配属サイト | サイト管理官 | 研究責任者 | 担当機動部隊 |
サイト-745 | ウラジーミル・B・イワノフ | ニコライ・E・アリエフ | 合同特殊部隊"生来の決意" |
特別収容プロトコル(現行版)
監督評議会命令により、SCP-2304-JPに関する全ての決定権限及び保有戦力は世界オカルト連合との共同特殊部隊"生来の決意"に移行され、サイト-745の人的資源及び拠点機能の大幅な強化が速やかに実施されることが決定しています。 サイト-745の全職員は再定義されたSCP-2304-JP-Bの封じ込めを全力で実施して下さい。財団は如何なる状況下でも、SCP-2304-JP-Bが要求する独立及び主権の承認を実施することはありません。
説明
SCP-2304-JPは特定の条件に合致した人物に対してミーム災害を及ぼす文書です。SCP-2304-JPは210mm×297mmで構成され1、片面にカザフ語の方言で下記に後述する文章が印字されています。SCP-2304-JPを構成する紙片及び文字に使用されているインクに特別な異常性は確認されておらず、SCP-2304-JPの外見も上記の点を除けば通常の印刷用紙と同様です。このことから、意図的に意識しない限りSCP-2304-JPへの曝露を防止することは困難であると考えられています。また、これまでに████████枚のSCP-2304-JPが回収されており、現在も回収作業が継続されています。
SCP-2304-JPの出現がこれまでに確認されている地域は、カザフスタン共和国の西部地域を中心とした2中央アジア諸国です。その他の地域では、現在までにSCP-2304-JPの出現は確認されていません。一方、SCP-2304-JPが出現する場所や所在については、ショッピングセンター、市場、政府機関、民家、公園、路上等と多方面に渡り、特別な場所や所在に限定されていない点が特筆されます。また、財団はSCP-2304-JPの回収に関連して「シガスタン共和国」という国家もしくは存在についての調査を実施していますが、現在までに有力な情報は得られていません。
以下はSCP-2304-JPの内容を記録したものです。
この文を読んだ我が同胞諸君へ
どうか、我が祖国の「真実」を知ってほしい。
どうか、亡き祖国のことを悲しんでほしい。
どうか、この地を覆う世界の嘘を打ち破ってほしい。"偉大なる母"が愛したノアザミが再び咲く時まで。
SCP-2304-JPの異常性は後述する複数の条件に合致する人物が、SCP-2304-JPに記載された文章を視認した際に発現します(この人物をSCP-2304-JP-Aと指定)。これまでの調査で判明している条件は以下の通りです。
- 帰属している国家の政府に対し、非常に強い不信感を抱いていること
- 両親のどちらかがテュルク系民族に属していること
- テュルク語族に属する言語を一定程度使用できること
SCP-2304-JP-Aとなった人物は未知の原理により、自身を「シガスタン共和国」という架空の国家に所属する人間として行動するようになるミーム汚染を発症します。このミーム汚染は不可逆的かつ永続的であり、段階的に異なる複数の異常性を発現させます。ミーム汚染の進行具合には個人差があるものの、概ね40日~55日程度で恒久的に続くと考えられている第3段階へと至ることが明らかになっています。また、SCP-2304-JP-Aのミーム汚染は記憶処理で概ね除去することが可能です。補遺1を参照して下さい。SCP-2304-JP-Aによって発生した全事件のリストはRAISA-情報参照用データベースを参照して下さい。
以下はSCP-2304-JP-Aのミーム汚染の症状及びSCP-2304-JP-Aに対するインタビュー記録です。
補遺1
2030/06/09、中央アジア諸国の各地で未確認のSCP-2304-JPの発生が確認されました。新たなSCP-2304-JPは回収されただけでも█████████枚を記録し、未回収のままとなっているものも多数存在すると考えられています。文書の回収が遅れたため、現地のマスコミやインターネット上への拡散を引き起こし、後述する重大事態が発生する原因となりました。以下は文書の詳細を記録したものです。
シガの地で奮闘する同胞の皆へ
"偉大なる母"の命日である本日
祖国が蘇る第一歩を踏み出してほしい。
皆で"世界の真実"を明らかにしよう!シガスタン共和国万歳!
