対象: 白濱祐
インタビュアー: エージェント██
<記録開始>
エージェント██: ご同行いただきありがとうございます。
白濱氏: いえ……それで聞きたい事というのは。
エージェント██: 先ほどお話しした通り、今日の内に連続して3名、あなたの中学時代の同級生が落雷の事故で亡くなっています。皆さん美術部に所属されていたとか。偶然にしては奇妙だと思いませんか?
白濱氏: 確かに、そうですね。……僕もそう思います。
エージェント██: そして5年前の今日、同じ美術部の同級生だった岸谷若奈さんが在学中、落雷で亡くなっています。辛いことをお聞きするかもしれませんが、当時の事故がどのようなものであったか覚えていますか?
白濱氏: ……はい、よく覚えています。あれは……中学卒業を間近に控えた、美術部としての最後の活動の日でした。あの日も今日と同じように、朝から小雨が降っていたのを覚えています。そして部活動も終わった夕方、校舎裏の桜の木に雷が落ちて、……その木の真下には岸谷がいて、それで。
エージェント██: 分かりました。ありがとうございます。単刀直入に申しますと、我々は今日起きた3件の落雷事故について、当時美術部だった白濱さんが何か情報をお持ちか、あるいは……何らかの方法で事故そのものに関与している可能性を考慮しています。
白濱氏: 確かに……美術部の同期で生きているのはもう僕だけですね。疑われるのも当然だと思います。
エージェント██: もちろん可能性の話です。それに現状から仮定して、もしもまだ落雷の標的となる人物がいるとすれば、それはあなたである可能性が高い。
白濱氏: はい……でも例えそうなったとしても、僕はなるべくしてそうなるんだと思います。
エージェント██: ……それはつまり、ご自身が落雷に打たれて死ぬことがですか?
白濱氏: はい。一体どんな力が働いてあの3人に雷が当たったかは知る由もないです。岸谷の事があってから、あの3人とは疎遠になっていましたし。でも、僕たち4人が雷で死ぬことには何の疑問もありません。あの日、美術部最後の日、本当なら僕たちも、あの桜の木の下にいたはずなんですから。
エージェント██: 桜の木……雷が落ちたという校舎裏の?
白濱氏: はい。岸谷は美術部最後の活動が終わった時、あの桜の木の下で記念写真を撮ろうって言ったんです。僕たち同期5人で。岸谷は卒業後、遠くの進学校に行くことが決まっていて、最後まで僕たちとの別れを惜しんでいました。あの校舎裏の桜の木は、入学当初の僕たちが最初にスケッチの題材にしたという思い入れもあって、それでどうしても写真が撮りたいって。……でも、僕たちは……行かなかった。……瑛斗と、真希と、遼介。あの3人は表面上、岸谷に友達であるかのように接していましたが、裏では冷笑するような扱いをしていました。思えば岸谷は美術部の部長としていつも張り切っていて、絵の上手さもコンクールの成績も、部内で頭一つ抜けた存在でした。放課後に美術室で駄弁っているばかりのあの3人とは、最初から反りが合わなかったんだろうと思います。そんな中僕は、岸谷の味方をするでもなく、当たり障りのない相槌であの3人との会話をやり過ごしてばかりいました。……今は後悔しています。
エージェント██: では白濱さんは他の3人とは違い、岸谷さんと本当の意味で友人だったという認識で合っていますか?
白濱氏: いや、そんな。……岸谷の人柄というか、絵に対する姿勢というか、接していてそういうものにずっと好感を抱いてはいました。……でも、友人だなんて、そんなものを名乗る資格は僕にはありません。あの日、岸谷が最後に記念写真を撮ろうと言った時、瑛斗が「自分たちは画材を片付けなきゃいけないから先に行っててほしい」というようなことを言って、岸谷だけを先に行かせました。でも、3人はすぐにそのことなんてどうでもいいように、いつもみたいな他愛のない話をして、真希が「4人だけで美術部の打ち上げに行こう」とか言い出して、僕は嫌な気持ちで一杯になりながら、「高校でもこの人たちとうまくやっていけるかなあ」とか、そんなくだらないことを心配してまた相槌を打って、そうしてだらだらとやっている内にいつの間にか外の雨は強くなって、次の瞬間凄い音が校舎裏で鳴って……それですぐに、雷が落ちたって騒ぎが起こって……。
エージェント██: ……だから自分たちはあの日、本当なら落雷に遭っていたはずだと?
白濱氏: ……僕はこの5年間ずっと、なんというかこう、不自然さを感じて生きてきました。岸谷だけが死んで、僕たち4人が生きているというのがどうにも……腑に落ちなかったんです。でも、皆が雷に打たれて死ぬなら、遅くはなったけど、あの日の間違いが正されるって、そう思います。
エージェント██: ……あなたの考えは分かりました。しかし、我々としてはあなたを危険に晒すような真似はできません。一時的にですが、こちらの施設で隔離させていただきます。
白濱氏: ……すみませんが、それはできないです。人を、待たせてるので。
[この直後、インタビューを行っていたサイト-81██の傍受用アンテナに雷が落ち、不明な原理で内部配線を通じて部屋の天井にある照明から放出され、白濱氏に直撃した。]
エージェント██: [咳込む]すぐに救護班を!
[白濱氏は即死と見られ、遺体の周りにはソメイヨシノの花弁が散乱している。]
<記録終了>