SCP-2343-JP
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アイテム番号: SCP-2343-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-2343-JPは、サイト-81██の低危険度食品保管ロッカーに収容されます。現在、サイト-81██には███個のSCP-2343-JPが収容されています。実験を行いたい場合、セキュリティクリアランスレベル3以上の職員2名以上か、サイト管理官の許可を得てください。未確保のSCP-2343-JPが新たに発見された場合、カバーストーリー「異物混入」によりフロント企業経由での確保を行ってください。

説明: SCP-2343-JPは、標準的なペットフードを模したソーセージです。分析の結果、鳥獣類の肉、一般的な調味料の他に未知の物質が含まれていることがわかりましたが、詳細な解析には至っていません。Dクラス職員を用いた実験の結果、人間による摂食では特筆すべき異常性は発現しないことがわかりました。確認されたSCP-2343-JPの影響を受け得る動物については、リスト2343-JPを参照してください。SCP-2343-JPを摂食した、SCP-2343-JPの影響を受け得る動物(以下「被影響動物」と呼称)は、ある時点で後述の異常性を発揮します。発揮される時期は個体によって大きくばらつきがあり、その法則は不明です詳細は補遺を参照してください。

異常性を発揮した被影響動物は、数秒以内にヒト (Homo Sapiens) に変化します。以下、変化後の被影響動物をSCP-2343-JP-Aと呼称します。この際、SCP-2343-JP-Aは衣服を着用し、頭部と尾骨付近に変化前の身体的特徴(主に耳および尾)を反映した器官が付加した状態で現れます。衣服および付加された器官は、ともに変化前の被影響動物が持っていた体毛と同様の素材で構成された非異常性のものであり、当該器官は機能を持たないものであることが確認されています。

SCP-2343-JP-Aは、変化前の性別、嗜好、性癖を踏襲します。使用する言語は被影響動物が生育した地域に大きく影響されます。各個体が主張する記憶の内容は、変化前の生活内容と矛盾しないことが確認されています。ただし、肉体年齢および知能は常に人間の二次性徴年齢前後の状態にあたり、変化前の老化状態に依存しないことが確認されています。

SCP-2343-JPは、20██/█/██、愛知県名古屋市██区における「男が女児を連れて家を出入りしている」という民間人からの通報が発見の発端となりました。周辺への探索の結果、██区の路上生活者である荒畑 ██氏が、その異常性を認知せずにSCP-2343-JPを自身の食糧および周辺にいた動物への餌として用いていたことがわかりました。調査の結果、合計██人の民間人がSCP-2343-JP-Aを認知していたことがわかりました。関係者に対してはインタビューおよび記憶処理を実施し、周辺にはカバーストーリー「不審者出没」を適用しました。インタビューの結果、荒畑氏は周辺を徘徊して動物にSCP-2343-JPを配布した可能性があり、被影響動物が██区周辺に現在も多く残存しているおそれがあります。当該区域には監視が続けられています。

録音記録2343-JP-1

対象: 荒畑 ██氏

インタビュアー: 御器所研究員

付記: 本インタビューは、SCP-2343-JPの発見者であると考えられている荒畑 ██氏に対して行われました。

<録音開始, 20██/█/██>

御器所研究員: それでは改めてインタビューを始めます。荒畑さん、まずあのソーセージを見つけた時期と場所を教えてもらえますか?

荒畑氏: あのソーセージがそんなに大事なんか?まあええか、半年くらい前だったかな。それまでいた場所も風当たりが強くなってきたんで、とりあえずねぐらが欲しいと思いながらさまよってたら、この倉庫を見つけたんだ。誰も使ってなさそうだしちょうどいいと思って中を物色してたら、積まれた段ボール箱の中にあれがたくさん入ってたんよ。真空パックでぴっちりなってたし、開けてみたら変な臭いもしないしで、食ってみたら塩味が足りないくらいでうまかったから、ずっとあれで食いつないでたんだ。

