アイテム番号: SCP-2372
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-2372はサイト-168の極低温格納ユニット内に収容します。格納ユニットの温度は2~4℃の間を維持します。SCP-2372-AによるSCP-2372からの離脱要求は却下されます。SCP-2372-Aに対しては、SCP-2372の発言翻訳に関する協力の見返りとして、SCP-2372からの分離実験が予定されるはずだと伝えてください。
週1回、レベル0職員がSCP-2372を洗浄するために派遣されます。この時、格納ユニットの温度は職員判断で0℃以下に設定することができます。
説明: SCP-2372は陳██(チェン・███-██)という男性の、腐敗の影響を受けない保存された遺体です。粉末化された翡翠の粒子と絹糸が、SCP-2372の皮下組織の中に、身体全体に均等に埋め込まれているのが見つかっています。SCP-2372に見られる瘢痕と縫合跡は、素人が外科的処置を行ったことを示しています。
SCP-2372はもはや声帯が振動しないにも拘らず、意思疎通の手段として機能する呻き声のような音を口から発することができます ― これについては概要の第4パラグラフを参照してください。また、SCP-2372は雲粒と氷の結晶(0℃近い温度の場合に存在)で構成された霧を放出します。この雲粒に含まれる水滴の分析により、射精に先んじて放出される尿道球腺液が僅かに含まれていることが判明しました。霧の発生源はSCP-2372の臍であるように思われます。
SCP-2372-Aは、SCP-2372から発生する霧から出現する霊的ヒト型実体であり、陳氏の上半身に類似しています。SCP-2372-Aは知的存在であり、陳██を自称します。SCP-2372-Aは自らを構成する水粒子の振動によって発声が可能であり、陳██と同程度の広東語の実力を証明しています。
SCP-2372-AはSCP-2372が発する呻き声を解読できる唯一の既知の存在であり、定期的に会話をしています。SCP-2372-A側の観点から言えば、当該実体とSCP-2372は明白に敵対しています。SCP-2372側の観点におけるSCP-2372-Aとの関係を直接的に問うことは不可能ですが、SCP-2372は時折SCP-2372-Aとの会話中に尿道から射精前の尿道球腺液を分泌することは判明しています。
SCP-2372は1987/██/██、解剖検査時にSCP-2372-Aが出現したことによって香港のビクトリア公共霊安室から回収されました。遺体の回収後、事件は検視官の幻覚として処理され、火葬した動物の灰を収めた骨壺が陳██の親族に引き渡されました。
補遺2372-1: SCP-2372 および/またはSCP-2372-Aとの選択されたインタビュー
インタビュー対象: SCP-2372-AおよびSCP-2372
インタビュアー: エージェント オーシャン・パーク
序: 以下のインタビューは元々は広東語で行われている。
<記録開始>
エージェント パーク: こんにちは。自己紹介をお願いします。
SCP-2372-A: 陳██だ。悲鳴上げて逃げ出さない奴が来てくれて良かったよ。
エージェント パーク: しかし、貴方は陳さんではありえないでしょう。彼は既に故人ですが?
SCP-2372-A: ああ、思い出させてくれてありがとよ。なぁおい、もし良ければあんたに助けてもらいたい事があるんだ。
エージェント パーク: 何をですか?
[SCP-2372-AはSCP-2372を指さす。]
SCP-2372-A: 俺からこいつを切り離してくれ!
エージェント パーク: 貴方の身体のことですか?
SCP-2372-A: そうだ。これに繋がってて何処にも行けやしない。
[SCP-2372が呻く。SCP-2372-Aはエージェント パークからそちらに向き直る]
SCP-2372-A: おい、俺がそんな話に乗ると思うな! 罰当たりな肉と霊魂の無駄の分際で!
エージェント パーク: 貴方の身体と話しているのですか?
SCP-2372-A: 言わなきゃ分かんねーのか? なぁ、俺、生きてる頃にとんでもない間違いを犯しちまったんだ。あんたが必要なんだよ、こいつを取り除-
[SCP-2372が呻く。]
SCP-2372-A: いいや、あれは絶対間違いだった! 俺たちは死後は別々の道を行くべきだったんだ。俺は上、お前は下にだ!
