-JP
オブジェクトクラス: Keter Classified

nisso-atoti

SCP-2265-JP内の唯一の公道。

特別収容プロトコル: SCP-2265-JPの周囲3kmには民間人による侵入がなされないように監視が行われ、常に警備員が2名以上駐留します。

説明: SCP-2265-JPは長野県██市に存在する、放棄された日本生類創研の研究施設を中心に発生している██km2の異常領域です。

SCP-2265-JP内の現実性は希薄であり、ヒューム値は常に0.87±0.02Hmの範囲内を示します。そのため、領域内では空間異常や、異常実体が多く観測されます。ただし、日本生類創研が保有していた異常実体も多く存在しています。

以下は第1回探索の映像記録です。

探索映像ログの書き起こし

日付: 2020/10/17

探索部隊: 機動部隊さ-23("梯子を付す者たち")

対象: SCP-2265-JP

部隊長: さ-23-アルファ

部隊員: さ-23-ブラボー/さ-23-チャーリー/さ-23-デルタ/さ-23-エコー


[ログ開始]

アルファ: 司令部、部隊全員の装備等の確認が完了した。

サイト司令部: 了解。目標は低現実の原因の発見。作戦を開始せよ。

[5名はSCP-2265-JP内に突入する。以降、定期的なヒューム値の計測結果のみが報告され続ける。ヒューム値は平均0.87Hmを記録していた。]

アルファ: 施設外壁を視認。現状異常は見られない。各員周囲の注意を継続して行うこと。

[5名はシャッターの閉じた倉庫を沿うようにして進行する。]

ブラボー: 止まれ。前方左方向に動物がいる。

エコー: 狸っぽいような、アライグマっぽいような。どうします、アルファ。

[チャーリーの足音に反応しホンドタヌキ(Nyctereutes procyonoides viverrinus)と見られる生物が部隊の方を見つめ、後足のみで直立する。]

チャーリー: う、すいません。レッサーパンダ、ではないですよね。

アルファ: そうだな。明らかにレッサーパンダではないな。ミーティングでも話したが、低現実の影響を受けているか、それともニッソが生み出した生物のどちらかだろうな。

デルタ: 二足歩行の生物、ニッソなら作っててもおかしくないな。

アルファ: とりあえず、発砲して音を立てて怪物がやってきても困る。注視を続けながらもやり過ごそう。

[5人は研究棟の正面に到着する。]

チャーリー: ヒューム値が低下しています。現在は0.85Hmです。

司令部: 了解した。それでは研究棟内に突入せよ。

[先頭をエコー、最後尾をブラボーにして廊下を進行する。]

アルファ: 研究所内は、綺麗だな。今まで見てきたものの中で一番状態が綺麗だ。襲撃した研究所は急遽研究対象やデータを運ぼうとした影響か、ある程度散乱しているものだが。

ブラボー: つまり今回の異常空間の発生はニッソにとって予測ができない現象だったんだろうな。

アルファ: うん、おそらくは、だが。血痕の一滴すら垂れていないのは、嬉しいものがある。

チャーリー: そうですね。って、なんでブラボーが天井に立ってるんですか。

ブラボー: うん?俺にはチャーリーが天井にいるように見えるぞ?ほら、お前の足元に蛍光灯あんだろ?

チャーリー: ほ、ホントだ。空間異常ですか。

アルファ: そのようだな。いつの間に天井に向かったかは知らないが、とりあえず少しずつ動いてどうなるか確認しよう。

[5m程歩くとチャーリーは天井から落下する。落下したチャーリーをアルファとデルタが受け止める。]
[その後、2階~4階部分を探索するが、ケージに入った異常な生物を何体か発見するのみで、低現実の原因は発見することはできない。]

アルファ: これより地下階層に突入する。各自ライトを点灯せよ。

ブラボー: 階段踊り場にて床を這うようにして伸びる樹木の根を発見。直径は5mmほど。

デルタ: ニッソと植物だ、厄ネタと考えるのが自然だろ。人間を栄養に、とかあるかもな。

アルファ: ありうるかもしれんな。とりあえず、サンプルは採取しよう。

[アルファはナイフを取り出し根の先端を切除し、保存袋に入れる。]

