アイテム番号: SCP-2481-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-2481-JPの目撃情報があった場合、機動部隊が確保に向かいます。その際の作戦指示は担当責任者である埴原博士が行います。SCP-2481-JPの被害者が確認された場合、医療班と周辺警備のための機動部隊が現場に急行します。また、カバーストーリー“立入禁止”を適用し、一時的に半径1kmの範囲を封鎖します。封鎖解除には埴原博士の許可が必要です。
SCP-2481-JP
説明: SCP-2481-JPは外見が水たまりに酷似している生物種に与えられた分類です。SCP-2481-JPの外見における、水面にあたる部分は光をよく反射し、その内部は視認できません。現在日本国内には約3,000個体が生息していると推測されています。SCP-2481-JPは林間部の舗装されていない道で発見されることが多く、その要因は後述の性質によるものであると考えられます。SCP-2481-JPの生態には不明な点が多く、SCP-2481-JPに関する供述には推測が含まれる場合があることに留意してください。
SCP-2481-JPは不明な原理によって移動します。SCP-2481-JPの移動には大きく分けて以下の2種類があると考えられています。
- 地上での移動
SCP-2481-JPは地上を滑るように移動します。移動の際、地面に目立った痕跡は残しませんが、水で湿っていることが確認されています。そのため、SCP-2481-JPはウミウシやナメクジ等の軟体動物のようなひだ状の足を用いて移動していると考えられています。
- 地中への移動、地中での移動
SCP-2481-JPは身の危険を感じると地中への逃走を試みます。この移動は地中へSCP-2481-JPの体組織を浸透させることによって行われ、そのまま地中を浸透することで移動します。一定距離移動した後、SCP-2481-JPは地上に染み出すように出現し、再び水たまりのような外見に戻ります。SCP-2481-JPは地中に穴を開けるような活動を見せないため、地中に浸透することで分離された粒子それぞれが移動能力を持つと考えられています。SCP-2481-JPがサルパ1のように複数個体の集合体であるかは不明です。また、SCP-2481-JPを構成する部分は地中の状態でも同一の方向へ移動するため、何らかの物質を介したネットワークを形成しているか、もしくは移動する方向に規則性があると考えられています。
SCP-2481-JPは肉食であり、待ち伏せによって主にシカやイノシシ等の動物を捕食しています。それらの動物(以後、対象)がSCP-2481-JPを踏んだ時点で、対象は脚部をSCP-2481-JPから引き抜くことができなくなります。これは、SCP-2481-JP内部に“かえし”がついた針状の構造が無数にあるためだと考えられています。SCP-2481-JPは対象の四肢全てを内部に取り込み、拘束した後、対象を引き倒して半身を取り込みます。この段階でSCP-2481-JPは消化液を分泌し、対象を消化し始めます。消化は対象が骨だけになるまで行われ、骨は摂取されず、破棄されます。また、同様の手順で登山客等のヒトも捕食していることが判明しており、年間の犠牲者は約10名と推測されています。
映像記録2481-JP-1
概要: 映像記録2481-JP-1はインシデント記録-2481-JP-5を撮影したものであり、2010年にインターネット上にアップロードされた動画です。動画内の情報の精査により、兵庫県で撮影された映像であることが判明しています。尚、現在この動画は異常な要素が排除されたダミー動画に差し替えられています。
<記録開始>
動画開始時: 動画には3人の高校生男女が登山をしている様子が映っており、撮影者の女性は先頭を歩きながら3人の様子を撮影している。
男性A: いや結構登ってきたんじゃね? ミチコちゃん大丈夫? キツくない?
女性: 余裕余裕……[息切れ。] え、あとどんくらいあるの?
撮影者: えーミチコやばー、だいぶキツそうじゃん。[笑い。]
男性B: あと20分くらいかねー。無理しなよ、ちょっと休む?
