財団記録・情報保安管理局より通達
収容担当チームにより、当報告書の大幅な改定が予定されています。
情報の更新に注意してください。
─ RAISA管理官、マリア・ジョーンズ
アイテム番号: SCP-2332-JP | LEVEL 2/2332-JP |
オブジェクトクラス: Nagi-doctrina1 | RESTRICTED |
特別収容プロトコル: SCP-2332-JPについて潜在的に言及しているインターネット上の会話や発言は財団ウェブクローラ ("Farewell") によって常に捜索され、発見次第記録および削除が実行されます。該当地域には複数の監視カメラを設置し、出現時間帯のSCP-2332-JPの行動を記録します。該当地域には3名のフィールドエージェントを配備し、出現時間帯に巡回を行い一般人の帰宅を促します。
SCP-2332-JPの収容活動は主にゴーストリータイム・プロトコルに則ります。目撃者らには必要に応じ記憶処理やカバーストーリー流布等の情報統制を行い、SCP-2332-JPに関する情報の拡散を防止します。ゴーストリータイム・プロトコルの概要は補遺2332-JP.4を参照してください。
SCP-2332-JP実例の死体は防腐処理を施した上でサイト-81-101で保管されています。SCP-2332-JPの死体を利用した実験や研究はサイト管理官の承認を得た上で行われなければなりません。
説明: SCP-2332-JPは午後11時頃からおおよそ夜明けまでの間に日本国北海道[編集済]の住宅街 (以下"該当地域") に出現するヒト型実体です。体長約3.2 m、体重約70 kgであり男性的な特徴が見られますが、体毛および生殖器は確認できません。皮膚はカーボンナノチューブに類似する未発見の有機色素により黒色であり、可視光の約98%を吸収しています。身体構造的特徴に通常のヒトと大きな違いが見られない一方、頭部および眼球の大きさが過大である点は特筆すべきです; 眼球は扁平であるため球形であるときに予想される脳容量の圧迫はなく、また眼孔に固定されているため眼球運動による視点の移動ができないと考えられています。
SCP-2332-JPの声を直接的に聴いた人物はナルコレプシー様の急速かつ激しい睡眠欲の増大と虚脱感を経験し、居場所に関わらずすぐさま入眠します2。この影響下にある人物は夜明けまで覚醒させることが不可能になります。カフェインなどの精神刺激薬を摂取することでこの睡眠欲にある程度対抗することが可能ですが、入眠を完全に防ぐ方法は発見されていません。なおSCP-2332-JPの発声は指向性であり正面にいる場合にのみ聴こえるため、SCP-2332-JPの視界に入っていない状態では声を聴くことはできません。またSCP-2332-JPの声はカメラなどの映像機器にも作用し、影響を受けた機器は電源が落ちるなどによって夜明けまで再起動させることができなくなります。映像記録の場合激しいグリッチが発生しますが、この影響により機器が故障した例は確認されていません。
SCP-2332-JPは該当地域にて「あさなしさま」や「あさなしさん」として知られる都市伝説の形態で認知されています。この都市伝説の発祥はインターネット掲示板上の書き込みに由来していることが判明しており、SCP-2332-JP目撃例の増加に伴い該当地域に広まったと考えられています。関連情報は補遺2332-JP.2を参照してください。
補遺2332-JP.1: 発見
SCP-2332-JPは2021年2月頃から[編集済]に在住する人物らのSNSを中心に局所的に言及され始めたことにより財団に認知されました。多くの投稿は該当地域の子供ら (概して高校生以下) が「深夜に巨大な目が窓から覗いてきた夢を見た」という内容で描写されており、これは被害者らが目撃直後にSCP-2332-JPによって入眠させられたために夢として解釈しているためと推測されています。特筆すべき点として、子供らによる目撃例が多数あることに対し成人による目撃例が極端に少ないことが挙げられます。
財団による該当地域の捜索の結果、幾つかの監視カメラからSCP-2332-JPの姿を撮影した映像が発見されました。これらの監視カメラの設置されていた地点から、SCP-2332-JPは毎夜類似するルートを徘徊していることが予想されました。SCP-2332-JPの徘徊ルートの特徴として、ルートに面する住宅に深夜まで起床している傾向のある子供らが多いことが挙げられます。このため、SCP-2332-JPは選択的にこのルートを徘徊しており、またSCP-2332-JPは子供らを自身の能力によって入眠させることを目的に行動していると考えられました。