エコー: 特に何もしてきませんね。良かった。

チャーリー: うわ。急激にヒューム値が減少しています!0.84…3…2

[デルタは即座に根の先端を踏みつける。]

チャーリー: れ、0.83Hmで安定しました。すみません、ありがとうございました。

デルタ: ふぅ、言わんこっちゃないな。どういう原理かは知らんが、この根っこが原因であることはどうやら確からしい。足、一度どかしてみるぞ。

チャーリー: 値の変動は見られません。

アルファ: デルタ、ありがとう。君の迅速な行動で助かったよ。司令部、原因は見つかったがどうする?

司令部: このまま地下階層に向かい根の本体を捜索せよ。

アルファ: 了解。根っこは踏んだりしないように気をつけながら進もう。チャーリーはヒューム値の増減の確認を常に行うようにして欲しい。

[5人は階段を降り地下階層に降りる。]

ブラボー: うわぁ、廊下中根っこまみれだな。もう少し進めば足の踏み場もなくなりそうだ。

チャーリー: ヒューム値、さらに減少しています。0.81Hm、です。急激に減少したわけではないので、この地階階層が単純に低いようです。

アルファ: 了解。予想でしかないが、根の切除面から現実性は流出していたと思う。だから、根は傷つかなければ大丈夫だと思う。ブラボー、そこの太い根に乗ってもらえるか。

ブラボー: おいおい、マジかよ。チャーリー、頼む。…よし、乗ったぞ。

チャーリー: 値に変動ありません。

アルファ: よかった。他もブラボーに続くように。

[5人は太い根の上を辿りながら廊下を進む。]

ブラボー: お、この部屋に根が収束しているな。

アルファ: 了解。突入して欲しい。

ブラボー: 了解。…植物の本体を確認。ご神木みたいな太さの木だな。天井に這うように枝が伸びていくらか葉がついてるけど、こんな暗闇じゃ意味なさそうだな。

デルタ: 葉っぱの形からしてスギ系っぽいが、詳しくはわからんな。

チャーリー: ヒューム値は0.79Hmですね。これ以上値が小さくなれば、この装備では耐えられないです。

アルファ: そうだな。にしても、この研究所周辺の現実性が吸い取られるような大きい傷口があるはずだとは思うんだけどな。

エコー: あ、これじゃないですか。裏側の太い根っこが一刀両断されちゃってます…あれ、この断面の先に何か見えますね。青空が見えます。

アルファ: 待てエコー!まずい気がする。その先は。チャーリー、計測を頼む。

チャーリー: 了解です…0.76Hmです。

アルファ: どうやら、その先には行ってはいけないようだな。装備を整えてまた来ることにしよう。いいな、司令部?

司令部: あぁ。さ-23、帰還せよ。

[ログ終了]

補遺: サンプルとして持ち帰られた植物の根を解析したところ、DNAがラクウショウ(Taxodium distichum)に類似していたことが分かりました。SCP-2265-JPの原因は探索記録からこの植物であることが認められ、SCP-2265-JP-1と指定されました。また、探索記録の最期にエコーが発見した異常空間は、SCP-2265-JP-2と指定されました。

SCP-2265-JP-1の研究が進められ、SCP-2265-JP-1が根の部分で異空間に接続するという仮説が立てられた後に、この異常性に類似する記述が日本生類創研の別の施設を襲撃した際に入手した書類から発見されました。以下は、その資料の転写です。

 