男性A: 20分かー、まあまああるね。
女性: い、いや、いける、大丈夫。大丈夫やから……[息切れ。]
(画面手前にSCP-2481-JPらしきものが映る。)
女性: (よろけて) おっと。
男性A: うおっと。(女性を支える。) うん、やっぱ休も。
(女性を支えた拍子に、男性Aの右足がSCP-2481-JPを踏みつける。男性Aの右足首までがSCP-2481-JP内部に取り込まれる。)
撮影者: うわっ、てか水たまり深っ。
女性: ごっ、ごめ……
男性A: ううん、全然……痛っ。なっ、なにこれ抜けねえ、ってか痛え。
男性B: え? 何?[笑い。]
撮影者: えー、[笑い。]ちょっとケンジ、どしたんどしたーん?
男性A: や、ちょっと、(顔をしかめる。) なんか噛まれた? かな。ちょっと引っ張ってくんね? 引っかかって抜けねえ。
(男性Aが右手を伸ばし、引っ張るように指図する。女性がその手を掴み、引っ張ろうと試みる。)
男性A: マジ、サンキューな……
女性: あっ。
(男性Aが女性の手を掴み、引っ張ると同時に女性がよろけ、女性の左足がSCP-2481-JP内部に取り込まれる。)
男性A: あっミチコ、危ない!
撮影者: ちょ、ちょっと!
女性: あっ……つっ。(顔をしかめる。)
男性B: ミチコ!
(女性が咄嗟にSCP-2481-JP内部に左手の指先を挿入する。)
女性: あひっ!
(女性は左手を素早くSCP-2481-JPから抜き取る。女性の左手の第二、第三、第四指の指先が失われていることが確認できる。)
男性B: わっ!(目を覆う。)
女性: い、痛……? え? 指?(自分自身の左手を見る。)
男性A: え……?(自分自身の右足を見る。) う、うわあああ!(暴れる。)
撮影者: [悲鳴。]
(カメラが落下し、以降地面を映す。)
男性A: 出して! 助けて! 食われる! 助けて! 助けて! [悲鳴。]
女性: 嫌! 嫌! ごめんなさい! ごめんなさい! [泣き叫ぶ。]
男性B: 何! 何! どうなってんの!
<記録終了>
補足: この映像の終了後、何らかの要因でSCP-2481-JPは逃走したと考えられ、撮影地の近辺に位置する██外科にて男性Aと女性が診察を受けたことが明らかになっています。両名とも命に別状は無く、██外科にて診察を行った██氏へは記憶処理を施し、映像記録に登場した4名へはそれぞれ記憶処理の後、登山中に転落事故が発生したというカバーストーリーを適用しました。
実験記録2481-JP-1
日時: 2004/05/12/13:00
場所: 岐阜県大垣市
概要: SCP-2481-JPに生きたイノシシ(Sus scrofa)のオス個体を1匹与え、捕食の様子を観察する。また、捕食中にDクラス職員3名が接近し、逃走の様子を確認する。
備考: 発見され、監視対象となっていたSCP-2481-JP個体を用いた実験。
結果: SCP-2481-JPはイノシシの右前脚を拘束すると、身体を拡げて左前脚、右後脚、左後脚も拘束。その後素早くイノシシを左右に揺すり、イノシシがSCP-2481-JP上に左半身を下に倒れ込んだ。実験開始から25分経過し、イノシシの衰弱が顕著になった時点でDクラス職員3人を投入したところ、SCP-2481-JPはイノシシを放棄し、即座に地中に浸透して消失した。
イノシシの左半身は消化液によって大部分が溶解しており、拘束されていた脚部には無数の棘が刺さったような傷が確認された。また、周囲の土を調査したが、SCP-2481-JPの体組織及びSCP-2481-JPに関する何かしらの有意な痕跡は得られなかった。
SCP-2481-JPの捕獲に関しては、これまでに様々な取り組みが行われてきました。以下はその一部です。
- 銃撃による狩猟
結果: 失敗。飛沫は多量に発生するも、体組織は回収できず、SCP-2481-JPは怯む様子を見せずに地中へ逃走した。発砲数を増やした場合も目立った成果は無かった。
- ポンプによる採取
