SCP-2408-JP
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2408

SCP-2408-JP山頂。

アイテム番号: SCP-2408-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-2408-JP周辺区域における都市再構築現象の発生頻度の高さが理由となり、オブジェクト領域は実質的に一般社会から隔絶された位置に存在していると見做されています。従って、SCP-2408-JPには収容手順14-ヘイム(都市内隔離領域標準的収容)が適用されています。特別収容プロトコルはSCP-2408-JP-1が発信する画像の法則性解明に重点を置いて構成されています。

SCP-2408-JPの山頂には常に3機以上の剛体ドローンが待機しています。SCP-2408-JP研究チームに所属する職員は、剛体ドローンを経由してSCP-2408-JP-1から傍受した通信データを解析し、復元された画像を別添のSCP-2408-JP記録ファイルへと保存します。ドローンが再構築現象による被害を受けた場合、新規のドローンをSCP-2408-JPへ輸送する任務をサイト-81GB所属の運輸部門が担当します。東京内で活用可能な安定した収容資源の乏しさから、再構築現象に備えた防御はCクラス以上の職員が滞在/通過する領域に対してのみ実施されます。

説明: SCP-2408-JPは、東京都6区の都市再構築現象発生区域の中央部に出現した標高およそ2,230mの山岳です。2017年以前の東京都武蔵野市が降雪の殆どない気候であったことに反し、SCP-2408-JPは一年を通じて常にマイナス5℃未満の寒冷な気候で安定しており、標高200m以上の区域の大半は厚い積雪によって覆われています。雪原の下に埋まっているのは多摩地区の建築物に多用されていたと見られる木材・鉄骨・コンクリートの集積物であり、通常の山肌を構成するような岩盤は認められません。東京都6区内の他区域における都市構造代謝スパンが最長でも32時間であることと対照的に、SCP-2408-JPは2018/01/31から少なくとも2年以上、山岳から他の地質構造への再構築現象を見せたことがない点において特異的な領域です。

SCP-2408-JP-1はモンゴロイドの特徴を備えた30代のヒト男性型実体であり、ブランド不明のトレンチコートを主軸としたモノトーンの洋装を常に身につけています。実例はSCP-2408-JPの九合目となる標高およそ2,000mの地点から、海抜30m以下の平野までを連続した滑空によって移動することが可能であり、これは実例の左手に保持されている黒色の蝙蝠傘が受ける空気抵抗によるものであると推測されます。傘のサイズが日常生活で雨除けに使用されるものと同等であることに反し、実例が有する滑空能力は翼長10m級のハンググライダーを使用した状態に匹敵しているように観測されます。この他に、SCP-2408-JP-1は2015年にApple社が発売したモデルのスマートフォンと類似した外見の小型情報端末を所持しています。

SCP-2408-JP-1とのあらゆるコミュニケートの試みは現在まで成功しておらず、実例が有する瞬間的な消失能のために身柄の確保も全て失敗に終わっています。実例を撮影した断片的な映像記録は、2017/12/17に武蔵野市内で行方不明となった気象予報士、山岸やまぎし ごう氏(当時29)と酷似するプロモーションをSCP-2408-JP-1が有することを示していますが、山岸氏の所持品の中にSCP-2408-JP-1が所有している各種の異常物品は含まれていなかったことが判明しています。

SCP-2408-JP-1の主要な異常性は、後述するイベント/2408-JPおよび画像/2408-JPを通して、東京内の超常気象を予測するかのような振る舞いを見せることです。SCP-2408-JPの管理にあたっての目標は、本オブジェクトから獲得可能な情報を用いて、東京現実崩壊性広域災害の発生予測精度を向上させることにあります。イベント/2408-JP並びに画像/2408-JPの概略は本報告書の補遺を、完全な記録は別添のSCP-2408-JP記録ファイルをそれぞれ参照してください。

補遺1 - イベント/2408-JP概要

SCP-2408-JP内部では、約23時間の周期で以下に述べるイベント/2408-JPが発生します。イベント/2408-JPはSCP-2408-JP領域内にSCP-2408-JP-1が出現し、消失するまでの約40分間の行程の総称であり、イベントの結果として後述する画像/2408-JPが出力されます。

イベント/2408-JPの主要なタイムライン

1. SCP-2408-JPの九合目にあたる特定領域に、SCP-2408-JP-1が出現する。実例の出現する瞬間の詳細な映像記録の撮影は、当該領域で常に発生している吹雪の影響により難航している。

2. SCP-2408-JP-1は左手の蝙蝠傘を展開し、数歩〜十数歩の助走ののちに離陸する。実例が履いているのがビジネスシューズであるにもかかわらず、実例は深度10m以上の雪原を走る際に通常発生するであろう抵抗を受けていないように観測される。

3. 滑空中のSCP-2408-JP-1は右手で情報端末のカメラを構える。実例はSCP-2408-JPから肉眼で見渡すことが可能な範囲の東京の空と、山裾に広がる都市構造群とを撮影している。SCP-2408-JP-1の飛行ルートは吹雪の風向きによって多数のバリエーションに分岐するが、いずれの場合でも実例がルートの中途で墜落することはない。SCP-2408-JP-1の服装は氷点下の環境における保温性が不十分であるように見え、実例がシバリングを行う場面が頻繁に観察される。

