SCP-2354-JP
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SCP-2354-JPの基底イメージ

アイテム番号: SCP-2354-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-2354-JPの収容にはクラス4防霊措置を施した専用霊体収容室が用いられます。天井の高さは1.8mに制限されなくてはなりません。

収容室の清掃には2名以上のDクラス職員があたり、作業中は絶えず明瞭な発声をもって「見越し入道、見越した」と誦詠し続けてください。収容室内で過度に姿勢を低くする行為は厳に禁止されます。

SCP-2354-JPの収容違反を誘発し得る情報が確認された場合、媒体を問わず適切な情報統制措置が講じられます。

説明: SCP-2354-JPは日本の口碑伝承における妖怪「見越し入道」に類似した性質をもつクラスA霊体1です。

非常に瘦身であり、経年劣化した袈裟を身にまとっています。近世日本語を用いたコミュニケーションが可能ですが、多く高慢で非協力的な態度を取ります。

SCP-2354-JPは自身を妖怪存在の首魁2であると認識する人間の割合によって、段階的にその異常性を発展させます。

財団による収容当初SCP-2354-JPは第三段階の異常性を有していましたが、現在は第一段階に抑えられています。その収容経緯から、各段階どの程度の認識者が必要であるかは不明です。段階の引き上げを目的とした実験は許可されません。
性質
第一段階 人間がSCP-2354-JPを視認した場合、対象は自身の頸部を段階的に伸長させます。視線が上方へ推移することにより、視認者は後方へと転倒します。
第二段階 人間がSCP-2354-JPを視認した場合、対象は自身の頸部を段階的に伸長させます。視認者は転倒ののち意識を失います。第二段階までのSCP-2354-JPに対しては天井の高さを制限することで、この伸長の阻害が可能です。
第三段階 人間がSCP-2354-JPを視認した場合、対象は自身の身体を段階的に伸長させます。視認者は意識を失い、覚醒して13日後に死亡します。第三段階までのSCP-2354-JPに対しては視認者が「見越し入道、見越した」と誦詠することで、この伸長の阻害が可能です。
第四段階 人間がSCP-2354-JPを視認した場合、対象は自身を模した不可触の像を発生させ、段階的に伸長させます。視認者は後方へ転倒したのち、死亡します。この効果に距離的制約はなく、視認者が複数名いたとしても同時多発的に発現します。
第五段階 最高段階のSCP-2354-JPは口碑的霊体群3を随行させ、百鬼夜行イベントを引き起こすと考えられています。同イベントは各地に伝承が残りますが、詳細な記録は失われています。

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SCP-2354-JP-A「ぬらりひょん」の基底イメージ

プロトコル"魑魅の檻": SCP-2354-JPの管理は1945年に財団へと引き継がれ、蒐集院による収容方式を応用する形で現行の特別収容プロトコルが策定されました。

旧プロトコル"化物葛籠ばけものつづら"を引き継ぎながら、口碑的霊体群の総称を「妖怪」と再定義し、また創作におけるその首魁的地位を別概念へとシフトすることで民間人の認識からSCP-2354-JPを遠ざけます。

この場合の、キャラクターとして抽象化した首魁的霊体の包括概念をSCP-2354-JP‐Aと指定し、巷間に流布します。現行プロトコルはその策定起源に偶発的要素を多分に含むことから、SCP-2354-JPおよびSCP-2354-JP‐Aに対する認識への積極的干渉は禁止されています。

