クレジット
タイトル: SCP-2414-JP - 名無しの権兵衛、旅に出る
著者: skyder_2nd
作成年: 2024
財団アーカイブ部門より通達
この報告書には、認識災害・ミーム汚染能力を持ったオブジェクトに関する記載が含まれています。
閲覧中の報告書には2級認識汚染遮断処理が施されています。
アイテム番号: SCP-2414-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-2414-JPはGPS発信機を装着した状態で標準人型収容セルに収容されます。SCP-2414-JP及びその関連情報に接触する職員は必ず3級以上の認識汚染対策を行い、SCP-2414-JPの影響を受けた被曝者にはクラスC記憶処理を行って下さい。
1日に2回、セキュリティクリアランスレベル2以上の職員によってスケッチブックの状態を確認してください。スケッチブックに『目的地』が書き込まれていた場合、迅速に指定された地点の周辺を封鎖し、SCP-2414-JPを移送した上で『目的地』の表記が消失するまで『観光』を行わせてください。『観光』終了後、封鎖の影響を受けた関係者にはカバーストーリー「爆破予告」を流布してください。ただし、『目的地』が財団管理下の施設であった場合には上記の対応は行わず、『観光』の前後に周辺に勤務する職員へ認識汚染対策を行わせるのみとします。
SCP-2414-JPの収容セルは低危険度人型実体と同様の管理を行います。1週間に2回、セキュリティクリアランスレベル2以上の職員によってSCP-2414-JPによる『観光』が可能な地点を選出し、SCP-2414-JP収容室内でリストを読み上げてください。SCP-2414-JPの周辺で財団管理外の地点について言及する事は禁止されています。
2024/01/12追記:現在、フィールドエージェントによるSCP-2414-JPの捜索が行われています。
説明: SCP-2414-JPは推定10代~30代の日本人男性の死体です。SCP-2414-JPは既知の手段で傷付ける事はできず、時間経過による劣化や腐敗も確認されていません。SCP-2414-JPは右手に白紙のスケッチブックを所持しており、手からスケッチブックを引き離す試みは全て失敗しています。
SCP-2414-JPは、自身について知った人間に自らを身元不明の行旅死亡人であると認識させます。SCP-2414-JPの認識汚染の影響を受けた被曝者はSCP-2414-JPを『名無しの権兵衛』もしくは被曝者の母語における類似した仮名で呼称し、SCP-2414-JPが死体であると認識しているにも関わらず、SCP-2414-JPを一人の意思を持った旅行者として扱います。この時、SCP-2414-JPが死体である事への違和感や嫌悪感は失われ、SCP-2414-JPに対して友好的な態度を取る様になります。
SCP-2414-JPによる認識汚染は伝聞や資料から間接的にその存在を知った場合でも影響を受ける上、影響範囲の限界は未だ確認できていません。認識汚染の影響はクラスC記憶処理もしくは3級以上の認識汚染対策によって無効化が可能ですが、この異常性により、SCP-2414-JPの身元に関する調査は停滞しています。
SCP-2414-JPのスケッチブックには一定の期間ごとに『目的地』が書き込まれます。『目的地』が書き込まれた状態でSCP-2414-JPを見た人物はSCP-2414-JPを『目的地』へ連れて行かなければならないという強い義務感を覚えます。このような人物は身体的・金銭的に負担にならない範囲でSCP-2414-JPを『目的地』に到達させ、『観光』を行わせることでSCP-2414-JPを満足させようと試みます。一定以上の『観光』が行われると『目的地』の表記が消失し、スケッチブックが白紙になった状態で3日から14日が経過するとスケッチブックに新たな『目的地』が書き込まれます。