20██年█月0█日








プロジェクト番号-1048

「ディメンション・プランツ」研究報告書










佐藤 敬一 編














- 表紙 -



- 目次 -


    表紙・・・・・・・表紙



    目次・・・・・・・P.1



    第一章 実験目的と利用生類・・・・・・・P.2
    │ 第一節 背景
    │ 第二節 目的
    │ 第三節 方法
    │ 第四節 使用生類



    第二章 創成生類概要・・・・・・・P.3
    │ 第一節 ディメンション・プランツ概要
    │ 第二節 所感



    第三章 補記・・・・・・・P.4
    │ 第一節 実験記録抜粋








-1-


第一章 実験目的と利用生類

第一節 背景

植物種、特に樹木の研究には広大な敷地が必要であり、都心の研究施設では植物に関する研究を行う難易度は高いとされてきた。これまでに様々な方法でアプローチが試みられているが、今回は亜空間を発生させ、亜空間内部で生育することでこれらの問題を解決しようと考えた。

第二節 目的

亜空間内部での植物の育成の成功。可能であれば、商品企画部に寄せられた顧客からの要望案である「エアプランツの種類を増やしてほしい」に転用可能な状態にする(詳細は商品企画部の八峰に連絡を)。

第三節 方法

初期研究にはラクウショウ(Taxodium distichum)を用いる。ラクウショウの特性である呼吸根は、本来自生する湿地地帯において根を上部に伸ばすことで呼吸を可能にするための器官である。これを利用し、意図的に窒息状態を引き起こすことで亜空間への呼吸根の生育を促進させる。









-2-

現在、以上の資料に記述されている3ページ目と4ページ目は発見されていません。同時に回収された他の研究に関する資料には、明らかに執筆途中のものも多く、資料群は未完成の研究資料であると結論付けされました。

また、表紙に記述されている佐藤敬一という人物についての調査も行われました。これまでの日本生類創研についての調査上に浮上したことのない名前であり、この人物についての聞き取りが財団の抑留下にある日本生類創研構成員に行なわれました。以下は最も情報を入手することに成功したインタビュー記録です。

対象: 早釜 樹。日本生類創研総務部に所属していた。出資者である██ ██の自宅を訪問していた際に、財団により捕縛された。なお、財団の目的は██ ██が保有しているオブジェクトの確保であり、早釜の存在は予測していなかった。

インタビュアー: 平塚博士。日本生類創研対策チームに所属している。


[ログ開始]

平塚博士: まず、佐藤敬一という人物についてご存知ですか?

早釜: 知らん。

[5秒間の沈黙]

早釜: 分かった、分かった、話すから。佐藤敬一は、あー、そう、5年前くらいに八峰さんが連れきたんだよ。

平塚博士: 八峰って、商品企画部の。

早釜: そうそう。八峰さん、あの頃基礎研究の重要性がなんだかんだって言っててさ、新しい研究者を外から引っ張ってきたんだよ。ほら、ウチってさ、結構技術が偏ってんだろ。だからさ、新しくいろいろ取り入れようとしてたみたいなんだよな。

平塚博士: 商品企画部の人間がそんなことをしているんですか?

早釜: いーや、あの人の特権だね。資金獲得の主力だから、上層部も自由にさせてんだろ。

平塚博士: なるほど。佐藤敬一について詳しい情報はありますか?

早釜: あいつは、なんだっけ、ありえないことを起こす現象…

平塚博士: 現実改変?

早釜: そうそう!その、あいつは現実改変と生物の関係について外部で研究してたらしくて、そこを期待して八峰さんは連れてきたらしいんだよ。

平塚博士: "外部"とはどの研究機関なのかはご存知ですか?

早釜: あー、ライフラフト、だったっけかな?

平塚博士: ライフラフト1が母体の研究機関ですか。つまり、佐藤敬一は異世界の人間なのですか?

