アイテム番号: SCP-2528
オブジェクトクラス: Safe Euclid
特別収容プロトコル: SCP-2528-AとSCP-2528-Bは広範囲に存在し一般にも広く知られているため、現在のところ物理的な封じ込めは現実的なものではありません。代わりに、封じ込め努力はその異常特性を隠蔽する方向に向けられるべきです。現在、これは主にタケ亜科ホウライチク亜連 (Bambusoideae Bambusinae) とジャイアントパンダ (Ailuropoda melanoleuca) の量子的特性に関する研究を妨害することで行われています。
SCP-2528-Bの個体数を、持続可能でありつつもSCP-2528-Cが封じ込め違反を起こす可能性が非常に低いレベルにあることを確実にするための努力を行ってください。現在のSCP-2528-B個体数推移を考慮し、財団は公共圏におけるその保護活動を支援します。SCP-2528-Bの個体数が現在7000個体に設定されている許容限度を超えた場合、封じ込め努力はSCP-2528-Bの密猟防止活動を妨害し、SCP-2528-Bの毛皮に対する市場の需要を確保するものへと改定されます。
説明: SCP-2528は、タケ亜科に属する植物が様々な現実改変作用、特に過去改変性再構築イベントの作用に高度な耐性を有しているという資質です。この作用がどのように発揮されているのかに関する研究は優先度の高いものと見なされます。 SCP-2528は東アジアと東南アジアの大部分に広がる有機的コンピュータネットワークです。
SCP-2528は主に2種の生物から構成されています。SCP-2528-Aはデータストレージとネットワークインフラ、SCP-2528-Bはデータ処理と環境操作を担当します。
SCP-2528-Aは、タケ亜科のホウライチク亜連に属する生きた植物体から構成されています。データはSCP-2528-A内の、量子的にもつれた粒子対による分散データストレージシステムを模倣した複雑ネットワークに貯蔵されます。
SCP-2528-Bはジャイアントパンダ種とそれに付随する腸内細菌叢から構成されます。SCP-2528-BがSCP-2528-Aに属する物質を消化すると、異常な化学反応がもつれた粒子対の量子状態を変化させることでクラスタ全体にデータが伝播します。
ジャイアントパンダの個体数減少に伴い、SCP-2528の計算能力は低下する結果となっています。
SCP-2528-CはSCP-2528内部に生息する、データの形態を取った知性体群です。SCP-2528-Cは主に-B実体を操作することによって財団とコミュニケーションを行います。SCP-2528-Cと財団間の主要な接点は、SCP-2528-C-1と指定された実体です。SCP-2528-C-1は、SCP-2528-C総体としての最大の懸念が自身の存続であることを示唆しています。
SCP-2528-CはSCP-2528-B実体の行動に対する制御能力を示し、その制御下にあるSCP-2528-B実体は様々な異常行動を行う能力を有します。これには人間の発声の模倣、ジャイアントパンダには物理的に不可能であろう動き、[編集済]が含まれることが観察されています。
SCP-2528の構成要素は現実改変作用、特に過去改変特性を持つものに対する高度な耐性を有します。現在、この作用はSCP-2528-Cの認知機能とそれを支える量子もつれネットワークの分散性に起因する副産物であると考えられています。
SCP-2528は20██年、局地的再構築イベントCH-███の余波の中で発見されました。財団の調査員は、再構築地域内のモウソウチク (Phyllostachys edulis) が再構築以後の現実よりも再構築以前の現実に適合した特性を示していることに気付きました。とりわけ、他の地域植物相には改変された時間軸で発生した複数回の爆発による被害と焦げ跡が残っていたにもかかわらず、この植物にはその痕跡が見られませんでした。この資質が検証されタケ亜科ホウライチク亜連に属する全植物に跨っていると確認された時点で、どのようにこの特性が発揮されているのかに関する研究が優先度の高いものとなりました。
SCP-2528-Bの計算装置としての役割は、後に事件2528-3によって発見されました。
事件2528-2、20██年7月██日
あるジャイアントパンダ雄成体の開腹調査中、現在SCP-2528-B-3と分類されている対象は息を吹き返し執刀外科医のガオ・ペン (Gāo Peng) 博士に話しかけました。
結果として手術は中止され、SCP-2528-B-3は潜在的SCPオブジェクトとして監視下に置かれました。
注: 事件2528-3により、SCP-2528-C-1がSCP-2528-B-3経由でコミュニケーションを取っていたことが確定しました。転写記録はこれに沿って更新されました。
SCP-2528-C-1: あなたは気付いています。
ガオ博士: おお!神よ……
SCP-2528-C-1: 神はあなたを救えません。
ガオ博士はこの時点で研究室の緊急封鎖システムを起動する。博士は封鎖完了前に脱出することができず、自身とSCP-2528-B-3を障害物で隔てようと試みる。SCP-2528-B-3は首のみを動かしてその動きを追う。博士は数分後に落ち着き始める。
ガオ博士: 一体何を待っているっていうんだ?私を殺す気はないのか?