『目的地』が書き込まれた状態で『観光』を行わないまま一定の期間が経過した場合、SCP-2414-JPは元いた地点から消失し、『目的地』として指定された地点の半径20㎞圏内に出現します。『目的地』が書き込まれてから転移が発生するまでは3日から7日程度の猶予がありますが、この猶予はSCP-2414-JPが前回行った『観光』の満足度が高い程長くなると考えられています。SCP-2414-JPは未知の手段で瞬間的に転移しており、現在の財団の技術でこの転移を止めることはできません。
SCP-2414-JPの設定する「目的地」の傾向から、SCP-2414-JPは何らかの方法で自身の周囲に存在する情報を認識しており、それらに強く影響されると推測されています。また、同行者がSCP-2414-JPに慣れているほど、SCP-2414-JPが訪れた地点を再度『目的地』として指定する確率が高くなる傾向にあります。SCP-2414-JPの収容の維持を容易にするため、SCP-2414-JPの『観光』には可能な限り同じ職員を同行させることが推奨されています。
2024/01/12追記:事例2414-IEDの発生に伴い、未だ発見されていないSCP-2414-JPの再収容の困難さ、そしてSCP-2414-JPを通じて財団の情報が漏洩するリスクから、SCP-2414-JPのKeterクラスへの再分類が検討されています。
経緯: 2023/06/23、SCP-1910-JPに滞在していた財団職員の通報によってSCP-2414-JPが発見されました。SCP-2414-JPは認識汚染の影響を受けた一般客に伴われてSCP-1910-JPに入店しており、SCP-1910-JP-Aが店内の財団職員に死体を入店させる事についての衛生的な懸念を述べた事でSCP-2414-JPの異常性が発覚しました。SCP-2414-JPを入店させた一般客はインタビューの後、SCP-2414-JPに関連する範囲に限ってクラスC記憶処理を行い、SCP-1910-JP収容担当に処遇を引き継ぎました。
収容から30日の間にSCP-2414-JPは8回の『目的地』の指定を行い、うち3回は封鎖の困難さにより移送が遅れたことでSCP-2414-JPの収容違反が誘発されました。この期間に指定された『目的地』は主に日本国内の著名な観光地であり、東京スカイツリーや清水寺などの他、音楽グループの大規模なライブイベントが含まれました。収容違反の頻度が高く、収容を維持するためのコストが高いことから、SCP-2414-JPのKeterクラスへの再分類が検討されていました。
2023/08/02、サイト-8185にてSCP-███-JPの収容違反事例が発生し、サイト施設が中度の被害を受けました。この事例の3日後、SCP-2414-JPは『目的地』に「サイト-8185」を指定しました。前述の事例の発生に伴ってサイト-8185に応援として派遣された職員が、収容室の付近で引継ぎについての質問を受けていたことが原因であると考えられています。SCP-2414-JPの移送及び『観光』がサイト-8185管理官の許諾を得た上で実験的に許可され、機動部隊の同行の元実行されました。
上記の『観光』以後、SCP-2414-JPは高い割合で財団管理下の施設を『目的地』として指定する様になり、収容違反の発生も抑制されました。この変化によりSCP-2414-JPの収容コストが大幅に削減されたため、Keterクラスへの再分類は見送られました。
2024/01/11、SCP-2414-JPの『観光』中にスケッチブックに記載された『目的地』が「収容室」に変化する事態が発生しました。SCP-2414-JPは即座に収容室に移送されましたが、同日深夜に事例2414-IEDが発生しました。
添付資料:
※記録が多数であるため、時系列順に一部を抜粋して記載する。正式な一覧は
