アイテム番号: SCP-2283-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-2283-JPはサイト-81██の拡張型人型収容室に収容されます。収容室の内部には計5台の暗視併用カメラを設置し、24時間体制で監視してください。SCP-2283-JP-Bの不審な行動が確認された場合はセキュリティー担当者に報告し、収容室隔壁の再ロックおよび対象の鎮圧を行ってください。食事の際は2人分の食料を与えてください。
現在、SCP-2283-JP-Aの動向を確認するため対象には定期的なインタビューが行われています。インタビューを担当した職員はインタビュー後サイト内の心理部門にてカウンセリングを受診してください。また、サイト-81██内で発生した現象に関しても随時記録してください。
説明: SCP-2283-JPはSCP-2283-A、SCP-2283-Bからなる2体の異常実体群の総称です。
SCP-2283-JP-Aは一切の物理的観測が不可能な不可視実体です。SCP-2283-JP-Bの証言からSCP-2283-JP-Aの性別は雌であると判明していますが、それ以外の詳細な情報(正確な容姿や声等)は一切把握できていません。
現在まで計58回のSCP-2283-JP-A観測実験を行いましたがどれも観測不可を示す数値が記録されています。ですが、SCP-2283-JP収容前後でSCP-2283-JP-Aによる物と思われる現象が複数観測されており、未だ研究はSCP-2283-JP-Aの存在を肯定した場合とSCP-2283-JP-Bによる単独の異常性である可能性の2説を並行的に実証している状態です。SCP-2283-JP-Aの正確な姿形をSCP-2283-JP-Bから聞き出す試みはSCP-2283-JP-Aが自身の容姿に関する情報開示を拒んでいるというSCP-2283-JP-Bからの証言により保留されています。SCP-2283-JP-Bからの証言を基に実施したSCP-2283-JP-Aが存在する地点での物理的接触も同様に失敗しており、SCP-2283-JP-Aの生体的痕跡(指紋や皮膚辺、老廃物等)も未だ採取および発見出来ていません。SCP-2283-JP-Aは(SCP-2283-JP-Bからの証言では)食事や排泄といった生体活動も行っているとされていますが、それも含め適当であると思われる現象は観測されておらず監視体制を維持していたとしても監視官の見逃しや記憶の混濁により視認が出来ません。なお、監視カメラでの映像記録ではSCP-2283-JP-Bが2人分の食料を摂食している様子が写し出されますが、胃の内部には1食分の量だけが確認されます。
SCP-2283-JP-Bは本名:██ 健太、身長165㎝、体重52kg、実年齢3█歳の日本人男性です。SCP-2283-JP-Bは通常の人間男性と同様の性質を有しており、年数経過による加齢や物理的衝撃による損傷を負います。SCP-2283-JP-Bは唯一SCP-2283-JP-Aを認識しかつ会話が可能な存在であり、現在までSCP-2283-JP-B以外でSCP-2283-JP-Aの観測に成功した人間は存在しません。SCP-2283-JP-Bは一日の大半をSCP-2283-JP-Aとの会話に利用しており、この事からSCP-2283-JP-BはSCP-2283-JP-Aと常に行動を共にしていると予想されています。なお、2体を個別に隔離する試みは前述した不観測性により成功していません。
SCP-2283-JP-BはSCP-2283-JP-Aを自身の伴侶であると証言しており、直筆の婚姻届けや市役所での受理記録も確認されています。しかし、SCP-2283-JP-Aに該当すると思われる人物の出生記録や戸籍(氏名:██ ███)は発見できておらず、現在も調査が継続されています。
補遺1: SCP-2283-JPは2███/█/██の██県██市で発生した殺人事件を切っ掛けに発見されました。当時、SCP-2283-JP-Bは自身が居住しているマンションにて近隣住民からの「独り言がうるさい」等の苦情を多数受けており、結果、逆上したSCP-2283-JP-Bが近隣住民を殺害。SCP-2283-JP-Bは前述した事案は自分自身の犯行であると供述し、現地警察もその証言を元に逮捕に踏み切りました。しかし、SCP-2283-JP-Bが当時着用していた衣服等からは被害者の血液反応が一切検出されず、凶器とされている包丁からもSCP-2283-JP-Bの指紋(普段の生活で使用したであろう指紋も含めて)が一切採取できなかった等の不審な点が多数判明したため拘留が延長。その際、現地警察の職員からSCP-2283-JP-Bが留置所内で何者かと会話しているという証言が得られ、これを切っ掛けに財団による対象の初期調査も兼ねた仮収容へと移行しました。
現在、SCP-2283-JP-Bが居住していたマンションの一室を調査した結果、何ら異常性につながる事件などは起きていない場所であるにもかかわらず1か月で5人の入居者が入れ替わるという状態が続いていた事が判明しました。以前の住民やマンションの管理会社、近隣住民に対して聞き込み調査を行っていますが新たな情報は入手出来ていません。前の住民に関しては全員が既に失踪しており未だ行方が分かっていません。
SCP-2283-JP-Aの存在証明を目的としたSCP-2283-JP-Bへの発見事案の再現実験が検討されています。担当研究者である尼寺にじ博士によりって保留されています。
補遺2: 以下はSCP-2283-JP-Bに行ったインタビュー記録の抜粋です。
対象: SCP-2283-JP-B
インタビュアー: 尼寺博士
付記: インタビューはサイト-81██内のSCP-2283-JP収容室内で行われました。
<録音開始>
インタビュアー: 本日はSCP-2283-JP-Aの概要についてお聞きします。宜しいですね?