その目撃例の多さと出現地点が住宅街であるという条件から記憶処理の必要回数が多くなることを懸念し、SCP-2332-JPを確保するまでの間は目撃者らへの記憶処理は最低限に抑え、外部への情報統制が主に徹底して行われました。また同時に、SCP-2332-JPについて「変装をした不審者」であるとした旨のカバーストーリーが該当地域に流布されました
補遺2332-JP.2: 関連文書
以下は「あさなしさま」の由来となったインターネット掲示板上の書き込みの転写です。当該書き込みは財団ウェブクローラ ("Farewell") により削除済です。書き込みを行った人物は[編集済]に在住する津田千秋 (17) であることが判明していますが、書き込みの翌日に行方不明になっており現在まで発見されていません。
関連文書2332-JP.2.1
███ 本当にあった怖い名無し 2021/02/20(土) 21:35:46.12 ID:█████████
数年前に亡くなった祖母が昔話してくれたのを思い出したので書き込む。
小さい頃、ねないこだれだ3だったり、そういう子供を寝かしつけるための話を聞かされたことは誰もあると思う。
俺も例に漏れず、夜八時には眠るようにしつけられていた子供だった。
ただ、そんな「子供を寝かしつけるための話」が特殊というか、友人に訊いたりネットで調べたりしても出てこない内容だった。
寝る子は育つが口癖の祖母は、よく俺に「あさなしさま」という怪物について語っていた。
確か「あさなし」だったと思うんだが「あしなし」だとか「あすなし」とかにも聴こえてた気がする。
なんせ祖母は訛りがなかなか凄かったから。
肝心の内容はこんな感じだった。
夜中まで起きている悪い子のところへは、夜闇にまぎれ「あさなしさま」がやってくる。
悪い子を遠くからも見つけられるようにするために、「あさなしさま」の目はとても大きい。
「あさなしさま」に見つかった子は無理矢理眠らされてしまう。
眠らされたあとはわからない。誘拐されることもあれば、食べられてしまうことすらある。
何もされないこともある。すべては「あさなしさま」の気分次第。
もし見つかってしまったら、せめて寝たふりだけでもしなきゃいけない。
そのまま眠ってしまえでもすれば、「あさなしさま」はどこかへ行ってしまうだろう。
…これではありがちな話だと思うだろう。
でも当時の俺は絵本のおばけにもびびる子供だったので、祖母が部屋に飾った「あさなしさま」の絵のせいで、寝たふりしてでも「あさなしさま」に見つかるまいとする子供になったんだ。
中学の時ですら、10時就寝は俺の中では超夜更かし判定だった。
あの絵は捨ててしまったのか今はないので、うろ覚えで俺が描いた奴を載せておく。
(画像共有サイトへのURL)
今思い返しても、ちょっと子供部屋に飾るにはやりすぎな気がする。
ところで、この話について類似する何かを知らないだろうか?
それを知りたくて書き込んだんだ。
たとえば「あさなしさま」に近い名前の昔話だとか、そういうのがあれば教えて欲しい。
そもそもどうして祖母がこんな話を知ってたのかもわからないし、語源や由来もわからない。
文献を探したりもしているが、何もわからないんだ。
図書館行って歩き疲れたせいか節々が痛くなってきたので、九時半だけどもう寝ようと思う。
あさなしさまに見つからんように、規則正しく。
文書中では津田氏の祖母が既に死亡していると言及されていますが、実際には存命であり「あさなしさま」に関する知識を有していないことが判明しています。この事実と津田氏の周辺人物へのインタビューから、当書き込みの内容は津田氏による創作であったと考えられています。なお当書き込みの内容とSCP-2332-JPの性質については完全には一致しておらず、複数の相違点が確認されていることに注意してください。
補遺2332-JP.3: 確保作戦
以下は2021/03/05に行われた第1次SCP-2332-JP確保作戦記録の転写です。確保作戦には機動部隊ん-9 ("空亡") の4名が当てられ、該当地域の巡回を名目に警察官の服装で作戦を実行しました。一般人が多い場所であるため、不自然と捉えられないようアルファは「阿部」、ブラボーは「馬場」、チャーリーは「千葉」、デルタは「土井」と名乗っている点に留意してください。
音声記録2332-JP.3.1
[記録開始]
周辺住民の生活パターンを考慮し、作戦は午前2時15分に実行された。このとき機動部隊隊員らはSCP-2332-JPを挟み撃ちにするよう、徘徊ルートの両端に配置されていた。アルファとブラボーは東側 (防風林脇) から、チャーリーとデルタは西側 (寺院横) からそれぞれペアを組みSCP-2332-JPの捜索を開始した。
チャーリー: 阿部さん、そちらに何かいましたか?