SCP-2414-JP観光事例記録を参照すること。
日付 |
目的地 |
観光地点 |
担当 |
概要 |
2023/06/23 |
UFOラーメン |
SCP-1910-JP |
一般人男性 |
SCP-2414-JPが発見された事例。一般人男性へのインタビュー記録は別途記載。 |
2023/08/02 |
Sito-8185 |
サイト-8185 |
南研究員 |
SCP-2414-JPが初めて財団管理下の施設を目的地に指定した事例。 |
2023/08/30 |
███の電波塔 |
SCP-062-JP-1 |
南研究員 |
目的地に到着後、スケッチブックに「電波塔上部」の文言が追記された。同行していた男性職員がSCP-2414-JPを背負って登ろうと試みたが、当時の装備では上部への到達が困難である事を沢口研究員に伝えたところ、目的地の表記の消失が確認された。 |
2023/09/02 |
サイト-8181 |
サイト-8181 |
南研究員 |
サイト内の食堂や非異常性危険物保管庫等の観光を行った。 |
2023/09/15 |
アノマロスアイテムロッカー |
サイト-8146 |
沢口博士 |
観光終了後、次の目的地が書き込まれるまでの期間が平均と比較して非常に短かった。 |
2023/10/03 |
SCP-272-JP |
SCP-272-JP |
南研究員 |
該当オブジェクトの特別収容プロトコルに従い、外部からの観光のみ行った。 |
2023/10/17 |
サイト-8181 |
サイト-8181 |
南研究員 |
サイト内の食堂や非生物Safeクラスオブジェクト収容室の観光を行った。 |
2023/11/05 |
カラオケBOXS |
SCP-024-JP |
沢口博士 |
沢口博士の判断により、SCP-2414-JPによるSCP-024-JPの利用は認められなかった。観光終了後、次の目的地が書き込まれるまでの期間が平均と比較して非常に短かった。 |
2023/11/08 |
サイト-8181 |
サイト-8181 |
南研究員 |
サイト内の食堂や非生物Safeクラスオブジェクト収容室の観光を行った。 |
2023/11/29 |
サイト-8181 |
サイト-8181 |
南研究員 |
沢口博士立ち合いの元、低危険度の生物オブジェクト収容室の観光を行った。観光終了後、次の目的地が書き込まれるまでの期間が平均と比較してやや短かった。 |
2023/12/24 |
████████ |
東京████████ |
エージェント・浜井 |
財団管理外の施設が指定されるのは2023/07/23以来。機動部隊のエージェントによる移送の手配中に目的地の表記が消失したため、観光は行われなかった。 |
2024/01/11 |
サイト-8181 |
サイト-8181 |
沢口研究員 |
サイト主催の新年会の観光中、目的地の記載が変化した。沢口研究員へのインタビュー記録は別途記載。 |
2024/01/11 |
収容室 |
SCP-2414-JP収容室 |
沢口研究員 |
自身の収容室が目的地として指定された初の事例。移送後、事例2414-IEDが発生した。 |
インタビュー記録1
インタビュー日時: 2023/06/23
質問者: エージェント・浜井
回答者: 一般人男性
概要: 財団日本支部が初めてSCP-2414-JPを捕捉した事例についてのインタビュー。店内に滞在していた職員の証言によると、男性はSCP-2414-JPと共にSCP-1910-JPに入店後、UFOラーメンを一人分注文し、SCP-2414-JPと共にラーメンの写真撮影を行った。その後、ラーメンを完食した男性は餃子の持ち帰りを2人分注文し、会計を行った後、1人分の餃子をSCP-2414-JPに持たせて退店した。
インタビュー記録:
エージェント・浜井: 先ほど一緒にラーメン屋に入った人物は、あなたの知り合いですか?
