アイテム番号: SCP-2408
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: 財団はGoI-0432の活動が疑われる地域の法執行機関への潜入・統制を行うことになっています。GoI-0432の異常な活動に関する情報は隠蔽されます。機動部隊プサイ-13("魔女狩人")はGoI-0432構成員(SCP-2408-1)の捜索及び抹殺任務を課されています。構成員が生け捕りされた場合、終了する前に(必要と見なされた任意の手段を用いた)徹底的な尋問が行われます。;遺体は解剖され、有害廃棄物プロトコルに基いて処分されます。
機動部隊プサイ-9("深淵を見つめる者")は、SCP-2408-3の研究員の警備を担当することになっています。SCP-2408-3に進入しようとする人物は発見次第終了されます。潜在的なアクセスポイントの捜索のために巡視を行い、ポイントは発見され次第安全に封印されます。
SCP-2408-3の収容・研究のため、武装遺物・生物収容エリア-06がモスクワの地下に建造されています。
説明: 主にソ連崩壊後に成立した国々において、異常犯罪組織およびサーキック・カルトとして活動するGoI-0432("ハンターの黒きロッジ")に関連したいくつかのアノマリーがSCP-2408に指定されています。SCP-2408-1は、総体的な肉体変容能力を有する遺伝的には正常な人間です。既知の変化箇所は以下の通りです。
- 2倍、時には3倍の質量増加(主に筋肉)。
- 骨密度の増加。
- テストステロン産生の増加(標準的な成人男性の約6倍)。
- アドレナリン産生の増加(標準的な成人男性の約4倍)。
- 肉体の質量増加に比例する精巣・副腎、脳を除く臓器の増大。精巣・副腎は質量増加との比例を遥かに超えるサイズになるが、脳には大きさの変化は見られない。
- 様々な非ヒト生物の身体的特徴の発現(例として、オオカミ、ヤギ、ブタ、クマ、シカ、タコに類似する特徴が記録されている)。
- 二脚運動、ないし四脚運動へ移行する能力。
- 感覚機能の増幅(視覚、聴覚、味覚/嗅覚は人間の知覚的限界を越えている)。
- 筋力、敏捷性、再生能力の増幅。
プロテウス-クローネンバーグ症候群とは異なり、SCP-2408-1個体は細胞安定性を維持しながら可逆的な変化を行うことが可能です。こうした変形がいつまでも維持できるものなのかどうかは分かっていません。完全な変身は10~30秒以内に遂げられます。
SCP-2408はオペレーション・ファルケンラス中に発見されました。
オペレーション・ファルケンラスはGoI-0432の潜入を含んでいます。"ハンターの黒きロッジ"(あるいは単に"ブラックロッジ")として知られるGoI-0432は、恐喝、殺人、盗難、賭博、売春、人身売買、薬物売買、武器売買、非合法な闘技場と関係しています。これらの活動は本質的には異常なものではありませんが、GoI-0432の異常能力は彼らの活動に常軌を逸した影響を与えてきました。そのような異常案件は以下の通りです。
- 異常な医薬品の密売・流通、主にアナボリック・アンドロジェニック・ステロイド "Гнев"として販売されていた。 Гневの静脈注射は、筋肉と骨の異常なレベルでの成長を引き起こす。継続摂取及び(または)過剰摂取はプロテウス・クローネンバーグ症候群及び(または)死をもたらす。分析はこの物質が未確認の動物種の副腎から採取されたものであることを示唆しており、そのためSCP-2408-2Aに指定されている。
