アイテム番号: SCP-2556-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-2556-JP-1は離島隔離サイト-81L3の収容室に保管されています。収容室は閉鎖してはならず、必ず1本の専用通路で外部と接続されている状態を保つ必要があります。研究等の目的で収容室に立ち入る職員は、電波を用いる通信機器を携帯してはなりません。サイト-81L3の通路状態は定期的にSCP-2556-JP収容担当者による確認を受ける必要があります。
SCP-2556-JPの対象となる人物が財団職員のみであるように、サイトの所在する████島の周囲3km以内の海域における民間船舶の航行は制限されます。SCP-2556-JPの対象となった職員はSCP-2556-JP収容担当者にその旨を報告しなければなりません。
SCP-2556-JP-1収容室には赤外線センサーが設置されており、SCP-2556-JPの出現を自動的に検知します。出現が検知された場合、連動して起動するレーザー砲によって自動で攻撃が行われ、SCP-2556-JPの頭部を破壊し、不活性化します。当該システムが機能しなかった場合に備え、専用通路上にも同様のシステムが複数備え付けられている他、通路の出入り口には武装警備員が配置されます。
説明: SCP-2556-JPは変形能力を有する実体です。SCP-2556-JPは後述するSCP-2556-JP-1の直上に出現します。この出現は平均して1日に1度程度の頻度で発生しますが、その間隔に現在まで明確な規則性は発見されておらず、正確な日時を推測することは不可能です。
SCP-2556-JPの出現の直後、SCP-2556-JP-1の周囲約3km以内に存在する、通信機器1を身につけている人物(以下、対象と呼称)に対し、不明な発信元からのメッセージが送信されます。メッセージの内容は女性の声でSCP-2556-JPの現在位置を伝えるものです。その後、SCP-2556-JPは対象の現在位置に向け、徒歩で移動を開始します。
仮にその進路に移動上の障害が一切存在しない場合、SCP-2556-JPの容姿は移動距離に伴う一定の進行速度で変形すると考えられています。ただし、実際には障害物の排除などの目的のためにその進行速度を変化させる場合があります。また、この変形は不可逆であると推測されています。通常、SCP-2556-JPの変形は以下のような3段階を経て進行します。
- 出現時のSCP-2556-JPは身長70cm程度で、少女を模した人形の容姿を持ちます。移動に伴い、徐々に身長が伸び、体積が増大します。
- 身長が150cm程度になると、体積の増大は停止し、SCP-2556-JPの身体に爬虫類様の特徴2が生じ始めます。
- 前段階の変形が鱗が全身を覆う程度まで完了すると、体積の増大が再開します。それと同時に身体構造が大きく変形し、最終的に体高5m~7m程度の大型肉食恐竜の形状へと至ります。
移動の途中、SCP-2556-JPの出現時と同様のメッセージ送信が概ね5分ごとに繰り返し送信されます。音声は変形の進行に伴い、うなり声または吠え声の様なノイズが含まれる様になり、最終的には音声の全てが同様のノイズで置換されます。
変形が完了した後、SCP-2556-JPは対象に対して襲いかかるようなそぶりを見せ、吠え声を発します。SCP-2556-JPの最終的な目標は対象に強い恐怖心を与えることであると推察されています。対象が住居内など侵入不可能な場にいる場合、窓から覗き込むなどの行動によってこの目的を達成しようと試み、それも不可能である場合には障壁の破壊を試みます。この際、古生物学の見地から推定される、通常の大型肉食恐竜の有する破壊力と比較し、遥かに大きな力を加えることが可能です。
SCP-2556-JPは、上記のイベントを完遂するか、もしくはSCP-2556-JP自身の頭部、または身体の30%~40%が破壊されることによって消失します。
SCP-2556-JP-1はSCP-2556-JPの出現の起点として機能する物体です。検査によれば、ポリ塩化ビニル製の恐竜の玩具の首から下と少女の人形の頭部を乱雑に接着したものであり、それ自体に異常な物理的特性は備わっていません。SCP-2556-JP-1がSCP-2556-JPを作り出している主体であるのか、或いはSCP-2556-JPが(異次元空間等から)現実の空間に出現するためのポータルや目印の役割を果たしているのかは不明であり、研究が進められています。
補遺1: 収容プロトコルの制定
以下はSCP-2556-JPの現在の特別収容プロトコルの制定の経緯に関する、収容スペシャリスト・岸和田による覚書です。