御器所研究員: それでそのソーセージを近所の猫にも分け与えていたと。

荒畑氏: ああ。俺がここに座り込んでからしばらくして、近所の猫がちょくちょく顔を見せるようになった。というかもともとこの倉庫は近所の猫の住処だったんだな。あいつら、はじめはずっと遠巻きに俺を見てただけだったんだが、最初に真黒くて野良にしては毛並みのいいやつが近づいてきた。ソーセージをずっと見てるもんだから、ちょっとちぎって置いたらスンスン臭いをかいでからぺろりと食べた。そこからは、ソーセージのおかげで猫たちも俺に慣れてきたみたいで、なでさせてくれるやつも出始めた。で、特に例の黒猫が一番頻繁にやってきて、ソーセージをねだった。

御器所研究員: 猫の中でも、その黒猫と一番交流していたのですね。

荒畑氏: そうだな。あいつと一緒にソーセージをかじるのが最近の一番の楽しみだった。俺のろくでもない身の上話も、あいつは黙って聞いてくれた。

御器所研究員: わかりました。では次に、先ほど言及なさっていた夢の話を教えてください。

荒畑氏: 妙なことばかり気にするんだな。あの夢を見たのはあいつが姿をしばらく見せなくなった後だ。ソーセージもたらふく食えて、猫たちとたわむれて、ちょっと元気が出始めたな、と思っていたんだが、その夜、倉庫で寝てた俺に突然あいつがやってきた。その日は満月で、倉庫の入り口に立ったあいつの背後にちょうどでっかい月が見えて、あれは記憶に残る光景だったなあ。

御器所研究員: その少年についてもう一度詳しく話していただけますか?

荒畑氏: おう。あいつには長めの黒い髪の上に黒い耳みたいなのがついていた。見た目は小学六年生くらいだな。それに着ていたのは上等そうな、スーツというか礼服だ。で、よく見たら尻にしっぽがついてたんだ。俺は、ああ、あいつが俺を化かして夢の中で訪ねてきたんだ、と思った。あいつは呆然とする俺の隣にちょこんと膝を抱えて座った。月の青い光に照らされた顔は整っていて、それこそ人形みたいだった。そしたらおもむろに、██さん、僕も驚いています、と言ったんだ。

(中略)

御器所研究員: そしてその後、彼は行方知れずになったのですね。

荒畑氏: ああ。気が付いたら俺は眠っていて、満月は太陽に代わっていた。そしてあの黒猫とはもう会ってない。本当に現実感のある夢だったよ。ただ、あいつが最後に振り返って、██さん、僕はあなたをずっと応援しています、今までありがとうございました、って言って出ていったんだが、その顔が妙に…

御器所研究員: なんですか?

荒畑氏: …悲しそうだったんだ。

<録音終了>

荒畑氏は追加のインタビューおよび記憶処理の後に解放されました。言及されたSCP-2343-JP-Aと考えられる少年の行方は不明です。

録音記録2343-JP-2

対象: 川名 █氏

インタビュアー: エージェント・吹上

付記: 本インタビューは、20██/█/██、民間からの通報によって警察に確保された川名 █氏に対し、警察官に偽装したフィールドエージェントによって行われました。確保当時、川名氏の自宅のベッドにはSCP-2343-JP-Aと見られる少女が寝かされていました。

<録音開始, 20██/█/██>

エージェント・吹上: それでは、彼女はあなたが日頃世話をしていた犬が変身したものだと?

川名氏: 僕はそう思っています。警察の方にこんなこと言っても笑われるだけでしょうけど。

エージェント・吹上: 確かに荒唐無稽な話に感じますが、そう思う理由を教えてもらえますか?

川名氏: はい。僕にはずっとかわいがっていた犬がいました。ポチって呼んでました。僕は、まあいろいろな原因が重なって三十路にもなっていまだにフリーターやってるんですが、ある夜にあいつがアパートの前を通りかかったんです。明るい茶色で、耳の垂れた中型犬でした。首輪がついてたので多分捨てられたんだと思います。見るからに空腹そうで、まあ僕もずっと空腹なんですが、おにぎりをあげたらおずおずと食べました。そこからあいつはちょくちょくアパートの前に姿を見せるようになりました。僕もあいつが現れるのが楽しみになって、勝手にポチって呼んで、犬にあげてもいい食べ物とかを調べて用意してたりしました。慣れてきたら、こっそりうちで匿ったりもしてました。

