SCP-2313-JP
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アイテム番号: SCP-2313-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-2313-JPの収容は困難であるため、一般社会におけるSCP-2313-JP-Aの行動監視と、新規のSCP-2313-JP-Aの発見に重点が向けられます。

説明: SCP-2313-JPは知性が認められる実体です。SCP-2313-JPは不明な手段による実空間上への出現と消失・任意の物体の透過による移動を行うため、物理的な収容は実現できません。また、SCP-2313-JP-Aを例外とするいかなる生物もSCP-2313-JP実体を直接的・間接的問わず感知できず、概念・現象としてのみ認識可能です。

スコットランド出身の探検家であるトールモー・ファーキンス氏は、現時点で確認されている唯一のSCP-2313-JP-A実例です。

SCP-2313-JPは2019/11/25にファーキンス氏が位置していた森林地帯で発生した非異常性の山火事にて、これに関連して発生した異常性と本人からの証言によってその存在が確認されました。以下は当時のインタビュー記録です。

インタビュー記録 2313-JP

2019/11/25


インタビュアー: フリーマン博士

対象: トールモー・ファーキンス氏(以下、ファーキンス氏と表記)


[記録開始]


フリーマン博士: それではインタビューを開始します。

ファーキンス氏: よし。しかし先に一つだけ要求がある。今回の件、もとい真相についての報道は抑止してほしいんだ。

フリーマン博士: 我々は守秘義務を守ります。事実の齟齬は補正され、全ての人物に対して山火事は消防機関によって鎮火されたと伝えられます。それ以上の情報は含まれません。

ファーキンス氏: ああ、そうしてくれれば助かるよ。それじゃあ話そう、一体何があったのかを。

フリーマン博士: よろしくお願いします。

ファーキンス氏: じゃあ、そうだな。まずは私のことを話そう。私は一般的にソロの探検家として認知されている。実際どこへ挑戦するときも単独活動にこだわり、写真や動画によって活動の証明をするスタイルをとってきた。そうする理由を問われた時にはいつも「自然と、一対一でありたいから」と答えてきた。一部では危険であると批判されているがね。

ファーキンス氏: そして、だいたいの人には公言できないような趣味があるだろう。あー、包み隠さず言うと性的フェティシズムのことだ。オーケー?

フリーマン博士: これは私的な会話記録ではないので、ありのままを伝えていただいて大丈夫です。

ファーキンス氏: ああ、分かってるつもりではあるが。とどのつまり、私が冒険家をする動機の一つは性的フェティシズムの充足なんだ。「巨大嗜好」といえば伝わるだろうか、私にはそういうのがある。自然もその一つで、その巨大さに対する羨望。混ざりたい。ひとつになってみたいという願望がある。さっき言った「自然と、一対一でありたいから」には、他の人物を混ぜたくないという事情もあるからなんだ。大丈夫だろうか?

フリーマン博士: 問題ありません、続けてください。

ファーキンス氏: オーケー。では、そちらでナンバリングを付けられた私の守り神についても話していこうか。初めて彼女に会ったのは、2008年に冬山登頂に挑戦したときのことだった。そこで私は人生で初めて遭難した。装備や知識・経験は十分だったはずだが、あまりにも運に恵まれなかった。状況は私一人で対応できるものではなく、明らかな死が迫っていた。

[ファーキンス氏により提供された非公開の現地映像が再生され、事実であることが確かめられる。]

フリーマン博士: 確かに悪天候が確認できます。しかし、当時の情報によれば氏は一切の負傷なく、救助も用いずに無事に下山しています。これをもって、奇跡の冒険家と評価されたなど。

ファーキンス氏: そう。だが助からない状況だったのもこの映像の通り事実だ。ほら、ちょうど当時の私が遺言を呟きながら祈っているところだぞ。

フリーマン博士: そこでSCP-2313-JPは何をしたのでしょうか。

ファーキンス氏: ほどなくして私の元に現れた彼女は、天候が回復するまでの間ずっと私から離れずに体温の維持を献身的に行ってくれたんだ。恥ずかしい話、それ以降も探検中に大きい事故に遭うたび命を救われていてね。先日の山火事だってそうだ。彼女が居なかったら私はすでに何度も死んでいる。

フリーマン博士: なるほど。しかし、冒険家の死亡事例は世界中で毎年多くの事例が挙がっています。ここでSCP-2313-JPはどのような動機のもと、他の人物ではなくファーキンス氏を選んで救っているのでしょうか。もし何か思うところがあれば意見をお願いします。

ファーキンス氏: 私は単なる冒険家であるから例えば神学には明るくないけども、彼女はある種の信仰心の現れだと解釈している。まあ、そのあたりは情報提供した私の個人的なコレクションを見てもらえれば、はっきり分かることだと思うよ。

