アイテム番号: SCP-2384
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-2384は高さ2mの電気柵を巡らせた境界の内部に収容します。SCP-2384には栄養チャート2384-1に則って1日2回餌を与えます。職員は常にSCP-2384の成長度を監視し、管理不可能なレベルに近づいていると判断された場合は、それに従ってSCP-2384の地下部を断片的に除去します。
SCP-2384の探索試行は、少なくとも2名のレベル3職員から承認を受けなければいけません。
説明: SCP-2384は、脚部組織を地下9kmにわたって延伸させている、雄のマガモ(Anas platyrhynchos)に似た生物です。SCP-2384のこの脚部組織の拡張はまず数本の“根”の形成から始まり、地下5kmの地点でより大規模な生物学的構造物と合体しています。SCP-2384は、この成長部位や、その存在によって自身が移動できないことに苦痛を感じていないようです。
SCP-2384は老化しないように思われますが、栄養物を必要とする様子は示しています。
SCP-2384の地下部は、典型的には、植物と動物の両方に関連する特徴を有します。例としては以下が挙げられます。
- 5cm~56cmの間の長さの羽根で全体が構成されたトンネル状の構造。
- 芽のような成長部位。採取されたサンプルは、カモの骨で形成されていると断定された。
- 蔓状の構造。
- 数種類のカモの嘴部分の組織で構成された領域。
- 大量のカモの舌を内包している、脈動する膜組織。
- 肝臓や心臓などの臓器に類似点を帯びている構造。
当初、SCP-2384の地下部は僅か6kmしか広がっていませんでしたが、発見以来ゆっくりと地下深くへ拡大しています。SCP-2384の地下部は、一部が本体から切除されると萎びて非活性化するため、財団職員は成長を管理可能なレベルに留めることが可能となっています。
探索ログ2384-1:
探索のため、SCP-2384の地下部に直接繋がるトンネルが掘られました。D-91883がヘッドマウントカメラと防護服を身に着けた状態で派遣されました。探査は█████博士によって監督されています。
(D-91883がトンネルに入る。)
█████博士: 先に進み続けてくれ、D-91883。カメラがぶれないようにしっかり押さえてほしい。
D-91883: あいよ、了解。
(D-91883はトンネルを進み続ける。数分後、SCP-2384の地下部の内側にある大きな部屋に到着。部屋の床には羽が生えているのが見える。球根のような構造物が壁と天井に存在している。)
█████博士: 球根の一つに近づいてくれたまえ。もっと近くで見てみたい。
(D-91883が球根状構造に接近する。)
D-91883: クソッ、ここは臭ぇな。
█████博士: 済まんがその臭いは無視してくれ。球根を開けて、中を見せてもらえるかな?
D-91883: あー、分かった。
(D-91883が球根を開ける。内部には数体の異形の生物が、おそらく死んだ状態で収まっている1。カメラの視点が離れる。)
D-91883: おい、気色悪ぃぞ。
█████博士: 頼むから目を逸らすのは控えてくれ、D-91883。我々はこれをビデオに記録しなきゃいかんのだ。
(カメラは数秒、球根に視点を戻すが、再び横に逸れる。)
D-91883: 済まねぇ、俺にはこれが精一杯だよ。畜生め、クソみてぇに臭い。
█████博士: (溜息) 良かろう。SCP-2384の奥へ進み続けてくれ。
D-91883: オーケイ、分かった。ああ。あのブツから離れられるなら何でもするさ。
(D-91883は壁の開口部を抜けて、小さなトンネル状構造を先へ進む。数分後、より小さな部屋へ到着。壁の凹みに小さな骨の断片が見える。 )
█████博士: D-91883、研究のためにそのアイテムを回収してくれ。
D-91883: 本気かよ? 安全なんだろうな?
█████博士: ああ。
(D-91883は凹みに手を伸ばすが、凹みは唐突に閉じてD-91883の腕を挟み込んだ。)
D-91883: 畜生! ヤベェ、捕まっちまった、離せ、離せ!
(D-91883の腕が解放され、彼は後ろに倒れ込む。)
█████博士: 無事か?
D-91883: いいや、ひでぇ痛みが刺しこんできやがる。
(カメラ映像が上方に移動。小さな球根構造が壁から出てくる。球根が開くと、その内部にD-91883の顔の複製物が露わになる。複製物はD-91883を数秒見つめた後、ガーガーと鳴き始める。)
D-91883: マジかよ!?
