アイテム番号: SCP-2459
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 2 kmの境界がSCP-2459の影響を受けている領域の周囲に設けられています。機動部隊ファイ-12(“青信号”)は地元警察や交通当局と協力し、一般市民が領域に近付くのを防止します。境界内の町は、局地的な化学物質流出と健康被害のカバーストーリーによる無人状態を保ちます。領域内におけるあらゆる行動は、道路に沿った移動を避けなければいけません。領域内の全ての道路は、地域の状況が許す限り除去します。
MTF ファイ-12は町の供給キャンプを維持します。食品および必要なサバイバル用品が、SCP-2459の影響下にいる人物たちへ提供されます。物資提供と廃棄物除去に従事する全職員は鋼索で供給キャンプに繋がれ、リールを巻いて引き寄せる形式で影響領域から回収します。物資提供に関与する全参加者にクラスA記憶処理が施されます。道路沿いの廃棄物はMTF ファイ-12によって回収されなければいけません。
SCP-2459の影響を受けている財団職員は供給プログラムに含まれ、必要に応じて食料や物資を分配する責任があります。SCP-2459影響領域内の職員は、水のホースと電源ケーブルが財団の所有物であり、職員が仲介する全ての取引は財団のガソリン代として扱われることを思い出しています。彼らに士気の低下の兆候が見られる場合、道路が空くまでは現地に留まらなければならないことを思い出させてください。
救出された民間人はインタビュー対象となります。各民間人は少なくとも2週間は拘留し、記憶処理療法を受け、社会構造とその適切な機能に関する講義を受けなければなりません(プロトコル・バラコット-525参照)。全ての民間人は解放前に、自身のコミュニティにおける社会構造への理解と信念を示さなければいけません。
説明: SCP-2459はパキスタンの███ █████にある、4つの交差点がある領域に影響を与えている多段階式・地域限定型の精神作用ハザードです。影響領域に入った人物は、まず認識災害の対象となり、十字路を離れるという選択肢を取ることはできないと確信します。このハザードの主たる結果として、影響領域の街区全域に大規模交通渋滞が拡張しています。
加えて、ハザードには、最初の認識災害に対する潜在意識の防衛と考えられているミーム的な要素が含まれます。SCP-2459影響領域内の対象者は、領域にいる他者を警戒して所持品を整理しようと試み、典型的には社会的地位や個人財産権に関する理由から、領域内に滞在する必要性を強化するに至ります。
領域はもっぱら道路で構成されているため、利用可能な水源や食糧源が存在しません。ハザードの対象者には食料と水を提供する必要があります。ハザードとその対象者の進展は動的な状況にあり、人道支援と民間人救助に基づく封じ込めが進行中です。
補遺: 事案記録2459-A 注目すべきイベントや異常性質の変化は、本文書に記録および添付されることになります。SCP-2459の収容に関わる職員は、これが進行中の認識災害事件であることを念頭に置いておき、検出された全ての行動の変化を記録しなければなりません。
2015年5月5日: SCP-2459影響領域で交通渋滞が発生。渋滞が自然に解消される様子が無いことから、地元警察が車両誘導のために派遣される。地元警察が車両の誘導を止めた時点で、地域軍の派遣が行われた。
2015年5月7日: 地域軍が渋滞解消任務からの撤退を拒否しているにも拘らず、命令に背き始める。財団が、認識災害の可能性があると連絡を受ける。最初の応答者は、渋滞の端にいる民間人が移動の指示に対して混乱を示していると報告。民間人たちは自分の車を離れて歩き回っていたが、いつまでも道路上を離れようとしなかった。影響領域内の店舗経営者たちは道路沿いに納屋を構築し、宿泊料を取っている。人間の排泄物が道路沿いに積まれているのが確認された。
急速に悪化する状況下から民間人を救出するために派遣された最初の部隊は、SCP-2459影響領域に入った後、目的を見失ったように思われた。退却するように指示された時、影響を受けた職員はまず拒否し、救出するのに適切な民間人を発見することの重要性について供述。続けて撤退指示を受けた際も、職員は任務の重要性を改めて表明し、一方で他のメンバーは栄養バーを物々交換することによって地元民との信頼関係を確立しようとした。通貨が急速に納屋経営者たちの下に集中していたため、財団職員は民間人の1人が所有する車のガソリンとの交換を了承した。HC-1クラス認識災害と判断され、MTF ファイ-12が派遣される。
2015年5月8日: 影響された民間人は食料と水を危機的なまでに枯渇させつつあった。民間人は更なる異常なミーム効果を示し始め、彼らの間での商品やサービスに対する支払いとしてガソリンを受け付ける合意に達する。これら全ての処理は中央銀行で管理することが決定し、民間人たちは全ての車両から影響領域に巻き込まれていたタンクローリーへとガソリンを転送して、結果的に車両群を移動できない状態へと陥れた。20名の民間人が脱水および熱疲労で倒れた。MTFファイ-12は民間人に接触して医療避難を申し出たが、全ての申し出は断られた。機動部隊は、影響の対象となった領域内の職員まで給水ホースを拡張した。日中の最高気温は41℃。
