SCP-2270-JP
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収容時のSCP-2270-JP

アイテム番号: SCP-2270-JP

オブジェクトクラス: Neutralized

特別収容プロトコル:SCP-2270-JPはサイト-81aTのNeutralizedオブジェクト収容セルに収容されます。

立川研究員はサイト-81aTの人型実体用収容室に収容されます。身体を拘束し、外科的に敷設されたチューブを用いて栄養を補給させます。

説明: SCP-2270-JPは西洋人形です。現在は異常性を喪失しており、特別な収容体制を必要としていません。SCP-2270-JPの異常性喪失は、収容直後且つ異常性の検証中に発生したため、かつてSCP-2270-JPが所持していた異常性について明らかになっていない部分が多量に存在します。

SCP-2270-JPは自律し、周辺の物体へ干渉すると報告されていました。この報告は民間人によって報告された内容であり、財団が確認した事例は存在しません。この自律性は敵対的且つ攻撃的なものであり、周辺の物品の破壊するとされています。SCP-2270-JPが物品類を破壊している様子を観測した人物はおらず、他者によって視認されている状態では異常性を発現しない可能性が指摘されています。

SCP-2270-JPには一定の精神影響性が疑われていました。これはSCP-2270-JPの異常性検証実験中に発生したイベントを起因とする疑いであり、実験に参加していた立川研究員が凶暴性を発現し、SCP-2270-JPを所持していたボールペンで複数回刺突しました。立川研究員は模範的な人格を有する財団職員であり、オブジェクトを理由無く攻撃する人物ではありません。立川研究員に対し行われたインタビュー等は補遺を参照2をしてください。当該イベント以降、SCP-2270-JPから異常性は確認されていないためオブジェクトクラスをNeutralizedに分類し、事後収容が実施されています。(追記:現在、精神影響性は否定されています)

補遺1: SCP-2270-JP来歴

SCP-2270-JPは民間人"浜崎 良夫"及びその家族が所有していた人形であり、浜崎 良夫がSCP-2270-JPを入手した過程にも異常な作用が疑われています。

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浜崎 翔

SCP-2270-JPは1994年9月1日に発生した未解決失踪事件「山形県酒井市内男児失踪事件1」にて、浜崎 良夫が入手したとされています。この事件は当時3歳だった"浜崎 翔"が、父親である浜崎 良夫と妹の"浜崎 楓"と共に散歩中に出掛けたまま失踪した事件であり、浜崎 良夫は「当時1歳だった楓のことばかり気にかけていて、気が付いたら手を繋いでいたはずの翔が消失しており、自分は人形(SCP-2270-JP)と手を繋いでいた。いつ入れ替わったのかは分からない。手を離したタイミングは無かったと思う」と説明しています。事件当時に寄せられた目撃証言により、浜崎 良夫が浜崎 楓を右手で抱きかかえた状態で、浜崎 翔と手を繋いで散歩している様子が確認されており、手を繋いだ3歳の児童が父親に認知されずに消失/人形と入れ替わるのは困難であると評価されています。

山形県酒井市には、浜崎 良夫の実家の存在しており、浜崎一家は8月の長期休暇を利用し帰省していました。地元警察や消防により捜索が行われましたが、浜崎 翔は発見されず、未解決事件として処理されました。事件が未解決事件として処理された後も、浜崎 良夫は様々なメディアに出演し、浜崎 翔に関する情報を求めています。特に公開された浜崎 翔の顔写真には多くの反響があり、以下の地域にて目撃情報が集中しました。

  • 埼玉県川越市周辺(1994年11月頃から1995年2月頃までに11件)
  • 群馬県藤岡市(1995年3月頃から1995年7月頃までに8件)
  • 新潟県燕市(1995年9月頃から1995年11月頃までに9件)
  • 岐阜県多治見市(1996年1月頃から1996年5月頃まで7件)
  • 福井県鯖江市(1997年7月頃から1997年10月頃まで4件)