アルファ: いいやまだ何も。もう少しルートの中央まで行ってみよう。
チャーリー: 了解です。
アルファ: 目撃情報によれば3メートル程度の図体らしいから、遠目からでも見えるかもしれないが、気を抜かないよう。
しばらくの間両ペアは探索を続ける。チャーリー・デルタペアがSCP-2332-JPを発見し、通信を行う。
デルタ: 阿部さん。い、いました。2332です。確かに3メートルくらいの大きさはありそうです。時々立ち止まりながら周辺の住宅を覗いているみたいです。黒すぎて、空間に人型の穴が空いてるように見えます。
アルファ: 了解した。テーザー銃とエクテシア銃4の準備を忘れないでくれ5。
デルタ: もちろんです。もう少し近づけないか試してみます。
チャーリー・デルタペアがSCP-2332-JPへと接近する。
チャーリー: あっ、土井ちょっと待った。2332が立ち止まったぞ。
デルタ: 本当だ。何してるんでしょうか。
SCP-2332-JPは立ち止まった地点の横にある一般住宅の2階を覗き込むような動作をする。2階には電気が点いており、住民はまだ起床していると思われる。SCP-2332-JPが窓に近づき頭部を振動させた後、再び進行を開始した。
デルタ: 追いかけましょう。できるだけ背後に近づいて、まずはテーザーで仕留められないか試しましょう。
チャーリー・デルタペアが更にSCP-2332-JPへと接近する。
デルタ: 千葉さん、あいつまた止まりましたよ。
チャーリー: でも、周りの家、どこにも電気が──
SCP-2332-JPが突然振り向き、チャーリー・デルタペアの方向へと走り始める。
チャーリー: ま、まずい! 土井逃げろ──
SCP-2332-JPの声と思われる音声が大音量で録音される。すぐさま記録機器の電源が落ち、記録が終了される。音声はのちの解析で草川信作曲の童謡「揺籠のうた」のメロディに酷似する歌詞のない旋律を高速で歌唱しているものと判明した。
アルファ: くそ、なんて爆音……おい、千葉、土井! 大丈夫か!
チャーリー・デルタペアの通信機器は電源が落ちていないが、反応がなく、両者のいびきのみが聴こえる。
ブラボー: 阿部さん、これはやられましたね。
アルファ: ああ。回収班、千葉と土井が眠らされたみたいだ。一般人に見つかる前に回収を頼む。
司令部: 了解。引き続き気を付けてくれ。対象はチャーリー・デルタペアの記録から恐らく君たちのいる方向へと進行している。しばらく歩けば鉢合わせるかもしれない。
アルファ: わかった。探索を継続する。
アルファ・ブラボーペアが探索を再開する。しばらく経った後、ペアはルート中心部の公園に到達する。
ブラボー: (歩いてきた一般男性に対し) あ、夜遅くまでご苦労様です。……ええ、例の不審者のせいで巡回をですね。 (笑い声) それでは、気を付けてお帰りください。
司令部: アルファ、ブラボー。聴こえるか。
アルファ: (小声で) どうした。
司令部: 回収班から連絡があったのだが、チャーリーとデルタが見つからないらしい。何か気づいたことはないか?
アルファ: いや、未だにいびきは聴こえているし、途中で何か異音がしたりもなかったと思う。馬場は何かないか?
ブラボー: いえ、俺も何も。
司令部: 了解した。引き続き回収班はチャーリーとデルタの捜索を続ける。2人とも気を付けてくれ。
アルファ: そうだな、気を付けないとなこれは……馬場、あれが見えるか?
ブラボー: はい。まだ200メートルくらい離れていそうですが、見えます。何か両脇に抱えてませんか?
司令部: チャーリーとデルタかもしれない。確認を頼む。
アルファ: 了解。とりあえず接近しよう。
アルファ・ブラボーペアが前方にいるSCP-2332-JPへと接近を開始する。
ブラボー: しかし今夜はやたらと明かりのついた家が多いですね。2332も忙しいんだろうな。
アルファ: そうやってせこせこしている隙をついて確保できればいいわけだからな。
ブラボー: 冬だからカーテンが閉まっている家ばかりなのも助かりました。夏だったら記憶処理、どれだけしなきゃいけないのか……
アルファ: よし、そろそろ接近できる距離も限界だが……なあ、お前には両脇に抱えているのが何に見える?
ブラボー: ええと…… (不明瞭) でしょうか。
アルファ: 司令部、聴こえたか。奴が抱えてたのは千葉でも土井でもない。枕だ。
司令部: 枕?