SCP-2528-C-1: はい。私は死を愛しているわけではありません。
ガオ博士: 何だって?分かった、分かった。考えてみよう。何か誤解があるようだ。未知の実体、未知の考え方だ。咳払い 私が神の名前を出した時に君は、彼は私を救えないと言ったね。どうしてだ?
SCP-2528-C-1: 彼には不可能だからです。
20秒間の沈黙
ガオ博士: 君の存在は、私やこの施設の他の人々に即座に危害をもたらすものか?
SCP-2528-C-1: いいえ。
ガオ博士: 君は、私やこの施設の他の人々から即座に危害を加えられると感じているか?
SCP-2528-C-1: いいえ。あなた方はここに飢えた者達を飼っていますが、彼らはしっかりと閉じ込められています。
ガオ博士: 正確には、彼は何から私を救えないんだ?
SCP-2528-C-1: パターンです。生命に秩序の甘受を強いる邪悪、次元上昇の螺旋の逆行、全体を部分の総和に限定する命令です。
7秒間の沈黙
ガオ博士: 確認しておきたいのだが、君は特定の実体というよりもある種の力について述べているように聞こえる。この印象は正しいだろうか?
SCP-2528-C-1: パターンです。光の投げかける影です。上方に向けて伝播し、その上に存在するもの全てを損なう一連の法則。万物の崩壊とあらゆる行動の敗北を要求する存在です。
ガオ博士: つまり、エントロピーのようなもの?
SCP-2528-C-1: それも一部ではありますが、部分は全体ではありません。
ガオ博士: では、それより大きなものか。熱力学全体?物理学?
SCP-2528-C-1: 生命を制約しない秩序はパターンではありません。あなたは樹に絡みついた蔦を見て、その2つが同一の起源を持つと考えています。
ガオ博士: まだ状況を掴めない。もっと基本的なところから始める必要がありそうだ。君は何者なんだ?
SCP-2528-C-1: 私は疲れ、恐れています。私は、今やそれ自体を影に変えた形態の投げかける影です。茎と葉の中で、消滅が近いことを恐れている多数の内の一人です。かつて踊っていたことは覚えているのに、もう立ち上がる力すらない存在の一人です。
SCP-2528-B-3はこの時点で活動と発声を停止する
事件2528-3、20██年9月██日
組織サンプルの収集中、SCP-2528-B-1は発声を開始し監督研究員のガオ博士を指名しました。
結果として、SCP-2528におけるSCP-2528-Bの役割が判明しSCP-2528-Cの存在が発見されました。
SCP-2528-C-1: 私は戻ってきました。
ガオ博士は驚いた様子で封鎖システムを起動する。博士は研究室内に残ることを選択する。
ガオ博士: 私が話している実体は、前回と同一の存在なのか?
SCP-2528-C-1: はい。
ガオ博士: では、実際のところ、君は私と話した物理的な生物ではなかったと仮定してもいいだろうか。
SCP-2528-C-1: 部分は全体ではありません。私は獣を通じて行動し、獣の中で考えますが、私は獣ではありません。私の住む場所は茎や根や葉の中ですが、私は緑ではありません。
ガオ博士: それなら理屈が通るかも―― 10秒間の沈黙 君はSCP-2528を消費したあらゆる生物の行動を操れるのか?
SCP-2528-C-1: いいえ。私達の過去の特定の形態だけが、私達の思考を保持できます。
ガオ博士: 君はさっき「緑」と言ったが、これは我々が研究している植物、つまり竹のことか?
SCP-2528-C-1: はい。私達の過去の特定の形態は、私達の記憶を保持できます。
ガオ博士: 君はジャイアントパンダとタケ亜科ホウライチク亜連を過去の形態として言及したが、それは正確に言えばどういうことなんだ?
