クレジット
タイトル: SCP-2557-JP - 外次元物品具現収集倉庫
著者: ©︎qenobikto
作成年: 2022
http://scp-jp-sandbox3.wikidot.com/draft:6773960-2-5f3d
特別収容プロトコル: SCP-2557-JPの利用は現在停止されています。SCP-2557-JP管理チームによって緊急性が高いと判断された実験計画のみが受理されます。
説明: SCP-2557-JPは、財団が建設した外次元物品具現収集倉庫で、収集サイト-X-████の管理番号が与えられています。SCP-2557-JPには、外次元建造物の標準的な装置である外次元建造物指向性概念保護ユニットの他に不安定存在誘引安定化機構が搭載されており、不定期に物品(以下、SCP-2557-JP-A)が出現します。
SCP-2557-JPは、CK-クラス:再構築シナリオや現実改変によって消失した物品を、外次元から再収集するための施設です。かつて正常であったが現在は消失している文明の情報や、消失してしまった重要なアイテムの回収に用いられます。
不安定存在誘引安定化機構は、現実改変やCK-クラス:再構築シナリオによって改変を受け拡散・希釈された物体の概念のうち、残留ホーキング位相が基底宇宙のものを選択的に誘引・安定化して、再度現実に物体として出現させます。本報告書ではこの物体をSCP-2557-JP-Aと呼称しています。回収されたSCP-2557-JP-Aは、多くの場合回収日時や場所を偽造した上でAnomalousアイテムとして再分類されます。
資料: SCP-2557-JP-A事例抜粋
発見日: 19██/██/██ (第1回収集)
管理番号: SCP-2557-JP-A-8
概要: 未知の言語で記された書籍。5枚の挿絵全てに微弱なミーム効果があり、視認したものはわずかに安心感を覚える。
備考: SCP-2557-JP内で初めて発見された異常な物品。言語学部門によって、書籍は「ロミオとジュリエット」であったことが判明した。既知の言語との関係性は研究中だが、シナ・チベット語族やモンゴル語族などとの近縁性が指摘されている。
発見日: 20██/██/██ (第1█回収集)
管理番号: SCP-2557-JP-A-2█
概要: DNPS1ビーコンとして機能すると見られる機器。現在の技術では再現不可能なレベルでコンパクトに作られている。
備考: 発見時点で内部構造が一部破損していた。研究のため回収。
発見日: 20██/██/██ (第2█回収集)
管理番号: SCP-2557-JP-A-6█
概要: キンポウゲ(Ranunculaceae)らしき花の写真が表紙になったノート。赤い長方形に黄色の丸と扇形をあしらった国旗のようなデザインが右上にある。
備考: 発行元が記述されていたと思われるページは白と黒のランダムなパターンに置換されている。
SCP-2557-JP-Aの全事例は補足資料2557-JP-2を参照してください。
追記1: 第██回収集の際、出現していたSCP-2557-JP-Aが暴走し、被害を発生させました。以下は一連のインシデントに関する報告書です。
Clearance Level 4 or 3/2557-JP: Secret
インシデント報告書
インシデント管理番号: ICD-96██████
発生日: 20██/██/██
関連オブジェクト: SCP-2557-JP
責任者: ████博士 (SCP-2557-JP管理チーム主任)
概要: 第██回収集におけるSCP-2557-JP-Aの回収作業中、出現していた不明な技術由来の超常兵器と考えられるSCP-2557-JP-Aが1分12秒間暴走した。暴走中、当該SCP-2557-JP-A(後にSCP-2557-JP-A-540と指定)は直径5cm程度の白いレーザービームのような光を発しており、その間、周囲の現実性が著しく揺らいでいた。同時に当該SCP-2557-JP-A自身の存在も揺らいでいき、最終的には現実性の流出が原因と思われる事象により消滅した。
被害: 回収人員は即座に退避したため人的被害は無かったものの、壁や天井が破壊され、内部に組み込まれた不安定存在誘引安定化機構および外次元建造物指向性概念保護ユニットも一部被害を受けた。
結果として、外次元に漏出した不安定存在誘引安定化機構と外次元建造物指向性概念保護ユニットの効果が『建造物の概念』を連鎖的に誘引・安定化し、ランダムな構造の建造物パターンが不明な規模で生成された。
対処: 破損部の除去・修復を実行中。専門の機動部隊を組織し、生成された建造物パターンの探索を行う予定。
被害額: $█,███,000程度の見込み。増加する可能性あり。
追記2: 破損部の除去および修復が完了し、建造物パターン(以下、拡張領域と呼称)内部の調査が入口から半径10km程度の範囲で実行されました。