- 強度の麻薬であり、流行しつつある"クラブ・ドラッグ"である "Похоть"の密売・流通。通常はガラスの小瓶に入れて売られ、副鼻腔への通気を通して体内に摂取される(注射は例外なく致命的であることが判明している)。当該物質は多岐に渡る幻覚、動悸の強まり、性的興奮の増大、幸福感をもたらす。研究によりヘロイン以上の中毒性を持つことが明らかになっている。これらの効果は非異常性(当該物質は恐らく利益を生み出すために製造されている)であるものの、物質それ自体は未確認の種の髄液に由来すると思われ、そのためSCP-2408-2Bに指定されている。
- 財団によって異常性があると見なされた病原体や毒素を含む生物兵器の密売・流通。"Красная Смерть"の製造・流通は非常に高レベルの脅威に相当する。既にSCP-███に指定されており、"赤い死"に関する情報は現在、最小権限の原則の下でのみ入手できる。
- GoI-0432による犠牲者は巨大な有機体の棘に貫かれるか、バラバラに引き裂かれた状態で発見されている。血による蹄跡、角か牙を持つ動物による刺突と一致する傷、大型のオオカミのような生物を示唆する歯型といったように、死体は複数の異なる動物による襲撃を示唆する損傷を示している。
ソ連の崩壊を契機として、多くのアノマリーやそれに関する文書がGRU"P"部局の管理下から財団へ譲渡された際に、財団はGoI-0432の存在を認識しました。GoI-0432の実在は、GRU"P"部局の元局員によって更に裏付けられました。彼らはGoI-0432によってもたらされた脅威や関連するアノマリーを完全には収容、あるいは無力化できなかったようで、ある情報源は当該組織が何度か明らかに壊滅したこと - 数カ月後にはどうやらより強化されて再び姿を現したことを記述しています。
GSI "ブラックロッジ" "P"部局 第五課
承認済 12.III.1959 印字 NR:3
署名 .................. S
GRU-9-P-V 課長 D.NR: 20-III-1959
責任者: イヴァン P. クルピン
詳細: GSI "ブラックロッジ"とは、異常な手段を通じて違法かつ常軌を逸した活動を拡大させている犯罪組織である。現在、GSI "ブラックロッジ"はソビエト全土で活動しているが、犯罪者階級から"古き祭壇"と呼ばれるモスクワのとある場所を本拠地にしていると考えられている。この場所についての情報は、儀式の生存者であるサムイル T. アンクディノフから主に収集された。この男の生存はもはや不要であると見なされた後に、犯罪への関与のかどで処刑された。
尋問記録 "P"部局 第五課
07.III.1959 D.NR: 12.III.1959
文書12-III-1959に添付
添付文書は、かつて"ブラックロッジ"の新参者であり、儀式から生還したサムイル T. アンクディノフの尋問の写しである。尋問者は████ █. K████████。下顎の欠損のため、対象は筆談でしか応答することができない。対象は特定のアノマリーに関する知識を殆ど持っておらず、その体験から強度の心的外傷を負っているようだ。対象はモスクワ・アルバート地区の下水道から労働者たちによって回収された。
K: 祭壇はどこにある?
STA: 「分からない。地下か?見ることはできなかった。目隠しされてた。」
K: お前は内部で何に遭遇した?気付いたことを全て教えてくれ。
STA: 「古い神殿。異教のだ。黒い石。血。肉。詠唱。太鼓の音。」
K: 何をさせられたんだ?
STA: 「闘うか死ぬか。それしかなかった。オロクのため。狩りの栄光のため。俺は弱かった。取るに足らない。無価値だ。」
K: どうやって逃げた?