4. 約30分間の滑空ののち、SCP-2408-JP-1はSCP-2408-JP山麓のいずれかの地点に着陸する。実例の着陸地点に法則性は見受けられないが、実例が着陸前にSCP-2408-JP領域内から脱出する事例は極めて稀である。

5. SCP-2408-JP-1は傘を閉じ、情報端末を操作する。この時点で情報端末からは5G規格の無線通信用の電波が発信され、財団の標準的な盗聴設備を用いて傍受することが可能である。送信されている情報は件名と本文が空白で、1〜6枚の画像(以下、画像/2408-JP)が添付されている電子メールの形式を取っているが、本来の送信先は空欄として表示されており、追跡には成功していない。

6. 情報の送信を終えたSCP-2408-JP-1は、トレンチコートを翻す動作とともに消失する。消失地点には雪によって形作られた足跡のみが残される。

物理的手段によってイベント/2408-JPの進行を妨害する任意の試みは、SCP-2408-JP-1の即時の消失、並びにイベント/2408-JP全行程の再試行の発生を招きます。

補遺2 - SCP-2408-JP記録ファイルより抜粋

600回以上にわたるイベント/2408-JPの観測実験の結果より、イベント途中でSCP-2408-JP-1が発信する情報は、イベント終了から23時間以内に東京都6区内で発生する超常災害との関連性を有する内容であることが判明しました。以下のリストは、オブジェクトから回収された画像/2408-JPと、その後に発生した超常災害の様相を紐づけて記録したデータの抜粋です。なお、SCP-2408-JPを追跡中の剛体ドローンが撮影した写真は、ほぼ全数が吹雪によってホワイトアウトした視界のみを写していたことに留意してください。

four-colours

発生した災害: 三鷹市に存在していた全てのネオンサインの破裂。市内は4色の巨大な光球に埋没し、約9,000棟が全焼。


double-sphere

発生した災害: 小金井市の地下およそ40m、配管等が埋設されていた層までが地表から剥離し、単一の集塊を形成して空中へと浮揚した。高度4,500mまでは追跡可能であったものの、それ以降の瓦礫の行方は不明。


amour

発生した災害: 杉並区にて全数不明のイエネコと見られる動物がアスファルト路面や建築物の壁面を破って出現。残存する人工物を破壊しながら、同区域直上の積乱雲より降ってくる多数の齧歯類を狩猟していた。都市再構築現象を挟みながら、同様の画像および災害が前後26日間にわたって記録され続けた。


downfall

発生した災害: SCP-2408-JPを除く東京都6区の全域が重油の底に沈んだ。発生源は西東京市の擬似クレーター群と見られる。SCP-2408-JPが影響を受けなかった原因が異常性によるものか、単なる標高差に依拠するのかは不明。


yuki

発生した災害: インシデント/2408-JPを参照。インシデント発生前の最後のイベントで取得された画像。

補遺3 - インシデント/2408-JP

2020/03/22のイベント/2408-JP終了から7時間後、イベント発生予定時刻と明らかに異なるタイミングでSCP-2408-JP-1が出現しました。通常のイベント時と同様の手順を踏んで滑空を開始した実例は、そのままSCP-2408-JP領域外部へと脱出して北東へと滑空を続け、練馬区で発生していた超常災害に巻き込まれる形で消失しました。この事案の前後に引き起こされた一連の異常事象の情報は以下の映像記録を参照してください。

映像記録/2408-JP

撮影日時: 2020/03/22 17:04 〜 17:36
撮影者: サイト-81GB管轄 剛体ドローン 3号機

【再生開始】

[17:04] SCP-2408-JPの山岳九合目、通常イベント時と同様の位置からSCP-2408-JP-1が飛翔したとの報告がなされる。山頂より剛体ドローン3号機が緊急発進する。

[17:05] ドローンが滑空中のSCP-2408-JP-1に追いつく。通常イベント時と異なり、実例は情報端末のカメラを起動していない。吹雪により映像の視界は不良だが、確認できる範囲では実例の表情は高揚しているように見える。

【吹雪により有効な映像が撮影できていないため中略】

[17:23] SCP-2408-JP-1は通常イベント時であれば着陸するはずの地点を超えて滑空を続けている。吹雪が弱まり始める。

[17:24] SCP-2408-JP-1に接近したドローンは実例の顔面を大写しにする。実例は明らかな歓喜の表情を浮かべている。

[17:25] SCP-2408-JP-1がSCP-2408-JP領域の境界に到達する。この時点で実例は未だ高度250m程度を保っている。極めて珍しいことに領域外は快晴であり、夕焼けが広がっている。

