アイテム番号: SCP-2353-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-2353-JPの本質的な収容は困難であるため、財団のSCP-2353-JPに対する処置はそれにより発生した混乱の対処に焦点が置かれています。現在、SCP-2353-JPは欺瞞部門により管轄されています。SCP-2353-JPにより生じた混乱は全て2353-JPの担当職員に報告され、適宜記憶処理や記録の破棄などによって事態の収拾が促されます。
説明: SCP-2353-JPは福井県大野市を中心として蔓延している、18歳の日本人女性・桐流かおりに関する非合理的な思考パターンとそれにより生じる異常行動に対する指定です。桐流かおりは後述する経緯により既に死亡済であるとされているものの、SCP-2353-JP被影響者(以下、単に被影響者と表記)は「桐流かおりは現在も存命であり、大野市で日常生活を送っている」という歪曲した認識を持っており、桐流かおりの死や不在といった概念を理解することができません。
SCP-2353-JPによる異常な認識と実際には桐流かおりが死亡しているという事実との矛盾により、被影響者は自身にとって原因不明の強い違和感や不安感を経験します。それらストレスからの逃避行動として、自身の周辺の環境や記憶を改変することによる矛盾の解消を試みます。しかしながら、一般的な人間の能力では一貫性を保った改変を続けることが難しい点や、他の被影響者による改変との競合が発生する点などにより、ほとんどの場合はより強い矛盾を引き起こす結果に終わります。
より強い矛盾の一例として、桐流かおりが日常生活を送っているにもかかわらず姿を現さないという矛盾に対し、桐流かおりの母である桐流嘉穂は、自宅の一部屋を封鎖し「桐流かおりは現在部屋に引き籠っているため会うことができない」として正当化を図りました。しかし、桐流かおりの父である桐流誠司は、「桐流かおりは現在交際相手の家宅に宿泊している」と解釈することにより正当化を図っていました。その解釈の差異のために、嘉穂により封鎖された部屋を誠司が解放したことで、嘉穂による矛盾の解釈が破綻する結果となりました。
この認識は桐流かおりに関する記憶に紐づくものではないため、従来の記憶処理ではSCP-2353-JPの影響を除去できません。被影響者に記憶処理を施した場合、他の被影響者により捏造されたものを含む桐流かおりに関する情報をもとに現在の桐流かおりの状態を解釈するため、結果的に混乱を拡大することが確認されています。
発見経緯: SCP-2353-JPはSCP-███-JP曝露者として桐流かおりが財団に収容された際の事後処理に伴い発見されました。桐流かおりにはカバーストーリー"転落事故"が適用され、マニュアル通り警察から桐流夫妻へ遺体引き渡しの連絡が行われています。これに対し桐流夫妻が「桐流かおりは我々と生活している」とし遺体引き渡しの連絡を無視したことでSCP-2353-JPの存在が発覚しました。
以下は財団データベース内の桐流かおりに関する情報の抜粋です。
現在SCP-2353-JPの発生を受けてSCP-███-JPに関する再調査が行われていますが、他のSCP-███-JP曝露者に関する認識は異常な影響を受けていない点などから関連性は薄いと考えられています。
補遺: これらの事態の収拾のために、欺瞞部門が主導となり、SCP-2353-JPの影響抑制のための特別収容プロトコルが提案・実行されました。以下は提出された特別収容プロトコルの概要です。
特別収容プロトコル案
概要: SCP-2353-JPに関連するトラブルは時間の経過と共に増加しており、いずれ現行の特別収容プロトコルのような場当たり的な対応は破綻すると考えられます。従って、以下の手順によるSCP-2353-JPによる混乱の抑制を提案します。
1. カバーストーリー「階段からの転落死」を秘密裏に撤回する。
- 従来であれば煩雑な手順が必要とされますが、SCP-2353-JPの影響により死亡報告の撤回自体は低コストで行えると考えられます。
2. 欺瞞部門の職員のうち1名に整形手術を施し、以降桐流かおりとして生活させる。
- 既に適切な欺瞞部門の職員が選定されており、特別手当等を含めた雇用契約の更新についての同意も得ています。
3. 新規の桐流かおりの状態と、SCP-2353-JP発生以前の桐流かおりに関する情報や既存のSCP-2353-JP被影響者による解釈で矛盾が発生した場合、逐一記憶処理や記録の破棄などを行い、現在の桐流かおりの状態がニュートラルであるという認識を促す。
- 特別収容プロトコル適用直後は膨大な量の記録の改変が必要になると予想されますが、混乱が抑制され、状態がある程度安定化した段階になれば、かなり業務量は低下すると考えられます。
混乱を虱潰しに対処する現行の特別収容プロトコルに対して、この提案手法は従来のマニュアル的な対処から逸脱しているものの、財団の業務量や記憶処理薬の消費量だけでなく、住民への負担やヴェール維持の観点で見ても優れていると結論付けられています。
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最終的に、この特別収容プロトコルは承認され、現在欺瞞部門の職員が桐流かおりとして生活しています。従来の桐流かおりに関する記録は、SCP-2353-JPの副次的効果による捏造を受けていないものも含め全てが破棄されており、もはや欺瞞部門の職員が成り代わる以前の桐流かおりに関する記録は存在しません。
現時点での目下の課題は、従来の桐流かおりが友人や家族と会話する際に用いていたコンテキストを欺瞞部門の職員が有しておらず、円滑な会話が難しくなっている点です。これに関しては、コミュニケーションの回数そのものを減少させることで露呈のリスクを減少させることを対処方針とします。現在、現行の桐流かおりが周囲に対し露悪的な態度を示すなどによる従来の桐流かおりが構築した人間関係の初期化が進行中です。









