アイテム番号: SCP-2481
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: サイト143がSCP-2481の周囲に建設され、全ての関連する実験はサイトにて行われます。SCP-2481-3の協力を確実に得られるように、SCP-2481に入る人員は漢族でなくてはなりません。
SCP-2481-1は研究、実験時以外には解体して保管してください。
SCP-2481-2は現在の位置から動かしてはならず、全ての関連実験はSCP-2481内部で行わなくてはなりません。
SCP-2481-3は常に二人以上の職員に付き添われなくてはなりません。職員は、SCP-2481-3の精神状態の安定のため筆談でコミュニケートすることが推奨されます。夏(Xia、か)王朝(紀元前2100年~紀元前1600年)が倒れて以降の中国の歴史についての話題は避けてください。SCP-2481-1と-2についての詳細な情報を得ることが最も優先されます。
説明: SCP-2481は、中華人民共和国河南省████████の商(Shang、しょう)王朝(紀元前1600年~紀元前1046年)の遺跡の地下20メートルに存在する直径およそ50メートルの球状の空間です。SCP-2481内部の気温は周辺の環境にかかわらず摂氏35度に保たれています。
SCP-2481-1はSCP-2481内部にある、概ね立方体と、その面に4本の柱を取り付けたような形をしている大きな青銅の構造物です。およそ紀元前1800年に建造されたと推測されています。この構造物の部品の幾つかは激しく損傷し、表面は溶けており、著しい高温に晒されたことがあることを伺わせます。SCP-2481-1はSCP-2481の境界線で綺麗に切断されており、SCP-2481の外では断片は見つかっていません。
SCP-2481-1の特定の部位は現代の電子機器の破損した回路ボードに似ています。分析はSCP-2481-1の損傷により困難を伴ったものの、8進数による演算装置であると推測されています。
SCP-2481-2はベリリウムと青銅の合金でできた装置です。元来の状態では、SCP-2481-2は概ね片方が尖った円筒形をしていて、長さ33メートル、直径1メートルであったと推測されています。かつてはSCP-2481-1に取り付けられていたと考えられます。SCP-2481-1と違って、SCP-2481-2は熱による損傷を殆ど見せませんが、打撃を受けたらしく3つの大きな断片と38個の小さな破片に分離しています。以前のSCP-2481-2の主要な断片を移動させようという試みがSCP-2481の急速な不安定化をもたらしたため、その構成要素と内部構造の調査は限定的です。しかしながら、小さな破片の現地での調査と分析では、██████████████████に類似した内部構造と動作原理が同定されており、SCP-2481-2は██████████████████████████████として設計されたようです。SCP-2481内部の██████████████の分析では、SCP-2481-2は異常性の核であるようです。
SCP-2481-3は爬虫類の特徴を持ったヒューマノイド実体です。遺伝的には漢族の男性に似ており、出生後に変化したことを示唆します。SCP-2481-3はアマガサヘビ(Bungarus multicinctus)の外見に似た頭部、概ね人間の上部胴体と右腕(ただし鉤爪がついている)、爬虫類の手、脚の代わりに尾がついた蛇の下部胴体を持っており、全体が鱗で覆われています。
SCP-2481-3は現在SCP2481-2の下敷きになっており、激しい火傷を負っています。左腕、喉の一部、顔のごく一部、おそらくは臓器のかなりの部分といった、体の左側がありません。SCP-2481-3の負傷は著しい高温を発していますが、体の残りの部分や周辺環境には広がっていません。このような状態にも関わらず、SCP-2481-3は生存して意識を保っており、会話はできないものの財団と筆談によるコミュニケーションが可能です。
SCP-2481-3は後に商王朝で使用されたものと類縁ながら、遥かに発達した筆記法を用います。財団の言語学者は3ヶ月の研究とコミュニケーションの末翻訳できるようになりました。SCP-2481-3はSCP-2481-1と-2のオペレーターであると考えられています。対象は協力的ですが、重く悪化した精神状態のため装置の技術的詳細を聞き出す試みは失敗しています。SCP-2481-3は桀(Jie, けつ)王時代の夏王朝の学者/官吏であり、敵性実体の排除を命令されたが、失敗し、SCP-2481-1及び-2の現在の状態になったと主張しています。さらなる情報は補遺を参照してください。
補遺: 以下はSCP-2481-3が書いた文章から翻訳された情報のうち、最も関連性が高いものの部分的なログです。読みやすい順番に並べ替えてあります(SCP-2481-3の精神状態のため、殆どの情報は冗長で、繰り返しを含み、または一貫しない状態にあります)。参照のため日本語訳に元の現代中国語訳を併記してあります。
SCP-2481-3に関して
余名羿,夏之卿士也。司癸酉剑拒金乌。金乌者,日神也。
私は羿(Yi、げい)、夏王朝の官吏である。太陽の神である金烏(Golden Crow)からの守りである、第十の剣を任されていた。
彼时,金乌十者齐出。其一得隙,降大火于禹台,余不敌,固受困。后商民至,欲行不轨。轩辕已崩,幸有余威。商民以为神,不敢逾越,遂以土掩之。
あのとき、1度に10の金烏が現れた。1体が好機を捉え、巨大な火を召喚し禹台(Tower of Yu、イータイ、うの塔)へと降らせた。私は敵わず、下敷きとなった。後に商の人々がやってきて邪悪をなそうとした。しかし幸いにも軒轅(Xuanyuan、クワンヤン、けんえん)の剣が壊れているにも関わらずその力を発揮した。商の人々はそれを神聖な/魔術的なものと思い、あえて背かず、地面に埋めた。
长于荆地,十二化形,二十入蛇之道,幸仕于王都。然所执之剑,固有斩神之能,何想九乌连坠,天地色变,使其一得脱!禹台崩裂,轩辕不存,金乌遁去,余却得偷生,有负桀王所托!