これら情報は、浜崎 翔が複数の地域を移動しながら生存している可能性が示しており、特定の人物による誘拐事件であることを示します。浜崎一家は浜崎 翔の生存を確信しており、未解決事件として処理された後も、妹の浜崎 楓が中心となって情報の収集を行っています。

浜崎一家が入手したSCP-2270-JPは、浜崎一家は浜崎 翔に繋がる手掛かりとして保管していました。SCP-2270-JPの自律異常性は入手後約3か月経過後から発現したとされており、異常性発現の原因は明らかになっていません。浜崎一家は自律異常性を畏怖し、SCP-2270-JPを納戸に収容していましたが、不定期に不明な方法で脱出/移動を行っていたとされています。SCP-2270-JPが発見される部屋では家具等の物品類の破損が見られ、SCP-2270-JPによる破壊が示唆されています。

浜崎 良夫は、SCP-2270-JP異常性についてスピリチュアルな作用を疑い、SCP-2270-JPの鎮静、及び浜崎 翔のについての情報入手を自称霊媒師の人物に依頼していました。この自称霊媒師は霊感商法で利益を得る詐欺師であり、浜崎 良夫は多額の謝礼金を搾取され、その被害を警視庁に相談しています。財団は警視庁公安部特事課経由でSCP-2270-JPを認知し、2018年8月1日に収容に至りました。財団は約24年間に渡りSCP-2270-JPと接した自称霊媒師に対し、インタビューを行いましたが、有効な情報は入手出来ていません。

補遺2: イベント発生

収容されたSCP-2270-JPからは異常性の発現を確認できませんでした。浜崎一家がSCP-2270-JPが自立している様子を直接確認した実績がないことを報告されていたため、観測下では異常性発現をしない可能性を加味し、様々なシチュエーションでの実験が試行されましたが、一切の成果を得ることは出来ませんでした。収容から200日が経過した時点で、研究チームはSCP-2270-JPをAnomalousアイテムへ再分類すること決定しました。

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立川 芳貴 研究員

立川研究員はAnomalousアイテムの調査を専門にする研究職員です。調査に際して立川研究員はSCP-2270-JPに対し、強烈な既視感を訴えました。立川研究員は再分類に際してサイト-8181より招集されており、SCP-2270-JPへ接触した経歴を持ちません。当初、この既視感はSCP-2270-JPの未知なる異常性と推定されていましたが、後に否定されています。

SCP-2270-JPの再分類調査が中期まで差し掛かった段階で、立川研究員がSCP-2270-JPを破壊するイベントが発生しました。立川研究員は所持していたボールペンシルでSCP-2270-JPを24度に渡り刺突し、SCP-2270-JPの内容物が突出する事態となりました。研究チームは立川研究員を即座に拘留し、インタビューを実施しました。以下、インタビュー記録です。

立川 貴芳 研究職員 インタビュー記録 #1
2019/10/09

付記: 隔週のカウンセリングにて、イベント以前の立川研究員の精神状況は良好であったことが確認されています。立川研究員は模範的な研究職員であり、奇行に及ぶ可能性は考慮されていませんでした。



<再生>

インタビュアー: オブジェクトに対し危害を加えた理由を教えてください。

立川: 上手く説明できない。何というか、アイツに笑われたような気がして。

インタビュアー: それで?

立川: それでって言われても。

インタビュアー: それだけですか? それだけの理由で?

立川: それだけの理由? なんだよ。

インタビュアー: いいえ。失礼しました。なぜ笑われてると感じたのでしょうか? 実際に笑ったわけではないですよね?

立川: さぁ、どうだったか、笑ったように感じたけどな。

インタビュアー: わかりました。笑われたと感じた、とのことですが、何を笑われたように感じたのですか? 

立川: 何を?

インタビュアー: ええ。嘲笑されたと感じたのであれば、嘲笑の対象は何だったのでしょうか?

[立川が沈黙]

立川: 母親を、かな。

インタビュアー: お母様? もう少し詳しくお願いできますか?