フリーマン博士: ありがとうございます、後ほど改めて確認させていただきます。

ファーキンス氏: うむ。あと少し補足させてもらうと、私は少なくとも彼女に対しての邪な気持ちや、また助けてくれるだろうというような慢心は持っていないつもりだ。会うために意図的に命を投げ出そうとしたこともない。そんなことをしたら、本来の生きる意味と違ってしまうからね。彼女に対して私ができることは「巨大」に感謝しながら人生を送ることだ。こんなところかな。


[記録終了]

以下はファーキンス氏が今までにSCP-2313-JPを出現させた事例の一覧です。内容には一部本人による主観的な説明が含まれることに留意してください。

事例1: 2008年12月30日

環境: 冬山

状況: 悪天候下における屋外での遭難で、低体温症による死亡の危険があった。ファーキンス氏は出現したSCP-2313-JPに内包されることで体温の低下を回避した。天候の回復とともにSCP-2313-JPは消失した。

事例2: 2010年6月18日

環境: 渓谷地帯

状況: クライミング中にフリーフォールが発生。落下距離は20m以上と見られ、転落死を免れない状況だった。ファーキンス氏は落下地点に出現していたSCP-2313-JP上に落下したことにより負傷を免れ、生存した。

事例3: 2013年6月20日~2013年6月24日

環境: 砂漠

状況: 移動車両の突発的故障。これと同時に発生した車両の炎上によってファーキンス氏は避難を優先した。車両は避難後まもなく爆発し、これにより積載していた物資は回収不能となった。ファーキンス氏は出現したSCP-2313-JPの指示に従ったことで、脱水症状を回避することに成功。無事に砂漠地帯からの脱出に成功した。

事例4: 2016年11月3日~2016年11月4日

環境: 海洋

状況: ヨットの破損による沈没、これに伴う溺死の危機。ファーキンス氏は出現したSCP-2313-JPをヨットの代用となる浮遊物とすることで、付近の陸地まで到達した。

事例5: 2018年4月22日

環境: 洞窟

状況: 洞窟探索中に発生した地震により、ファーキンス氏の周辺でごく小規模な落盤が発生した。落盤と同時にファーキンス氏の頭上に出現したSCP-2313-JPが緩衝物となったことで直撃が回避され、無事に洞窟内から帰還した。

事例6: 2019年11月25日

環境: 森林地帯

状況: 遠方で発生した山火事が風向きによる延焼によってファーキンス氏の居る位置まで迫った。同時刻、上空に出現したSCP-2313-JP群を由来とする多量の液体の散布によって山火事はまもなく鎮火した。

以下はSCP-2313-JPの性質を分析するために行われた実験です。

実験1

対象: ファーキンス氏

内容: 事前確認によって用意された、ファーキンス氏が一切知識を持たない専門分野の設問に解答を行わせる実験。解答途中でファーキンス氏に正答を目的としたSCP-2313-JPによる支援を希望させる。

結果: 一枚の文書が実験室内に出現した。文書には今回の実験内容に対しての協力を拒絶する旨が記述されていた。該当文書の文体・文字の形状は10代から20代の女性のものに該当した。

実験2

対象: ファーキンス氏、D-170518

内容: D-170518に、防護服を着用したファーキンス氏に対する攻撃を行わせる。

結果: ファーキンス氏とD-170518の間に不可視の空間が発生し、攻撃が行えなかった。同時に実験の実行責任者であるフリーマン博士の身体に不明な圧力が発生し、同博士は押さえ込まれる形で行動不能となった。外部からの救助活動は効果が見込めず、同博士による実験終了の宣言までこれらの現象は継続した。以降に行われる予定だった実験は全て保留された。

実験2の結果により、ファーキンス氏へ意図的に行う何らかの攻撃的行為はSCP-2313-JPによる妨害を発生しうると判断されました。予定されていたファーキンス氏のサイトへの収容措置もまた、心理状態の悪化によりSCP-2313-JPの行為を発生させる可能性を否定できず、サイト・職員への被害が想定されることから収容措置は保留すべきとの判断がなされました。これにより、現時点での特別収容プロトコルは一般社会内にてファーキンス氏を監視するに留まっています。

今までに一般社会内で発生したファーキンス氏への不利益なイベントに対してSCP-2313-JPが出現した事例は確認できていません。これは過去の事例より鑑みて、死亡あるいはそれに相当する程度の不利益が発生した場合にのみ出現するためだと推測されています。

追記(2022/09/30): ファーキンス氏は自身の加齢を理由として、一般メディアに対して冒険家としての活動を終了する意思表明を行いました。また、財団が自宅に設置した隠しカメラのデータによっても本人の自慰行為の回数が大きく減少に転じていることが明らかになっており、ファーキンス氏はSCP-2313-JPを出現させるための前提条件のうち、特に重要であると見られている二項目をもはや満足しなくなったと判断されました。

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