アイテム番号: SCP-2523
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 毎年8月15日、機動部隊オミクロン-13(“トリック・オア・トリート”)が活動を始めます。MTF O-13は、遅くとも8月20日までに完全なクラスW記憶補強薬治療計画を開始しなければなりません。MTF O-13は11月7日以降はクラスW投薬量を減らし始め、11月15日以降は活動を休止します。活動期間はSCP-2523プロジェクトリーダーの裁量で90日まで延長することができます(更なる延長は人事管理部と医療職員の両方から承認が必要になります)。
10月1日より、MTF O-13はSCP-2523の影響を受けた8ヶ所(SCP-2523-Aから-Hと指定)を24時間監視します。この8ヶ所は、影響された地域の最東端と最西端、およびアメリカ合衆国の各時間帯から1つずつ選択されます。10月31日、日没の1時間前までに、MTF O-13は指定された各地点へ2名の接触チームを派遣します。各地点が異常性を示し始めた時点で、接触チームはミッション実行前にお互いの交信状況と合言葉を確認する必要があります。接触チームは24時間監視において、8時間ごとに交代します。放逐されたチームメンバーは直ちに交換する必要があります。異常の内部にいる全チームは、休憩および交換の際に交信状況と合言葉を確認する必要があります。
チームメンバーは、目立たないソーシャルエンジニアリング技術のみを使用して、一般市民による非金銭的購入の防止に努めます。民間人が非金銭取引を行った場合、その人物の身元と所在を特定し、サポートチームへ報告を入れます。サポートチームは直ちに非金銭的購入を行った全ての民間人を発見・拘留します。購入されたアイテムは研究のために押収します。勾留された人物にはインタビュー後に記憶処置を施して解放します。放逐イベントを経験したチームメンバーは即時Eクラス職員として再分類され、説明を受け、あらゆる重要な財団施設から少なくとも50km離れた地点に少なくとも366日間は隔離されます。生存者は医療職員の承認を待って任務に復帰できる場合があります。
現在、SCP-2523-1実体の勾留は許可されていません。承認が下りた場合、SCP-2523-1実体は少なくとも質量の75%が鉄で構成された拘束具を用いて確保します。
説明: SCP-2523は、10月31日の日没から11月1日の日没まで、アメリカ合衆国およびカナダでハロウィンの衣装・装飾を販売する季節性の店舗に影響を及ぼす現象です。SCP-2523の発生は完全にハロウィン期間中のみ営業する店舗に限定されており、より永続的に営業している企業のハロウィン装飾には影響しません。
異常性の活性化中、影響を受けた場所は、地理的分離に関係なく、空間的に融合します。店舗の内装は十分に類似していれば重複し(例として、同型の陳列棚は製品を複製することなく1つの棚と化します)、そうでない部分は必要に応じて拡張されます。1ヶ所に入店した人物は、他の影響された店舗にいる人物とリアルタイムで物理的に相互作用することが可能であり、退店時には本来入った店舗の外に戻ることができます。1
影響を受けた店舗は、掲示された営業時間に関係なく24時間営業となります。日没を迎えると、4~6体の実体(SCP-2523-1と指定)が出現して、全ての従業員とシフトを交代します。実体は矮躯のヒト型生物(身長0.8m~1.2mの間と推定)であり、各種脊椎動物の混ざり合った特徴と、様々な比率の四肢を有しています(詳細は補遺A: SCP-2523-1を参照)。SCP-2523-1実体は、非金銭取引をするよう客を説得しようとする点を除いては、通常の小売事業を行います。24時間が経過すると、SCP-2523-1実体は予定通りに現れた人間の従業員と交代し、その後の従業員たちは通常シーズンオフとなった店舗の店じまいを開始します。
これに曝露した人物は、取引・SCP-2523-1実体・異常存在から生じたオブジェクトなどの、SCP-2523のあらゆる異常性質を完全に通常の出来事として捉えます。この効果は曝露者との直接的会話・写真・その他の直接記録にも及びます。観測した出来事の意識的な再確認と組み合わせたクラスW記憶補強薬による治療で、この効果の中和が可能です。
異常性発現時に客が品物を購入しようとすると、SCP-2523-1実体は購入に際して金銭的な手段を使わないように説得を試み、代わりに物々交換を提案します。SCP-2523-1実体は物理的オブジェクトのみならず、より抽象的な概念でも公正な取引の対価として認めます。これらには髪の毛・個人の持つ能力・数年分の命・子供・違法薬物・記憶・感情などが含まれます(完全なリストは補遺B: SCP-2523非金銭取引を参照)。客があくまで金で払うと主張した場合、実体はあからさまに不本意な様子を見せつつも受け入れます。全てのケースにおいて客は取引の対価として渡した能力を恒久的に失っており、これは実験によって実証可能です。
非金銭的手段により取得されたアイテムは顕著な異常特性を見せます。以下は部分的リストです(完全なリストは補遺Bを参照)。アイテム | 異常効果 | 対価 |