収容プロトコルを制定するにあたって、まず我々はこのオブジェクトの性質について知る必要がありました。複数回の実験・観察の結果として以下の性質が判明しました。
- SCP-2556-JPはSCP-2556-JP-1の直上50cmほどの高さに不定期的に出現する。その際、SCP-2556-JP-1の直上を塞ぐ物体は押しのけられるか破壊されるか、あるいは近距離の別の位置でのSCP-2556-JPの出現を招き、出現を防ぐことはできない。
- SCP-2556-JPは2体以上同時に存在できない。
- SCP-2556-JPは何らかの方法で対象者までの最も合理的なルートを選択する。具体的には、距離がより短い、障害物の破壊回数が可能な限り少ないルートを選択する。
- SCP-2556-JPの変形速度はSCP-2556-JPの置かれた状況によって大きく変化する。具体的には、障害物が存在する場合には変形が急速に進み、それを移動させたり破壊したりする。狭い通路を通る際にはその内部での変形は停止するか極端に遅くなり、内部で移動不可能になることはない。
- SCP-2556-JPの変形は少女→恐竜の一方通行であり、不可逆である。従って、例えば障害物の破壊の為に巨大化した場合、その後狭い通路を通ることができない。
- SCP-2556-JPがルート決定に利用する情報はあくまで現在の状況のみであり、経時的な状況変化を予測したり予知する能力は有さない。
- 出現直後の人形の容姿のSCP-2556-JPはヒト5歳児と同程度の運動能力である。一方で、変形最終段階における破壊力はその外見から予測されるよりも遥かに大きい。
- SCP-2556-JPは通常兵器で損傷を与えて無力化することが可能であるが、変形の進行に伴ってより大規模な火力を要するようになる。
- SCP-2556-JPは再出現時、前回の出現の際の記憶・学習内容を有さない。
これらの事実から、SCP-2556-JP-1を閉鎖した収容室に置くことは、出現直後のSCP-2556-JPが即座に最終形態へと変形して壁を破壊するという状況を誘発することが容易に理解できるでしょう。これは連鎖的な他オブジェクトの収容違反にも繋がりかねず、最優先で回避すべき状況だと判断されました。また、SCP-2556-JPは出現直後が最も容易に無力化できるという条件を加味した結果、SCP-2556-JPを出現後即座に破壊するという方法が取られることになりました。
SCP-2556-JPが破壊不可能な強度の壁を設計するという案も存在しましたが、コスト上、現行の案が優れていると判断されました。巨大な肉食恐竜を閉じ込めておくことと、か弱い少女の人形を狙撃することのどちらが安価かは比べるべくもないことです。
添付した見取り図は最初期の収容設備設計案の図です。この案の方針の大部分は最終案に引き継がれ、実装されました。
備え付けられたレーザー砲により、SCP-2556-JPは通常、出現後即座に破壊されます。
仮に最初の破壊に失敗した場合(これには装置の誤作動も考えられますが、職員が入室している際は収容室のレーザーがオフになるため、主にその場合を想定しています)、SCP-2556-JPは対象の元へ向かうため、収容室から主通路へと出なければなりません。この時、SCP-2556-JPは施錠された扉を障害物と判定するため、職員用通路ではなく解放されたオブジェクト用通路に侵入し、速やかに破壊されます。
このようにして、「活性化条件に規則性がない」、「収容室の壁を破壊する可能性がある」という厄介な異常性を持つオブジェクトについて、その収容違反の可能性を限りなく低く保ちながら、職員によるオブジェクトへの接触は妨げられずに円滑に研究が行える状況を確保しています。
補遺2: SCP-2556-JP-Aの発見
20██/█/██、新たに「恐竜の目撃情報」が通報され、SCP-2556-JPに類似するオブジェクトの確保に至りました。確保されたオブジェクトはSCP-2556-JP/SCP-2556-JP-1に対応する性質を持つSCP-2556-JP-A/SCP-2556-JP-A-1を構成要素とします。
SCP-2556-JP-A-1はポリ塩化ビニル製の恐竜の玩具の頭部と、少女の人形の首から下を乱雑に接着した物体であり、SCP-2556-JP-Aの出現の起点となります。SCP-2556-JP-Aはその行動、性質等の点でSCP-2556-JPと類似していますが、変形の順序が真逆であるという点において異なります。即ち、SCP-2556-JP-Aは出現時に大型肉食恐竜の形状を持ち、最終的に少女の人形の容姿に至ります。
SCP-2556-JP-A及びSCP-2556-JP-A-1の特別収容プロトコルは現在制定中です。