2015年5月9日: MTF ファイ-12が民間人および財団職員に最初の支援物資を配送。異常性の影響を受けた財団職員は、影響領域に車両もガソリンも無い状態で到着したため、民間人によって身分の低い人物であると見做されていた。影響された職員は、SCP-2459によって形成された社会へ参加するために装備を物々交換しており、彼らが民間人に販売行為を行って社会的地位を向上させられるように、財団から直接物資と水の供給を受ける要請を行った。要請は却下された。
2015年5月14日: MTF ファイ-12が境界線の確保を完了させる。影響を受けなかった全ての民間人は避難の後、記憶処理が施された。物資供給は継続中。職員は、収容のために全ての電話と充電器を押収するように指示を受けた。財団は今回の雑費としてガソリン代を適用。
2015年5月18日: MTF ファイ-12は初めての職員救出のために引き込み用鋼索を装備。救助要員は領域入場後2秒で認識災害の対象と化した。鋼索引き込みは、装備していた救助要員の回収に成功。救出された職員は引き続きミーム感染を証明しており、まだ領域内で任務を果たしていないと不満を訴えた。クラスA記憶処理は、対象からの認識災害除去に成功した。
2015年5月19日: 鋼索を装備した救助要員は、道路端の民間人にハーネスを取り付けて救出するように指示された。任務は成功したが、民間人が足首を骨折。クラスA 記憶処理は救助要員からのミーム効果除去には成功したものの、民間人からはハザードを完全除去することができなかった。民間人にインタビューを実施。
回答者: POI-2459-1
質問者: エージェント モハメッド・シャー、機動部隊ファイ-12所属
序: インタビューは2015年5月19日、影響領域からの救出直後に行われた。対象は救助に抵抗し、足首を骨折した。
<記録開始、11:30>
POI-2459-1: 私をここに留めてはおけんぞ! 戻らなければいけないんだ!
エージェント シャー: 貴方をあそこに返すわけにはいかないんです。貴方は治療を必要としている。
POI-2459-1: そういうのは救急車で治す習慣になっているから、私は大丈夫だ。
エージェント シャー: ここならより良い治療が受けられますよ。
POI-2459-1: じゃあ、私の車はどうなる? あのまま放っておけるか! 連中はきっと、私が乗り捨てて去ったと思うだろう。家に帰ってカミさんと顔を合わせてだな、車を置いて歩いて来ましたと言ってただで済むと思うか?
エージェント シャー: 奥さんがいらっしゃるんですか? その人は何処に? 貴方が何をしているのか知りたがっているんじゃありませんか?
POI-2459-1: 彼女は家にいるよ。そして私が車も無く、足を挫いて、働けない状態で帰ったらもっと心配するだろう。ダメだ、車の所に帰してくれ、道路が空いたら家まで運転して帰るさ。元よりそのつもりなんだ。
エージェント シャー: しかし、タンクを空にしているんでしょう! 燃料無しでは運転できませんよ。
POI-2459-1: ガソリンはまだ私の名前で貯蓄しているんだ、いつでも撤回できる。だから車に帰してくれないか。
<記録終了、11:42>
2015年5月20日: 領域内で小規模な暴動が発生したものの、影響を受けた警察によって速やかに鎮圧された。暴動の原因は、POI-2459-1の車両の分配を巡る意見の相違。影響された人々はこの状況について議論し、問題の車両と車内備品は放棄されたと見做すという点で合意した。しかしながら、放棄された資産を要求する方法については合意に至らず、将来的に救出された民間人が車両を領域内に残した場合は更なる暴動が発生する可能性を示唆している。救出された民間人のガソリンの分配を巡る53件のクレームが、タンクローリーの運転手と領域内の会計士に寄せられた。
2015年6月2日: 民間人救出の試み。ターゲット(POI-2459-12)はタクシーの乗客であり、車両やガソリンを持たずに到着した人物であると識別された。MTF ファイ-12は、POI-2459-12は内部抗争を引き起こさずに救出できる良好な候補と判断。救出に成功し、インタビューが実施された。
回答者: POI-2459-12
質問者: エージェント モハメッド・シャー、機動部隊ファイ-12所属
序: インタビューは2015年6月20日、影響領域救出の24時間後に行われた。対象はタクシーの乗客であり、領域内には車両を所有していない。
<記録開始、9:17>
エージェント シャー: いいえ、前以て説明した通り、貴方をそこに帰すわけにはいきません。
POI-2459-12: 本気ですか? 本気で僕をあそこからずっと遠ざけておく気なんですか?
エージェント シャー: 本気です。それに貴方は、あそこの社会構造の最下層だったのでしょう。
POI-2459-12: それでもうまく生き残れました。僕はただ着替えと風呂が必要なだけです。あのノロマな運転手が僕を家まで乗せていってくれればそれで済むんだ!