[SCP-2372が呻く。]
SCP-2372-A: 違う違う違うんだ! あの翡翠の衣には価値は無かった! 前世にやらかした馬鹿のツケを来世で払わされるような酷い話があってたまるか!
エージェント パーク: “翡翠の衣”とは何のことです?
[SCP-2372が呻く。]
SCP-2372-A: うるせぇ! お前との間にそんな関係なんかねぇよ!
<記録終了>
インタビュー対象: SCP-2372-AおよびSCP-2372
インタビュアー: 曽 冨治(フジ・ツァン)博士
序: 以下のインタビューは元々は広東語で行われている。
<記録開始>
曽博士: SCP-2372-A、君の“翡翠の衣”に関する状況について、もう少し詳しく教えてもらえますか?
SCP-2372-A: ああ。こいつは-
[SCP-2372が呻く。]
SCP-2372-A: 静かにしろ! その、こいつは城塞都市に住んでる“自称”奇跡の外科医だっていう秦(チン)老師から貰ったもんなんだ。
曽博士: 九龍城ですか?
SCP-2372-A: ああ、数年前にな。
曽博士: 後で私たちに、その人物の住所を教えてください。しかし、貴方は何故この手術を受けようと決めたのですか?
SCP-2372-A: その、俺は墓地で働いてたから、いつだって死体を扱ってた。何度も何度もそういう死体を見ているうちに、自分もいつかこうなるんだなって思ったんだよ。それで、俺-
[SCP-2372が呻く。]
SCP-2372-A: 首を突っ込んでくるな! お前のためにやった訳じゃねぇんだよ!
曽博士: SCP-2372は何と言ったのですか?
SCP-2372-A: 関係ない。あれは俺が言いたいことを代表しちゃいないからな。
[SCP-2372が呻く。]
曽博士: SCP-2372-A、この件については同意したはずです。私たちにSCP-2372の言葉の正確な翻訳を与えるつもりが無いのであれば、私たちも貴方のことを助けるわけにはいきません。貴方の選択次第です。
SCP-2372-A: 分かった、でもあいつの言葉を鵜呑みにはしないでほしい。あいつはな、俺が ― つまり、陳██が ― 自分自身に惚れてたって言うんだ…肉体的にな。
曽博士: それで、貴方はそれを真実とは思わないのですか?
SCP-2372-A: 博士、俺はあの男の魂なんだ。陳██のことはこの世の誰より分かってる。
[SCP-2372が呻く。]
SCP-2372-A: いいや、お前は彼のことを知らないさ。お前は自分の空想を俺たちに当て嵌めてるだけだ。どうしてそういう風にしか考えられないんだ?
[SCP-2372が呻く。]
曽博士: 2372-A、ちょっと私にも質問させてください。それと、翻訳もよろしくお願いします。
SCP-2372-A: こいつは俺と同じように陳のことを知ってるとか言ってる。間違ってるけどな。
[SCP-2372が呻く。]
SCP-2372-A: いいや、お前のその腐れ脳みそは間違いなくビョーキだね。いつ雑誌を読んでた時の事だろうと、陳██がお前を慰めたことなんか無い。
[SCP-2372が呻く。]
SCP-2372-A: 馬鹿か! あいつの手がお前のナニを握ってたからって、それはお前のことを考えてたことにはならねーんだよ! あの男が自分に、つまりお前に惚れ込んでたことなんか一度も無かったんだ。
[SCP-2372が呻く。]
SCP-2372-A: それはもう説明しただろ! 陳██はな、死後に自分自身を一つに保っておきたかった、それだけだ。
[SCP-2372が呻く。]
SCP-2372-A: そういう意味じゃねーんだよ、変態が!
<記録終了>
補遺2372-2669: O5-7の声明
████/██/██より、承認を受けたプロジェクト・ヘイムダルの職員は、実用的な応用のためにSCP-2372の分離心身に関するデータにアクセスすることが認められます。
ページリビジョン: 8, 最終更新: 21 Feb 2024 12:28