ブラボー: あいつ、子供に害なす化物じゃなかったんですか。随分と眠らせることに熱心すぎるような……もしかしてあの枕の中に、千葉と土井が?
アルファ: 憶測が過ぎるんじゃないか。とにかく、二手に分かれて隠れて、あいつが近づいてきたらテーザーをかまそう。お前はあっちに隠れてエクテシアを頼む、俺は公園の方に隠れる。
ブラボー: 了解です。
アルファ・ブラボーペアが二手に分かれ、道路脇に除けられた雪の山に隠れる。SCP-2332-JPは緩慢な動作で徐々に公園の方へと接近してくる。
アルファ: 馬場、そろそろ出るぞ。
ブラボー: はい。
アルファの合図で両者が物陰から飛び出しSCP-2332-JPの方向へ各スタンガンを構える。しかしながらSCP-2332-JPの姿は見えず、先ほどまでSCP-2332-JPがいた地点には枕が1つ落ちているのみである。
ブラボー: あ? どこ行った?
アルファ: 馬場、後ろだ!
ブラボーの背後のブロック塀上部から白い枕が覗いており、道路の方向へと水平移動する。ブロック塀の背後から枕を持ったSCP-2332-JPが屈んだ姿で出現する。
ブラボー: 嘘だ、近すぎる──
ブラボーはすぐさま関連文書中の言及に従い「寝たふり」を試みるが、SCP-2332-JPがブラボーへ向けて発声し、直後ブラボーはその場に倒れ入眠する。アルファがSCP-2332-JPへとテーザー銃を打ち込むものの効果は見られず、SCP-2332-JPはそのままアルファへと声を出し、同様にアルファも入眠する。アルファの入眠するまでの時間が他の隊員の入眠時間より長いことは特筆すべきである。このときSCP-2332-JPが発声した音声はアメリカ合衆国のカントリーソング「デイビー・クロケットの歌」の旋律と特定された。4名のいびきのみが聴こえ、機動部隊隊員らとの意思疎通が不可能となったため、確保作戦はこの時点で失敗と判断され終了された。
[記録終了]
終了報告書: 回収班の捜索により、機動部隊隊員らは該当地域に存在する空き家の中で発見されました。隊員らは1枚の大きな厚手の毛布を共有するように掛けられており、枕によって頭部を支えられた状態で放置されていました。これらの毛布や枕は当家屋に以前より放置されていたものとのちに判明しています。回収班が眠らされた隊員らをすぐさま発見できなかった原因は判明していません。
特筆すべき点として、隊員らの服装は緩められており、睡眠に適した状態にされていました。覚醒後、隊員らは良質な睡眠を経験したと報告しています。この事実とSCP-2332-JPの異常性との関連性は不明です。なおアルファのみが睡眠の質の悪さを報告しており、これはアルファが作戦実行前にカフェインを摂取していたためと考えられています。
当作戦終了後、SCP-2332-JPは正式にEuclidに分類されました。
補遺2332-JP.4: ゴーストリータイム・プロトコル
補遺2332-JP.3の内容の他に3度実行された確保作戦6がすべて失敗したことからSCP-2332-JPの直接的な確保は困難であると判断されました。これを受け、収容担当チームはSCP-2332-JPの確保にリソースを割かず、一般人のSCP-2332-JPの目撃可能性を減らすことを目的としたプロトコル ("ゴーストリータイム・プロトコル") の策定を行いました。当プロトコルはSCP-2332-JPの目撃者のほぼ全員が17歳以下の未成年に限られること、および目撃者の特徴としてゲームや動画視聴のために深夜まで起きていることから、これらの対象者らをSCP-2332-JPの出現する23時までに就寝させることを目的としています。
当プロトコルでは対象者らのフラストレーションや不快感を増幅させることにより、主に"不貞寝"を誘引します。同時にカバーストーリーの流布や対象者ごとの内容の調整などを行い、当プロトコル実行痕跡の隠蔽を図ります。代表的な実施内容は以下の通りです:
- 瞬間的な停電によって対象者らの利用するデバイスの電源を落とし、ゲームプレイや動画の視聴を中断させる。
- 対象者らのプレイするゲームで熟練したプレイヤーと連続で対戦させ、繰り返し敗北させる。
- 対象者らの住宅のWi-Fi無線電波を妨害し、インターネットへの接続を妨害する。
- 早寝早起きを奨励する美容広告を該当地域のインターネット上で再生される動画に頻繁に挿入する7。
- 上記の事項がどれも効果を成さないかつSCP-2332-JPの目撃例の多発が危惧される日であれば、最終手段として該当地域一帯を停電させる。
また、SCP-2332-JPは起床している対象者の捜索を23時以降に点いている部屋の照明を基にして行っていると推測されており、このため23時以降に対象者らの部屋が消灯されていればSCP-2332-JPが対象者らの部屋へと接近することを防止できると考えられていました。この推測は正しかったと考えられ、対象者らの多くが23時までに入眠せずとも床に就くようになり、当プロトコル実行からSCP-2332-JPの目撃情報は大幅に減少しました。2か月の間当プロトコルは実行され、対象者らの睡眠サイクルが理想的なものになったことが確認された後、リソースを考慮し最低限の範囲でのみの実行へと制限されました。
補遺2332-JP.5: 確保と無力化
2021/05/16、SCP-2332-JPは夜明けの時点で消失せず、徘徊ルート中央の公園で倒れた状態で発見されました。SCP-2332-JPは外部からの刺激に対し一切の反応を見せず、問題なく収容サイト-81-101へと輸送されました。検査の結果SCP-2332-JPは死亡しており、死因が睡眠不足によるくも膜下出血に近い症状であることが判明しました。
解剖によりSCP-2332-JPの内部構造はヒトのものと大差がなく、身体には主に異常な改変によって"引き伸ばされたような"痕跡があることが確認されました。また遺伝子検査において、行方不明となっていた津田千秋氏の遺伝子情報が検出されました。このことから、津田氏が何らかの改変を受けたことによりSCP-2332-JPへと変化した可能性が浮上しました。しかしながらSCP-2332-JPが津田氏であるという確証はなく、現在も津田氏の捜索は継続しています。
上記の事実のため、財団は再度津田氏の親族へとインタビュー等の調査を行いました。その結果特筆すべき新情報として、行方不明になる2日前から津田氏が成長痛のような身体の痛みを訴えていたことが判明しました。収容担当チームは津田氏がSCP-2332-JPに変化する前からその兆候を示していたと推測しています。
SCP-2332-JPの死体の収容以降、該当地域内部でのSCP-2332-JPの目撃例はなくなりました。この事実から、SCP-2332-JPはNeutralizedへと再分類されました。SCP-2332-JPの死体は防腐処理を施され、サイト-81-101で保管されました。
補遺2332-JP.6: 報告内容の再検討
以下は該当地域に滞在しているフィールドエージェントによる2021/07/14の調査活動報告からの抜粋です。
関連文書2332-JP.6.1
[…]先日お伝えした通り、該当地域に住む子供たち、特に小学生から中学生までの子たちが揃って不可解な「成長痛」を訴えていることが判明しました。津田氏の情報から、この異常な痛みはSCP-2332-JPと何かしらの関わりがあると予想されます。このまま放置したときに何が起こるのかは未だ不明ですが、良くないことの前兆であるように思われました。
子供たちの共通点として、やはり23時までには必ず就寝しているという点が挙げられました。このため、COVID-19の流行のせいで反対意見があったものの、近隣住民の方々に協力を仰ぎ、十全な感染対策の元で24時過ぎまでの小規模な花火大会を実施しました。これによって子供たちは久しぶりの夜更かしをしたのです。
正直なところ私見も入り交じった突飛な発想であったために、功を成すか自信はありませんでした。しかし喜ばしいことに、その日以来子供たちは成長痛を訴えなくなりました。どれだけの期間規則正しく寝ていれば痛みが現れるのかも、この夜更かしによる影響がどれだけ持続するのかも今は不明ですが、ひとまずは安心できるのかもしれません。
これまで我々はSCP-2332-JPを人目から遠ざけるために尽力し、子供たちの夜更かしを妨害してきました。結果としてSCP-2332-JPの目撃例は減少し、隠匿は上手くいっているように見えていました。しかしそれが罠だった。怪談にあったように文字通り「寝る子は育つ」のであれば、我々のやるべきことはひとつです。
子供たちの安眠を妨害しなければなりません。[…]
上記の報告と確認された事実に基づき、SCP-2332-JPは現在Nagi-doctrinaに分類されています。収容担当チームはSCP-2332-JP分類の整合性について再考しており、本質的にSCP-2332-JPが該当地域で発生する現象系のアノマリーである可能性を視野に入れ、特別収容プロトコルおよびゴーストリータイム・プロトコルの再策定を行っています。倫理的範囲を逸脱せずSCP-2332-JPの異常性を特定する手段は模索中です。