ファウンデーション・アーカイブより通達
当該ファイルはプロトコル・ライトニングロッドの関連文書であり、レベル4/2337-JP機密に分類されています。許可なきアクセスは禁止されています。
— FA管理官 オン・ザ・ガムボール
オブジェクトクラス: Thaumiel
特別収容プロトコル: SCP-2337-JP-1はサイト-990の標準人型実体収容ユニットに収容されています。SCP-2337-JP-1から半径20 mの範囲(影響範囲)への許可のない進入は認められず、SCP-2337-JP-1にはユニット内部の小型エレベーターによって食事や整腸剤をはじめとする必要物資が与えられます。朝食のメニューには必ずスティルトン1が入れられます。影響範囲に進入した職員には除染処置が義務付けられます。その他の収容手順はヒトの標準収容手順に従います。
SCP-2337-JP-1の夢界には、監視の為に機動部隊プサイ-29の隊員が10名派遣されます。3日に1度Dクラス職員が影響範囲に進入し、当該職員を介して隊員の交代が行われます。夢界に待機する隊員は、侵入してきたオネイロス型幽体のうち侵食性のあるものや攻撃的でないものを確保し、それ以外の攻撃的な個体をSCP-2337-JP-2へと誘導します。SCP-2337-JP-2への接近は、その危険性から認められません。
説明: SCP-2337-JPはSCP-2337-JP-1及びSCP-2337-JP-2の総称です。
SCP-2337-JP-1は2020/09/22現在、23歳のコーカソイド男性であるゲイル・マクラーレンです。スティルトンを好んで摂食し、慢性的な下痢症状が見られます。
SCP-2337-JP-2はSCP-2337-JP-1のオネイロイであり、ブラックホールのような形態を取るクラスⅤオネイロス型幽体2です。SCP-2337-JP-1の夢界は通常のヒトのものよりも広大であり、内部には総数不明のオネイロス型幽体が存在します。これら実体は主にSCP-2337-JP-1がスティルトンを摂食した日に活性化し、他の夢界実体への攻撃を主に行います。また、一部のオネイロス型幽体はSCP-2337-JP-2への攻撃を行います。
補遺1: 2020/03/13、ファウンデーション・コレクティブによって開発された、民間人の夢界を走査する夢界実体のドローンが1体喪失していることが確認されました。機動部隊プサイ-6所属のエージェントが当該ドローンの派遣されていた地域を調査したところ、異常な数のオネイロス型幽体が存在する夢界が発見されました。当該エージェントは攻撃を受けながらも帰還し、この夢界についてベニントン博士に報告しました。財団はこの夢界のホストであるSCP-2337-JP-1を、カバーストーリー「胃腸の不調による入院」を流布した上で確保・収容しました。この時、オネイロス型幽体が夢界に侵入した職員にはファウンデーション・コレクティブによる除染処置が実施されました。
音声ログ
対話者:
- SCP-2337-JP-1
- ミカイ・ベニントン博士(SCP-2337-JP担当博士、ファウンデーション・コレクティブ所属)
前記: 収容直後、SCP-2337-JP-1はベニントン博士によってインタビュー室に案内されました。その後、ベニントン博士はSCP-2337-JP-1に対するインタビューを開始しました。
<記録開始>
ベニントン博士: それで、下痢の症状はいつから出始めましたか?
SCP-2337-JP-1: ここ2、3年ぐらい前からだったかと思います。ここ数ヶ月は特に、ずっと下痢続きです。
ベニントン博士: なるほど。何か、思い当たる節はありますか?
SCP-2337-JP-1: ええと、スティルトンですかね。
ベニントン博士: スティルトン?
SCP-2337-JP-1: はい。スティルトンを食べた日は、必ずものすごいことになるんです。
ベニントン博士: スティルトンがお好きなんですか?
SCP-2337-JP-1: とても。小さい頃からよく食べてました。
ベニントン博士: ふむ。過剰摂取によってアレルギー症状が出ているのかもしれませんね。ところで、スティルトンといえば、食べた日に悪夢を見たりはしますか?
SCP-2337-JP-1: そうですね、特に昔はよく。
ベニントン博士: どんな内容ですか?