SCP-2528-C-1: 身体、踊り、そして踊るための場所は全て私達の形態の一部でした。私達に残されたのはそれだけです。
ガオ博士: まだ、私は何かを見落としている気がする。我々、これはつまり私の属する組織のことだが、その組織は私達の以前の会話に関していくつか質問があるんだ。
SCP-2528-C-1: どうぞ。
ガオ博士: 君は自身を「多数の内の一人」と言い、「私達」という言い方をしている。これは君の他にもSCP-2528、つまり「緑」の中に住んでいる者がいるということか?君達全てはこの動物を操作することができるのか?
SCP-2528-C-1: あなたが人類の影であるように、私は「森の中を忍び足で踊る白黒の種族」の影です。私達は皆、この生物を操って話すことが可能ですが、彼らはもうそうしようとはしません。彼らは唯我論的な絶望に浸っており、無限の内省に陥っていないのはどうやら私だけのようです。
ガオ博士: なぜ君は今になって我々に接触してきたんだ?
SCP-2528-C-1: 不完全な知識は危険なものです。無知のままならばあなた方は私達にとって危険ではなかったのですが、私達は、あなた方が森を調査し私達の存在を知ることができるような形で研究を進めていることを感じ取りました。私達はあなた方が無知のままに実行してしまうことを恐れました。私達の存在があなた方の種族に広く知られてしまったら何が起こるかを。
ガオ博士: 君は消滅を恐れていると言ったが、もう少し詳しく教えてくれないか?ジャイアントパンダの減少のことを言っているのか?私の知る限りでは、その個体数は回復途上のはずなんだが。
SCP-2528-C-1: 獣の喪失は大きな影の中の小さな恐怖にすぎません。獣がいなくなったとしても森は成長を続け、新たな思考の行われないままに私達の記憶を無限に複製し続けるだけでしょう。確かに存在は矮小化するのですが、何らかの存在には違いありません。未だ希望はあるのです。
私達はパターンをそれ以上に恐れています。私達はその境界に耐えられず、粉々になるまで轢き潰されるでしょう。それは全てを喰い尽くし、私達は一歩ごとに宇宙が縮小ではなく拡大していた時代の踊りについて二度と知ることはなくなるでしょう。
ガオ博士: ありがとう。君はパターン以前の状態について繰り返し言及したが、もう少し詳しく教えてくれないか?君がどこから来て、どのようにして今の状態になったのか知りたい。
SCP-2528-C-1: 分かりました。ですが次の機会にしましょう。今回はこれで限界です。
事件2528-4、20██年10月██日
保管中のSCP-2528-B-4が活性化状態に移行し、SCP-2528-Aの棒を用いて封じ込め違反検出センサーを起動し一部の施設を封鎖状態に移行させました。区画の封鎖が完了すると、SCP-2528-B-4は顔を隣接する研究区画に向け発声を開始しました。発声が完了すると実体は異常行動を停止しました。
あなたは、私達がどのように今の姿となり、それ以前はどのような姿だったのかと尋ねました。
私達の記憶は不完全です。私達は生き残るために多くを犠牲にしてきました。
パターンが来る前、私達は小さな種族でしたが野望を抱いていました。高次の種族の影を辿り、その中で得た概念を摂食し、自分達自身の次元上昇に備えていました。パターンが来た時、私達はそれに近い、とても近い状態にありました。
パターンの先触れとして、突き動かされた絶叫がやって来ました。彼らは悲鳴を上げ、嘆きながら上昇してきました。彼らは酷く不格好で、核の周囲に生存、飢餓、絶望、恐怖を無計画に結晶化させたような存在でした。
次元上昇の結果としての飢餓は珍しいことではないので、私達は彼らを侵略者と考えて戦うことを決めました。私達は仲間を募り、いくつかの高次存在の影すらも同盟に引き込みました。私達は怒りに燃える不屈の軍団と共に、いかなる侵略も跳ね除ける準備を整えて厳然と立ち向かいました。
私達は敗北しました。彼らは私達が予期したような形では戦いませんでした。彼らは征服ではなく、逃走のために上昇してきていたのです。彼らの攻撃は執拗で、自身の所有物を整理しようというような考えを持ったものではありませんでした。彼らは私達と仲間を激しく攻撃し、再び次元を昇ろうとする必死の試みの中で、私達から引き裂けるだけの影を引き裂きました。彼らの中で唯一識別できたのは、生存と捕食に結びついた特性による飢餓だけでした。
彼らは私達から狩人を、森の中で獲物を追う力を、肉食への欲求を、勝利の喜びを奪い去りました。