上記文書が出現した後、中央アジア諸国の各地で「シガスタン共和国」の独立を掲げる武装集団が一斉に蜂起しました。財団が武装集団の構成員を拘束して尋問したところ、拘束者は全員が元SCP-2304-JP-Aであり、処理されたはずの記憶が完全に復元され、記憶処理前のステージの異常性が復活していたことが判明しました。この事態を受け、上記文書の詳細な調査及び実験を実施した結果、従来確認されていた異常性の他に、閲覧した第3段階のSCP-2304-JP-A及び元SCP-2304-JP-Aに対する新たなミーム汚染の存在が確認されました。
以下は、これまでの調査で判明しているSCP-2304-JP-Aの新たな異常性の概要をまとめたものです。
第4段階 ― これは現在、暫定的な最終段階であると考えられています。SCP-2304-JP-Aは自身についてシガスタン共和国に属する兵士もしくは活動家であると認識するようになり、武力によるシガスタン共和国の分離・独立を志向し始めます。この段階に達したSCP-2304-JP-Aは第3段階までとは異なり、より過激な活動に従事することを躊躇いません。その中には一般人に対する無差別テロや政府高官の殺害といった非合法な活動も含まれています。2030/12/31時点で、第4段階に達していると考えられているSCP-2304-JP-Aの80%以上がカザフスタン共和国の住民です。特筆すべき点として、第4段階に達したSCP-2304-JP-Aと何らかのコミュニケーションを交わした場合、第1段階のSCP-2304-JP-Aと同様のミーム汚染を発症することが確認されています。また、この段階まで到達したSCP-2304-JP-Aの異常性は記憶処理除で除去することが不可能となることが判明しています。
補遺2
以下はSCP-2304-JP-Aの収容に関するタイムラインレポートの抜粋です。
2030/06/09 |
未確認のSCP-2304-JPが中央アジア各地で出現。それから間もなく、SCP-2304-JP-Aによる武装蜂起が相次ぐ。監督評議会の緊急会合が実施され、SCP-2304-JP-A実体の終了を含む特別収容プロトコルの改定を決定。 |
2030/06/10 |
新プロトコルに基づき、中央アジア諸国が国家非常事態宣言を発動し、国境の封鎖を実施する。 |
2030/06/12 |
カザフスタン共和国アクタウ市で「シガスタン共和国軍」の結成を宣言される。カザフスタン共和国内に存在するシガ人の「領土」奪還を目指すと表明。以後、「シガスタン共和国軍」への合流を宣言する武装勢力が急増する。 |
2030/06/14 |
財団が組織した軍事部隊が本格的な鎮圧に乗り出し、各地で激しい戦闘が発生。SCP-2304-JP-Aの即時終了も平行して進行する。その結果、介入から2週間程度でカザフスタン共和国以外の武装勢力の大半が壊滅状態となり、財団側の優位が確立される。 |
2030/06/30 |
カザフスタン共和国アクトべ州に駐屯していたカザフスタン共和国軍の一部が離反し、「シガスタン共和国軍」への合流を宣言。これ以降、カザフスタン共和国の各地で正規軍の部隊による「シガスタン共和国軍」支持表明が相次ぐ。 |
2030/07/07 |
「シガスタン共和国軍」がカザフスタン共和国マンギスタウ州全域を制圧したと宣言。 |
2030/07/12 |
カザフスタン共和国内における戦況の変化を受け、財団が保有戦力の増補を中心とした、大規模な部隊再編を実施する。 |
2030/07/18 |
財団の努力にも関わらず、SCP-2304-JPの発生に歯止めがかかっていない事実が確認される。同時に、新規のSCP-2304-JP-Aも増加傾向を示していることが監督評議会に報告される。 |
2030/07/26 |
カザフスタン共和国西カザフスタン州オラル市で開催されていた州議会の議場に「シガスタン共和国軍」が侵入し、州知事及び州議会議員全員を殺害。州議会を制圧後、「シガスタン共和国の独立及び再興」を要求する決議を独自に採択した。この事件以降、カザフスタン共和国の政治家や正規軍幹部を狙ったテロが多発する。 |
2030/08/02 |
「シガスタン共和国軍」が西カザフスタン州全域を制圧したと宣言。 |
2030/08/15 |
「シガスタン共和国軍」がカザフスタン共和国アティラウ州に存在するテンギス油田の制圧に成功したと発表する。 |
2030/08/18 |
財団部隊が「シガスタン共和国軍」占領地域への大規模な反攻作戦を開始。 |
2030/09/20 |
「シガスタン共和国軍」がアティラウ州の全域を制圧したと宣言。 |
2030/09/27 |
財団の調査により、「シガスタン共和国軍」支配地域における人口の推定█%がSCP-2304-JP-Aに変化したと報告される。また、SCP-2304-JP-Aによるカザフ語を使用できない住民に対する弾圧及びロシア語系の書籍の焚書といった活動が確認される。 |
2030/10/31 |
財団部隊による反攻作戦が一時的に終了。この時点でマンギスタウ州とアティラウ州以外の地域から「シガスタン共和国軍」は撤退し事実上平定される。これ以降、戦況が膠着状態となる。 |
2030/12/16 |
「シガスタン共和国軍」が新国家「シガスタン共和国」の建国を宣言。 |
補遺3
2030/12/16、カザフスタン共和国西部の一部地域を占領した「シガスタン共和国軍」は新国家「シガスタン共和国」の建国を宣言しました。「シガスタン共和国」は宣言後、世界中の国々や超常組織に独立の承認を呼びかけたことが確認されています。監督評議会は「シガスタン共和国」の独立を承認しない方針及び特別収容プロトコルの再改定を全会一致で決議し、「シガスタン共和国」をSCP-2304-JP-Bとして再定義しました。以後、SCP-2304-JP-Bは通常のオブジェクトと同様に扱われます。更に、財団は事態を打開するため、世界オカルト連合との間に新たな共同特殊部隊"生来の決意"を設置することで合意しました。以後、SCP-2304-JPに関連する財団の権限及び保有戦力は"生来の決意"に移行されることとなります。
補遺4
2031/██/██、SCP-2304-JP-Bの各地で大規模なヒューム値の変動が確認されました。事態の発生後、SCP-2304-JP-B内部の探査が極秘裏に実施され、SCP-2304-JP-Bの各地において次元異常と推測されるポータルが発生していたことが判明しました。発生したポータル及びその周辺からは高濃度のヒューム値が観測されている他、内部から[2304-JP専用クリアランスを提示して下さい]が継続的に発生していることが確認されています。そのため、SCP-2304-JP-B内部の住民やインフラ設備に重篤な被害を及ぼしていますが、戦闘により詳細な調査が実施できないため、実態の全容は不明です。
観測された[2304-JP専用クリアランスを提示して下さい]の内容通りに事態が進行した場合、広範囲な地域もしくは全世界に及ぶ現実改変が発生し、CK-クラス"再構築"シナリオを引き起こす恐れが指摘されています。複数のSCP-2304-JP-Aを拘束して実施された尋問では、彼らが事態に対して極めて無防備だったことを証明しており、SCP-2304-JP-Aが事態に無関係であることを示唆しています。"生来の決意"はこの事態に対する新たな方針を近日中に決定する予定です。