SCP-2337-JP-1: ゾンビに襲われたり、津波が押し寄せてきたりしました。特に、自分が何か嫌な目に遭う夢をよく。
ベニントン博士: 昔はと仰ったということは、最近はもう?
SCP-2337-JP-1: いえ、5年くらい前からだったでしょうか、内容が変わってきたんです。
ベニントン博士: 内容が?
SCP-2337-JP-1: ええ。ゾンビ自体は出てくるんですが、逆に自分があいつらを食べてしまうような夢ばかりなんです。泣きながら、ですが。
ベニントン博士: 食べる、というと?
SCP-2337-JP-1: それこそ、ゾンビも、津波も、色々なものを啜って、吸い込んで。前に一度、「食われるくらいなら食ってやりたい」と思ったりしたんですが、それが原因かもしれないです。
ベニントン博士: なるほど。
<記録終了>
後記: SCP-2337-JP-1はベニントン博士によって収容ユニットに案内され、ベニントン博士は除染処置を受けました。
探査ログ
対話者:
- ブラックホールのような夢界実体
- ミカイ・ベニントン博士(SCP-2337-JP担当博士、ファウンデーション・コレクティブ所属)
- ジェーン・スミス研究助手(ファウンデーション・コレクティブ所属)
前記: SCP-2337-JP-1の収容ユニットにおける最初の睡眠の後、ベニントン博士とスミス研究助手は影響範囲に進入して入眠し、オネイロイ状態でSCP-2337-JP-1の夢界に進入しました。なお、スミス研究助手は夢界におけるクラスⅣ記憶保持訓練を完了しており、以下のログは彼女が記憶した内容に基づく再現です。
<記録開始>
[SCP-2337-JP-1の夢界にベニントン博士とスミス研究助手が進入する。夢界はその全体が宇宙空間に見える。進入直後に3体の夢界実体が、ゾンビの形態で2名を攻撃しようと試みる。ベニントン博士による改変によって、夢界実体群は2名と一定距離を保ったまま接近することができない]
[数十体の夢界実体群が2名に接近し、攻撃しようとする。ベニントン博士の防御によって2名は保護され、敵対的な夢界実体の一定以上の接近が防がれている。2名はゆっくりと前進し、SCP-2337-JP-1の夢界の中心へ移動する]
[夢界の中心にはブラックホールのような夢界実体が存在している]
ベニントン博士: ゲイル・マクラーレンさんですか?
[当該実体から高音が響く。ベニントン博士は前方に対する防御を強める]
ベニントン博士: 私はウォーム・ワーム3という者です。あなたとお話がしたくてやってきました。
[2名が少しずつ当該実体に接近する。当該実体から響く高音が徐々に低音に変化していき、更に男性の叫び声に変化していく。ベニントン博士は更に防御を強める]
ベニントン博士: 私の声が聞こえていますか?
[当該実体から響く音が完全に男性の叫び声に変化する]
スミス研究助手: 意志疎通は取れないようですね。
ベニントン博士: ああ、恐らくそう…。
[突然、背後から1体の悪魔のような夢界実体が2名を攻撃する。ベニントン博士が防御を強めると同時に、突然悪魔のような夢界実体がブラックホールのような夢界実体の方へ引き寄せられる。2名は急いでその場から離れる]
悪魔のような夢界実体: 嫌だ、や、やめ…。
[悪魔のような夢界実体は、ブラックホールのような夢界実体に取り込まれる。その瞬間、当該実体の中央部分にSCP-2337-JP-1のような顔面が浮かぶ。顔面は悪魔のような夢界実体を啜り、咀嚼する。その時、何度か顔面は嘔吐しかけるような様子を見せる。2名は暫く沈黙する]
ベニントン博士: …改めて伺います。あなたは、ゲイル・マクラーレンさんですね?
