夢界webクローラを用いて収集された、"イノベーション・ファクトリー"本社の画像。
アイテム番号: SCP-2311-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: その性質上、SCP-2311-JPの完全な封じ込めは不可能です。発見されたSCP-2311-JP-Aは発見順にナンバリングされ、財団の医療施設にて生命活動の維持が行われます。夢界に存在する"イノベーション・ファクトリー"についての情報は、機動部隊OP"ドリームチーム"により収集されます。
説明: SCP-2311-JPは、日本国内に在住する特定の人間(以下SCP-2311-JP-Aと呼称)に関連して発生する異常現象の総称です。SCP-2311-JP-Aに指定されている人物は2015/8/2時点で557名であり、明確な共通点は確認されていません。SCP-2311-JP-Aの増加は、現在も進行中です。
SCP-2311-JP-Aは20:00〜翌9:00までの間、強制的に睡眠状態に移行し、いかなる処置においても覚醒が不可能となります。また当事象は、週に2回程の頻度で時間が拡大します。
SCP-2311-JP-Aが月末日の睡眠から覚醒すると同時に、SCP-2311-JP-Aの銀行の個人口座に"イノベーション・ファクトリー"1名義の送金が行われます。現在、送金元の特定には成功していません。SCP-2311-JP-Aの個人口座を削除する試みは、不明なシステムエラーにより失敗します。送金される金額は一律17万円で固定されています。
以下は機動部隊OP"ドリームチーム"により夢界webクローラを用いて収集された、"イノベーション・ファクトリー"の概要です。
社名: イノベーション・ファクトリー株式会社
所属集団: オネイロイ・ウエスト
代表者: デレック=フーカー
資本金: 470億夢ドル2
従業員数: 約6700名(一部肉体者の雇用有)
事業内容: 大型特殊素材の製造
インシデント記録SCP-2311-JP-1: 2020/2/28の1:13〜1:24にかけて、強制睡眠事象の発生中であったにも関わらず、12名のSCP-2311-JP-Aが覚醒しました。さらにこれらのSCP-2311-JP-Aは以降、原因不明の睡眠障害の発症により一切の睡眠が不可能となり、全員が2週間以内に死亡しました。また特筆すべき点として、これらのSCP-2311-JP-Aは覚醒後、何かに呑み込まれるようなイメージと、それに伴う恐怖感を報告しました。
当インシデントを受けて機動部隊OP"ドリームチーム"による、夢界webクローラを用いた調査が実施されました。その結果、インシデント発生とほぼ同時刻に、"イノベーション・ファクトリー"の工場にて、大規模な事故が発生していた事が判明しました。以下は夢界メディアの報道の抜粋です。
イノベーション・ファクトリーで
ワームホール暴発背後には肉体者への過酷な労働体制か
2月28日の1時過ぎに、特殊素材の大手イノベーション・ファクトリーの第3工場において、素材加工用ワームホールの膨張事故が発生した。非肉体者・肉体者合わせて46名が消滅し、工場の損失額は20億夢ドル以上と推測されている。また当事故の責任を取り社長のデレック=フーカー氏が辞意を表明しており、後任には筆頭株主のダグ=リースマン氏が就任を表明している。
<中略>
今回の事故は、ワームホールの制御に当たっていた肉体者の覚醒が原因であり、イノベーション・ファクトリーは睡眠固定装置の故障が原因と説明している。しかし、十分な覚醒が取られていれば、固定装置が故障したとしても通常その様な事態は発生しないはずである。果たしてこの事故の真の原因は何か。事故後労基により行われた調査により、イノベーション・ファクトリーの驚くべき労働実体が明らかになった。
最も特筆すべき点は、13時間の連続労働である。非肉体者にも大きな負担であるが、肉体者にとっては深刻な覚醒不足を招くのは必至である。固定装置が故障すれば、覚醒してしまう事は容易に想像できたはずだ。さらに、これだけの労働を強いておきながら、その給料は時給換算すると最低賃金の半分程度である。いくら利潤を得るためとはいえ、一線を超えているのは明らかだ。