STA: 「死体の間を。血が格子に流れてた。這って逃げた。血と肉と骨。より深みに。暗黒しかなかった。当然だ。生きるに値するほど強くなかった。名誉と共に淘汰されるべきだったんだ。」
オペレーション・ファルケンラスの一環として、機動部隊プサイ-13("魔女狩人")のエージェント ████ S████は1994年4月11日にGoI-0432への潜入任務を正式に課されました。機動部隊プサイ-13はプロジェクト:シトラ=アキュラの一環として結成された、財団・GOC共同の高機密指定部隊です。機動部隊プサイ-13はサーキック組織への潜入と脅威度の高い構成員の終了を目的としています。
プロジェクト:シトラ=アキュラの一環として、機動部隊プサイ-13の隊員は対オカルト欺瞞戦略(Counter Occult Stratagems,COS)及び腐食性/焼夷性の武装運用についての訓練を受けています。各エージェントは焼夷弾及び腐食性の弾薬が使用できるように改造されたSIG Sauer P226を装備しています。
犯罪者としての名声を高め、最終的にGoI-0432の目を引くために、エージェント S████は雇われの殺し屋 "ドミニク・ムイシュキン"としてモスクワで活動しました。1995/01/20、エージェント S████はGoI-0432構成員からの連絡を受け、Красные фонариに訪れるよう指示されました。
Красные фонари("レッド・ランタンズ")はゴルヤノヴォ地区に存在する人気のナイトクラブ/性風俗店です。ブラックロッジのフロント組織として用いられており、強制売春・人身売買・違法な(大部分が異常な)麻薬の流通への関与が疑われています。現地の法執行機関は汚職やGoI-0432による脅迫のために介入していないと考えられます。
任務の繊細な性質のため、エージェント S████は記録装置を装備していませんでした。その代わりに、情報はデッド・ドロップを通じて、財団に伝達されました。SIG Sauer P226を携行したエージェント・S████は、1995/01/25の午後9時にナイトクラブへ進入しました。エージェント・S████は近づいてきた用心棒に観察され、短い会話の後に彼の後に付いて行きました。ナイトクラブにいたエージェントは、S████がメインフロアを見下ろす2階のVIPスイートへ送り届けられる様子を報告しています。エージェント・S████は、1995/01/29の午前8時までナイトクラブから退出しませんでした。その後、およそ午後9時にデッド・ドロップ地点へメッセージが送り届けられました。
遅れてしまって申し訳ない。冒頭から語ることにする。
俺は2階に連れて来られ、6人の男と1人の年老いた女性が囲む円卓の前へと突き出された。;GoI-0432のトップであるオタリ・"ズヴェーリ"・アイオサヴァは、空席に面する一番奥の席に座っていた。彼は座るように言い、俺はそうせざるを得なかった。彼は威圧的な雰囲気を纏っていた。;筋骨逞しく、笑みを見せることもサングラスを外すこともなかった。他の面子が幹部であることは薄々察していたが、彼らはほとんど黙っていた。
彼はいきなり切り出した - 前口上も無しに。ちょっとしたウェット・ワークを嫌がらない奴に会えて嬉しいと。「新参者は血を流すことを厭わない」、彼がそう言うのを覚えてる。
アイオサヴァは、俺が同胞を持たないことは知っていると言った。同胞を持たないことは稀であり、モスクワで誰にも頼らず仕事をするのは危険だと。勧誘は何度か受けていたが、連中に時間を割く価値はなかったので「おととい来やがれ三下共」と言い放ってやったと彼に告げた。
彼の返答を意訳する:「自分のことをタフだとでも思っているのか?随分と威勢のいい言葉を吐くが、お前さんは運が尽きかけようとしているただのクソ馬鹿野郎かもしれないぞ。」
彼の真意を読み取るのは難しかった。口調や身振りこそ強硬だったが、挑発的な気配は微塵もなかった。そのギャング共は弱かったと彼に言った。俺はこう答えた:「なぜ手持ちの中で一番弱いカードで俺の運を試すような真似をした?」
