SCP-2550-JP
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注記: あなたが閲覧しているのは該当ファイルのアーカイブ版です。

当ファイルは現行文書の過去のバージョンです。そのためロックされ、アーカイブされています。内部に含まれる情報は不正確であるか、最近の利用可能なデータを反映していない可能性があります。

詳細については、この異常存在の現任の収容監督官(jrickwood@scp.psychology)まで連絡するか、あなたのIntSCPFNサーバー管理者までEメールを送ってください。

— ジョン・リックウッド、心理学部門長


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ヨーク/アイヒェル空間接続機

アイテム番号: SCP-2550-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-2550-JPの拡大を抑制する為、スクラントン現実錨(Scranton Reality Anchor)によってSCP-2550-JPの境界の現実性を保つ試みが行われています。ヨーク/アイヒェル空間接続機(York/Eichel Space Connecter)から半径30 kmの範囲はカバーストーリー「研究施設からの危険細菌の流出」適用の下でフェンスにより封鎖されており、この範囲はコンクリートの天井を建設することで航空衛星や航空機等から隠匿されています。

SCP-2550-JPの拡大状況を確認すべく、定期的に機動部隊ラムダ-7("ラッコ")がSCP-2550-JPの境界付近を探索します。SRA技師や警備員をはじめとするSCP-2550-JP-1の発する音声を知覚する可能性のある全職員には、ミームフィルタリングヘッドホンの着用が義務づけられます。

処置2550-ウィワットの実施は、現在全面的に禁止されています。

説明: SCP-2550-JPはサイト-990においてYESCを中心に発生している空間異常です。その範囲は2009/08/19現在20 kmを超過しており、SRAによって抑制されているにも拘わらず現在も拡張し続けています。

SCP-2550-JP内部において、空間上部は赤い晴天の空のように、空間下部は赤い海のように変化します。外部からは赤い空は確認できませんが、赤い海のみ確認することができます。この時、内部にいるヒトは海上に立ち歩行することが可能ですが、同時に海中に飛び込むことも可能になります。YESC付近には老年男性の形態を取った赤い液状の実体(SCP-2550-JP-1)が存在しており、不定期に口腔部からメガホンを出現させ、サイレンの音を発生させます。この音は高いミーム汚染能力を有しており、影響を受けたヒトは自身が異常空間ではなく「大海」にいると強く思い込み、海に飛び込む強い意志を抱きます。この海の水面は徐々に上昇しており、2009/08/19現在地面から36 mの高さにあります。

SCP-2550-JPの空間現実性強度は0.62 Hmであり、内部にいるヒトは無意識/意識下の現実改変能力を獲得します。しかし、SCP-2550-JP-1によるミーム汚染により、内部にいるヒトによる現実改変は多くの場合暗雲の生成をもたらします。この存在を確認した多くのヒトは海に飛び込みます。ミーム汚染を受けずに現実改変を行うことに成功したこれまでの事例において、SCP-2550-JP-1への干渉には失敗しています。また、SCP-2550-JP外の空間現実性強度は最大で0.83 Hmまで低下することが確認されています。

SCP-2550-JPが拡大する原因についての最も信頼性の高い説は、SCP-2550-JPによって周辺空間の現実性が低下したことによりSCP-2550-JP-1が現実改変を行い、それによりSCP-2550-JPが拡大されているというものです。

補遺2550-JP.1: 出現

以下は、YESCに発生したSCP-2550-JP関連事案のログです。

事案ログ


事案番号: 2550-JP-004

日時: 2009/03/12


ダンヴィル上席研究員への処置2550-ウィワットの実行中、突然現実隔離フィルムの向こう側が赤く染まった。赤い物は水のような振る舞いを見せており、徐々にそのかさが増し始めた。また、暫くしてサイレンの音が聞こえ始めた。

YESCによる空間接続を中止しようとしたが、現実隔離フィルムへの強い妨害的干渉によってエラーが発生し、その試みは失敗した。付近にいた研究員の半数はその場から逃げ、残りは必死にYESCを停止しようと試みた。YESCの電源自体を切断することは、空間制御が完全に停止してしまう為に却下された。

最終的に、現実隔離フィルムは破裂した。直後、接続していた空間から赤い水がこちら側に流れ込み、多くの研究員が飲まれた。処置室の外の監視カメラの映像には、処置室の扉が吹き飛び、赤い水とそれに流される研究員たちの様子が映っていた。