早釜: 分からん。でも、あいつは別に普通の外見だけどなぁ。って言っても廊下でたまにすれ違うぐらいだったから、何にも知らないけど。

平塚博士: 他に何か知りませんか?どんな些細な情報でもいいです。

早釜: うーん、あ、なんかそれなりに悩んでる、みたいなことは聞いたことがあるな。あんまり他の人間と付き合いが無かったから、誰も悩みの詳細は知らないんだけど、研究の成果が出なくて焦ってる、とかは聞いたことあるなぁ。実際、あいつ、毎回くたびれたような顔してたからな。

聞き取りによって佐藤敬一がライフラフトに所属することが判明し、情報量が増えたことで調査が進行しました。Webクローラによって関連する情報を捜索した結果、SNS上に佐藤敬一とライフラフトのメンバーによって利用されたと考えられるチャットのログが発見されました。以下はそのログの転写です。

付記: 初めて使用されたのが2010年10月12日であった。チャット機能は基本的に用いられず、電話機能を中心に使用されていることが判明している。どちらのアカウントも他にチャットをするアカウントは無かった。ライフラフトのアカウントは特定のメンバーが利用していたわけではなく、複数のメンバーが共用で利用していたと推測されています。


日付: 2019/12/10

ライフラフト: お元気ですか?[15:35]

ライフラフト: 年が明けたらみんなで宴会をいつものようにします。[15:36]

ライフラフト: 正月ぐらい研究を休んで帰ってきたらどう?[15:36]

日付: 2019/12/11

佐藤: あれ、チャットは使わないようにするんじゃなかったのか?[2:38]

日付: 2019/12/12

ライフラフト: 研究が忙しそうだし、電話をかけるのが迷惑かと思って。そういう話をしなければ大丈夫なはず。2[10:12]

日付: 2019/12/13

佐藤: そっか。ありがとう。[1:35]

佐藤: 考えたんだけど、やっぱり行けない。一刻も早く、研究を完成させないと。[2:48]

日付: 2019/12/14

ライフラフト: 分かった![8:30]

ライフラフト: 頑張って![8:30]

ライフラフト: (キャラクターが親指を立てているスタンプを送信)[8:30]

日付: 2019/1/1

ライフラフト: あけましておめでとう![10:12]

ライフラフト: (ライフラフトのメンバーによる宴会を撮影した画像を送信)[10:20]

ライフラフト: 穴蔵のみんなは元気だよ![10:21]

ライフラフト: けーにぃにも良い一年になるように神様に願っとくよ![10:22]

[以降、チャット機能は使用されていない。最後のメッセージを佐藤は既読の状態にしていることから、ライフラフトのメンバーが「穴蔵」というワードを出したことによって、このトークルームを放棄したと思われる。]

また、SCP-2265-JP-2についての調査も進められました。内部のヒューム値は0.74±0.05Hmというかなり低い数値を示し、かつ、変動の幅が非常に大きいことが判明しました。さ-23には最新型の装備を支給された上で、内部の調査を行いました。以下はその探索記録です。

探索映像ログの書き起こし

日付: 2020/12/24

探索部隊: 機動部隊さ-23("梯子を付す者たち")

対象: SCP-2265-JP

部隊長: さ-23-アルファ

部隊員: さ-23-ブラボー/さ-23-チャーリー/さ-23-デルタ/さ-23-エコー


[ログ開始]

アルファ: 司令部、部隊全員の装備等の確認が完了した。

サイト司令部: 了解。目標は空間内の探索。作戦を開始せよ。-2内部では通信が不安定になるため、緊急時の判断はアルファが行うように。

[前回と同様に先頭をブラボー、最後尾をエコーにして、直径1mほどの木の根の内部をさ-23は四つん這いになって進む。木は人工的に内部がくり抜かれていることが分かる。]

ブラボー: 抜けた。周囲に危険はなさそうだ。ここは、なんというか、現代都市のようには見えるんだが、スタイリッシュな感じがする建物が多いな。天候は晴天。

アルファ: 抜けた。うん、確かにそうだな。敢えて形容するのであれば、"近未来的"といったところか。

チャーリー: 抜けました。ここは、交差点の真ん中ですね。空間に穴がぽっかりと空いています。えー、現在は0.77Hmです。

デルタ: 抜けたぞ。交差点の真ん中にしては車も通ってないな。車どころか、人さえいない。

エコー: エコー、抜けました。かといって、荒廃している感じはしませんね。まるで、5分前に突然人が消えてしまったような感じです。

アルファ: よし、これで全員だな。とりあえず、正面方向に進んでみよう。

[5人は10分ほど進む。]

ブラボー: うん?あの建物についてるスクリーンの画面、映像が映ってないか?

