
基本状態のSCP-2420-JP-1。
アイテム番号: SCP-2420-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-2420-JPの収容は、サイト-8148にて、物理的にオンライン接続機能を有さない24時間稼働の収容用ワークステーションシステム上で行われます。SCP-2420-JPへの詳細なインタビューおよび能力利用は収容担当責任者からの承認が必要です。この手続はSCP-2420-JPを用いた各種実験を実施する際も同様に遵守しなければなりません。
SCP-2420-JPは、その精神活動および収容状態の安定性を維持する目的で、2日に1度程度の面会時間が設けられます。その際の会話はすべて定期報告情報として記録することが義務づけられています。また、SCP-2420-JPの能力を利用して作成されたデジタルデータも同様に定期報告情報として記録しなければなりません。なお、同データは財団内イントラネット上で読み取りのみが許可され公開されているため、適切な権限を有する職員は自由に閲覧が可能です。
SCP-2420-JPの作成者に関する情報および回収物品はサイト-8148内の非異常性回収物品収容庫に収容され、情報参照はセキュリティクリアランスレベル2/2420-JP以上の権限を有した職員に限定されます。
説明: SCP-2420-JPは、不明な原理により自律行動が可能な、人格を有したデジタルファイルです。ファイル名は「gluck.clip」であり、セルシス社が開発・販売するソフトウェア「CLIP STUDIO PAINT」シリーズを利用して開くことが可能です。SCP-2420-JPは通常の.clip形式のファイルとは異なり、上書き保存およびファイル自体の複製はいかなる方法を用いても失敗します。ただし、ファイルそのものを移動させることや、現在のキャンバスの状態を画像形式で出力することは可能なため、現在は財団所有のワークステーションシステムに移動の上で収容ないし実験などが実施されています。
SCP-2420-JPを上記ソフトウェアで開くと、キャンバス上にSCP-2420-JP-1が出現します。SCP-2420-JP-1は、ウサギ(Leporinae)の風貌を簡略化したキャラクターであり、キャンバス上であればその範囲内で2次元的な奥行を含めた行動が可能です。しかし、SCP-2420-JP-1はキャンバスの範囲を超えて行動することは不可能なため、ソフトウェアを閉じた場合、SCP-2420-JP-1は外部への会話ならびに干渉は不可能となります1。また、SCP-2420-JP-1との意思疎通の際にはスピーカーならびに録音デバイスの使用が必須ですが、カメラ等の撮影デバイスは必須ではなく、その行動形質からSCP-2420-JP-1は画面上を通じて直接外界の状態を認識している可能性があります。
SCP-2420-JPの特筆すべき点として、SCP-2420-JPをソフトウェアを介して利用した人物(以下、"使用者"と呼称)が指定する絵柄・雰囲気・構成・技法に沿って、キャンバス全体にイラストを瞬時に描画できることにあります。描画は使用者がそれらの指示を録音デバイスを介した発話を認識して、SCP-2420-JP-1がキャンバス内でリアルタイムに改変される形で行われます。なお、ここで描画されるイラストはすべてSCP-2420-JP-1を主格として描画したものとなるため、他者の創出したキャラクターを主格にすることや、SCP-2420-JP-1が登場しないことなどは選択できません。
なお、いくつかの実験上の検証で得られた事実として、SCP-2420-JPから出力されたイラスト画像を視認した人物は、一様にしてそれに対して好意的・賞賛的なコメントを残す傾向を示しました。これが当該データやSCP-2420-JPによってもたらされるミーム的・認識的な異常性である可能性も否定できませんが、財団が有する各種ミーム特性検査や客体視点型認識災害検出テストの数値上では、特筆すべき異常な点は見られませんでした。

跳羽薙氏がネット上で公開していたSCP-2420-JPの出力画像の実例。
回収経緯記録2420-JP: SCP-2420-JPは、未確認の異常存在が発生している可能性を示唆する情報がインターネット上で観測されたことをきっかけとして、2021年██月██日に、その情報の発信元として特定された茨城県[編集済]市の跳羽薙トバナギ美佳ミカ氏の自宅から回収されました。回収時には既に同氏は死亡して2日ほど経過しており、直近の人身事故に関する当局の調査記録などにて跳羽薙氏の身元情報が記録されていたことから、跳羽薙氏は自宅から最も近い[編集済]駅にて投身自殺を図ったものと考えられます。SCP-2420-JPは同氏の所有していたと考えられる破損したコンピューター上のハードディスクドライブに記録されていたものを、技術班によるサルベージによって発見されたことで収容に至りました。
跳羽薙氏はインターネット上で「兎樹ウツキとばな」の名前で活動するイラストレーター/漫画家/動画作者として高い知名度を持っていたことが後の調査で判明しており、SCP-2420-JP-1は、所有していた跳羽薙氏から「グラック」という名称で呼称されていたことが、同氏のアカウント上の発言から確認できます。跳羽薙氏はSCP-2420-JP-1が出力するイラストを使用したオリジナル作品を多数制作し、「しあわせうさぎのグラック」というシリーズでネット上に公表していたことで人気を博していました。SCP-2420-JPの発生起源は不明ですが、後の財団によるSCP-2420-JP-1へのインタビューにより、最低でも2015年の時点で跳羽薙氏はSCP-2420-JPを所有していたものと考えられます。
なお、財団は跳羽薙氏のSNSアカウントにてSCP-2420-JPの存在を示唆する情報が発信されていたことを察知したことで、未知の異常存在が一般人の手で利用されている恐れがあるとみて、運営会社に潜入していた財団フィールドエージェントからの報告と合わせて後の現地調査の実施とオブジェクトの回収に繋がりました。一連のオブジェクトの回収作業と事実確認が完了した時点で、関連するアカウントはすべて処理され、関係者にはすべてクラスA記憶処理の実施とカバーストーリー「突然の失踪」の適用と流布がなされました。