立川: いや、なんでもない。とにかく、ヤツはこっちを見て笑ったんだ。馬鹿にしたんだ。

<終了>

研究チームは、インタビュー結果を受けて、立川研究員の人格が幼稚な人格に変容していると評価しました。SCP-2270-JPに精神影響性が指摘されたため、Anomalousアイテムへの再分類は中止されました。しかし、イベント以降SCP-2270-JPは一切の異常性を発現せず、再度の精神影響性異常も確認されなかったため、研究チームはSCP-2270-JPを破損を起因に異常性を完全に喪失したと判断しました。SCP-2270-JPはオブジェクトクラスをNeutralizedへ再分類されました。

拘留された立川研究員の人格は不安定な状態が継続していました。研究チームは立川研究員へBクラス記憶処理を施し、経過を観察しました。その結果、立川研究員の人格に回復の兆候が見られましたが、SCP-2270-JPへ危害を加えた理由については依然として不明瞭です。立川研究員の処遇について、日本支部理事会は協議を行い、経過観察期間を設けた後に、Aクラス記録処理/Σ級記憶抽出処理を行った上で解雇すること決定しました2

補遺3: 立川研究員の母親への疑い

研究チームはインタビュー記録から得られた情報を参考に、立川研究員の母親への調査を行いました。立川研究員の母親"立川 芳江"は死亡済民間人であり、立川研究員が財団に雇用されて程なくして死亡しています。死因については、立川研究員の希望により秘匿とされていましたが、財団は自殺であることを把握しています3

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確保された人形

立川 芳江の住居は家財道具等を残したまま現存しています。押入れ収納からは3体の人形が発見されていますが、何れもSCP-2270-JPの外見的特徴とは一致せず、一切の異常性を保持していません。そのため、立川研究員が主張した既視感の正体とは無関係と評価されています。また、財団は住居から立川 芳江のDNA情報を入手しており、財団データベース上の情報との照合が実施されました。

立川家は母子家庭であり、立川研究員と立川 芳江は血縁関係にあるとされていましたが、調査の結果否定されました。立川研究員の出自について調査を実行したところ、立川研究員の出生届は3歳時点で提出されており、出生届の提出が遅延したとして立川 芳江は戸籍法第135条4に基づく過料罰金を納付しています。この提出遅延に際して、事件性の有無を確認する調査が日本国行政によって行われましたが、埼玉県川越市に存在する産婦人科医院が立川 芳江の出産を認める証言を行ったため、事件性は認められないとして出生届が受理されました。この産婦人科医院の証言には暴力団構成員による関与が指摘されており、この暴力団構成員は立川 芳江と当時交際関係にあったことが確認されています。

補遺4: 立川 芳江と交際関係にあった暴力団組員への聞き取り

立川 芳江と交際していた暴力団構成員を特定しました。"沢城 尚貴"は鹿児島県鹿児島市で飲食店を営む元暴力団構成員であり、1994年から1998年までの間埼玉県川越市にて立川 芳江と交際していました。沢城は財団に対し協力的であり、複数の情報を提供しています。以下、インタビュー記録です。

沢城 尚貴 研究職員 インタビュー記録 #1
2019/10/30

付記: 立川研究員の出自に関するインタビュー記録



<再生>

インタビュアー: この男性を知っていますか?

[インタビュアーが立川 芳江の住居から接収した立川研究員の子供時代の写真を提示する]

沢城: えーっと……。

[沢城が写真を見つめたまま沈黙する]

沢城: ……ター坊?

インタビュアー: ター坊? どなたでしょうか、正確な名前はわかりますか?

沢城: 貴芳。立川 貴芳だ。

インタビュアー: その通りです。我々のこの人物の出自について調べています。貴方は立川 芳江を知っていますね?

