SCP-2335-JP
評価: +10+x
blank.png
%E6%A2%85%E5%B9%B2%E3%81%97.jpg

SCP-2335-JP

アイテム番号: SCP-2335-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-2335-JPはサイト-81-109の標準物品収容ロッカー内に収容されます。SCP-2335-JPを許可なく持ち出すことは禁止されており、実験の実施には担当職員1名からの許可が必要になります。

説明: SCP-2335-JPは自我および知性を有するウメ(Prunus mume)の加工品1です。破壊耐性を有しているため、サンプル採取や組成解析の試みは全て失敗に終わっています。SCP-2335-JPの自我と知性は標準的な10代女性と同程度であることが判明しています。

SCP-2335-JPは発話能力を有しており、自らを「サチ」と呼称しています。発話の原理は不明であり、現在も調査が行われています。SCP-2335-JPは行方不明の日本人女性である秋葉紗知氏2の記憶を有しています。このことからSCP-2335-JPと秋葉紗知氏の間には何らかの関係性があるものとされています。SCP-2335-JPは発話能力を用いて自身の周囲に存在する人物への呼び掛けを行うなどといった挙動を取ります。また、こちらからSCP-2335-JPに対して呼びかけを行うことにより、会話を行うことも可能です。

補遺2335-JP.1: 発見

SCP-2335-JPは2015/03/15に東京都世田谷区にある一軒家にて発見されました。該当の一軒家には秋葉康太氏3、秋葉由奈氏4、秋葉紗知氏の3人が居住していたことが明らかになっています。SCP-2335-JPの第一発見者は秋葉由奈氏です。秋葉由奈氏による発見時にSCP-2335-JPが発話し、同氏がその旨をSNSに投稿したことを感知した財団によってSCP-2335-JPの存在と異常性が特定されました。その後、SCP-2335-JPはSafe級アノマリーとして収容されています。

同日、秋葉紗知氏の失踪が確認されています。財団はSCP-2335-JPとの関連性を疑ったうえで調査を行いましたが、有意義な結果は得られませんでした。警察機関と協力したうえで行方の追跡を行いましたが、そちらも失敗に終わっています。失踪から3日後、秋葉紗知氏は行方不明者として判定されました。秋葉康太氏と秋葉由奈氏には「秋葉紗知氏が失踪し、行方不明者となった」以上の情報を与えていません。今後の調査結果に応じて新規情報の開示、記憶処理の実施、カバーストーリーの流布などといった対応が取られる予定です。

以下は、SCP-2335-JP発見当時の様子について調べることを目的として行われたインタビュー記録の一部抜粋です。記録の全容については別途資料(資料コード2335-JP.1)を参照してください。

インタビュー記録 #001
Record 2015/03/17

対象: 秋葉由奈氏

インタビュアー: エージェント・小雪

付記: 当該インタビューは警察官による聞き込みの名目で行われました。

<記録開始>

エージェント・小雪: では秋葉さん。当時の状況について教えてもらえますか?

秋葉由奈氏: わかりました。当時、わたしは仕事から帰ってきたばかりで、自室に向かおうとしてました。自室はちょうど紗知の部屋の隣で、行くためには紗知の部屋の前を通らないといけなかったんです。

エージェント・小雪: 続けてください。

秋葉由奈氏: 廊下を歩いていたら、突然紗知の部屋から何かが倒れたような音が聞こえてきたんです。何があったんだろうと思ったので、ドア越しに紗知に呼びかけてみました。大丈夫、何かあったの?って。

エージェント・小雪: 反応はありましたか?

秋葉由奈氏: ありました。大丈夫だよ、気にしないでって紗知は言ってて。でも結構な音だったし、怪我してないか心配で。入るよって言って部屋のドアを開けたんです。そしたら……

エージェント・小雪: 部屋の中には梅干しが落ちていたと。

秋葉由奈氏: はい。紗知はどこにもいませんでした。さっきまで声が聞こえていたはずなのにどうして、と思いながら、梅干しを持ち上げました。すると梅干しから声が聞こえてきたんです。

エージェント・小雪: その声は誰のものでしたか?

