SCP-2310-JP
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アイテム番号: SCP-2310-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-2310-JPは低脅威度物品保管庫にて収容されています。また、オブジェクトに触れることは実験を除き禁止されています。

説明: SCP-2310-JPは高さ100、幅50、奥行50(単位 cm)の安楽椅子を模したヤマザクラ製の芸術作品です。右前部の脚が外れており、安楽椅子本体をSCP-2310-JP-A、外れた脚をSCP-2310-JP-Bと呼称します。

SCP-2310-JPには以下の2つの異常性が発見されています。

・SCP-2310-JPをどう組み立てても、「SCP-2310-JPが完成した」と認識できない。(これを第一異常性と呼称します。)
・SCP-2310-JPを組み立てた人間の成長速度を速める。(これを第二異常性と呼称します。)

補遺: SCP-2310-JPは20██/██/██に██県██市にて行われた美術品競売会にて発見されました。この競売会では出品作品の展示が事前に行われており、その中でSCP-2310-JPも展示されていました。競売会では客にSCP-2310-JPを組み立てることが許可されましたが、SCP-2310-JPがどう組みたてても完成しないと美術関係者の中で話題となり、そこに異常性を疑った財団職員がSCP-2310-JPを落札、回収しました。また、以下はSCP-2310-JPの作者及び作品の紹介として掲示された文章です。

 この作品は██県██市在住の立体芸術家滝 三春たき みはる氏により作られたものです。滝氏は芸術家尾谷 墨おたに ぼく氏に芸術を師事し、芸術家としての道を歩み始めました。滝氏は尾谷氏の作風と同様に何か、死や老いを想起させる作品が多く創作され、代表作の██は、逃れられない老いとその先の美との狭間を表現したものとなっています。
 今回の作品『無完成』では、作者から実際に作品を手に取り、組み立てることが許可されています。しかし、完成することはありません。皆様もぜひ、体験してみてはいかがでしょうか。

落札後、競売会主催者によるSCP-2310-JPの作者とされる滝氏への公開インタビューが行われました。以下がその録音内容です。

<録音開始>

競売会主催者: さて、滝 三春さん、落札、おめでとうございます。今競売会最高額での落札ですが、今のお気持ちはいかがでしょうか。

滝氏: ええ、大変嬉しい気持ちでいっぱいです。自信作ではあったのですが、これほどまでとは思いませんでした。

競売会主催者: 今回の作品、「無完成」ですが、ずばり、この作品に込められたテーマとはなんでしょうか。

滝氏: そうですね。我々、芸術家は作品を完成させるのが仕事ですよね。つまり人間が作品を完成させるわけですね。でも僕はですね、作品が人間を完成させる作品というものを作りたくてこの作品を作った次第です。

競売会主催者: ははぁ、なるほど。現在の固定概念を崩そうというわけですね。

滝氏: はい。

競売会主催者: 具体的に人間を完成させるというのはどういうことか聞いてもよろしいでしょうか?

滝氏: いや、みなまで語るとつまらないので、その解釈についてはあの椅子を組み立てた人がお考えになるべきだと思います。

競売会主催者: わかりました。では、続いての質問ですが、これが1番みなさん気になっていることですが、作品が完成しないカラクリとは一体どうなっているのでしょうか? 私も組み立てをさせて頂いたのですが、完成しなかったんです。

滝氏: これも秘密ですね。やっぱり自分で見つけた表現手法なので、秘密にしたいですね。

競売会主催者: あらら、残念です。

滝氏: 申し訳ないです。

競売会主催者: いえいえ、構いませんよ。独特な表現手法ですから秘密になさるのは理解できます。 さて、今回の作品のモチーフは安楽椅子ですが、これは、何かモデルがあったのでしょうか?

滝氏: はい。私の祖父の椅子をモデルにしています。私事にはなりますが、小さい頃に祖父が老衰で死にまして、そのときまで座っていたあの椅子をモデルにしています。

競売会主催者: 何か、おじいさまとは思い出があったのでしょうか?

滝氏: いえ、本当に小さい頃ですから、あんまり記憶はないですね。ただ、祖父の死に顔がずっと記憶に残ってて、あんまりこういうことを言っていいのかわかりませんが、綺麗だったんです。人間の完成形というような。

競売会主催者: は、はぁ。そこで死に対する美しさに気づいた、と?

滝氏: そうです。芸術家になってからこの感情をどう表現するか、と困っていたときに尾谷先生の作品に出会って、立体芸術の道に進んだわけです。

競売会主催者: なるほど。滝さんの芸術の生い立ちも知れて、なかなか貴重なインタビューになったと思います。では、そろそろ時間ですので、滝さん、今回はありがとうございました。また、素晴らしい作品をお待ちしています。

滝氏: いえいえ、こちらこそ、ありがとうございました。

競売会主催者: では、最後に滝さん、一言お願いします。

滝氏: 今回の作品名は『無完成』ですから、どうやっても完成することはありません。完成させようとするのではなく、完成しないことを楽しんで頂き、ぜひ、そのもどかしさの先の芸術というものを感じていただけたらなと、落札した方には思います。あくまでもこの作品は人間を完成させるものですから。

競売会主催者: はい、ありがとうございました。『無完成』作者、滝 三春さんでした。

<録音終了>

現在、滝氏の行方はわかっていません。

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