SCP-2283-JP-B(以下、B): ……はい。
インタビュアー: では……貴方とSCP-2283-JP-Aが出会ったのは何時の事ですか?
B: ……3年前。私があのマンションに越してきてすぐです。
インタビュアー: その時、SCP-2283-JP-Aは何処に。
B: 勿論、傍に。その時から、私達はいつも一緒ですから。
インタビュアー: なるほど……婚姻届けを出したのもその時期ですか?
B: ええ
インタビュアー: では、その時点で貴方はSCP-2283-JP-Aをーー
B: あの。
インタビュアー: ……なんでしょう?
B: 妻の事を番号でいうの、止めてもらっても良いですか? 大変不快です。腹立たしい。
インタビュアー: ……分かりました。では、ここからは奥様とお呼びします。
B: お願いします。
インタビュアー: ……では改めまして……貴方はいつも、奥様とはどう過ごされているのですか?
B: 普通の夫婦と同じです。朝のおはようから始まって、お休みで一日を終えます。常に妻と語らいながら、互いの愛を確かめているんです。それが、夫婦ってものでしょ?
インタビュアー: 失礼ですが、その間のお仕事は。
B: 辞めました。妻との時間が減ってしまう。
インタビュアー: ですが、貴方は自身が立ち上げたIT会社を経営していて、事業もある程度成功していたと聞きます。それを蹴ってでも、奥様と一緒にいたかったと、そういう事ですか?
B: ええ、そうです。それが、夫婦ってものでしょ。
インタビュアー: ……なるほど。では、次に。貴方が起こした事件について改めて訊ねまーー
[何かが割れる音]
[2秒間の沈黙]
B: すいません。コップが割れちゃいましたね。
インタビュアー: ……貴方、今そのコップに触れましたか?
[2秒間の沈黙]
B: ええ。落としたのは私です。それが何か?
インタビュアー: い、いえ……続けます。貴方は、あの事件を起こしたのは自分自身だと証言していますね。動機は何ですか。
B: ……あいつ等が、妻を否定したからです。だから殺したんです。
インタビュアー: ですが、凶器からは貴方の指紋は愚か、凶器に触れたであろう痕跡が一切なかったと記録されています。それに、貴方の体や衣服からは返り血によるルミノール反応も検出されていない。……本当に、貴方は隣人を殺したのですか?
[3秒間の沈黙]
インタビュアー: ██さん?
[2秒間の沈黙]
インタビュアー: あの、██さん……私の後ろに、何か……?
B: ……やめろよ。
インタビュアー: え?
B: ……なんでそんなこと言うんだよ。嫌だよ。……そんなこと言わないでよ。嫌だよ。絶対に嫌だよそんなの。
インタビュアー: あの、██さん? 一体、今誰と話しているんですか……?
B: 嫌だよ! 行かないでよ!ねえ! そんなこと言わないでよ! 嫌だよそんなの! ねえ! お願いだよ! ねえ!
インタビュアー: お、落ち着いて、██さん……!
B: なんで……! いつもそうだ……! なんでいつもそうなんだ……! なんで君は……!
インタビュアー: だ、誰か! 今すぐセキュリティ担当者を……!
[6秒間、SCP-2283-JP-Bが同様の発言を繰り返し続ける]
インタビュアー: ██さん……! 貴方、一体何を……!
[2秒間の沈黙]
インタビュアー: ……え?
[3秒間の沈黙]
B: ……おい。
インタビュアー: 今、そこに誰か……。
B: ……次はそっちか。
<録音終了>
終了報告書: このインタビューの後、尼寺博士の睡眠障害の悪化が確認されました。現在、尼寺博士はSCP-2283-JPの研究への不参加を要請しています。
補遺3: 以下はSCP-2283-JPの収容以降に観測されたサイト-8██内の異常現象及び職員の証言を抜粋した記録です。なお、以下の内容とSCP-2283-JPとの明確な関連は未だ判明していませんが、発生時期との整合性から本報告書に記載されています。
観測現象001
場所: サイト-81██内の食堂
内容: 食堂内に設置してある監視カメラの人相識別装置が誰もいない箇所に対して1人分の存在を認識した。装置に異常はなく、これ以降同様の現象は観測されなかった。
観測現象025
場所: サイト-81██内の廊下
内容: 突如、設置されている蛍光灯がSCP-2283-JPの収容室側から順番に激しく点滅し、その後復旧した。配線や各蛍光灯の調査を行ったが何の異常も確認できなかった。
観測現象044
場所: サイト-81██内の休憩室
内容: 棚に収納してあった皿が飛来し破壊された。当時、休憩室内にいた職員は「背後から誰か入ってきたような音がしたが誰もいなかった」と証言した。
観測現象103
場所: サイト-81██内の尼寺博士オフィス
内容: SCP-2283-JPへのインタビュー以降、尼寺博士の私物が頻繁に紛失するようになった。なお、紛失が確認された翌日は必ずSCP-2283-JPの収容室内で物品が発見され、監視カメラの映像では尼寺博士がSCP-2283-JP収容室内でその物品を落としている様子が確認された。
観測現象118
場所: サイト-81██内の尼寺博士オフィス
内容: 尼寺博士から「何者かに見られている気がする」という証言がされる。なお、内部に設置してあるカメラには何ら異常な現象は記録されていない。
観測現象120
場所: サイト-81██内の尼寺博士就寝室
内容: 何者かによって室内が荒らされた形跡が確認された。なお、内部の監視カメラには尼寺博士自身が部屋内部を荒らしている様子が記録されていたが、本人はこれを否定した。
観測現象122
場所: サイト-81██内の車両保管庫
内容: 当時、車両整備を行っていた職員の証言から「突如各車両のボンネットから何者かがそれを叩いたような音がした」という現象が確認された。また、音は尼寺博士が使用している車両から発せられたのを最後に止まったことも判明した。
観測現象131
場所: 尼寺博士自宅
内容: 見知らぬ女が自宅内のリビングに立っていたと証言。調査したが何ら侵入された痕跡も該当する人物も発見されなかった。なお、尼寺博士にはその人物の特徴に関してインタビューを行ったが詳細な情報は記憶していないと証言した。
観測現象145
場所: サイト-81██全域
内容: AM2:00、突如全施設内が停電した。5秒後、予備発電設備により復旧。調査の結果、尼寺博士のオフィスを経由して過重電流が発電機構に流れたために起こった緊急停止処置が原因である事が判明した。しかし、これらを引き起こした直接的な原因や明確な存在は明らかとなっていない。
追記: 以下は2███/██/█に発生した事案2283-JPの概要です。
事案2283-JP: この事案はサイト-81██内に設置されている休養室内で発生した、尼寺博士の死亡事案です。当時、尼寺博士はSCP-2283-JP-Bへのインタビュー以降から睡眠障害と見られる症状を発症しており、その治療のために該当する区画を利用していました。その際、AM2:00に発生した停電事案の際にSCP-2283-JP-Bが室内に侵入。尼寺博士に過度な暴行加えた上、絞殺しました。
当時SCP-2283-JPの収容室は問題なく施錠されており、現在もSCP-2283-JP-Bの収容違反が発生した経緯は判明していません。なお、SCP-2283-JP-Bが尼寺博士を殺害した動機についてインタビューを行った結果、「尼寺博士がSCP-2283-JP-Aに対して色目を使ったからだ。」と証言しました。
2███年現在、SCP-2283-JPの管理体制を強化しセキュリティ担当者を常備させるプロトコルが施行中です。また今後のSCP-2283-JPによる収容違反発生の常態化を懸念し、オブジェクトクラスの再割り当ても検討されています。