ドアのあった場所をくぐり、巨大な老年男性のような実体が映像に映った。映像はその瞬間突然終了した。

補遺2550-JP.2: 事案

2009/03/18、ハートリー博士は警備員及びSRA技師に対し催涙スプレーを使用して封鎖区域へ進入し、SCP-2550-JP内の海に進入しました。以下は、この直前にハートリー博士が作成したメモの内容です。

メモ


日付: 2009/03/18

FROM: ハートリー博士

TO: ウィワット博士


我々は間違っていた、ウィワット。

処置2550-ウィワットはあちらの住人たちの怒りを買い、今や我々は彼らからの報復を受けている。これを止める術はない。あの偉大なSRAさえ、海の侵攻を恐れて後退しているのだから。

最初、我々はなんと画期的な手法を実現できたのだろうと喜んでいたな。だが、結局SRAは何かを犠牲にしなければ、何かの絶望がなければ成立し得ないものだったのだ。私は、これまであの海に関わってきて、ようやくそれを理解した。

私はもう、これ以上サイレンの音に耐えられる気がしない。処置2550-ウィワットとSCP-2550-JPの担当博士として何度もあの海には相対してきたが、いよいよあれは我々への救いとして見えてきた。あの海は、罪深い我々さえ飲み込んでくれるに違いない、と思えて仕方がないのだ。

治療を受けるつもりはない。これは報いでもある。我々が彼らに屈する時が来たのだ。お前も、諦めてくれ。

— ハートリー

補遺2550-JP.3: 歴史

以下は、財団の現実学会にて心理学部門所属のウィワット博士が行った研究発表と、その後にファウンデーション・コレクティブ職員によって行われた検証探査の書き起こしです。

映像ログ


日付: 2006/02/02

対象者: ウィワット博士


<記録開始>

ウィワット博士: ─えー、ではまず、今回の研究の目的についてお話します。

[ウィワット博士がリモコンを操作する]

ウィワット博士: スライドをご覧ください。現在財団はスクラントン現実錨、略称SRAをあらゆる場所・あらゆる目的で利用しています。それが抱える重大な問題に関してはここにいる皆さん全員がご存じのことかと思いますが、我々研究チームはそれの解決策を開発すべく研究を行ってきました。そこで登場するのが、心理学部門の専門の1つである夢です。

[ウィワット博士がレーザーポインターをスクリーンに向ける]

ウィワット博士: これまで、心理学部門は現実と夢界がどれほど似通っているか研究し続けてきました。結果、その2つに存在する差異は然程多くはないということが判明したのです: 主な例としては、空間現実性強度の相対性な低さ、その空間の狭さ、各空間の接続の容易さが挙げられるでしょう。

[ウィワット博士がリモコンを操作する]

ウィワット博士: この事実から我々は、幾つかの技術的問題さえクリアすれば、現実と夢界を直接接続することが可能になるのではないか、という考えに至りました。一見突拍子もないアイデアではありましたが、結果としてそれは成功したのです─現実異常部門の協力があったことによって。元々SRAには現実性強度を、言わば圧縮するような機能が搭載されていました。接続先の空間現実性強度が低下した際も一定の強度の現実性を出力する為にです。我々が直面した課題は、現実と夢界の接続を実現する方法のみでした。

[ウィワット博士がリモコンを操作する]

ウィワット博士: 単なる異次元接続とは多少勝手が異なりました。既に夢が「どこに存在するか」は把握されていたものの、それは現実とは全く異なる世界に存在していた為です。ですが、ヨーク博士はそれを見事発見してみせました。詳細な理論は膨大な為に割愛させていただきますが、ヨーク博士とアイヒェル博士が共同で開発したこのヨーク/アイヒェル空間接続機が、夢を現実に引きずり出したのです。後は、ワームホールを引きずり出された夢に出現させれば、夢を使ったSRAの完成です。

[ウィワット博士がリモコンを操作する]

ウィワット博士: 試験はあるDクラス職員の夢を用いて行われました。結果としては、最終的にDクラス職員は昏睡状態に陥ったものの、約3年間に渡って2.0 Hmの空間現実性強度を安定して出力することに成功しました。まだまだ設備の巨大さやエラーの多さなど改善の余地は多数あるものの、十分に有用なデータが得られたと考えます。

[ウィワット博士がリモコンを操作する]

ウィワット博士: 結論に入ります。我々は現状使用されているものよりも遥かに被害の少ないSRAを手に入れたと言っても過言ではありません。これをこの宇宙の財団だけでなく、財団がコンタクト可能なあらゆる平行宇宙の財団と共有できれば、我々は1つの大きなK-クラスシナリオの危機を回避することができるのです。今回の発表を受けて、皆さんからのご協力をいただければ幸いです。

[ウィワット博士がリモコンを操作する。大勢による拍手の音が響く]

ウィワット博士: 発表は以上になります。質問がある方はいらっしゃいますか?