以下は特筆すべき事項を時系列順に整理したものです。

概要
1929年 藤沢衛彦が著作内にて、鳥山石燕作『画図百鬼夜行』「ぬうりひょん」の項に対して「まだ宵の口の燈影にぬらりひよんと訪問する怪物の親玉」と解説。これを基底として「ぬらりひょん」(現在の定義におけるSCP-2354-JP‐A)が口碑的霊体群の首魁であるとの認識が巷間に流布されました4
1938年 柳田國男が『妖怪談義』を発表。民俗学の枠内で初めて口碑的霊体群が言及されます。
1945年 SCP-2354-JPの管理が蒐集院から財団に引き継がれる。前述した藤沢の著作をもとに現行プロトコルが策定されました。この際、主に文字媒体を利用してSCP-2354-JP‐Aが巷間に流布されます。
1960年 漫画作品『ゲゲゲの鬼太郎』が雑誌『週刊少年マガジン』にて連載開始。
1968年 同作がアニメーション化され、民間放送局より放映されました。これ以降、口碑的霊体群が多く「妖怪」と呼称されるようになります。
1985年 同作のアニメーション第三作が放映。原作中に登場したSCP-2354-JP‐Aを敵役に据えたストーリーが展開され、SCP-2354-JP‐Aが「妖怪」の首魁であるという認識が人口に膾炙します。結果、SCP-2354-JPの異常性が現在の定義における第二段階へと移行しました。
2005年 映画作品『█████』が公開。SCP-2354-JP‐Aを敵役に据えたストーリーが展開されました。観客動員数は約130万人。
2008年 雑誌『週刊少年ジャンプ』にてSCP-2354-JP‐Aを主人公に据えた漫画作品『ぬらりひょんの孫』が連載開始。累計発行部数は約1200万部。
2013年 アニメーション作品『妖怪ウォッチ』が民間放送局より放映。若年層を中心としたブームとなり、口碑的霊体群に対する滑稽で陳腐なイメージが補強されました。
2014年 Dクラス職員を用いた実験の結果、SCP-2354-JPの異常性が現在の定義における第一段階へと移行していることが確認されました。

-警告- 旧プロトコル"化物葛籠" ー閲覧にはサイト管理者の許可が必要ですー


インタビューログ2354-JP-I47

対象: SCP-2354-JP

インタビュアー: 財団民俗学研究班/樺戸博士

付記: 記録中、対象は一貫して非協力的な態度を示しました。途中、嗜好品として煙草を与えたことで対象の態度が好転したことからインタビューが再開されています。以下の記録は対象の発言を適宜平易な口語表現に置き換え、文章に書き起こしたものです。

<記録開始(202█/12/31)>

樺戸博士: それではインタビューを再開します。SCP-2354-JP、あなたはかつて化け物と呼ばれた霊体群の首魁的地位にありましたね。

[対象は沈黙している。]

樺戸博士: 数多存在した口碑的霊体の中で、なぜあなたが選ばれたのですか。

SCP-2354-JP: 首魁か。些か、言葉遊びに過ぎるな。

樺戸博士: どういう意味でしょう。

SCP-2354-JP: 言葉のままだ。俺はそもそも首などは伸ばさぬ。あれは離魂病15、人の病であろうが。そうでなくとも俺は、首魁などという器ではない。まあ隠居して茶ばかり飲んでいる日和見の爺よりは、いくらかましかもしれんが。

樺戸博士: 確かに口承の中のあなたは、多く背丈を伸ばす怪異として語られていました。だが伝承とは時代とともに移り変わるものです。それに首を伸ばす怪異となったからこそあなたは、霊体群の首魁となることができたのではないですか。

SCP-2354-JP: しかし肉の器とは、やはりうまくでき過ぎている。よくもこれだけの、理外の術師がいたものだ。

樺戸博士: 質問に答えなさい、SCP-2354-JP。あなたはどうして。

[対象が樺戸博士の言葉を遮る。]

SCP-2354-JP: 俺が全盛であった頃、両国広小路へ鬼娘を見に行ったことがある。

樺戸博士: 鬼娘?江戸の見世物興行の鬼娘ですか。

SCP-2354-JP: するとどうだ。皆が鬼だと笑うそれは、ただの醜女しこめであった。人間であった。人が人を見て醜い鬼だと笑うのだ。まったくどちらが鬼だろうか。

樺戸博士: なるほど。それは私にはたいへん興味深い話ですが。

SCP-2354-JP: ああそうだった、そうだった。今は、重い葛籠つづらの中身が何かという話だったか。

樺戸博士: 要領を得ませんね。それは何かの比喩でしょうか。

SCP-2354-JP: 鉄の檻に入れた葛籠の中を、お前らは覗き込むことさえしなかった。今やこの檻ですら、いつ化けて出るとも知れぬというのに。

[樺戸博士が返答に窮する。]

SCP-2354-JP: なんだ、お前らはもう覚えてもいないのか。

樺戸博士: 何の話をしているのですか。

SCP-2354-JP: 平安の世、悪逆の限りを尽くした者の名を。

樺戸博士: いったい何の。

SCP-2354-JP: 蒙昧な山人たちですらよく言ったものだ。永年語り継がれし化物ばなし、いつでも親玉は[データ削除済]なりと。

樺戸博士: 親玉はあなたでしょう。それにその名は、あなたの異称ではないのですか。

SCP-2354-JP: お前らが。

[対象が俯く。]

SCP-2354-JP: お前らが山で静かに暮らしていた俺を、御輿の上へ担ぎ上げたのではないか。

<記録終了>

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