ハーグ市の公園で発見された影響個体
特別収容プロトコル: SCP-2407-JPの収容は現時点では不可能なため、対応リソースはその隠蔽に集中させます。
オランダにおけるチューリップの開花期間中1、オランダの主要なチューリップ栽培地に監視カメラを設置します。SCP-2407-JPの発生を確認した場合、警察官に偽装したフィールドエージェントを派遣し、影響個体を回収させます。
オランダ国内のマスメディア上層部とは、SCP-2407-JPの隠蔽協定を結んでいます。SNSや動画配信サイトなど、公共の統制下にないメディアにSCP-2407-JPの情報が流出した場合、ハッキングによる該当ポストの削除、投稿者の特定および記憶処理、カバーストーリー「AI画像を用いたジョーク」の流布を実施します。
[追加項目]現在、SCP-2407-JPの抑止計画「ミッション・エイフィド」が進行中です。
説明: SCP-2407-JPはオランダ国内で開花中の園芸品種チューリップ(Tulipa gesneriana)に影響を与える異常現象です。SCP-2407-JPの影響を受けたチューリップ(以下、影響個体)は、外見上「花芯から金色の粉状物質を噴出し始め、約 30秒掛けて全体を金色にコーティングする」と観測されるプロセスを経て、体組織を純金へと変化させます。この変化は不可逆です。プロセスが短時間で完了する点、粉状物質が完了と共に消滅する点などから、実際の原理は解明されていません。後述の錬金術課からの報告を参照して下さい。
財団が確認している限り最初のSCP-2407-JPは、2023/3/25/にリッセ町のキューケンホフ公園で発生しました。監視用Webクローラーが「公園の花壇に金属製のチューリップが植えられている」という内容のSNSポストを確認したため、諜報局オランダ支局は警官に偽装したフィールドエージェントを公園に派遣し、影響個体を回収させました。この時点では異常現象とは断定できませんでしたが、同年5/17までにオランダ各地で14本の影響個体が発見され、加えて変化プロセスの撮影にも成功したことから、この現象は正式にSCP-2407-JPにナンバリングされました。
翌2024年におけるSCP-2407-JP発生数は49件と、前年と比較して約3.5倍の増加でした。現状のペースで増加し続けた場合、2025年の発生数は約170件に達すると予想され、SCP-2407-JPを隠蔽しきれなくなる可能性があります2。O5評議会はSCP-2407-JPがLK-クラス“捲られたヴェール”シナリオを発生させる危険性を考慮し、各部門からSCP-2407-JPの抑止手段を募っています。
追記#1・オランダ政府からの資料提供に関して: オランダ政府からSCP-2407-JPの起源に関する資料が提供されました。近世オランダにおける正常性維持機関であった「カルヴァン奇跡調査庁」による報告書で、チューリップ・バブル3の期間中にSCP-2407-JPと同様の異常現象が発生していた記述が見られます。現在、歴史部門でさらなる情報を収集中です。
追記#2・錬金術課からの報告に関して:

科学部門 - 錬金術課
報告および分析
〈前略〉
ええ、錬金術課は実在しますよ。科学部門のれっきとした公式部署としてね。色々な理由 新人職員が財団を胡散臭く感じてはいけないから、などなど から、なるべく表に出ないよう心掛けてきましたが、今回ばかりはやむを得ません。何せ、ヴェール破綻の危機ですからね。
さて、結論から申し上げれば、SCP-2407-JPとは金のエーテルとチューリップの異常な結合現象です。便宜上、金のエーテルと呼んでいますが、実際は金のみならず人類が高価値と認める物品全般や、金融商品などの概念にも含まれます。地水火風のエーテル流が星の営みを形成するように、金のエーテル流は経済の営みを形成します。人の手による介入は可能なものの、完全なコントロールは困難な点も似ているかもしれませんね。
チューリップ・バブルがSCP-2407-JPの起源という説には、我か課も賛成です。おそらく、当時の人々の異常な投資熱 チューリップの球根一個が、船一隻分の金額で取引される例もあったとか! いやはや が、本来は起こりえないチューリップと金のエーテルの結合を促し、SCP-2407-JPを引き起こしたのでしょう。
幸い、チューリップ・バブルの終焉と共にSCP-2407-JPも収まったようですが、問題はその展開があまりにも急速だったことです。おかげで、大量の金のエーテルがチューリップからすっぱり切り離され、”宙に浮いて”しまった と例えれば、お分かり頂けるでしょうか。加えて、半ば伝説化したチューリップ・バブルに関する人々のイメージが、その状態を400年近くも維持したのでしょう。
おそらくは、錬金術の心得のある何者かが、この状態に目を付けた。その者は”大いなる封印4”をすり抜ける方法も知っており、チューリップを媒介に大量の金を錬成しようと企んだ。ところが質の悪いことに、肝心の錬金術の知識が足りず、実験の効果をオランダ中に拡散させてしまった というのが、今回のSCP-2407-JPの原因でしょう。