老女がアイオサヴァに寄りかかり、耳打ちした。彼女は目に見えて青白く、変わったタトゥーに覆われていて - 彼女くらいの歳のロシア人女性としては異様な風貌だった。チンピラ連中を相手取るよりもよっぽど不安な気分にさせられたよ。
彼は言った。「その血気は間違ったものだぞ、Kорова(俺に張り付いた言葉。説明が難しい、調べてくれ。)だが、度胸はあるようだな。一度、力を示すチャンスをやろう。ちょっとしたイニシエーションを受けてもらう、腰抜けを間引くのにちょうど良い儀式をな。」繰り返すが、この内容も意訳したものだ。
彼は指を鳴らして言った。「まずは、飲んで楽しもうじゃないか。」
ウェイトレスがウォッカのボトルといくつかのグラスを運んできた。伝統に倣い、我々はそれぞれのショットグラスに酒を注いだ。アイオサヴァが乾杯し、俺はグラスをぶつけて返し、それから全員が飲み干したんだ。
そして次の瞬間には、縛り上げられ、身包み剥がされた状態で冷たい床に伏しているのに気が付いた。頭にはフードが被せられ、口にはしっかりとしたボールギャグが嵌められていた。(そこまでおかしな事じゃない、レッド・ランタンズにはBDSMのような趣向があった)。俺は酒を自分で注ぐことでまさにこのような状況を回避できると考えていた。もしかすると、グラスの底に何らかの鎮静剤が塗布されていたのかもしれない。分からない。些末事だ。何もかもすっかりおかしくなっていた。
やがて連中は俺の元に来て、身柄を運び去った。戦おうとしても無駄だった。移動はおそらく1時間から2時間の間続いた。古い導管と水の流れる音が聞こえたのを覚えている。空気は冷たく、湿っていた。土臭い香りの後に、錆と淀んだ水の匂いがした。
声が聞こえた。全員がロシア語を話している訳じゃなかった。「Szidaas nin」、「vartaas x dask」とか何とか言ってた。意味は分からなかったが、俺はあれがサーキックの言葉だったと確信してる。
連中は鎖で俺の首をどこかに繋ぎ止め、それから俺はそこが支柱、あるいは何かの支持梁であることに気付いた。彼らは俺の手足と足首を縛っていたロープを解き、フードを引き剥がし、ギャグを取り外した。
俺は円形競技場に似た薄暗い場所に立っていた。そこは相当に古い場所のようだった。俺と同じように、首を柱に繋がれた4人の男がいた。おそらくは数百人規模の大群衆もおり、高所から我々を見下ろしていた。赤と白のローブを着込んでいる者もいれば、平服やビジネススーツを着ている者もいた。意識が曖昧になってからは、首の付け根や至る所を刺されるような感覚があった。
俺は詠唱を耳にした。頭蓋がひび割れ、目玉が抉られ、歯の間に肉の感触があったのを覚えている。
あれは祝祭だった。ドラッグ、食べ物、女、そして暴力の残像 - 出来事の順番は必ずしも上記の通りじゃない。記憶に混乱がある。漠然とした、まとまりのないイメージしか無いんだ。詳細な情報が欠けていることを謝罪する。
肌に血がこびり付いたままアパートの自室で目覚めた。タトゥーが刻まれていたが、それに関する記憶はまったく無く、面食らった。 - タトゥーの文様は、角と牙を持つ黒いサイクロプスの頭蓋骨に似ている。奴らは俺を仲間の一員として認めたんだと思う。上半身裸のまま何度か部屋の外へ出てみる。監視作戦隊に何枚か写真を撮るよう指示されたし。 - タトゥーに何らかの意味があるのかどうか確認願う。
以後、財団はエージェント S████からのミッションレポートを隔週で受け取ることになります。
GoI-0432フロント組織の疑いアリ:
ロシア連邦
郵便番号353465
クラスノダール地方
ゲレンジーク市
ul. ██████ 94
色んな意味で、ブラックロッジは他のブラトヴァに似ている。彼らは悪党であり、単純かつ明白、そして大抵は欲望に突き動かされている。また彼らはその所業が物語っている通り、一段と悪辣だ。財団もこのブラトヴァ以上に残酷にはなれないだろう。 - 奴らは一欠片の廉恥心すらシベリアに置いてきてしまった。