[ブラボーが発見する3秒前にスクリーンは付いた。映像には東ヨーロッパ系の女児と男児が話している様子が映されている。ただし、男児は画面内におらず、かつ女児は画面を正面に見つめていることから、これが主観映像であると考えられる。会話内容から、男児は佐藤敬一であると推測されている。]

女児: 敬一の世界は、どのようなだったの?

男児: どのような所、だよ。

女児: あ〜、敬一の世界は、どのような所だったの?

男児: 俺の世界は、良い所だったよ!争いは無いし、悪いニュースも無いし、それで、人は元気。えーと、で、技術がすごい。

女児: すごい!私は、そもそも世界は全然分からないから、いいな。争いが、無いのは、凄いな。

男児: そっか。凄いことなんだな。それって。

女児: 凄いよ!いいな、敬一の世界に行ってみたいな。

[映像はここで途切れ、消える。5人はスクリーンが設置されていた建造物内を探索したが、スクリーンが点いた原因は判明しなかった。以降、空間内に設置されているスクリーンに佐藤敬一を主観としたと考えられる映像が複数確認される。全ての映像は記録映像-2265-JPを参照すること。]
[5人は15分ほど進む。]

ブラボー: 前方に黒い、動く実体を視認。ゆっくり二足歩行で歩いていて、全長は190cmほど。

アルファ: 人型ではあるな。腕と足と頭がある。にしても顔が黒で覆われていて見えないが。

デルタ: 今回も見つからないようにやり過ごそう。

[以降、探索記録内では同様に当実体が空間内に複数体いるのが確認されたが、歩行以外の行動を取っていなかった。]

[5人は5分ほど進む。]

[同様に大型スクリーンに映像が映される。東ヨーロッパ系の女性と佐藤敬一が、洞窟の出口で話している映像が流される。東ヨーロッパ系の女性は先の映像の女児と同一人物であると推測されている。]

女性: ねぇ、敬一、本当に行っちゃうの?

佐藤敬一: 行くよ。俺は故郷に帰るんだ。そのためにはここを離れてもっと勉強しなくちゃならない。見てきただろ?俺がずっと学校に行くために勉強する姿見てきただろ。

女性: ねぇ、別に故郷に帰るってそこまで意固地になる必要はないんじゃない?ここでずっと生きるってのも、楽しいと思うし。

佐藤敬一: [俯く]

女性: ね、戻ろうよ。みんなも笑って出迎えてくれるよ。

佐藤敬一: [不明瞭な発言]

女性: え?

佐藤敬一: うるさい。俺は、俺は故郷に帰るんだ。俺は、お前みたいにこんなところで満足できる人間じゃないんだ。俺は故郷に帰らなきゃいけないんだ。

[映像はここで途切れる。]

[5人は10分ほど進む。]

デルタ: なんていうか、空間がぼやけて見えないか。薄めの蜃気楼が、視界全体に広がっているような。

エコー: 自分もです。これ、よく見たらあらゆる物体が振動しているんでしょうか。

アルファ: ちがうな、輪郭が揺れている。おそらく"認識"が足りていないんだ。チャーリー、ヒューム値はどうだ。

チャーリー: この100mで0.76Hmから0.71Hmまで大幅に減少してます。これってあれですかね、世界の果て。

ブラボー: 事前に予測されていたようにこの空間が小型宇宙であるならば、そうなるだろうな。ここから先に進めば、"外側"に入り、脱概念化する危険性がある。

アルファ: そうだな。小型宇宙であるとは限られていないが、ここは引き返そうか。やはり低現実な空間を認識して、世界を構築する核があるらしい。そこを目指そうじゃないか。

