アイテム番号: SCP-2443
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-2443は一棟の倉庫内に収容されます。協力姿勢を条件として、SCP-2443は毎日3時間、8,000ボルトの電気柵を配備した屋外の囲い地に出ることが許可されます。この柵は高さ12mを下回ってはいけません。
説明: SCP-2443-01から-159は、テネシー州ポレンズビー在住のデローシュ家に属する159名の個人の総称であり、高さ約4mの大雑把な小山状に積み上げられています。およそ11メートルトンと推定されるSCP-2443の顕著な重量にも拘らず、中間部および底部に位置する個体らは自由に呼吸し会話することが可能であり、感覚を“居心地良い”ものとして述べます。SCP-2443から個体を強制的に除去する試みは成功しておらず、また同時に、当該個体とSCP-2443全体の両方に少なからぬ苦悩を齎します。
全てのSCP-2443構成個体は、可聴域の意思疎通が完全に欠如しているにも拘らず、他個体の現在の活動や過去の経歴に対する鋭敏な感覚を有しています。研究者たちによって促された場合、SCP-2443個体群は当該地域において典型的なゴシップ・歴史的逸話・民話などを語ることができます ― ここにはSCP-2443の形成を引き起こした事象についての話も一部含まれますが、それらは幻想的な表現を持って描写される傾向があります。
SCP-2443の最上部の個体であるSCP-2443-01は、1858年のポレンズビーで誕生した自給農家のエフライム・ジョージ・デローシュを自称しています。その他のSCP-2443の個体は全てSCP-2443-01の直系子孫であると主張し、4歳から138歳までの幅広い年齢層を自称します。平均して1.5年ごとに、乳幼児がSCP-2443の底部に仲間入りしているように思われます。このプロセスの発生経緯は不明確であり、SCP-2443内部の個体たちはこの問題を話し合うことに消極的です。DNA検査でSCP-2443の全個体は繋がりがあると確証されたものの、個体間の遺伝的変異は一般的な家族のパラメータの範囲内です。SCP-2443内における遺伝的多様性の源は現時点で判明していません。
現在までのところ、SCP-2443内に含まれている人物はいずれも死亡していませんが、依然として肉体的/精神的な衰えの影響には曝されており、最上部の個体たちは認知症や老化の進行段階にある様子を頻繁に示しています。
SCP-2443-01から-159までの個体群は固く密集しているにも拘らず、SCP-2443の底部には、小山の外部からも視認可能な、大まかに言って成人男性1人を収めるのに相当するサイズの空隙があります(インタビュー2443-i8-49Rと、補遺2443-w10-22Bを参照)。この空隙の存在は、小山の物理的整合性に影響を与えているようには思われません。SCP-2443は日速45mのペースで移動が可能です。この運動が行われる過程は現在も理解されていません。
SCP-2443を構成する159名のうち、会話が可能なのはどの時点においても一般的に全体の半分のみであり、残りの半数は位置の都合上、SCP-2443の外部からは下半身だけしか見えません。しかし、SCP-2443内の個体たちは、概ね身をよじることによって定期的に位置を移動します。小山を構成している個体は全て独特の名前と性格を持っていますが、現在まで ― 例え外部から支援を提供した場合でも ― 個体が小山から離れることができた、もしくはそれを望んだことはありません。SCP-2443を離れることを促す申し出が繰り返されると、個体群は極めて動揺した状態になります。
インタビュー2443-i8-49R:
1983/██/█、スーザン・バーク研究員は、SCP-2443-15/リリアン・エスター・デローシュ(約95歳)に対するインタビューを実施した。SCP-2443-15は地上4m以上の位置にいたため、バーク研究員はインタビューに当たって移動式クレーンを使用している。当時、SCP-2443-15はSCP-2443集塊から片方の腕だけが自由になっていた。
バーク研究員: こんにちは、SCP-2443-15。
SCP-2443-15: あら、どうも! アタシのことはマーマー(Maw-maw)とでも呼んどくれ。ミズ・リリーでもいいけどね。
バーク研究員: 貴方がどのようにして現在の状態になったかについて、少し教えていただけますか?
