アイテム番号: SCP-2331-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-2331-JPの全手順のデータはその手順の前半と後半に分割してそれぞれサイト-81██、サイト-81██の機密情報保存庫に保存されており、どちらのデータも閲覧は全職員に禁止されています。SCP-2331-JPを用いた実験にはクリアランスレベル4以上の職員3名の許可が必要であり、実験後は実験に参加した全職員に対しAクラス記憶処理が施され、SCP-2331-JPの手順に関する全情報が消去されます。
財団のウェブクローラが常時インターネット上を監視しており、SCP-2331-JPに関する情報が発見され次第その情報発信源の特定が試みられた後、情報は削除されます。また、非電子媒体のSCP-2331-JPに関する情報の存在が発覚した場合、機動部隊て-7("宦官")が回収に向かいます。なお、現在に至るまでSCP-2331-JPの情報は山越氏の自宅以外からは発見されていません。
SCP-2331-JP-A個体の可能性が疑われる人物は遺伝子検査が行われ、SCP-2331-JP-Aであると断定された場合は低脅威度人型アノマリー収容室に収容されます。
説明: SCP-2331-JPは手順通りに執り行うことによって異常性を獲得する16の手順からなる儀式的行為です。SCP-2331-JPは中国華南呪術とエジプト原始錬金術に源流をもつと推測される箇所も存在しますが、その手順の大半が過去に発見された全てと一致しない独自の手法であることが判明しています。
SCP-2331-JPによって異常性を獲得することが出来る人物は恋愛行為に対しある一定以上積極的である人物に限られると推測されています。SCP-2331-JPを行い異常性を獲得した人物は即座にSCP-2331-JP-Aに変化します。
SCP-2331-JP-Aは遺伝子的に人間と完全に異なる人型実体です。SCP-2331-JP-Aは、その外見及び生態上は概ね人間と一致しますが、人間に比べ僅かに高い物理的耐性と任意の長さに延長された寿命を持ちます。この延命のプロセスは細胞分裂の速度の極端な鈍化という形をとります。延命の調節はSCP-2331-JPの手順の一部を改変することで容易に可能で、実験の結果寿命を最長で[編集済み]年まで延ばすことが可能であると判明しています。
補遺: 発見経緯
SCP-2331-JPは2048/4/1に岐阜県大垣市内の賃貸アパートの一室から発見されました。
その部屋は岐阜県可児市に本籍を持つ山越やまごえ 陸花りっか1氏が前日の2048/3/31まで契約していましたが、契約期間満了に伴い該当の部屋を引き払っています。室内の清掃に向かった業者が室内に散乱したままであった呪術的物品を不審に思い警察に通報したため案件を委譲された財団が調査に赴いたところ、数種類の異常物品とともにSCP-2331-JPの手順について記された文書を発見し、検証実験を経てSCP-2331-JPは異常存在として認定されました。山越氏は現在消息を絶っており、財団がその行方を捜索中です。
以下は、同室内から発見された山越氏のものとみられる日記の一部抜粋です。
2044/5/8
今、思い返せば。
私の人生において、貴女と出会ってしまった事が最大の過ちで、最高の転機だったと思う。
11歳の夏、初めて出会った貴女は余りにも儚げで、童心の少女に過ぎなかった私には形容できないような何かを心の真ん中に植え付けた。時と共に少しづつ霞んでいく幼少の記憶の中でもあの光景だけは今でも焼き付いている。
あの時貴女に声を掛けなければ、きっとこんな風に悩み悶える日々を送らずに済んだだろう。でも、あの日があった事を私は心から感謝している。
だって、貴女と一緒に研究をする日々はこんなにも楽しくて。もし、願いが叶わなくても私はこの日々を――いいえ、絶対に叶えて見せる。
2044/9/2
日記をつけるようになってから、昔を思い返すことが増えてきた。
一つ一つの記憶が朧気でも、それらを繋ぎ合わせると不思議と情景が浮かび上がってくる。
これも、貴女の魔法かしら?
…なんてね。貴女はもっと不器用で素直だもの、きっとこんな小洒落た事はできないわ?
そんなところが堪らなく愛おしいのだけどね。
2045/8/8
貴女と出会って、今日でちょうど10年になる。
研究は相変わらず鳴かず飛ばずで、私の背丈はついに貴女に追いついてしまった。
今この瞬間に研究が実を成して、貴女とお揃いの背丈で過ごして行けたならどれ程良かっただろうか。
…ごめんなさい、貴女も手伝ってくれているのに、こんな弱音を吐いてちゃダメよね。
大丈夫、絶対に完成させてみせる。ゆっくりだけど、確実に前に前に歩んでいるのだもの。
それに、貴女が居る。それだけで百人力、大げさじゃないよ。
2046/1/19
貴女への想いが恋慕だと気付いたのは何時からだっただろうか。その頃になって、貴女もまた私を意識するようになったのを覚えている。
思い切って募りに募った想いをぶちまけた私に対し、"私は魔女だから。"そう小さく呟いた顔は初めて出会ったあの時の表情によく似ていた。
それから、私は何と返したんだっけ。気付いたら私は無我夢中でありったけの言葉を貴女に投げつけて、ハッとした頃には呆気にとられた貴女の顔と真っ赤になった私の顔が目と鼻の先で。一瞬静かになってから、二人一緒に笑い出したっけ。ああ、懐かしいな。
…私は、本当に成し遂げられるのかな。
2046/11/23
半年も家を空けてごめん、もう二度としないと誓う。
だけど、それ相応に成果はあったんだよ?
貴女の言う通り、この世界には不思議な力を持つ人が沢山居た。
私は人から人へ、紹介してもらいながら色んな人に力を借りに行った。
みんながみんな協力してくれるわけじゃなかったし、時には私を襲ってくる人も居た。
これは貴女には絶対に秘密にしておかなきゃね。
でも、そうやって頑張ったおかげで色んな人と人脈を作れた。力も分けてもらえた。
そして何より、自信が持てた。私はきっとできる子なんだ。
…って、そんなことは貴女がずぅっと前から言ってくれてたのにね。
私、頑張るよ。
2048/3/21
遂に秘術の理論が完成した。後は実行するだけ。
でも、今になってとっても怖くなってきた。失敗したらどうしよう、って。
でもね、貴女はいつもの素直な笑顔で"おめでとう"って言ってくれた。
だから勇気を持てる。貴女には支えられてばっかりだ。
大丈夫、大丈夫。
私、できる子だもんね。
2048/3/29
秘術は成功した。ついに私はあなたと同じ時を生きられる。
私の方が貴女よりすっかり大人になってしまったけど、それでも貴女は私の事を愛してると言ってくれた。
ありがとう、私も愛してる。今まで我慢してきたセリフだもん、何度言っても言い足りない。
愛してる。
愛してる。
愛してる。
…いや、ちゃんと面と向かって言うべきだよね。
だから…そうだね、後は…
貴女が、この世界に来るだけだね。
部屋に残されていた同氏の所有物とみられるデスクトップパソコンには、2033年よりSteamにて配信されているシュミレーションゲーム"AIカノジョ - Re Destiny"がインストールされており2、日夜を問わずほぼ常時起動されていたことが判明しています。
追記: 同氏の部屋の追加捜索の結果、山越氏が2046年からPAMWAC3をはじめとする複数の要注意団体と関与していた事を裏付ける情報が複数発見されました。以上を受けて現在、山越氏の要注意人物指定を検討中です。