<記録終了>

探査ログ


日付: 2006/02/13

対象者: D-11943

探査者: アーバナ研究員


<記録開始>

[D-11943の夢界に進入すると、視界の全てが黒く何も視認することができない。複数の不明瞭な呟きが聞こえ、うち幾つかは何とか聞き取ることができる]

男性の声: 見えない、見えない、見えない。

女性の声1: たす、た、助けて。

[直後、女性の絶叫が聞こえる。声の方へ移動すると、何か柔らかいものに接触する]

女性の声2: 嫌、何?やめて、嫌、嫌、ああ…。

[辛うじて、接触したものが人間の形をした赤いゲル状の物体であることが視認できる]

アーバナ研究員: これは…。

女性の声2: び、ビル1…。お願い、助けて、ビル。愛してる…。

[声が目の前のゲル状の物体から発せられていることに気づき、アーバナ研究員はその場を離れる]

男性の声: 見えない、寒いよ…。

[男性の呻き声が響く。この時点で、アーバナ研究員はD-11943の夢界から脱出する]

<記録終了>

補遺2550-JP.4: インタビュー

以下は、機動部隊ラムダ-6がSCP-2550-JP-1に対して行ったインタビューの書き起こしです。映像データは、SCP-2550-JP対策司令部に無線通信によって送信されました。

映像ログ


日付: 2009/04/13

対象者: SCP-2550-JP-1

インタビュアー: 機動部隊ラムダ-6("カツオノエボシ") カーター隊長


<記録開始>

[ラムダ-6の隊員たちは、SCP-2550-JP内部の赤い海の上に立っている。全員がミームフィルタリングヘッドホンを着用している。前方にはSCP-2550-JP-1が立っている]

カーター隊長: 老人、聞こえるか。

[SCP-2550-JP-1の口腔部に存在するメガホンから、サイレンの音が鳴る。同時に、SCP-2550-JP-1の周囲に暗雲が出現し始める。隊員たちが驚きの声を上げる]

カーター隊長: 狼狽えるな。それはSCP-2550-JP-1のミーム汚染の結果だ。気をしっかり持て!

SCP-2550-JP-1: ここまで来て、お前たちはまだわからないというのか。未だに、土足で我々の聖域を踏み荒らすというのか。

カーター隊長: 私たちの領域に先に侵犯してきたのはお前だろう。

[サイレンの音が鳴り、暗雲の量が増加する]

SCP-2550-JP-1: 何を言うか。現の為に我々を脅かし、我々に死よりも恐ろしい苦痛を与えてきたのはお前たちだろう。お前たちは、その処置とやらで弄ばれた命がどうなったかわかる筈だ。行われた惨劇は、お前たちがかつて現に行ったことと何も変わらない。皆は死ぬことすら許されず、生きることすら許されず、ただ在ることさえ許されず、永遠に夢の残滓として端にこびりつくことを強いられる。これでも、我々の怒りをまだ理解しないというのか。

カーター隊長: だからと言って、平行宇宙を消費する訳にはいかないだろう。今までと比べれば─

SCP-2550-JP-1: その比較こそお前たちの罪だ。よって、お前たちは裁かれる。お前たちが夢を犠牲にして現とやらを守ろうとしたならば、今度は我々が現を犠牲にして夢を守ろう。全ては海に沈む。そして、お前たちは己の過ちと向き合うことになる。

[サイレンの音が連続して鳴り、暗雲が画面のほぼ全体を覆う]

SCP-2550-JP-1: 海は冷酷にお前たちに裁きを下し、お前たちが大事に守ってきた現実とやらは、その時を以て蹂躙されるだろう。そして、全ては円満に成就する。その時を震えて待っているがいい。

[隊員たちが次々に海に飛び込んで行くのが映る。カーター隊長はその場にうずくまるが、やがて海に飛び込む。直後、映像が砂嵐状態になる]

<記録終了>


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