沢城: [笑い声] その感じだと全部知ってる感じだ。

インタビュアー: いいえ。そうでもありません。

沢城: そうかい、じゃあ教えてやる。ター坊は芳江の子供じゃない。ター坊の正体は1994年に行方不明になった浜崎 翔。山形で消えた3歳の子供こそが立川 貴芳だ。

インタビュアー: なるほど。そこまで踏み込んだ情報をお持ちと言うことは、詳細をご存知のようですね。そうなった経緯をお聞きしたいです。

沢城: その経緯を完全に知ってるかと言われると微妙だ。芳江と俺は山形の酒井って町で出会い、2人で暮していた。……ある時、芳江が子供を連れてきた。もちろん俺達の子供じゃない。

インタビュアー: 連れてきた、ですか。

沢城: 俺はすぐに浜崎 翔だと分かった。子供が行方不明になったのは町中で話題になっていたし、組でもその話は聞いていた。芳江が子供を欲しがっていたのは分かっていたが、まさかそこまでするとは思っていなかった。

インタビュアー: 芳江さんが誘拐をしたわけですね。しかし、浜崎 翔は常に父親と手を繋いでいたはずです。いったいどのように誘拐したのでしょうか?

沢城: 俺にも分からない。どういう訳か、芳江も分からないと言っていた。「部屋で寝ていて、起きたら部屋に子供が居た。いつも人形を置いている場所に子供が座っていて、人形がなくなっていた」と言っていたが、俺には信じられなかった。

インタビュアー: 人形? 人形とはこれですか?

[インタビュアーがSCP-2270-JPの写真を提示する]

沢城: あ、ああ。これだ、間違いない。アンタたちは一体……。

インタビュアー: それで、子供をどうしたのですか?

沢城: ああ……、そうだな。子供を誘拐してるなんて人に知れたら大ごとだ。事情を説明しても信じてもらえるかは分からない。子供を返して罪に問われないとは限らないが、返した方が良いと思った。

インタビュアー: でもあの事件は未解決事件です。子供を返していませんよね。

沢城: そうだ。俺は返そうと思ったが、芳江が返したがらなかった。返す返さないで押し問答しているうちに、事件の情勢が変わってきた。

インタビュアー: 情勢?

沢城: 浜崎 翔の父親が世間から疑われ始めたんだ。ずっと手を握っていたのに子供が居なくなったって証言が、あんまりに信憑性の無い証言だったからな。子供を捨てたんだろうって言われ始めてな。それを聞いて、芳江はいよいよ子供を返すつもりがなくなっているようだった。

インタビュアー: だから、本当に返さなかった、と。それからはどうしたのですか?

沢城: 俺は昔の兄貴分のツテを頼って埼玉に部屋を借りた。高跳びだな。そんで次に子供に新しい戸籍を与える必要があった。子供が浜崎 翔で居る限り、俺たちは怯えて暮らすことになるからな。さっきの兄貴の知り合いというか業務提携先というか、そういう産婦人科医を紹介してもらって、一芝居うってもらうことにしたんだ。

インタビュアー: 正式な戸籍を入手するために、芳江さんが産んだことにしたんですね。

沢城: ああ。疑われたが、「強姦被害で子供を孕んでしまって、産んだ後どうすれば分からなかった」という筋書きでなんとか話は通り、あの子供は立川 芳貴になった。ター坊には「父親が蒸発してしまったから、お母さんはお前を育てるために出稼ぎにでていて、お前を叔母さん夫婦に預けていた。叔母さんが死んでしまったから、お母さんの仕事も落ち着いたしお前を呼び戻した」という筋書きで通した。あとは各地を転々としたもんだ。

<終了>



沢城 尚貴 研究職員 インタビュー記録 #2
2019/10/30

付記: 立川 芳江に関するインタビュー記録



<再生>

インタビュアー: 疑問なんですが、お子さんが欲しいという理由で本当に誘拐してしまうのはちょっと想像できないんですよね。不躾な意見かもしれないですが、2人で本当の子供を作るとか、そういう風には ──

沢城: 本当に不躾なヤツだな。事情があるに決まってるだろ。

インタビュアー: 失礼しました。そうですよね。その事情をお聞かせ願えますか?