結果: 失敗。出力の大きいポンプはその巨大な外見からSCP-2481-JPが逃走してしまう可能性が指摘されたため、小型のエンジンポンプを使用した。ポンプの吸引口をSCP-2481-JPに挿入したところ、SCP-2481-JPはポンプを拘束しようと試みたため、吸引を開始した。SCP-2481-JPは即座に吸引口と体組織の間に空間を作り、吸引力を弱めた上で逃走した。
- 打撃による狩猟
結果: 失敗。重量3kgの金属ハンマーを持たせたDクラス職員の右足をSCP-2481-JP内部に挿入させた。Dクラス職員が右足に刺すような断続的な痛みを訴える。Dクラス職員にハンマーでSCP-2481-JPを打撃するように指示し、打撃が実行される。大量の飛沫が発生したものの、SCP-2481-JPはDクラス職員の拘束を解かず、Dクラス職員の左足も拘束し、引き倒した。待機していた機動部隊が接近したところ、SCP-2481-JPは逃走した。Dクラス職員の両足首以下には無数に直径約2mm、深さ約7mmの穴が空けられていた。支給した財団作業用標準ゴムブーツは貫通していた。
- 金属製の囮を使用し捕獲する
結果: 失敗。ただし体組織は採取した。体長118cm、重量152kgのイノシシを模した四足歩行ロボットを使用し、SCP-2481-JP内に右前脚を挿入した。SCP-2481-JPは、一時的にロボットの拘束を試みるも、針状の構造を用いた脚部の拘束に失敗すると、地中へ逃走した。その際、僅かに体組織がロボットに付着した。体組織は回収され、研究施設に送られた。
追記: 以下はSCP-2481-JPの体組織を解析した結果と、諸分析をまとめたレポートの転載です。
SCP-2481-JPサンプルの分析結果
埴原 勲 松本 美佳
SCP-2481-JPは動物のような挙動を見せながら、一般に生物の定義として挙げられる「外界と膜で仕切られている」という項目を満たすように見えず、それでいながらポンプを用いた採取の試みが失敗したように、組織同士が結合しているように考えられるなど、その研究資料の少なさから現在に至るまで不明な点が多く存在していた。本レポートでは、SCP-2481-JPから採取されたサンプルを解析した結果と、SCP-2481-JPの性質に関する諸考察を述べる。
[中略]
SCP-2481-JPの液体サンプルを解析したところ、その構成成分のほとんどが水分であり、その割合は99%に及んだ。外膜構造は確認できなかったものの、コラーゲン等のたんぱく質や糖類が発見された。そのため、何らかの代謝機能は備えていると考えられる。
SCP-2481-JPの固体サンプルを解析したところ、その主な成分は炭酸カルシウムやたんぱく質等であり、強固な結晶構造を有していることによって非常に硬度が高い。また、その形状は鋭い針状であり、“かえし”のような構造も確認された。また、このサンプルの根元には断裂痕が見られる。
図1。SCP-2481-JPの固体サンプルの図。2つの“かえし”があることが分かる。
これらの結果から、SCP-2481-JPは刺胞動物に近い存在であるという仮説を提唱する。刺胞動物はそのほとんどの種が水場に生息し、その触手には刺激を受けると射出される針(刺糸)がついている。クラゲやイソギンチャク、ヒドラなどが代表的な刺胞動物だ。
図2。刺糸が射出される過程を図示したもの。
SCP-2481-JPの固体サンプルは刺糸であると推測する。SCP-2481-JP内に他の動物が侵入した段階で対象が痛みを感じ、SCP-2481-JP内部から脱出できなくなるのは、侵入による刺激で刺糸が射出されたためだと考えられる。刺糸は対象に無数に突き刺さり、“かえし”のある構造によって固定されることになるだろう。
今回のサンプルから膜構造は発見されなかったものの、刺胞が存在すると仮定するならば、SCP-2481-JPが細胞からなる存在であると言える。しかしそう考えると、今度は地中に浸透するメカニズムが不明である。ともかく、現時点ではSCP-2481-JPを何らかの生物種に分類することは困難であり、さらなる考察にはより多くの情報が求められる。
SCP-2481-JPに対する調査は引き続き実施されます。
SCP-2481-JPによるものと考えられているインシデント記録に関しては以下を参照してください。