---|---|---|
はめ込み式の吸血鬼の牙 | 着用者は血液(脊椎動物なら種類問わず)を飲むことへの抑え難い渇望を示し、会話を経由して他者に強い暗示を掛ける能力を獲得した。 | ヘロイン30グラム |
ダークチョコレートのキャンディバー | バーを食べた後、対象者はあらゆる食品への興味を失い、28日間何も食べなかったにも拘らず、飢餓の兆候を示さなかった。 | 子供時代の家族旅行の記憶 |
プラスチック製の蜘蛛のおもちゃ300個 | 購入者は蜘蛛を食べるように促された。蜘蛛を食べた後、対象者は身体の穴からスジコガネグモ(Argiope trifasciata)を排出してテレパシーで操ることが可能になった。 | 歌唱力 |
“セクシー・ナース”コスチューム | 着用者は性的な自制能力の著しい減退と、異性を魅了する能力の向上を示した。性的パートナーは軽度の麻酔効果を報告している。 | 8歳の子供、現在の所在は不明 |
装飾用のトリックミラー | 鏡に映る像は、観察者の死亡した知人もしくはペットである。 | 共感性 |
煎ったカボチャの種入りの袋 | 種はSCP-097由来である | 米国海軍下士官1級の階級の山形そで章を描いたタトゥー。タトゥーは傷跡もなく取り除かれた。 |
補遺:
放逐イベント: 最初の放逐イベントは1999/11/01の01:10、初期収容中に発生しており、以降全ての放逐イベントの典型例です。この時、エージェント マグナイニは異常性を示す店舗の入り口を物理的に封鎖しようとしていました。1体のSCP-2523-1実体が出現し、エージェント マグナイニに対して立ち去るよう求めました。これを拒否したマグナイニは全身の激痛に苦しみ始め、これは彼がSCP-2523-1実体の要求に従うまで激しさを増していきました。後にマグナイニは自分が“不運”に見舞われていると報告し、統計分析によって彼とその駐留先であるエリア-██が極めて多数の“不幸な偶然”に苛まれていることが判明しました。この状況は2000/01/15にマグナイニが自動車事故で死亡したことにより終了しました。この現象はエリア-██における17名の負傷、4名の死亡、カテゴリー3収容違反1件の要因として疑われています。更なる実験により、この効果は366日間持続することが判明しました。放逐された人物は366日が経過しても、SCP-2523異常への入店が不可能になります。
SCP-2523-1実体の勾留:
回答者: SCP-2523-1実体。“ボビー・グッドマン”という名札を着用。
質問者: エージェント ロセッティ
序: 2001/10/31の20:00、MTF O-13のエージェントたちは、尋問および収容のためにSCP-2523-1実体のうち1体をサイト-17へ拉致した。この実体はイヌ科の耳・類人猿の口部・不釣り合いに長い四肢を有していた(完全な描写は補遺Aを参照)。実体は問題なく鉄の拘束具で確保され、任務の結果としてMTF O-13構成員3名が店舗から放逐された。
<記録開始、2001/11/01、02:00>
ロセッティ: それじゃあ、“ボビー”、貴方が働いている場所について教えてもらえます?
SCP-2523-1: 俺は働いてないよ、人間。俺は物を売ってるんだ。
ロセッティ: なら、貴方が売っている物について教えてください。
SCP-2523-1: 俺たちは美味い物を、素晴らしい物を、喜びと闇の物を、若々しき世界の物を、死の世界の物を、狭間の国の物を売りに来てるんだ。買いにおいでよ!
ロセッティ: 貴方は何者ですか?
SCP-2523-1: [笑い] あんたたち人間はいつも忘れっぽいなぁ! 面白いったら! 夏の終わりにゃ、狭間の国では門が大きく開く! 俺たちは今もそこから来て品を売ってるんだよ、丁度…あんたたちの言葉で、今からは辿り着けなくなった影の中の場所をなんて言うんだっけ? 昔? そう、丁度昔やってたように。俺たちは中間の民、狭間の民だ。暑く輝く夏の家臣でも、冷たく無慈悲な冬の廷臣でもない。俺たちは秋の民なのさ。
ロセッティ: 何故、ハロウィン期間しか営業しない店だけで、他の店には現れないのですか?
SCP-2523-1: ああ! 中間の場が、俺たちの物なんだよ。連中もここだけ、夏の端っこだけしか生きてないだろ。
ロセッティ: 何故、お金ではなく、物々取引を好むのですか?
SCP-2523-1: お金なんて価値無いね。あれは単なる交換の手段。俺たちが求めてるのはさ、一品物の価値なんだ。それなら世界の何処に持って行っても取引ができる。あんたは俺たちが売り物を何処で手に入れてると思ったんだい? 俺たちは秋の民、靴屋じゃないんだぜ!
ロセッティ: 貴方は、自分の売り物が人間にとって問題だということを分かってるんですか?
SCP-2523-1: おう! 無論そうとも! 俺たちゃみんな愉快な仲間、扱う品ももちろん愉快さ!
<記録終了>
結: インタビュー後、SCP-2523-1実体はヒト型生物収容室へ移され、非常に協力的な姿勢を示した。2001/11/01の日没時、実体はゴツゴツした未加工の樫の木の枝・服の端切れ・鉱物粘土でできた雑な人形を残して収容室から消失した。この出来事と同時にサイト-17の全ての乳製品の即時腐敗が報告された。