沢城: やれやれ……。芳江は子供が産めない身体だったんだ。17歳の頃だったらしい、地元の不良と付き合ってる時……男の趣味が分かりやすい女だが、ソイツとのガキを孕んだらしい。

インタビュアー: 17歳だと学生ですかね? あまり歓迎できる出来事とは思えませんが、それが「事情」であると?

沢城: 芳江はヤツの住んでる団地に呼び出された。ソイツ曰、「これからのこと」を話したかったらしいが……。ソイツがガキだったのもそうだが、借金まみれのヤツだったらしいし、何の話がしたかったのかは想像に難くない。

インタビュアー: でしょうね。芳江さんはどう答えたのでしょうか。

沢城: 産もうとしたらしい。そうしたら、だ。

インタビュアー: そうしたら?

沢城: 階段から突き落とされちまった、とよ。

インタビュアー: はい?

沢城: ありえねーよなぁ。 病院に担ぎ込まれ、死にはしなかったが……。

インタビュアー: それで子供が産めない身体になってしまった、と。

沢城: 不良君の方はそれっきりらしい。借金のこともあって町から出て行ったんだろうな。芳江が子供に異常な執着をする理由はそういうことだ。芳江は子供を産めなくなってしまったのを本当に悔やんでいたし、それが原因で狂ってしまった部分もあったんだと思う。

インタビュアー: 狂ってしまった? 

沢城: さっきの人形だよ。人形を自作しては子供のように扱うんだ。その様子が本当に痛々しくて、それを普段から見ていたから、子供を無理矢理返すのが出来なかったんだ。

インタビュアー: あの人形は芳江さんが作成したものなんですね。

沢城: 人形絡みも不気味だったなあ。芳江曰く、作った人形が居なくなることがあるんだと。俺にはサッパリ理解できないんだが、居なくなるとそれはもう子供じゃないって言って新しい人形を作り始めるんだ。子供を拉致した時点で写真の3体は居たはずだぜ。

インタビュアー: 確かに、それは不気味に見えますね。

沢城: 流石に馬鹿げてるもんで、俺も「勝手に動くっていうが俺はコイツが動いてるところ見たことが無いし、動くとも思ってない。あえりないだろ」って怒鳴りちらしたことがあるんだが、「この子は誰かが見てる時は何もしない」「私と居たいだけ」って話にならなくてな。

インタビュアー: ちょっと普通では無いですね。不躾ついでで恐縮ですが、よくお付き合いをしようと思われましたね。お付き合いを始める前からそういう人だったわけですよね。

沢城: それはそうなんだが、それ以外は普通なんだよな。結局、俺もその様子に耐えられなくなっちまってな。今は組織も抜けて、縁も所縁もない場所でしがない焼鳥屋よ。今頃アイツは何してんだろうな。

<終了>



沢城 尚貴へのインタビューにて開示された情報は以下の通りです。
  • SCP-2270-JPは立川 芳江によって作成された。SCP-2270-JPと立川研究員には関連性がある。
  • 立川研究員は戸籍を不正に入手された誘拐被害者だった。
  • SCP-2270-JPには存在同士を交換するような異常性が存在する。
  • SCP-2270-JPの異常性は、他者の視認により行使が妨げられる可能性があると推測されたが、その可能性は高いと評価できる。
  • 立川 芳江の住居から発見された非異常性の人形3体はかつて異常性を所持していた可能性が存在する。

何れも財団が初めて入手した情報ですが、オブジェクトの無力化や重要参考人の死亡などで検証が困難です。

SCP-2270-JPの担当に立川研究員が選出されたことは偶然であると評価されていますが、未解明の異常性が多量に存在することから可能性を否定できていません。研究チームはSCP-2270-JPをNeutralizedとして継続収容することを決定しています。

補遺5 立川元研究員による殺人事件

2020年1月1日に解放されていた立川研究員が殺人事件を発生させました。被害者は浜崎 楓であり、正月に帰省していた浜崎 楓を標的にしていたと思われる痕跡が複数発見されており、計画的な犯行を指摘されています。立川研究員は記憶処理処置を受けているため、自身が研究していたオブジェクトに関する情報の一切を喪失しており、浜崎 楓の存在を把握していることは異常な事象です。また、浜崎一家は過去に2度住居を転居していることは特筆すべき前提です。

立川研究員の身柄は財団に引き渡されました。再度の記憶抽出が実行されましたが、解放直前に行った記憶抽出と同質の記憶が抽出されました。これは立川研究員が新たな記憶を入手していないことを意味し、何らかの存在に立川研究員の身体が操作されていることを示します。

立川研究員へのインタビューは難航しています。意味を成さない絶叫を繰り返しており、有効な情報資料を得られたケースは1件のみであり、初回のインタビュー記録のみです。以下は獲得できたインタビュー記録です。

立川 貴芳 研究職員 インタビュー記録 #2
2020/01/03

付記: 立川研究員は極めて暴力的な態度を示しているため、身体を拘束した上でインタビューを実行します。



<再生>

立川: [激しい絶叫]

[立川研究員が狂乱し、インタビューが成立しない]

[中略]

[インタビュアーが資料を確認し始める。これに際してインタビューが所持していた立川 芳江の写真が立川研究員の視界に入る。]

[立川研究員が沈静化する]

立川: おい、その写真。

インタビュアー: そうですね。写真ですね。この方が誰だかご存知ですか?

立川: 邪魔するなら、あの女と同じ様に殺してやる。

インタビュアー: 女? 浜崎 楓さんのことですか?

立川: その眼、ムカつくな。あの女に似てる。ジロジロジロジロ、邪魔ばかり。

インタビュアー: 貴方は見られると何か不利益を受けるのですか?

[立川が絶叫]

[立川が拘束を解こうと暴れる]

インタビュー: やはりダメそうですね。終わりにしますか。

立川: 終わり?

インタビュアー: はい。終わりにします。

立川: 無駄だ、俺は終わらせられない。母は俺を作るのを止めない。今度こそ、今度こそ完全に入れ替わってやる。俺を見つけることもできない5

インタビュアー: ん? 貴方のお母さまはこの写真の方ではないのですか6

立川: あ?

インタビュー: 質問にお答えにいただけますか?

[立川が沈黙]

<終了>




インタビュー記録以降、立川研究員は一切の言語を発しておらず、沈黙を継続しています。今回のインタビューにて示された情報は以下の通りです。
  • SCP-2270-JPの異常性は、他者に視認されることで異常性の行使が妨げられる可能性が高いと指摘されていたが、その可能性は確定的と評価できる。
  • SCP-2270-JPは立川 芳江に危害を加えられることを畏怖している。
  • SCP-2270-JPは立川 芳江が既に死亡していることを認知していない。

研究チームはSCP-2270-JPの異常性は、自身の対象となる人間の人格/身体を交換するものであると確信しています。1994年の山形県酒井市内男児失踪事件は、当時1歳だった浜崎 楓によって異常性の行使を目撃され、入れ替わりプロセスが中断させられたことによって発生したと推測されます。立川 芳江の死去を認知していなかったことから、SCP-2270-JPは補遺2イベントの発生直前に立川研究員と人格を入れ替えたと思われ、以降は立川研究員の身体を操作していたと推測されます。

SCP-2270-JPは占有している身体が破壊された場合でも、立川 芳江の制作した人形を占有することで活動を再開できると思われます。ただし、立川 芳江は既に死亡している他、財団が既に確保している人形3体と、破壊されているSCP-2270-JPを占有可能であるかは疑問視されています。財団研究チームは、沢城 尚貴へのインタビューを受けて、確保済の人形3体について其々に別の人物の人格が封印されていると考えており、人形が複数体製造されている理由は、同じ人形を使いまわしできないためと推測しています。そのため、財団が未発見の人形が存在しない限り、当該異常性は発動しないと評価されています。

確保済の人形、及びSCP-2270-JPから人格を解放する方法は発見されていません。また、SCP-2270-JPに封印された人格は失われている可能性が指摘されています。立川研究員をSCP-2270-JP-Aに指定し、収容を継続する議論が進められています。

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