太母たちは、組織犯罪の界隈じゃそちらがきっと遭遇することのない存在だ。ボエヴィク共は、彼女たちを鬼婆、しわくちゃ婆、魔女といったような名称で呼んでいる(面と向かって言うことはないがな。)サーキック勢力が彼女らと共にあるのは明白だ。総勢12人の彼女たちは、互いを"姉妹たち"と呼び合っている - 女祭司、あるいはそんなような存在だ。全員が同じ装束を身に付けている - 黒いサラファン、染色された革のエプロン、肩や髪を覆う赤と白のショール。常に裸足であり、あまりにも多くの入れ墨を纏っている。彼女たちはカルキストではないが、それでもブラックロッジを超える強大な影響力を振るっている。
"犯罪のアンダーグラウンド"とは、文字通りブラックロッジを意味している。モスクワの地下には別世界がある。放棄されたソ連の地下シェルター。メトロ-2。忘却されし穴蔵。だが、それは俺たちが知るよりも遥かに深く張り巡らされている。その下には、正真正銘の古代に建造された何かが存在している。敢えて言えば、俺はモスクワがサーキック神殿の直上に建造されたと考えている。
そこには監獄がある。錆び付いた拷問器具。革命以前のものだ。おそらく動乱時代の遺物だろう。それとは関係なく、サーキサイトどもは伝統を受け継ぎ続けているようだ。そこは悍ましい神殿よりはずっと新しく、浅い階層だ。17世紀中にこの辺りに存在していた建造物には研究する価値があるだろう。
俺はまだこれらの場所について多くを知らない。情報は知る必要がある者にしか教えられないようだ。しかし、俺は彼らが成す繋がりの弱点を見つけたと思う。 - 太母たちの1人だ。彼女を"ファイブ"と呼ぶことにしよう。
ファイブは老衰の兆しを見せている。彼女は温和で、人懐こく、何より人を疑うということを知らない。彼女からいくつかの重要な情報を収集することができた(が、その中に真実がどれだけ含まれているのか断言することはできない)。
彼女によれば、ブラックロッジは古きと新しきを併せ持つ組織だ。他のブラトヴァと同様、ブラックロッジもСучьи войныが起きていたシベリアの強制収容所に端を発する。オタリの父であるアウグスト・アイオサヴァは、1951年にブラックロッジの再興を果たしたようだ。脱獄を先導・成功させた後に、彼がシベリアの荒野で遭遇したもの。魔女たちが彼を捜し当てたのは、まさにその時のことだった。彼女たちは彼を導き、"彼が忘れてしまったもの"を示した。 - 俺はそれがどういう意味か尋ねたが、彼女は心ここにあらずといった感じだった。
自分の話に耳を傾ける者を得て、彼女はご機嫌のようだった。古いしきたりを懐かしむ良い機会だったのだろう。彼女はこの"秘密"を誰にも漏らさないようにと言って、いくつかの古く、擦り切れた文書を手渡した。その経典は原本ではなかったが、彼女が一次資料から書き写したに違いない内容が記されていた。断片的なものではあったが、研究者は見たがると思う。その全文を書き留めるつもりだ。
また、ファイブはモスクワの失われた歴史について語った。別の時代において、ここは異なる名称 - サーキックの植民都市"Orok's Fall" - として知られており、戦の聖人が"神々と暴君たちの血のために"自らを犠牲とした場所だった。この都市が欲されることは決してなかった。ここには常に邪悪な何かが付き纏っていたんだろう。
彼女が古代都市を説明する際、彼女が用いる専門用語は一風変わって身体構造を意味するものになった。Orok's Fallにおける個々の場所は"心臓"、"肺"、"頭蓋骨"という風に言及される。
俺の名前、並びに俺がしてしまったこと(そちらでも間もなく聞き及ぶだろう)を最終報告書から削除することについて、特別要請を行う。俺が首尾よく任務を完了させ、生きたまま現状から脱することができた場合、その後に記憶処理の即時適用を要求する。
俺の標的の大部分は堕落した奴らや犯罪者だった。潜在的な競争相手などだ。しかし、この件に関しては違った。オタリ、あの最悪のクソッタレは俺たちに毛色の違うメッセージを残すことを望んだんだ。モスクワにはブラックロッジ以外のサーキック信者たちもいる。オリガルヒのことだ。政府職員にもいる。連中の内の1人がブラックロッジの取り締まりを望み、この都市に僅かに残る真っ当な有力者の中から味方を探していた内務省の██████ █████████という男について知らせてよこした。
報復の対象になったのはその家族だった。妻と娘。殺すな。見せしめにしろ。決して癒えることはない傷跡。
<データ削除済>
再びファイブと話したが、未だに起きてしまったことから気持ちを切り替えられていない。彼女は他の連中のようではなく、俺は彼女が本当に耄碌しているのかどうか疑い始めている。彼女が俺のことや自らの信仰について話す際には、後悔の響きがある。
サーキシズムについて彼女に更に詳しく尋ねた(ご心配なく、"Sワード"は使わなかったさ)。それから、彼女がイオンについて語った時、俺はまだ幼かった時分、バブーシュカからイエスと古の預言者たちのお話を聞いていた頃に戻ったような気分になったんだ。 彼女は気まぐれに、そしてバブーシュカのように、美化された拷問だの殺人が関わる部分は飛ばして語ってくれた。
俺は研究者や歴史家、あるいは神学者でも何でもない。だが、これらのカルト、この"サーキシズム"は元々はこのような教えではなかったと考えてる(とはいえ、それはほとんどの宗教にも言えることだろう)。ファイブは道義心、友愛、美徳、解放について語る。悪しきダエーワに対抗するアディウムの優しき馴鹿の民。彼女は年老いているが、サーキシズムの信仰は彼女が生まれるずっと昔に変わり果ててしまったのだと思う。;おそらく彼女は経典を曲解し始めてる。狂気と暴虐の層の下に善を見出す彼女は、おそらく間違っている。
俺には説明できる。ずっと変わらないことだ。もう一つの失敗した革命があった。とにかく、俺はファイブが異端者なんじゃないかと思ってる。彼女が秘密を打ち明けてくれたのは、おそらくそれが理由なんだろう。他の連中は、太母たちが物事を見通すことができると噂している。時折、彼女は俺の正体を知っているんじゃないかと思うこともある。
そうすると、受けてきた訓練は俺に彼女を殺すよう命じてくる。当分の間は、俺はその囁きを無視するだろうと思う。どのみち彼女のような情報源を殺すことに意味などないのだから。少なくとも今はまだ。
追記 闘技場について。あそこはイニシエーションのためだけにある場所じゃない。儀式を模したブラッドスポーツ、もしくはブラッドスポーツを模した儀式が行われている。出場するのは6人で、勝ち残るのは1人のみ。多くの人々がそれを見るために喜んで金を払い、その勝敗に賭ける。多くは獣の頭蓋骨と清潔な高級服を身に着けている。ファイブはそれを快く思っていない;クリスマスの商業化に愚痴をこぼす連中のような感じさ。ブラックロッジがネオ・サーキックに分類されることは知っているが、太母たちは明確にプロト・サーキックだ。彼女たちは伝統的で、大祭日を祝い、更にはより大いなる善という観点から物事を考える。他の奴らはどうすればより強く、豊かになれるかなどといったことばかり気にしている。オタリは獣じみた狡賢さを持っているが、まったく知的じゃない。 - また、奴はカルキストであるようにも見えない。(正確に言えば、その用語自体まったく使われていない。)
連中は俺を"監獄"で働かせている(この場所が文字通りそう呼ばれている訳じゃない)。前にも書いた通り、俺はこの場所が革命以前に頻繁に用いられていたと確信している。ツァーリたちはサーキサイトが祭壇の上にどれだけの生贄を捧げたのか知っていたのだろうか。おそらく知っていただろう。驚くほどのことじゃない。サーキシズムは疫病であり、その感染者は俺たちが想像する以上に多い。
連中は実際にはその場所を"底の底"と呼んでいる。どことなく"監獄"より不気味な響きだ。
拷問。情報収集。いつも信用に足る情報が引き出せる訳じゃない。見せしめが作られている。ある者はブラックロッジに逆らわないよう警告し続けている。臓器の収獲も行われている(そちらはサーキック連中が木から生えてくると思っているだろうな。)往々にして、それはただオタリのサディズムを満足させるだけだ。
他のものとは異なる監房が存在している。あるボエヴィクにそのことについて尋ねた。そいつは知らないと言ったが、それはつまりそいつには知る必要のないことであり、俺にとってもそうであるということだ。
他の監房の錆び付いた縦棒とは違う重い扉には、覗き見るための小さなスリットと食事を入れるスペースが据え付けられていた。その内部に男、あるいは男だったモノを見た。彼の顔、少なくとも目と鼻はその箇所全てが抉り取られて無くなっていて、今はただ虚が開いていた。その穴に見つめ返されているようで、俺はサイクロプスを思い出した。どことなくブラックロッジのタトゥーを彷彿とさせる、関係があるのかもしれない。
彼は全裸で、胡座をかいて地べたに座っていた。入れ墨や傷跡、乾いた血液に覆われた筋肉質な身体だった。鎖で繋がれたフックで身体が固定されていて、彼は動きたいと思っても動けないようだった。正直な話、最初見た時には彼は死んでいると思ったが、荒い息遣いと胸郭の伸縮運動が確認できた。
彼がどうしてそのようにされてしまったのか、俺には検討もつかない。
ファイブがちょっとした秘密を聞かせてくれた。オタリにはミハイルという名の弟がいる。腹違いの兄弟とのことだ。そして、その彼こそ監房の中で半死半生になっていた人物だ。
どうやらオタリとミハイルは多少対立しているようだが、ミハイルが投獄され、顔面を潰されたのには別の理由がある。ファイブはそのことに関して熱狂的だった。ミハイルは何らかの儀式に志願したようだ。
これを書いている時点で相当にメチャクチャな状態になってる。これが麻薬かどうか分からない。報告書と一緒にガラスの小瓶を置いておく。幻覚が見える。クラブにいた時からずっと物の見え方がデタラメだ。建物をずっと凝視していると頭痛がしてくる。昨日は食いかけの女が転がってる便所の個室で目が覚めた。
レッド・ランタンズの娼婦ども - 奴らはその都度人間のように見えるが、ああ、こういう仕事をする上で「モンスター」なんて表現を使うのが馬鹿げたことなのは分かってるが、連中を説明するのに適切な表現が他に見当たらないんだ。奴らは俺を浅ましい、飢えた眼で見つめてきやがる。ファイブは以前そいつらをルサールカと呼んでた。ただの比喩表現だとばかり思ってたが、今となっては本当にそうだったのか断言できない。奴らは新鮮な肉の後を追って、奥の部屋にズルズルと音を立てながら引っ込んでいく。小一時間も経つと満足気になって戻ってくるが、一緒に入っていった男どもが出てきたことは一度もない。
それからピットファイトを観戦してた時のことだ。観衆の中に人間とは全く違う奴らが混じっていた。はっきり説明できない音も響いていた。心臓の鼓動のような感じで、たまに唸り声のようになった。 - 音の出処は血や死体が滑り落ちていく先、ずっと深みだ。
1995/05/28、エージェント S████のMIAが宣言されました。
1995/06/04、多くの審議の後に、レッド・ランタンズを含む複数のブラックロッジ拠点に対する強襲が行われました。襲撃中、変身を遂げるSCP-2408-1が直接観察されました。彼らの攻撃と異常に増幅された戦闘能力にも関わらず、SCP-2408-1の脅威は焼夷兵器の使用によって徹底的に無力化されました。(財団側は思いがけない被害によって負傷者が僅かに出た程度でした。)作戦の継続につれて、ブラックロッジが最小限の人員 - 区域内における構成員のごく一部だけを配備していたことが間もなく明らかになりました。
ミッションはSCP-2408-3の発見をもたらす結果となりました。
SCP-2408-3は、モスクワ市の地下深くにある巨大洞窟内部に位置する巨石神殿複合体です。およそ3000年前に建造されたと推測されており、これはロシアにおける最古の構造物であると同時に、サーキック文化集団の標式遺跡です。SCP-2408-3の構成物には、無機的構造と有機的構造という2つの形態があります。無機的部位は外側を取り囲んでおり、斑れい岩(一般に"黒御影石"として知られています)の積み重ねられた巨石によって構築されています。異常な有機的部位は内部を満たしており、骨や筋肉、内臓から構成されています。
複合体の「地表」の中から、闘技場と大祭壇が発見されました。洞窟の天井からは12人の年老いた女性の死体が吊り下がっていました。 - どうやら腹部から腸を取り出され、自らの腸管で縛り首にされたようです。床に設置された鉄格子は食肉加工工場で見られるものと類似しており、おそらくは血液や大まかな臓器を捕えるべく設計されています。
SCP-2408-4はSCP-2408-3の直下に位置する人型生物であり、外部に向けて手足を伸ばした状態で横たわっています。当該実体はどうやら身体を動かすことができず、おそらく脳死状態にあります。SCP-2408-4は遺伝的には(通常は休眠している遺伝子の多くが発現しているという一点を除いて)ヒトであり、ヒトに自然発生することのない多くの身体的特徴が表れています(特定の遺伝子やほぼ例外なく致命的な奇形を除く)。 - その詳細は以下の通りです。
- 顔の中央に存在する1つの眼。
- 突き出した鼻がなく、平坦な部位に呼吸用のスリットが開いている。
- 牙、角、その他様々な角質突起物。
- 先端が尖った歯による三重歯列。(その体躯に比例して)巨大化した、多くの筋肉が付いた顎。
- 内骨格に一致する部分的な外骨格。骨格は両方とも異常に強化されており、その引張強度はカルビンに匹敵する。
SCP-2408-4の最も注目すべき異常性はそのサイズであり、その身長は推定300メートル、体重は推定70,000~72,000トンです。この値は陸生動物の物理的に生存可能な上限を遥かに超えるものです。その腕の異常な長さ(身体の他の部分と比較して)に基づき、おそらくSCP-2408-4はゴリラと似通った足取りで移動します。更なるDNA分析によってある種の矛盾が発見され、これによりSCP-2408-4は潜在的には100,000体を超えるヒト、あるいはヒト以外の生物を吸収することで、その異常な生物体量の一部を充填したという仮説がもたらされました。
SCP-2408-4は3つの異なる縦坑を介してのみ直接接近することが可能であり、その内の2つには採掘作業で用いられるものと類似の機械式リフトが備え付けられています。縦坑はそれぞれ身体の特定の箇所(頭蓋骨、胃、股間)と接続しており、更なる縦坑の掘削は構造の不安定化に繋がり、モスクワの広範な領域を危険にさらす可能性が懸念されています。胃への経路には機械式リフトが無く、闘技場と直結しているようです。 - つまる所、SCP-2408-4へ滋養を供給しています。
SCP-2408-4の筋肉組織からは、3000個を超える青銅製の矢、銛、槍(広い範囲のユーラシア文化に属するものです)の先端部分が摘出されました。SCP-2408-4が現在不具状態である正確な原因は分かっておらず、身体上のある部位はゆっくりと崩壊しているように見える一方で、別の部位は再生しているように見えます。
SCP-2408-4の身体はSCP-2408-2A及びSCP-2408-2Bの採取源であると考えられています。財団作戦隊員によるSCP-2408-4の発見に先立ち、SCP-2408-2を産生する特定の臓器及び分泌腺(副腎、松果腺、精巣、視床下部など)が外科的に除去され、GoI-0432の構成員によってモスクワの外に持ち出されたことが物証から示唆されています。これらの異常な有機物体の安全な封じ込めは最優先事項です。
現時点において、GoI-0432はその勢力を拡大すると同時に、SCP-2408-2B中毒が蔓延しています - 長期間の中毒者は異常な身体的特性を獲得します(例:革のように硬質な皮膚、強膜(白目)の黒色化や虹彩の黄変、骨格の突出、その他の様々な変異)。全てのSCP-2408-2B中毒者を収容することは不可能であるため、監事司令部は麻薬の被害を受けている人々の捕獲と指定された抹殺サイトにおける人道的終了を命じました。(研究のために認可されない限り)遺体は有害廃棄物プロトコルに基いて処分されます。この指令はSCP-2408-2Bが適切に収容されるか、根絶されるまで有効です。