エージェント・吹上: そこから川名さんはその犬の世話をし始めたのですね。

川名氏: はい。あいつは元来人懐っこいやつらしくて、元気になって毛並みもよくなってから、よく僕に遊ぶのを求めてきました。ちょうど部屋にフリスビーがあったので、公園まで行ってフリスビーを投げたら、嬉しそうに追っかけていって持ってくるんです。それがあまりにも楽しそうだったから、僕も楽しくなって、気が付いたら夕暮れ時だった、ということもありました。そのあとも、時間を見つけて公園に行っては、遊んだり、僕の膝の上で日向ぼっこしたりしてました。ポチが現れてから、僕の日常は幸せなものになりました。

エージェント・吹上: その犬はその後どうなったのですか?

川名氏: …ある日から、ポチの様子が変になっていきました。食欲がなくなって、元気がなくなっていきました。何か悪い病気かもしれないと心配するうちに、ポチの体はみるみる痩せ細っていきました。誰かに診てもらおうにも、お金もないし、世話しているのは周りには内緒だしで、途方に暮れていました。そんなある日、突然ポチの姿がしばらく見えなくなりました。

エージェント・吹上: その犬の姿が見えなくなってから現れたのがあの女の子ということですか?

川名氏: はい。ポチがいなくなって気もそぞろになっていた僕の部屋に、彼女は突然訪れました。髪の毛はぼさぼさの明るい茶髪で、ベージュのパーカーを着ていて、頭にはあいつみたいに垂れ下がった耳がついてました。それで開口一番、『ご主人、ポチは人間になっちゃいました!』って言われました。確かに犬が人間になるなんてアニメとか漫画とかの世界ですが、実際こんな状況で自信満々に、満面の笑みでこう言われて、雰囲気にのまれて信じてしまいました。

エージェント・吹上: 彼女自らがそう言ったのですね。

川名氏: はい。仮に僕を陥れようとする人のいたずらだったとしても、あまりにも大がかりすぎるし、僕なんかを騙して得をするような人はいないと思います。…それに、なんというか、彼女はどこからどう見てもポチだったんです。彼女は僕の前に現れると、そのまま僕をせかして、いつものフリスビーを持っていつもの公園に行きました。そしていつものように遊んでほしいとせがんだんです。フリスビーを追いかける彼女の姿はまさにポチでした。ひたすら遊んで、疲れたら僕に寄り添って眠りました。そうして日暮れまで遊ぶ、という日が二日続きました。遊ぶ姿も甘える姿も、なんというかポチそのものでした。

エージェント・吹上: なるほど。しかし、先ほどお見受けした彼女はひどく衰弱しているように思われました。

川名氏: …今思えば、空元気だったんじゃないかと思います。三日目、今日も遊びをせがまれるのかと思っていると、彼女は突然居住まいを正し、神妙な顔をして自分の身の上を語り始めました。大好きな家族に捨てられたこと、絶望していた時に出会ったのが僕だったこと、僕と出会ってから本当に楽しかったこと。そして最後に、自分は悪い病気でおそらくもうすぐ死ぬ、なんでこの姿になれたかはわからないけど最後に僕と思いきり遊べて幸せだった、といって、大粒の涙を流したんです。思わず僕も、彼女を抱きしめて自分も幸せだったって伝えました。それから少ししたら容態が急変して、彼女は昏倒しました。そこからはお巡りさんも知っての通りです。

エージェント・吹上: ありがとうございました。事情がよくわかりました。

川名氏: …お巡りさん。

エージェント・吹上: はい。

川名氏: 僕は思うんです。ポチが人間になったのは、きっと病に侵された彼女に最後の夢を見させるために、神様が与えてくれた奇跡だと。

(数秒沈黙)

川名氏: あなたに言うのはお門違いかもしれませんが、どうか彼女を救ってあげてください。

<録音終了>

川名氏は追加のインタビューおよび記憶処理の後解放されました。SCP-2343-JP-Aと見られる少女は血管肉腫の末期症状を示しており、川名氏の確保後にほどなく死亡が確認されました。当該犬は、荒畑氏がSCP-2343-JPを動物に配布した際に被影響動物になったと考えられています。

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