私は普国に生まれ(訳注: ここで言う普はいわゆる普王朝ではなく、夏王朝の一部としての普という地名である)、12歳の頃に大蛇となる力を授かった。20歳から蛇の道を学び始め、都で働く幸運に恵まれた。私が指揮した剣は神を殺す力を持っていた。だが9体の烏の死が天と地を乱し、最後のひとつを負かすとは誰が予見できただろうか?今や禹台は砕け散り、軒轅の剣も死した。烏は逃げ、私だけが生きて残された。私は桀王の使命を果たすことができなかった!
研究者による注釈: 禹台とはSCP-2481-1、軒轅の剣とはSCP-2481-2のことだと思われます。-主任研究員シュエ・チン(Xue Quig)
余固愿一死,然若此,夏之始末自此佚也。故不敢为!
私は死を願ったが、もし私が死したら夏の歴史は失われる。だから私は死なぬのだ。
SCP-2481-1と-2に関して
昔有蛇父传道,立文字。又及器械之术,谓之伏羲八卦。黄帝习之,得金之灵,败蚩尤于涿鹿。禹王采九州之金,以八卦为基,铸得禹台。诸神畏避,夜有鬼哭。
かつて父たる蛇は我らに、文字と機械を作る方法を教えた。後者は伏羲八卦(Fuxi bagua、フーシーバーグァ、ふぎはっけ)と呼ばれる。黄帝はそれを学び、金属の精霊を得、蚩尤(Chiyou、チーヨウ、しゆう)を涿鹿(Zhuolu、チュオルー、たくろく)にて打ち負かした。禹(Yu、イー、う)王は九州より金属を集め、八卦に基づいて彼自身の塔を建てた。それ以降、神は恐れるものではなくなり、怨霊たちは夜に哭くようになった。
禹王时,四海一统,蛮夷异族皆服王化。或曰:“当祭诸神。”王曰:“神者,为龙所食。人者,龙裔也。故不当惧。”是以收九州之金,立九台,以慑诸神。少康时,立剑于台,可以屠神。命轩辕,高祖之名也。至桀王,有禹台七七之数,立剑者十余。
禹王の治世、四海に浮かぶ陸地は一つとなり、蛮夷すべて平定された。"我ら神に生贄を捧ぐべし"という者もいたが、禹王は"神は龍の食物に過ぎず、人は龍の末裔なり。しからば我らにとり神は恐るるに足らず"と答えた。それで禹王は九州より金属を集め、神を脅す9つの塔を立てた。少康(Shaokang、しょうこう)王の時代には、神々を殺せる剣が塔に備え付けられた。その剣は軒轅とも呼ばれた偉大なる祖先黄帝にちなんで名付けられた。桀王の時代には、49の塔と10以上の剣があった。
轩辕之理,非是灭却,实去其形、智、始末、因果,使其不存。九剑连发,天地色变,如引火烧身。金乌不存,夏亦受之。除吾以断剑偷生外,具为飞灰。商民至此时,竟不知夏,以为神怪。
軒轅の剣の作動原理は破壊ではない。あるものの形、心、始まりから終わりまでの歴史や成り行き、そして因果を存在しないことにするのだ。9つの剣が使われたとき、天と地は激しく乱され、自らに炎を招いたのだ。その力は金烏ではなく、夏に降り注いだ。壊れた剣の力で生き延びた私を除き、全ては灰となった。商の人々が来たとき、彼らはもはや夏のことなど知らず、私とこの地を神か物の怪かと思った。
SCP-2481が現在の状況に至った原因
商者,事货殖,贱民也。不事龙蛇之道,以金乌为尊,殊为可笑。孔甲时叛夏。
商の人らは商いばかりしている卑しいものたちであった。龍の道も蛇の道も知らず、その一方金烏を崇めていた。笑えるではないか。彼らは夏へ向かい孔甲(Kongjia、コンチャ、こうこう)の治世に反乱を起こした。
孔甲时,有蛮夷、贱民祈术法于诸神。以械驱之,尽数剪灭。独商民拜金乌得生。自皋至发,除而不尽。
孔甲王の治世、蛮夷は神より与えられた魔術を使った。王は彼らを払い滅するため機械を使った。商の民だけが金烏を崇めたため生き延びた。皐(Gao、さい)王から発(Fa、はつ)王の治世にかけ、商は幾度も退けられたが、滅することはできなかった。
俊,贼子也。是商之首,背父弃母,以大火及牺牲召三足乌。十日齐出,夏危矣。是以桀王召公卿十人,以轩辕剑剪除。十剑齐出,九乌坠地,功亏一篑,呜呼哀哉!