(この時点で、D-91883はSCP-2384から逃走した。更なる検査で、トンネルの一つにある似通った球根状構造から、生きたカモの頭も同様に突き出しているのが発見された。調査の結果、このカモの頭部状構築物は初歩的な英語を話し、簡潔な会話をすることが可能だと判明した2。構築物は以降、SCP-2384-1と呼称されている(インタビュー2384-1を参照)。)
探索ログ2384-2:
D-91885がヘッドマウントカメラと防護服を身に着けた状態で、別な入口からSCP-2384へ派遣されました。探査は今回も█████博士によって監督されています。
D-91885: それじゃ、えー、僕は何か特定の物を探せばいいのかい、例えば ― 例えばここの核とか、そういうものを?
█████博士: ただ構造物の中を通り抜けて、君が見ている物を我々にも見せてくれればそれで良い。
D-91885: ああ、でもどっちみちそうせざるを得ないんだろ?
█████博士: 何だって?
D-91885: ほら、分かるだろ、これが取り付けられてるんだから、ほら…
(D-91885は自身のヘルメットを二度叩く。)
D-91885: この、ほら、カメラがさ。
█████博士: ああ、そうだな。勿論だ。大変宜しい。先に進んでくれ。
(D-91885は構造を抜け、D-91883が逃げ出した部屋へと辿り着く。D-91883の頭部の複製体はまだ壁から突き出しており、未だにガーガー鳴き続けている。)
D-91885: (笑い)
█████博士: 何か問題でも?
D-91885: まったく、こいつはイカレてるよ。
█████博士: それのことは気に掛けなくてよろしい。先へ進んでくれ。
(D-91885はさらにトンネルを数ヶ所抜け、行き止まりに辿り着く。壁には数羽分のカモの骨格が埋め込まれている。)
D-91885: ここから先には進めないよ、ここで全部 ― 全部の道が塞がれてる。
█████博士: ならば戻ってくれ。
D-91885: 待ってくれ、ここの、えー、此処の骨みたいな物を持ち帰れると思う。
(D-91885は骨格の一つを壁から取り外そうと試み始める。)
█████博士: あー、その必要は無いぞD-91885、帰還してくれ。
D-91885: ちょっと、ちょっとだけ時間をくれよ、すぐ取れるから。
█████博士: 直ちに帰還してくれ。
D-91885: ダメだ、貴方言ったじゃないか ― 僕が手助けをしてくれたら自由にしてやるってさ、だから大丈夫だよ。大丈夫、少し待ってくれ。
█████博士: D-91885、従わないようならお前の後ろから保安部隊を送り込まざるを得ない。直ちに帰還せよ。
D-91885: だからさぁ、落ち着いてってば。たかがアヒr―
(この時点で壁が開き、先端に嘴らしきものが付いた巻き髭が数本、D-91885を壁の裏にある小さなトンネルへと引きずり込む。急速に狭まってゆく空間に引き込まれたD-91885の絶叫と骨の折れる音が聞こえる。この段階でカメラは故障し、ビデオ映像は途絶した。数分後、SCP-2384の地上部はD-91885の声で数秒間絶叫した後、咳と共にヒトの歯を2本吐き出した。DNA検査でこれらの歯はD-91885に属するものと特定された。
SCP-2384から研究用試料を除去する試みは、現在明確に禁止されている。)
インタビュー2384-1-1:
質問者: █████博士
回答者: SCP-2384-1インタビューは探査無人機の付属スピーカーを介して行われた。
█████博士: あー、どうもこんにちは! 私の声が聞こえるかね?
SCP-2384-1: 俺カモ。
█████博士: ああ、どうやらそうらしいな。
SCP-2384-1: カモ、カモ。羽、翼、なぁ? あいよ、了解。ここで全部。パン。
█████博士: えー…パンが欲しいのか? 食べ物が要るのか?
SCP-2384-1: ああ、ああ、カモ。オーケイ、分かった。ああ。赤いパン、パン肉。おくれよおくれよ。俺カモ、パンおくれよ。
█████博士: 君は…君は今の、その、状況を分かっているのかね?
SCP-2384-1: 俺カモ。
█████博士: ああ、それは分かる、理解できる ― だが、君のほうは自分が今、壁から生えていることを理解しているのか?
SCP-2384-1: 俺、デカいカモ ― 俺ボス。一番デカいカモ、もっとデカくデカくなる。パン、羽、翼、嘴、ここで全部。マジかよ!?
█████博士: 何か問題でもあったか?
SCP-2384-1: マジかよ!? マジかよ!? マジカモ!? マジカモ!? 俺カモ。
(SCP-2384-1は数分間笑い続けた後、息絶えて壁の中へと吸収されていった。)