アイテム番号: SCP-2340-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-2340-JP事象の発生を抑制するため全国の火葬場に介入し、火葬により発生したガスの環境中散布量を制限してください。
観測チームは全国の火葬場上空降雨の予想される地域を監視しSCP-2340-JPの発生に備えてください。発生したSCP-2340-JP-1は速やかに回収し、SCP-2340-JP事象は適切なカバーストーリーを用いて隠蔽してください。
説明: SCP-2340-JPは主にヒト(Homo sapiens)実体が降雨とともに上空から落下する事象です。落下する実体はSCP-2340-JP-1に指定されます。多くの場合確認されたSCP-2340-JP-1のDNAは事象発生前の24時間以内に火葬された人物のものと一致しますが、対象が火葬されることは事象発生の必要条件ではないことが確認されています。
SCP-2340-JP-1の推定される年齢はほとんどの場合一致するDNAを持つ人物の享年より若年です。確認された最高齢のSCP-2340-JP-1は推定15-16歳程度の死体です。また、一度のSCP-2340-JP事象で複数のSCP-2340-JP-1が発生するケースも確認されています。その場合、それぞれのSCP-2340-JP-1は対応する同一の人物と一致するDNAを保有します。SCP-2340-JP-1標本の検死の結果や一部の事例はSCP-2340-JP-1が地面に衝突する直前まで生存していた可能性を示唆します。
SCP-2340-JPの再現実験の試みとして、ヒト死体を燃焼させて発生したガスをバルーンに集積し、上空に運搬したのちに回収・観察する実験が行われました。実験試行の3.19%において、バルーンの内壁から死体のDNAに一致するヒト受精卵が回収されました。これをもってSCP-2340-JP事象の部分的な再現に成功したものと見られています。
なお、実験担当者または生前の実験対象に無神論者的傾向のある場合、再現実験の成功率が有意に低いことが明らかになっており、事象の発生条件との関連が指摘されています。
SCP-2340-JPは観測上は燃焼し“揮発”した死体やその周辺物品が上空でSCP-2340-JP-1として“凝結”することによる事象であるかのように振る舞いますが、物理的に揮発することのない骨成分や金属成分も“凝結”プロセスにより生成されることが確認されています。SCP-2340-JPにはなんらかの外部エントロピー的事象、あるいは質量物質の再構築に類した作用を持つ可能性があります。
以下はSCP-2340-JP事象記録からの抜粋です。事象の性質上財団の捕捉していないSCP-2340-JPが存在しうる点に留意してください。
発見日時: 1982/6/13
対応する人物: 倉林 隆(享年62)
SCP-2340-JP-1の状態: 推定年齢9歳。頭部は破砕されており複数の肋骨骨折を認めたが下半身は比較的保存されていた。
備考: DNAによる照合技術の発達により対応する人物が特定された最初のSCP-2340-JP事例。医療機関において保存されていた病理標本から採取されたDNAと照合・特定された。倉林氏は糖尿病性壊疽のため左脚膝関節より遠位を切除していたが、SCP-2340-JP-1の脚部には異状を認めなかった。
発見日時: 1995/10/21
対応する人物: 早島 靖彦(享年89)
SCP-2340-JP-1の状態: 推定年齢14歳。山中に落下したところを財団により確認され、即時回収された。回収時は生存していたものの、重度の精神発達遅滞を認めたため意思疎通の試みには失敗した。
備考: SCP-2340-JP-1の生存が確認された稀な事例のひとつ。生前の早島氏には精神発達遅滞の兆候は見られていなかった。精神発達遅滞はSCP-2340-JPの生成過程でオブジェクトが知的活動を伴わず成長することに由来すると推定される。
発見日時: 2009/6/4
対応する人物: 端山 志乃江(享年77)
SCP-2340-JP-1の状態: 胎芽期から胎児期の状態で落下した。胎芽期の実体が603体、胎児期の実体が3体回収された。
備考: 可及的速やかに回収されたものの、一部が一般社会の目に触れ、カバーストーリー“猫の轢死体”および“異常気象の疑い”が適用された。その一貫としてアマガエル(Dryophytes japonicus)の幼生が各地に散布され、マスメディアを通じた介入と共に沈静化を図った。
発見日時: 2014/2/15
対応する人物: 不明
SCP-2340-JP-1の状態: 推定年齢不明。総重量60kgの低分化な腫瘍細胞が一塊となって落下した。内部に著しい腫瘍性溶骨を伴うヒト骨格と思しき構造が確認された。
備考: 細胞の遺伝子は著しく損傷しておりDNAハプロタイプによる人物の特定は断念された。
詳細な条件は不明ですがSCP-2340-JP発生時に火葬などに付随して焼却された周辺物品が形成される場合があります。この物品がSCP-2340-JP-1の形成に影響を及ぼす例も確認されています。以下はその例です。
発見日時: 2004/11/6
対応する人物: 早瀬 祥子(享年92)
SCP-2340-JP-1の状態: 推定年齢16歳。白色のイエギク(Chrysanthemum morifolium)の花弁が眼窩および鼻腔に充満していた。腹部に著しい膨隆を認めた。落下時の衝撃で腹腔が破裂し、裂傷からは炎症性腹水が流出していた。解剖により摘出された子宮の内腔はイエギクの花粉により緊満していた。
備考: 検出されたものと同種のイエギクが火葬時に棺に入れられていたことが確認されている。聞き取り調査にて「故人は白い花が好きだったから白の菊を用意した」との証言を確認した。
発見日時: 2012/1/18
対応する人物: 畠中 慎二(享年83)
SCP-2340-JP-1の状態: 推定年齢11歳。右大腿の基部から高齢男性のものに見える追加の脚部が形成されていた。追加の脚部は大腿骨が人工関節に置換されていた。大腿骨の関節部はこれに伴って発生時の変形を認めていたものと推測されたが、骨盤ないし腰椎は圧壊されており修復不可能であった。
備考: 畠中氏は生前、大腿骨頭置換術を受けていた。“凝結”プロセスで形成された人工関節を起点に追加の脚部が形成されたものと推測された。
発見日時: 2021/7/30
対応する人物: 橋澤 雄也(42歳時より行方不明)
SCP-2340-JP-1の状態: 推定年齢4歳。毛細血管を含む心血管系の管腔内および骨髄内腔には精製された鉄が充填されていた。頭部左側は落下時に挫滅していたが、残存する顔面の表情筋は「笑顔」と形容可能な形に固定されていた。
備考: 当該事象の発生日は六曜では「友引」にあたり、慣習上発生現場の近傍では火葬は行われていなかった。橋澤氏は発生現場付近にある製鉄場の作業員であり、事象発生日を境に行方不明となっていた。