今労基の支援を受けて、イノベーション・ファクトリーの社員らが抗議活動を行っている。マスメディアやインターネットでも活発に支援を求めており、世間もこれを支持する風潮が大きい。ブラック企業のイメージが色濃く付いてしまったイノベーション・ファクトリーにとって、労働体制の改善は喫緊の課題となっており、次期社長のダグ氏には期待の集まるところである。
以上の報道内容より、短期間の内にSCP-2311-JPに変化が発生する事が予測されています。
補遺1: 機動部隊OP"ドリームチーム"による夢界webクローラを用いた調査において、2020/4/1より"イノベーション・ファクトリー"が大規模な労働改革を実施する事が明らかになりました。これにより、SCP-2311-JPにも何らかの変化が発生する事が予想されます。以下は"イノベーション・ファクトリー"の新社長と推測されるダグ=リースマンに対して、夢界メディアにより行われたインタビュー記事の抜粋です。
特集:生まれ変わる
イノベーション・ファクトリーダグ=リースマン新社長にインタビュー
今年2月末に起きたワームホール暴発事故をきっかけに、違法な労働実態が明るみに出たイノベーション・ファクトリー。あれから約1か月、社では大規模な労働改革が実施され、4/1より新たな労働体制へと移行する。今回我々は、労働改革の指揮を執った新社長のダグ=リースマン氏にインタビューを実施した。
インタビュアー: それではダグ社長、本日はよろしくお願いします。
ダグ社長: こちらこそ、よろしくお願いします。
インタビュアー: この度イノベーション・ファクトリーの新社長に就任されたとの事ですので、初めに今後の抱負を語って欲しいです。
ダグ社長: 先の事故に伴う一連の騒動で、今世間における我が社のイメージというのはかなり悪いものとなっています。ですのでこれを払拭するためにも、まずは一から健全な会社を再構築していき、行動で皆様に変化を示していきたいと考えています。
インタビュアー: ありがとうございます。次に、事故の後イノベーション・ファクトリーで実施された労働改革についてお話を聞かせて下さい。
ダグ社長: 報道でご存知の事とは思いますが、これまで我が社の従業員達は、前社長の元で非常に厳しい労働を強いられてきました。2月の事故の原因も無論そこにある訳です。私自身労働の実態を知った際には愕然としましたし、残念な思いで一杯でした。ですので、今回の労働改革からクリーンな会社を再構築し、この会社で働いて良かった!と思わせられるような労働環境を作っていきたいと考えています。具体的に今回変更を行ったものとしては、労働時間の削減、賃金の増加が主になります。また肉体者に対しては、確実に十分な覚醒を取るために、労働時間以外の覚醒補助を実施しました。
インタビュアー: 肉体者の話が出ましたね。以前の事故の原因は肉体者の覚醒不足でしたが、ダグ社長としては肉体者の従業員に対してどの様な考えを持っているのですか。
ダグ社長: 私個人としては、彼らには強いリスペクトを抱いています。彼らの給与は彼ら自身でなく、彼らの素体に送られています。彼らは素体についての認識すらありませんが、素体のおかげで自分達が存在できている事への感謝から働いているのです。この献身の精神は、尊敬に値するものだと思います。ですから再びあのような事故が起きる事があってはいけませんし、そのために我々経営陣は彼らとその素体の幸福を可能な限りサポートしていきたいと考えています。今回の改革が、それを実現できれば幸いです。
<以下、重要性が低いため省略>
インシデント記録SCP-2311-JP-2: 2020/4/1より、SCP-2311-JPに以下の変化が確認されました。
・ 強制睡眠事象が月曜日・火曜日・木曜日・金曜日の12:00〜翌6:00以外で発生が確認されなくなる。
・ 強制睡眠事象以外で、SCP-2311-JP-1が睡眠を行う事が不可能となる。
・ SCP-2311-JP-1の個人口座への"イノベーション・ファクトリー"名義からの送金額が一律22万円となる。
これらの変化に伴い、現在SCP-2311-JP-1群は睡眠不足による極度の衰弱状態に陥っています。一時的に財団の医療施設において生命活動の維持が行われていますが、SCP-2311-JPに変化が発生しなかった場合、SCP-2311-JP-A群は1年程度で死亡すると推測されています。