秋葉由奈氏: 間違いなく、紗知のものでした。でも梅干しが喋るわけなんてないじゃないですか。食べ物が喋るなんて、常識的に考えてありえないですし。

エージェント・小雪: それでも確かに梅干しは喋っていたんですね。

秋葉由奈氏: はい。聞き間違いかと思いました。でも確かに声が聞こえてきてたんです。わたしはびっくりして梅干しを放り投げ、部屋から出ました。それから状況を整理するためにSNSに起きたことを書いたりして……って感じです。

エージェント・小雪: わかりました。ありがとうございます。

秋葉由奈氏: それにしても、紗知は大丈夫なんでしょうか?まだ見つかってないんですよね?

エージェント・小雪: そうですね。こちらも死力を尽くしてますが、依然として有意義な結果は得られていません。

秋葉由奈氏: そうですよね。本当、何もないといいんですが。

エージェント・小雪: そういえばなんですけど、紗知さんって何か好きなものだったり、行きつけの場所とかありませんか?もしかしたら、捜査の手がかりになるかもしれません。

秋葉由奈氏: 行きつけの場所はなかったはずです。基本的に家で過ごすタイプの子なので。でも、好きな物はあったと思います。

エージェント・小雪: それは何ですか?

秋葉由奈氏: イチゴです。昔からずっと好きで、よくイチゴみたいになりたいって言ってました。でも、こんなの手がかりにはならないですよね……。

エージェント・小雪: いえ。人となりを知れば、何か見えてくるはずです。ともかく協力ありがとうございます。

秋葉由奈氏: お役に立てたなら何よりです。絶対に見つけてくださいね。

<記録終了>

終了報告書: 当時の状況および聞き込みの内容から、秋葉紗知氏は自宅内で失踪したものと推測されています。仮説としては「秋葉紗知氏がSCP-2335-JPに変化した」というものが確認されていますが、同一性の検証には至っておらず、依然として仮説止まりのままです。




補遺2335-JP.2: インタビュー記録

以下はSCP-2335-JPの収容後に行われたインタビュー記録の一部抜粋です。当該インタビューはSCP-2335-JPの自我や知性の度合いを測る目的で実施されました。記録の全容は別途資料(資料コード2335-JP.2)を参照してください。

インタビュー記録 #002
Record 2015/03/21

対象: SCP-2335-JP

インタビュアー: 箕田博士

<記録開始>

箕田博士: まず、あなたは今の状況を理解していますか?

SCP-2335-JP: なんとなくですが、理解しているつもりです。わたしは今、どこか知らない場所に閉じ込められているんですよね?

箕田博士: 平たく言うとそうなりますね。何故そうなったか、心当たりはありますか?

SCP-2335-JP: わたしがイチゴになったからだと思います。

箕田博士: イチゴですか?

SCP-2335-JP: はい。わたし、ずっとイチゴになりたかったんです。

箕田博士: 詳しく聞かせてください。

SCP-2335-JP: イチゴって可愛いじゃないですか。小さくて、赤くて、甘酸っぱくて。それでいて素直で、まるで健気な女の子みたいだと思ったんです。

箕田博士: 可愛いのは分かりますが、なりたいと思うほどなんですか?

SCP-2335-JP: はい。わたしはいつまでも、どんな時であっても可愛くありたいんです。でも人間のままだと醜い面が出てきちゃう。イチゴになればいつまでも可愛くいられると思ったんです。

箕田博士: なるほど。ですが、イチゴである必要はあったのですか?

SCP-2335-JP: どういうことですか?

箕田博士: モモやサクランボなど、一般に「可愛らしい」って形容される果物なら他にもありますし、イチゴでなければならない理由が見当たらないなと。

SCP-2335-JP: モモやサクランボはわざとらしいじゃないですか。見てくれは確かに可愛いけど、中身が全く可愛くないんですよ。本当に可愛くなるためには見た目だけじゃなくて、中身も素敵じゃないと駄目なんですよ。

箕田博士: 概ねわかりました。では、どのようにしてイチゴになったのですか?

SCP-2335-JP: お星様に願ったんです。

箕田博士: 星にですか?

SCP-2335-JP: はい。流れ星が流れるまでに3回願い事を念じたら願い事が叶うって言うじゃないですか。あれです。

箕田博士: なんて願ったんですか?

SCP-2335-JP: 赤くて小さくて酸っぱくて、それでいて可愛いあの果物みたいになりたいって願いました。それがどうかしたんですか?

箕田博士: ……わかりました。ありがとうございます。

<記録終了>

終了報告書: 当該インタビューにより、SCP-2335-JPが標準的なヒト(Homo sapiens)と同程度の自我と知性を有していることが明らかになりました。また、SCP-2335-JPの起源について未知の異常存在/事象が関連している可能性が示唆されました。この異常存在/事象についての調査が行われています。




補遺2335-JP.3: インシデント記録

2015/05/08、SCP-2335-JPの定期観察の際、突如としてSCP-2335-JPが腐敗を開始しました。現在もSCP-2335-JPは腐敗中であり、腐敗は通常の3.5倍の速度で進んでいます。当事案の原因について調べるため、収容担当チームはSCP-2335-JPに対するインタビューを実施しました。

以下はインタビュー記録の一部抜粋です。記録の全容は別途資料(資料コード2335-JP.3)を参照してください。

インタビュー記録 #003
Record 2015/05/19

対象: SCP-2335-JP

インタビュアー: 箕田博士

<記録開始>

箕田博士: 何があったのか教えてください。

SCP-2335-JP: 自分の姿が見えたんです。わたしが閉じ込められてるところの金具に光が反射して、自分の姿が映ったんです。でも、映ってたのはイチゴじゃなくて……

箕田博士: 梅干しが映っていたと。

SCP-2335-JP: そうなんです。皺だらけで可愛くもない、あの食べ物が映っていたんです。もう嫌じゃないですか。せっかくイチゴになれたと思ったのに、実際には梅干しだったなんて。本当に嫌になります。

箕田博士: ですが、何故突然腐り出したのですか?

SCP-2335-JP: 絶望したんですよ。わたしはちっとも可愛くないんです。こんな姿でいたくないんです。思い上がっていた自分が馬鹿みたいで、愚かで、醜くて。ならもういっそ腐って捨てられた方がマシじゃないですか。

箕田博士: なるほど。

SCP-2335-JP: お願いです。これ以上醜い姿でいたくないんです。なのでどうか、腐り切る前に捨てて貰えませんか。

箕田博士: 申し訳ありませんが、それはできないものと思います。

SCP-2335-JP: なんでですか。まさか、わたしに一生醜いままでいろって言うんですか。

箕田博士: わたしたちの理念上、あなたを捨てることはできません。必要であればカウンセラーを用意するなりはできるので、どうか──

SCP-2335-JP: そうですか。わかりましたよ。醜いままでいればいいんでしょう。

<記録終了>

終了報告書: 当インタビューを受け、SCP-2335-JPに対するカウンセリングが複数回実施されました。しかしながら、SCP-2335-JPの精神面に変化は見られず、依然として悲観的な発言を繰り返しています。現在、カウンセリング以外の対応について議論と協議が行われています。

上記インタビューから10日が経過した2015/05/29、SCP-2335-JPが完全に腐敗しました。しかしながら自我や知性、発話能力を依然として有していたため収容状態は継続されます。SCP-2335-JPは「醜い自分を見ないで欲しい」などの発言を繰り返し行っており、精神状態は悪化傾向にあるものとされています。

特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。