エージェント シャー: 私たちなら、その運転手よりも速く貴方を家まで送り届けられます。
POI-2459-12: えっ? ダメですよ。もう家までの運賃を支払ってるんですから。ただ立ち去ってあの男に支払った分を盗み取らせるようなことはできません。
エージェント シャー: 私たちが払い戻します。貴方は安全に家まで帰れますし、身支度もできますし、もう渋滞に巻き込まれる必要はありません。
POI-2459-12: お断りします。あいつに持ち逃げされるわけにはいかない! こうして話している今も、あいつは僕のガソリンの勘定書をくすねようとしているかもしれないんです。
エージェント シャー: しかし貴方はガソリンを持たずに到着したでしょう。
POI-2459-12: ええ、後から手に入れました。僕は結構商才があるんです。あのガソリンは今では僕のものだし、渋滞が動き出したら僕がどれだけ得をしたか、貴方にも分かりますよ。
<記録終了、09:20>
2015年6月10日: 民間人が車を数台解体し、避難所に作り替えている。最高気温43℃。影響領域内の職員は脱水と飢餓の防止に成功している。気温の問題から、民間人の解体続行は認められた。
2015年7月23日: 8時間ごとの記憶処理療法と教養講義は、民間人のSCP-2459ミーム要素を治療するのに十分と判明した。プロトコル・バラコット-252が確立される。POI-2459-1は記憶処理を施され開放。モンスーンの雨で、さらなる熱や脱水の危機は防がれた。
2015年9月5日: プロトコル・バラコット-252は、これまで50名の民間人のリハビリに成功した。解放前インタビューのサンプルが添付されている。
回答者: POI-2459-52
質問者: エージェント モハメッド・シャー、機動部隊ファイ-12所属
序: インタビューは2015年9月5日、影響領域救出の21日後に行われた。対象は記憶処理療法と文化的再調整を受け、リハビリによって回復したと見做されている。対象はインタビューの後に最後の記憶処理を受け、帰宅した。
<記録開始、22:03>
エージェント シャー: こんばんは、███████さん。まぁ腰かけてお茶でもどうぞ。帰宅の準備は大丈夫ですか?
POI-2459-52: ああ、多分な。それにしても、俺はホントにあの渋滞で4ヶ月も立ち往生してたのか?
エージェント シャー: 残念ながら。記録のために、貴方の経験について最後に幾つか詳細を語って頂いても宜しいでしょうか。
POI-2459-52: いいとも、それであの哀れな連中の助けになるんなら。質問してくれ。
エージェント シャー: 何故、貴方は道路を離れることができないと確信したのですか?
POI-2459-52: そうだな、まずアンタに分かってもらいたいのは、俺たちは誰もあそこに留まりたくてそうしてる訳じゃないって事なんだ。俺たちには皆、目的地があって、帰り着くべき家庭があって、しなくちゃならん事がある。渋滞に巻き込まれるのは、単に一時的に立ち止まってるだけだ。
エージェント シャー: しかし、渋滞が何日も続くようなら、道路から離れて歩いていくほうが簡単だとは思いませんでしたか?
POI-2459-52: 確かにな、でもそれをやっちまうと車を後に残すことになる。もしくは運賃が無駄になる。そいつを見過ごせなかったのさ。自分の物が指の隙間から零れ落ちていくんじゃ、何事も捗りゃしない。何一つ持たずに家まで帰って何になる? 貴重品を盗ませるために置いていくようなアホがいるか? いいや、それなら待ってるほうがマシだ。渋滞はいつか動き出す。警察もそれに取り組んでた。
エージェント シャー: しかし皆、タンクを空にしていたでしょう! ガソリン無しでどうして車が動くっていうんですか?
POI-2459-52: 俺たちは皆ガソリンを持ってたんだ。車の流れはノロノロしてる。移動する時間が来たらガソリンを取り戻せばいいだけだ。それまでは、待ってる間の食べ物と水を手に入れるためにそいつを使う必要があった。
エージェント シャー: 救助作業が行われなければ、食料も水も全く無かったんですよ! 私たちが到着した時には、そこら中に脱水症状を示している人たちがいました。建物は近くにあるんですから、そこから水を持ってくることは容易かったはずなのに。
POI-2459-52: そして車を放棄しろって? ガソリンを没収されろって? そんな事はさせない。俺たちはこの仕組みが成り立つように自分たちで決めたんだ。いつか道路が空いた時には、俺たちは離れるつもりだったのさ。
エージェント シャー: 死ぬかもしれないんですよ! 何故それでも待つことが一番良いと信じたのですか?
POI-2459-52: 大将、俺も今じゃ、俺たちの解決策がどれだけ馬鹿げてるか分かってる。でもな、渋滞に巻き込まれてる連中の身になって考えてみてくれや。信念のために死ねないっていうのなら、その信念の何が良いんだ?
<記録終了、22:14>