[17:26] SCP-2408-JP-1がSCP-2408-JPを脱出し、北東の練馬区へ向けて滑空を続ける。蝙蝠傘が気流を受け、実例は再び高度を上昇させる。地表面に広がる再構築中の都市は様々な色の家屋が混ざり合って海のように見え、異常な接合を受けた建造物・車両・ヒトが多数観察される。

[17:27] 空から何らかの実体が落下してくる。実体はヒト型で、モンゴロイド系の若年女性のように見える。数秒後、女性と同一の外見を持つヒト型実体が徐々に個体数を増しつつ降下するようになる。それぞれの実例は地表面に接触しても衝突せず、その場で地表面に溶け込んでいくかのように観測される。SCP-2408-JP-1は人間の雨の中を飛んでいる。

[17:28] 空には薄い雲がかかる。降下してくるヒト型実体の数が100体を突破し、更なるペースの増加を続けている。そのうちの数体は剛体ドローンの回転翼に衝突して破壊されるが、ドローン側の被害は飛行能力に影響が及ばない範囲内である。地表の再構築中の都市群の中にヒト型実体の特徴が組み込まれるようになり、剥き出しのコンクリートと鉄骨が少しずつ肌色へと変化していく。

[17:29] SCP-2408-JP-1の高度は約300m。都市の再構築現象が一時的に停止する。肌色のコンクリート、黒色のタイヤ、白色の漆喰などがモザイクアートのように組み合わさり、一つのヒトの顔面を模した構造体が20,000m2程度の面積に広がっている。顔面は成人ヒト女性のもののように見える。SCP-2408-JP-1の接写は実例が涙を流していることを示している。

[17:30] SCP-2408-JP-1が突如として蝙蝠傘から手を離す。傘は地上の顔面の中心へと向かうように飛んでいく。SCP-2408-JP-1は顔面の口に見える地点へ落下していく。

[17:31] 蝙蝠傘が急速に拡大していき、地表の顔面を空から隠すように広がっていく。高度を下げたドローンは、3分ほど中断していた都市の再構築が再開したことを記録する。SCP-2408-JP-1の姿は既に確認できない。

[17:32] 剛体ドローンが蝙蝠傘の作り出す陰の中に進入したため、映像が薄暗くなる。建築物により作られていた単一の顔面は都市の再構築に伴って分割され、より小さな複数の顔面へと分かれていくように観察される。それらの顔貌は2種類に分けることができる。一方は先刻の成人ヒト女性の顔であり、他方はSCP-2408-JP-1を模した顔である。

[17:33] 上昇を続ける空中の蝙蝠傘が少しずつ閉じていく。傘の陰からはみ出した地表面は再びその構造を変化させ、元の様々な色の家屋の集積体へと戻っていく。陰の中にある2種類の顔面はその高さを増すように再構成され、一部からはヒトの腕や脚のように見える建造物の集塊が飛び出すようになる。

[17:34] 蝙蝠傘が完全に閉じる。地表面に落ちる陰はごく狭い範囲のみとなり、そこには全高320m程度の2本の肌色の尖塔が構築されている。塔を構成する建築資材は互いに複雑に絡み合っている。

[17:35] 蝙蝠傘が自身と同型の光の塊へと変化し、消失していく。光は崩壊していく塔を照らす。遠景には既に沈みゆく太陽が見える。

[17:36] 異常な塔は消失し、単なる建築資材の塊へと分解される。蝙蝠傘が存在していた空中には虹が出現する。この時点を以って、インシデント/2408-JPの全行程が終了したと見做される。

【再生終了】

grave

インシデント/2408-JP終了時点の練馬区

インシデント/2408-JP中の一連の映像記録は、練馬区の地表に降り注ぎ、顔貌様の異常建築物構造体を形成した女性ヒト実体が、インシデント前日に記録された画像/2408-JPにおける被写体の女性と同一であることを示唆しています。対象の女性は2017/12/17に東京都練馬区で行方不明となったアーティスト、園美そのみ 由岐ゆき氏(当時25)であると見られ、彼女は山岸氏(説明セクションを参照)と婚約していた事実が確認されています。

補遺4 - インシデント後のSCP-2408-JP

インシデント/2408-JPの発生以降、およそ12日間にわたるイベント/2408-JPの欠落が認められました。2020/04/03を境として新たなイベント/2408-JPが発生するようになりましたが、インシデント前からの著明な変更点として、以下の2点が確認されました。

  • SCP-2408-JP-1の外見がモンゴロイド系のヒト新生児のものに変化しました。ただし蝙蝠傘と情報端末は以前と同一の物品が使用されているように見受けられます。新たなSCP-2408-JP-1の身長が以前の個体の30%程度であるにもかかわらず、実例にはそれらの物品の適切な使用が可能であるように観察されます。
  • イベント/2408-JPの経過に目立った変更点は存在しませんが、イベント時に回収される画像から翌日の超常災害予測が正しく導出される確率が最大で70%低下していることが判明しました。

それ以降のイベント発生ごとに、新生児のSCP-2408-JP-1の外見は通常のヒトと同様の速度で成長していることが確認されています。オブジェクトから得られる画像が示す災害予測精度の変化に関する調査は依然として継続中です。




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