SCP-2443-15: [笑い] アンタにアタシらがどう見えてるかは分かってるよ。それに、実際のところ、こんないつまでも続くゴタゴタの中で生きてると全く頭がおかしくなっちまいそうになることもあるさ。でもね、機会があったとしても、アタシは他の生き方を選ぼうと思ったことは無いよ。アタシはここに座って、家族が一緒にいるのを感じているのさ、アタシには自分の居場所があって、皆に居場所を与えている。
バーク研究員: 興味深いですが、現在の状況になった流れについて話し合ってもいいでしょうか?
SCP-2443-15: アタシゃ当時は生まれてなかったんだから思い出せないやね。アタシが覚えてるぐらいの昔と言えば ― 山の天辺にいても、何マイルも向こうの家なんか見えなかったよ。アタシらはあの頃は小さかったからねぇ。結びつきもこれほど強くは無かった。でもアタシらは皆その重要性を理解してたんだ。
バーク研究員: SCP-2443-01はこの…状況に陥るまでの経緯を説明したことがありましたか?
SCP-2443-15: パーパー(Paw-paw)かえ? あの人は口数の多い人じゃなかったけど、アタシらは皆あの人が何を思ってるか分かってるよ。あの人が苔に覆われた岩を幾つか見つけて、それをリンゴだと思ったのが物語の始まりでね。あの人はそれを腹いっぱい食べてから、家に帰って、嫁さん(SCP-2443-02/へスター・ルイーザ・デローシュ、SCP-2443-01の内縁の妻)と…それ、共寝したわけさ。あの人は嫁さんの上に乗って、それっきり降りることができなくなった。それでアタシたちがここに居るんだよ。
バーク研究員: SCP-2443-15、SCP-2443の中で送ってきた貴方の人生が、どのようなものだったかを説明してはもらえませんか?
SCP-2443-15: 言ったろう、アタシのことはミズ・リリーと呼んどくれって。
この時点で、他のSCP-2443構成個体が著しい動揺状態に入り、通常よりも活動性を見せると共に、怒りを示す発声が相次いだ。バーク研究員はオブジェクトの指定呼称プロトコルに違反したとして正式な懲戒を受けたものの、懲戒処分は後に撤回された。
バーク研究員: 申し訳ありません。ミズ・リリー、貴方の人生がどのようなものだったか、説明して頂けますか?
SCP-2443-15: 構わないよ、お嬢ちゃん。皆と共にあるっていうのは、言わせてもらえりゃ、難しいことさ。でもそれは正しいことのように感じるんだよ。バッバ叔父さん(SCP-2443-08/オーブリー・エゼキエル・デローシュ)なんかは、草が生えてきたのなんのって喋り散らしてばかりで、全く頭にくる人でねぇ。でもアタシは彼のことを愛してる。それにアタシは、下の方にいる若い子たちの何人かがむかっ腹を立ててることも、そうして抗議していてもまだアタシを愛してくれていることも知ってるんだ。此処を出た先には意地悪な世界があって、そこには家と呼べるものさえ持たない人たちが大勢いる。でも、此処なら? アタシは自分がいるべき場所をよく分かってるよ。それは皆が同じことさ。
バーク研究員: 底の方にある穴について少し教えてもらえませんか、ミズ・リリー?
SCP-2443-15: ジェイコブはいつもトラブルメーカーでね。アタシは彼を自分の子供みたいに愛した ― 甥の息子のそのまた息子なんだよ。でもあの子はいつだって落ち着きが無くて、赤ん坊みたいに下で身じろぎしてたのさ。皆がそれを感じてた。そしてある日、アタシたちが目を覚ますとあの子はもう消えていたよ。風の中に溶け込むように。それでもアタシたちはまだあの子を待ってるんだ。
バーク研究員: どのようにしてあの穴を空いたままに維持しているのですか? 重量だけでも穴は自然と塞がってしまいそうなものですが。
SCP-2443-15: いつだって家族のための場所は残すものさ、お嬢ちゃん。自分がどれだけアタシたちのことを必要としてるか気付いてない子のためにもね、居場所はちゃんとあるんだよ。
ジェイコブ・デローシュを発見する試みは今日に至るまで実を結んでいません。