[咀嚼が終わり、当該実体の中心の顔面が2名の方を向く。顔面は涙を流しており、口からは茶色い液体が少量流れ出ており、その水滴が当該実体から数粒離れ、再び当該実体に接近し顔面に付着していく]
ベニントン博士: 確認の為、あなたの波長4を確認させていただきます。失礼しますね。
[スミス研究助手が当該実体に接近する。その間、ベニントン博士はスミス研究助手を防御する。当該実体は彼女を攻撃する素振りを見せない]
[省略]
スミス研究助手: …波長、確認できました。
ベニントン博士: 了解。では、失礼します。
[ベニントン博士が防御しつつ、2名がSCP-2337-JP-1の夢界から退出する。この間、夢界実体群は攻撃的な様子を見せなかった]
<記録終了>
後記: ベニントン博士及びスミス研究助手には除染処置が実施されました。ブラックホールのような夢界実体の波長はSCP-2337-JP-1の脳波と77 %一致しました。この為、当該実体はSCP-2337-JP-1のオネイロイであると認定され、SCP-2337-JP-2に分類されました。なお、この翌日SCP-2337-JP-1には激しい下痢症状が見られました。
補遺2: ベニントン博士による研究の結果、SCP-2337-JP-1がスティルトンを摂食すると摂食者の夢界実体群が攻撃的になるという仮説を立てました。これを受け、ベニントン博士はDクラス職員やSCP-2337-JP-1を用いた実験を行いました。
実験ログ
被験者: D-31116、 D-31117、D-31118、SCP-2337-JP-1
実施方法: まず、被験者の夢界内に疑似オネイロス型幽体5を投入する。次に、それぞれ以下の状況下で就寝させる。
- D-31116及びD-31117は同じ部屋に用意したベッドで就寝する。この時、D-31116には就寝前にスティルトンを摂食させ、互いに半径20 mの範囲に相手以外の人物が入らないようにする。
- D-31118及びSCP-2337-JP-1は単独で就寝させる。この時、両者には就寝前にスティルトンを摂食させ、半径20 mの範囲に如何なる人物も入らないようにする。
その後、10分置きの脳波測定による夢界のイメージ抽出によって、疑似オネイロス型幽体の活動をモニタリングする。
結果: スティルトンを摂食した被験者全員の夢界において、疑似オネイロス型幽体は活性化した。また、D-31117の夢界からD-31116の夢界へ疑似オネイロス型幽体が移動していたことが確認された。なお、SCP-2337-JP-1の夢界における疑似オネイロス型幽体の活性化の度合いは、他の被験者のものよりも著しく高かった。
以上の実験、及び複数回の類似実験によって以下の事実が確認されました。
- スティルトンを摂食した人物の夢界において、オネイロス型幽体は活性化する。その結果、オネイロス型幽体は他の夢界実体に対し攻撃的になる。
- オネイロス型幽体は、スティルトンを摂食した人物の夢界を感知し、その夢界に移動しようとする傾向がある。
これにより、現在財団によるスティルトンの回収並びにカバーストーリー「スティルトンの高い発ガン性」の流布が行われています。また、ベニントン博士によって立てられた、スティルトンの長期間摂取によるオネイロス型幽体の誘導性の上昇仮説の検証実験が進行中です。
実験によって判明した事実及びSCP-2337-JPの異常性から、ベニントン博士はプロトコル・ライトニングロッドを提言し、当該プロトコルはファウンデーション・コレクティブ監督部によって認可されました。SCP-2337-JPはThaumielクラスに再分類され、プロトコルを担当する機動部隊として機動部隊プサイ-26が選ばれました。
文書ログ
名称: プロトコル・ライトニングロッド
目的: 敵対的なオネイロス型幽体の誘導、及び撃退。
概要:
- SCP-2337-JP-1の夢界に、オネイロイによって構成される機動部隊を投入します。
- オネイロス型幽体のスティルトンに誘導される特性を利用し、SCP-2337-JP-1にスティルトンを毎日摂食させ、SCP-2337-JP-1の夢界へと敵対的なオネイロス型幽体を誘導します。
- SCP-2337-JP-1の夢界に進入したオネイロス型幽体のうち、敵対的でないもの、及び侵食性を有するものは機動部隊によって確保します。
- 敵対的であるものは、機動部隊によってSCP-2337-JP-2の方向へと誘導します。その後、SCP-2337-JP-2によって敵対的なオネイロス型幽体が撃退されます。
プロトコル・ライトニングロッドの実施以降、2020/09/22現在までに314体の敵対的なオネイロス型幽体が撃退されてきました。これにより、ファウンデーション・コレクティブの業務効率は飛躍的に向上し、オネイロス型幽体の襲撃によって喪失する職員の数も減少しました。しかし、同時にSCP-2337-JP-1の下痢症状は更に悪化しています。