男性: (軽く笑う)いや、今日会ったばっかりだよ。たまたま目的地が同じだったんで、連れてってやっただけさ。ほら、旅は道連れって言うだろ。
エージェント・浜井: しかし、彼は死体ですが。
男性: 死体だからって理由で行きたい所に行けないなんて可哀想じゃないか。俺も長いこと一人旅を趣味にしてるけど、旅人同士ってのは助け合うもんなんだよ。一人旅には苦労も多いけど、そういう時に誰かに助けてもらった経験が良い思い出になったりする訳で……
エージェント・浜井: そうですか。
男性: それに、最近じゃ若い旅行者は珍しいからな。先輩として、ちょっと格好付けたくなったってのもあるよ。ま、餃子一人前で付けられる格好なんてたかが知れてるけどな。(大声で笑う)
エージェント・浜井: なるほど、そういう事でしたか。ところで、あなたはあのラーメン屋をどこから……(以下割愛)
インタビュー記録2
インタビュー日時: 2024/01/11
質問者: 蜘崎研究員
回答者: 沢口研究員
概要: SCP-2414-JPの以前と異なる挙動についてのインタビュー。SCP-2414-JPは沢口研究員と共にサイト主催の新年会に参加し、研究室対抗餅つき大会を観戦した。大会終了後、沢口研究員が持ち帰り用の餅を購入している際にスケッチブックの表記が変化し、SCP-2414-JPは収容室に移送された。インタビューは事例2414-IED発生前の物である。
インタビュー記録:
蜘崎研究員: 沢口研究員は、SCP-2414-JPの『観光』を担当した回数が最も多い職員であるとの事ですが。
沢口研究員: はい。他に手を離せない用事が無ければ、SCP-2414-JPの『観光』は基本的に私が担当しています。
蜘崎研究員: 以前の『観光』と今回の事例を比べて、何か気になる点はありましたか?
沢口研究員: そうですね、特に以前と異なる行動を取った訳ではありませんが……あっ。年が明けてから初めての『観光』だったので、新年の挨拶をしました。
蜘崎研究員: 具体的な内容をお伺いしても?
沢口研究員: 他愛もない内容ですよ。あけましておめでとう、と、これからもよろしくね、と。権兵衛くん……ええと、SCP-2414-JPのことですけど、権兵衛くんは私にとって弟みたいな存在だから、これからも仲良くしてね、みたいなことを話したと思います。
蜘崎研究員: 沢口さんは、SCP-2414-JPの『観光』を担当するにあたって3級認識汚染対策を受けていましたよね?
沢口研究員: ええ、その通りです。なので、SCP-2414-JPの事を実際に「名無しの権兵衛」として認識している訳ではありません。でも、SCP-2414-JPではなく旅人の権兵衛くんとして扱った方が、次の『目的地』が書き込まれるまでの時間が長くなるんです。
蜘崎研究員: 報告書にも記載されている性質ですね。同行者がSCP-2414-JPに慣れているほど、『目的地』の更新までの期間が長くなると。
沢口研究員: ただ、そうしているうちに自分でも愛着が湧いてしまって。良くない事であると自覚してはいるのですが、担当回数の多い私が記憶処理を受ければSCP-2414-JPの満足度が下がる可能性が高いですし。
蜘崎研究員: なるほど。検討が必要な課題ではありますが、インタビューの目的からは逸れてしまいましたね。ひとまず、新年の挨拶以外には『観光』において普段と違う要素は無かったということでよろしいでしょうか。
沢口研究員: ええ、少なくとも私はそう認識しています。
蜘崎研究員: 分かりました。では、インタビューはここまでとします。
蜘崎研究員: ……と、そうだ。忘れる所でした。沢口さん、ご結婚おめでとうございます。
<記録終了>
事例2414-IED報告書
発生日時: 2023/01/11 23:29
概要: 同日に行われた『観光』におけるSCP-2414-JPの異常な挙動を受け、沢口博士が確認のために収容室に入室したところ、SCP-2414-JPがスケッチブック及び装着されていたGPS発信機を残して消失しているのが確認された。スケッチブックの記載から、SCP-2414-JPが意図的にスケッチブックとGPS発信機を残して転移を行ったものと推測されている。スケッチブックの表記は事例発生から現在まで消失していない。
対応: フィールドエージェントによる捜索の他、財団Webクローラによるインターネット上での情報収集を行う。カバーストーリー「行方不明者の捜索」を用いた情報提供の呼びかけも検討されているが、認識汚染を拡散する恐れがあるため、実行は保留されている。
参考画像: