
SCP-2292、1983年。
アイテム番号: SCP-2292
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-2292は生物学的収容サイト-66のセクター21-Aにある中型動物収容室 大型人工収容区画に収容します。収容区画は中央アフリカ山間部の熱帯雨林の環境に似せ、木々・小川の流れ・温度制御・人工風・直近の倫理委員会ガイドラインに基づく現実的な環境音の音声放送を含めなければいけません。SCP-2292は栄養摂取を必要としていませんが、協調行動のために果物を与えても構いません。
SCP-2292は鎮静剤の影響を受けないため、体組織サンプルは毎週行われる区画内検査と清掃の際に取得します。職員はSCP-2292の収容区画に入る時にはレベルBのHazmatスーツを装備しなければいけません。SCP-2292の近くに 目が届く範囲に 80m以内に死亡した動物を近づけてはいけません。SCP-2292-2は焼却によって終了し、有害物廃棄プロトコルに従って処分します。
説明: SCP-2292は動物の死骸を蘇生させ、接触を介して致死的な疾病1を広めることが可能なマウンテンゴリラ(Gorilla beringei beringei)の異常な一個体です。SCP-2292は生物学的には生きているにも拘らず心臓を欠いており、代わりに塊根状の構造へと置き換えられています。この構造物はSCP-2292-Aに分類されており、現在、SCP-2292の異常性質の根源と仮定されています。SCP-2292-Aは琥珀色の輝きを放ち、血液と置換されていると思しき同色の物質をSCP-2292の体全体に圧送しています。
SCP-2292によって蘇生した生物はSCP-2292-2に分類されます。SCP-2292-2は生物学的な生命を取り戻すことは無く(腐敗が自然な速度で継続)、身体の完膚無き破壊や筋肉/骨格系全体の解体と分離によって移動性が完全に失われるまで動き続けます。
SCP-2292-Bに分類されるSCP-2292の二次的異常は病原性のものであり、SCP-2292と生きている動物の物理的接触で引き起こされます。症状は動物種によって異なりますが、概ね既知の病気に相似しています。ヒトが感染した時は多くの場合、天然痘やペストに似た症状が出ます。SCP-2292-B感染は常に致命的であり(接触後4~72時間で死亡)、SCP-2292との距離に関係なく死後に蘇生します。
SCP-2292の“代用心臓”を含む異常生物学の直接研究は、鎮静剤に対する免疫・自然に有している体力・異常な能力によって困難です。これまでの研究で用いられてきた生体解剖などの手法は、最早現在の倫理委員会ガイドラインに従う適切なものとは考えられていません。更なる物理的分析は対象の無力化を引き起こしかねないため、SCP-2292の協力を維持することは現在より重要であると見なされています。
SCP-2292の習性は現在、慢性の隔離状況下に起因する特定の逸脱行為を除いては、マウンテンゴリラの雄に予想される範囲内です。非人間的な心理を有するために、SCP-2292の認知レベルを正確に測定することは困難ですが、SCP-2292は狡猾な知性を見せ、幾度となく収容を突破しています。SCP-2292の知性がある種の異常性質なのか、引き延ばされた寿命の副作用とでも言うべきものなのか、或いは完全に別のものかは未だに不明です。
SCP-2292は1966年にマーシャル・カーター&ダーク株式会社の子会社が所有するロンドンの倉庫に手入れを行った際に回収されました。この時、SCP-2292は既にアクリルガラス製の格納ユニット内に収容済でした。現地で回収された文書は、SCP-2292が“有用性を使い果たした”後に倉庫内に放棄されていたことを明らかにしました。この文言の意味は不明です。文書は、SCP-2292が当初、1898年に行われたコンゴ盆地の無人領域への遠征で捕獲されたことを示します。
回収された文書の中からは、ハリソン・T・ウィンチェスター3世の手記が見つかりました。ウィンチェスター氏は経験豊富な探検家でしたが、1898年に説明も無くイギリスのブラッドフォードにある自宅を出奔して以来、帰還することはありませんでした。彼の原因不明の失踪は、頻繁に憶測を呼びました。彼の手記は、彼がコンゴ盆地2への極秘遠征の一員としてMC&D社に雇われたことを示し、SCP-2292の捕獲を詳述すると共に、対象が最初に発見された異常と思われる場所(現在SCP-2292-3に分類)の記述を含んでいます。
SCP-2292-3の発見と適切な収容は最重要とされています。数回の遠征と衛星画像の進歩にも拘らず、SCP-2292-3は再発見を逃れ続けています。
補遺I: 絵文字のキーボード3でSCP-2292に言語を教える財団の試みは、予期せぬ結果を齎しました。非異常性の大型類人猿は絵文字を介して自身を表現する方法を学習できることから、財団もSCP-2292に対して同じことが可能であるという仮説が立てられていました。
SCP-2292は“花”のシンボルを教えられた際にキーボードを破壊しました。しかしながら、SCP-2292はその後、収容区画の壁に湿った土を使ってシンボルを描き、繰り返しそれを指す身振りを行いました。新しい実験が開始され、電子的な視覚ディスプレイが収容区画内に ― SCP-2292にも見えるが、手の届かない範囲に ― 設置されました。ディスプレイがある映像を映している間、SCP-2292には数々の非毒性塗料が与えられました。映像はまずSCP-2292の生息環境に住む動植物に焦点を置き、最終的に抽象的な概念へ移行しました。
SCP-2292が対応するシンボルを描いた場合、SCP-2292の収容区画に甘い果物が送られます。およそ5年間の研究の後、1976年に、SCP-2292は言語を理解できるだけでなく、収容以前にシンボルを利用した意思疎通の訓練を何者かに受けていたことを示す仕草を見せると結論付けられました。これによって事実上、研究者はSCP-2292(というよりもSCP-2292を過去に訓練した何者か)の独自の言語を学ぶ事が出来ました。
この間、SCP-2292(行動分析プログラムの一環として飼育者からは“イニャキ”と呼称)は、原始的な石器(機能性のある槍を含む)を作ること、象形文字を描くこと、テレビ番組“ミスター・ロジャース・ネイバーフッド”および“ボブ・ロスの絵画教室”を視聴することに愛着を示しました。
SCP-2292は人工音声を生成する特殊なキーボードを介して意思疎通を行います。SCP-2292には手話と英語の話し言葉を(好ましくは両方同時に)使って意思疎通を行わなければいけません。陽気な話し方にはSCP-2292を落ち着かせる効果があると示されています。