チャーリー: どこに核はあるんでしょうね。

デルタ: これまでの任務では、空間の中心によくあった気がする。

アルファ: とりあえずこれまでの進路を12時方向として、3時方向に進んでみようか。

[5人は10分ほど進む。]

[同様に大型スクリーンに映像が映される。喫茶店で八峰玲と佐藤敬一が話しており、会話の内容から八峰玲が佐藤敬一をスカウトしている場面だと考えられる。]

八峰玲: はい、という感じですね。給料も多くお支払いしますし、なによりもあなたの必要な研究環境も提供しますよ。

佐藤敬一: そう、ですね。かなり良い条件ではあると思います。ただ、財団やGOCと敵対する集団に属するのは、やはり避けたいです。

八峰玲: あぁ、研究職なら普通にやってれば捕まったりはしないと思いますよ。ご安心ください。

佐藤敬一: そうじゃなくて

八峰玲: そうじゃなくて?あなたの目的は、故郷に帰ることなんですよね?あなただって分かっていると思います。あのような研究施設ではその目的の達成が難しいことに。

佐藤敬一: [俯く]そうかも、しれませんが。

八峰玲: おっと、次の予定がありますのでそろそろ失礼します。お代はこちらに置いておきますね。ご連絡、お待ちしています。

[佐藤敬一は、机に伏す。]

[映像はここで途切れる。]

[5人は20分ほど進む。]

ブラボー: すごいな。突然アスファルトが剥がれて、森林が広がってる。

アルファ: 建造物も見えないな。目標は近そうだ。気を引き締めて進もう。

[5人は5分ほど森林内を進む。森林の木々は日本国内で見られる照葉樹で構成されていた。]

デルタ: あ。なんか洞窟っぽいのが空いてる。

アルファ: 入ろう。内部は非常に複雑な構造をしている可能性が高い。退路を把握できるようにエコーにマッピングを頼む。

[5人は洞窟内を進む。分岐路が多く存在しており、核に到達するまでに約2時間経過した。]

ブラボー: 止まれ。この先が明るい。目的地に到着したと推測する。

アルファ: OK。スリーカウントで飛び込もう。準備はいいか?3、2、1。

[5人は光源の方向に拳銃を向ける。光源方向には13人の人物がおり、12名はSNS上に上げられた画像に映っている人物と同一の外見を有している。残りの1名は、事前に得た情報から佐藤敬一と推測される。13人はテーブルを囲んで立ちながら食事や飲酒をしており、さ-23に気付いていない様子を見せている。食事には御節料理があるため、この宴会は正月を祝するものを想定していると考えられる。]

アルファ: 手を挙げろ。

デルタ: こいつら全員気付いてないな。

エコー: あそこで笑ってるの、多分本物の佐藤敬一ですよね。身長180ぐらい、ですもんね。

チャーリー: そうですね。それに、まわりの人たちのヒューム値が0.74Hmであるのに対して、彼は1.01Hmです。

デルタ: なんだよ、辛気臭い顔してるんじゃなかったのかよ。

アルファ: 帰還しよう。核も見つけられたしな。

ライフラフトのメンバーに似た実体: なぁ、敬一、[吃逆]、お前の故郷にも酒ってあったのかぁ?進んだ世界には酒なんて、[吃逆]、ないんじゃねぇかなぁ?

佐藤敬一: あったさ。子どもだったから、飲んだことはないけど。また、戻れたらさ、みんなで、そう、みんなで飲みにいこうぜ。

[ログ終了]

補遺: 以上の記録と後に行われた追加調査から、SCP-2265-JP-2はSCP-2265-JP-1によって接続された低現実の小型宇宙であり、SCP-2265-JPの現実性の低下はSCP-2265-JP-2内に現実性が流出したことによって発生したと結論づけられました。また、低現実空間であるSCP-2265-JP-2に高現実である佐藤敬一が侵入したことにより、空間内が改変され、現在のような形になったと推測されています。

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