裏切者の俊(Jun、チン、しゅん)は商の首魁であった。我らが父母を裏切り、巨大な炎と生贄を用いて三足の烏たちを召喚した。10の太陽が一度に現れ、夏王朝は恐ろしい災いに面した。桀王は10人の官吏に烏たちを軒轅の剣を持って殺せと命じた。10の剣は使われ、9の烏は墜ちた。1つが逃げ延び、最後の一手で全ては灰燼に帰した。なんという悲劇か!
SCP-2481-3の言う"金烏"の描写は、Huǒjù zhi Zi(火炬之子、フオジーチーズー)により崇拝される実体に似ています。認可を得て、確認のためSCP-1428に関連する情報を見せました。SCP-2481-3の応答は以下になります。
虽有昔日得脱,如今终入囚笼!金乌得困,蛇之道成矣!可慰诸王之灵!
奴はあの時逃げたが、今はついに捕まったのか!あの金烏は捕らえられ、蛇の道は達成された!夏の王たちも安らかに眠れるだろう!
夏の異常な文明については、文書-2481を参照してください。
O5レベルクリアランスが必要です。
O5評議会へ
SCP-2481-1と-2の研究で集められた情報にもとづき、研究チームは夏王朝そのものを異常存在とみなせるという結論に達しました。彼らは高度に発達した異常な技術を使いこなし、その市民の殆どが異常な改造を受けていました。
我々はすでにSCP-2481-1がより大きな演算機器の一部であると結論していますが、SCP-2481-2の研究は更に衝撃的な示唆を見せています。専門家たちはスクラントン現実錨に類似した内部構造と動作原理を同定しており、SCP-2481-2は一度のみ使用できる現実歪曲兵器として設計されたと考えています。SCP-2481内部のヒュームレベルの解析はSCP-2481-2は異常存在の核であり、それゆえにこれらの物品が保存されていたことを示唆します。SCP-2481-2が何らかの原因でSCP-2481に安定した状態で転がり、SCP-2481-3を負傷にも関わらず生かしていることも示唆されます。
チームはSCP-2481-3から夏王朝の重要な地点と構造物のリストを得ることが出来ましたが、これら地点のいずれも見つけることは出来ていません。更に、長い年月が経ってるとは言え、SCP-2481-1はより巨大な構造から切り落とされたにもかかわらず、SCP-2481の外部にSCP-2481-1の部品が見つからないことも不審です。
したがって、SCP-2481-3の、いわゆる軒轅の剣の作動原理の描写にもとづき、大胆な仮説が浮かび上がります。夏王朝の文字通りの卓越と、考古学上の証拠の欠如を考えますと、我々は9つのSCP-2481-2実体の同時起動が大規模な現実の不安定化を招き、夏王朝と、そのアーティファクトをほとんど完璧なまでに現実から消滅させるという結果を引き起こしたのではないかという仮説をたてました。SCP-2481はSCP-2481-2の損傷により保存されたに過ぎず、夏王朝の幸運にして唯一存在する遺物なのかもしれません。
それでもなお、財団はSCP-2481-2の分析と調査を通じて大きな恩恵を得ることができるでしょう。SCP-2481-2と同様の装置を直接用いることはあまりに危険ですが、それでもこのオブジェクトは現実性の操作についての我々の研究を前進させるでしょう。部品の殆どが倒壊から以降のダメージは受けていないので、SCP-2481-2の修理は可能である可能性があります。しかしそのためには、SCP-2481-2は現在地から動かして再度組み立てる必要があります。これはSCP-2481の不安定化を招き、そしておそらく、未だに貴重な情報源であるSCP-2481-3を死亡させるでしょう。
したがって、この件が討議され、判断がくだされることを要請します。
―主任研究員シュエ・チン