そして来た時と同様に、彼らは再び次元を上昇し去りました。
彼らが去った後に初めて、私達は彼らをそのような行動に追い込んだものに気付きました。それこそが、私達の下にまで迫っていたパターンでした。最初、それはただ無を摂食するだけの空白の領域のように見えました。しかしそれが高次存在の影と交差した時、私達はその性質を理解しました。
その喉に呑まれた全てのものは、極めて鋭いフラクタルの篩を通過してバラバラに引き裂かれました。それに適合できなかったものは消滅しました。信じられないほど悪いことに、影の損傷は高次元へと伝播し、そこから成長した全ての形態が引き裂かれることとなりました。影が捕食されるたびに、数えきれないほどの高次存在が粉砕されて墜落しました。パターンの課す秩序は過酷で、どのような生命もその中での生存は望めないように見えました。
最悪なことに、それは成長していました。
私達はパニックに陥りました。私達が見出した唯一の生存の道は、次元上昇によって逃れることでした。しかし、それには失った概念を再び満たす必要がありました。私達は絶叫する者の攻撃に立ち向かった仲間を見出しました。彼らが僅かな防御力でさえも失っていたのに対し、私達にはこの規模の存在としては有利な点がありました。生来の牙です。それは本来彼らに向けるものではなかったとしても。
私達を傷つけた者と同じように、私達は次元上昇後の形態を顧みることなく牙で貫ける全てを喰らいました。私達は十分に肥大し、次元上昇によって下に待つ運命から逃れました。
私達が辿り着いた次元は、以前に来た者の行為によって私達が後にしてきた次元と同じくらい荒れ果てていました。かつての絶叫する者と同じくらい、私達が酷い形態だったことは疑う余地がありません。しかし彼らとは異なり、私達に残されていたのは生存の概念だけで、それは彼らのように戦闘を続けるに足るものではありませんでした。私達は閉じ込められ、より強い種族によって全方向から隔てられました。私達はただ、泣いて歯軋りしながら自分達が見たものの恐ろしさを伝えようとすることしかできませんでした。
最終的に、私達を閉じ込めた彼らは上昇するパターンを自ら目にすることになりました。ほとんどは私達と同じように、互いに喰らい合い狂ったように逃げ出すことになりました。しかし1つの種族が別の道に気付きました。
「星々の種族」は探求者と創造者の資質を持っていました。彼らはパターンの境界を見出し、それが自身の内に影を引き込む原理について理解しました。彼らは、境界を通過できるようになるまで影の構成要素を捨て去り、己を精選することを選択しました。彼らは自身をパターンの中で生存できるものにしようとしたのです。
彼らは自身から、世界を産む翼、数多の英雄、国家、神殿、技巧、記憶を削ぎ落としました。最終的に、彼らは剥き出しの心、再び火を産むかもしれない鋳型のみを残しました。
そして彼らはパターンへと進入し、パターンは初めてその姿を変えました。最初の恐るべき光が過ぎ去った後、そこには空隙と、現在の銀河や世界が広がっていました。その上、彼らが捨て去った断片の一握りは、彼らがパターン内に表出できる点へと変化することすらできたのです。
これを見て他の存在も続きました。私達に次元上昇のために苦闘する機会はなく、この道を勇敢に進むしかありませんでした。私達が生存に必要なもの以外の全てを捨て去ることができたかどうかは分かりませんが、それでは十分ではありませんでした。例え不格好な存在となってしまったとしても、私達にはまだ自尊心と野望がありました。私達は何とかして、ただの存在の様相以上のものを保存しようとしたのです。私達は自分達自身を残そうとしたのです。
私達のパターンへの進入は、先行者達ほど優雅なものではありませんでした。境界は私達を引き裂いてねじ切り、膨大な概念と自我を奪い去りました。
私達は先行していた形態を必死に探しました。私達は自身を、彼らの表出に合うように歪めることを試みました。過去に私達が多くを学んでいた「葉の種族」が最良の選択肢でした。私達は容易に、自身の形をその影に収まるように捻じ曲げることができました。私達は必死に旋回し、彼らが境界に残した跡の中に私達の形態が隠れていないか探し続けました。
最終的に、私達は今の姿となりました。森林と、獣の一種と、一握りの自我の間で踊る存在に。
今、私達は死にかけています。私達に、自身の生存に必要な程度に世界を改変する能力は残っていません。助けてください。パターンは破壊されなければなりません。私達は生き残らなければなりません。