さらに不運なことに と言っては問題ですが、コロナ禍収束に伴うインバウンド5観光の増加などで、近年のオランダは好景気だそうですね。先に述べた通り、金のエーテル流は金銭の流れです。SCP-2407-JPの発生数が年々増加傾向にあるのは、オランダの金のエーテル流の活発化に呼応している可能性があります。これまた例えを用いるなら、流れの穏やかな小川より、暴れん坊の大河の方が大量の土砂を運んでくる、といったところでしょうか。
経済部門の知人の予測によれば、オランダの好景気は当分続くそうです。とは言え、オランダに「儲けるな」と頼む訳にもいきませんし、悩ましいところですね。
〈後略〉
—R・ディアギレフ、第七環の錬金術師
2024/5/20
追記#3・諜報局オランダ支局からの報告に関して:
ビルから押収した錬金術の実験道具
2024/5/27、諜報局オランダ支局がGoI”カオス・インサージェンシー”との関与が疑われる、アムステルダムのビルを調査しました。フィールドエージェントの到着時には既に内部は無人でしたが、地下室から錬金術の実験施設や、大量のチューリップの球根が発見されました。
現場を視察したディアギレフ管理官は「ここでSCP-2407-JPの原因になった実験が行われた可能性が高い」と分析したものの、「実験はあくまでトリガーにすぎず、再現してもSCP-2407-JPの停止は不可能」と結論しています。
追記#4・2025年に向けたSCP-2407-JP対策に関して:
提案#1
主導部署: 微生物学部門
概要: 致死性と感染力を高めたチューリップ条斑ウイルス (Tulip Streak Virus)を散布し、オランダ国内のチューリップを可能な限り駆除する。
結果: オランダ政府の反対により実施断念。
提案#2
主導部署: 諜報局世論操作班
概要: 人類のチューリップに対する評価を低下させ、金のエーテルとの結合を阻止する。
結果: 追記#4を参照。
追記#4・ミッション・エイフィドに関して: 2024/6/22、草案#2を元にしたSCP-2407-JP抑止計画「ミッション・エイフィド」を開始しました。予定されているオペレーションは以下の通りです。
ミッション・エイフィド、各オペレーション詳細(抜粋)
OP#: 01
概要: 歴史番組の放映
詳細: チューリップ・バブルがいかに多くの人々の人生を狂わせ、黄金期にあったオランダの経済を失墜させたか、歴史学者にもっともらしく解説させる。
OP#: 02
概要: デマの流布
詳細: 「チューリップは害虫が付きやすく、周囲の植物にも二次被害をもたらす」「チューリップの花粉には毒性があり、部屋に飾ると体調不良を起こす」「チューリップには破産、金の亡者、愚か者などの花言葉がある」などのデマを流布する。
OP#: 03
概要: フェイクニュースの放映
詳細: 「開発途上国で児童労働によるチューリップ栽培が行われている」「開発途上国でチューリップ栽培のために原生林が伐採されている」「世界各地でチューリップが侵略的外来種と化している」などのフェイクニュースを放映する。
OP#: 04
概要: 都市伝説の捏造
詳細: 「チューリップ栽培がマフィアなどの犯罪組織の資金源になっている」「庭にチューリップを植えると球根を食べる怪物がやって来る」「黒いチューリップの花びらは呪殺に用いられる」などの都市伝説を捏造する。
OP#: 05
概要: 投資詐欺防止キャンペーンの利用
詳細: 「必ず儲かる」と偽って仮想通貨へ投資させようとする詐欺師と、チューリップの球根へ投資させようとする近世の商人を並べて描くなど、投資詐欺とチューリップ・バブルを関連付ける表現を多用する。
OP#6で用いるアニメ番組のコンセプトアート
OP#: 06
概要: アニメ番組の放映
詳細: チューリップがモチーフのキャラクター「ベリダ」を主人公にしたアニメ番組を放映する。ベリダは自身の美貌を鼻にかけるなど、非常に不愉快な性格という設定。
OP#: 07
概要: フロント宗教団体の設立
詳細: チューリップの神を信仰する宗教団体「チューリップの栄光教団」を設立し、反社会的な活動を行わせる。具体例としては、通行人の多い場所でチューリップの扮装をして祈る、他人の所有地に無許可でチューリップの球根を植える、国会議事堂の前で「チューリップに人権を認めよ」と集団で要求するなど。
OP#: 08
概要: 誤食事故の誘発
詳細: 食料品店などに陳列されているタマネギにチューリップの球根を混入させる6。[倫理委員会の判断により中止]
追記#5・2025年のSCP-2407-JP発生状況に関して: 2025/05/30時点でのSCP-2407-JP発生数は37件であり、無対策だった場合の予想数を大幅に下回りました。O5評議会はミッション・エイフィドのSCP-2407-JPに対する抑止効果を認め、来年以降も継続する方針です。
追記#6・オランダ政府からの抗議に関して: 2025/06/20、オランダ政府が財団を「ミッション・エイフィドがチューリップの栽培や観光などの産業に損害を与えている」という理由で抗議しました。現在、渉外部門で対応を検討中です。