調査の結果、拡張領域内部において顕著な異常現象は、SCP-2557-JP-Aの生成を除いて発生していませんでした。壁面の非破壊検査の結果、拡張領域内部においても不安定存在誘引安定化機構及び外次元建造物指向性概念保護ユニットが機能していることが判明しました。両機構及びユニットは拡張領域の連鎖的生成と同時に複製され、それが拡張領域内部の安定性に寄与している可能性があるとされています。
追記3: 上述したインシデント発生後、SCP-2557-JP内におけるSCP-2557-JP-Aの生成数が低下し続けています。これは、SCP-2557-JPの容量を超過してSCP-2557-JPを生成しないよう設定された閾値が、拡張領域にも同時に適用された結果だと見られています。SCP-2557-JP管理チーム内部では、閾値の引き上げによりSCP-2557-JP-Aの生成数を増加させる案が提出されていますが、事故による異常現象が発生した施設を通常通り利用することへの反対意見が多数を占めています。
追記4: 閾値の引き上げが安全に実行可能か否かを調査するための大規模調査が実行されました。以下は第4回遠征の映像記録の一部書き起こしです。
第4回SCP-2557-JP拡張領域遠征記録-5
実行日: 20██/██/██ (12日間のうち5日目)
メンバー: 機動部隊に-6("コレクター")より3名(アルファ、ベータ、ガンマ) / SCP-2557-JP管理チーム
目的: SCP-2557-JP拡張領域内部の探査、一部SCP-2557-JP-Aの回収
備考: SCP-2557-JPと基底宇宙間での電子通信は非効率的であるため、SCP-2557-JP管理チームはSCP-2557-JP内に一時的な司令室を設置して、機動部隊との通信を行っている。また、コミュニケーション簡素化のため、非正式な用語を一時的に定義している。用語の登場時に脚注で補足する。
<記録開始>
[重要性の低いやり取りの省略]
ガンマ: そろそろ開始から3時間になるので、一旦休憩を……[アラーム音]
司令室: 現実性低下の警告です!携帯型スクラントン現実錨が自動的に起動していると思いますが、一応確認をお願いします。
アルファ: 起動を確認。問題なし。
ベータ: 同じく、問題ありません。
ガンマ: 同じく、問題なしです。
司令室: これはちょっと……ただの低下ではなくて、現実性が揺らいでいますね。0.87Hmから1.13Hmの間ですので大きい値ではないですが、周辺に何か異常はありますか?
アルファ: 周辺には特にないと思うが……。
ガンマ: あっ、向こうの部屋の奥の廊下何かおかしくないですか?
ベータ: 本当だ、50cm程度上がる段差がありますね。加えて、段差の向こうとこちら側で微妙に違う廊下です。この断面は……ユニット2も含めて完全に切断されていますね。
[ベータがしゃがみ込み、カメラに露出した廊下の断面を映す。後の映像解析で、床下に組み込まれていた外次元建造物指向性概念保護ユニットの構造がSCP-2557-JPに使用されているものと異なることが判明した]
司令室: 断面が綺麗すぎますね。おそらく空間的に切断されたものと推測できます。異常な段差はそこだけですか?
アルファ: いや、横一直線に続いている。この方向に行くならどこから行っても50cm上がることになるだろう。
司令室: それでは、段差を上がってさらに先へ進んでください。
アルファ: 了解。
ガンマ: 現実性の値が戻ってきましたね。あの辺りだけおかしかったのでしょうか?
司令室: ユニットが切断された影響と考えられます。現実性の揺らぎは事前に想定されていた破損シナリオの一つです。
[2時間程度の探索を省略]
ガンマ: あれ、俺のリュック3の肩紐ほつれてるな?
ベータ: 本当ですね。点検不良でしょうか?
司令室: 先日確認した際には特段劣化は見られなかったのですが……。そのまま使用することは可能ですか?
ガンマ: 見た感じでは初期段階っぽいので、まだ保つかと思います。
アルファ: 万が一壊れたら、私とベータの背嚢に分ければ……。
[全員のバイザーに現実性低下の警告が表示される]
司令室: 現実性低下!スクラントン現実錨の起動確認を!
アルファ: 問題なし。
ベータ: 問題ありません!
ガンマ: 問題なしです!でも、アラームが鳴りませんでしたよ。
司令室: えっ?本当だ、アラームとの接続が断たれています。破損でしょうか?まさか、本当に整備不良が……。
アルファ: いや、タイミングを考えれば異常による影響と考えたほうが良いだろう。
ベータ: 隊長、壁がひび割れています!
アルファ: このタイミングでそれか。
ガンマ: ひどい、今にも崩れ落ちそうだ。
司令室: できるだけ近づかず、映像で記録してください。……少し遠いのでズームをお願いします。
アルファ: こんな感じか?[カメラを装備から取り外し、ズームを設定する]
司令室: はい、大丈夫です。ノイズがありますが、これなら十分でしょう。
ベータ: ノイズ?先程までそんな話は……ガンマ、リュックが!
[ガンマの背負う背嚢の肩紐が切れ落下する。背嚢が衝突した部分の床は陥没した。飛び出したSCP-2557-JP-Aが壁に衝突し、直径1m強の穴が発生した]
ベータ: ぬいぐるみが、壁を……。
ガンマ: なんだこれ!脆すぎるぞ!
アルファ: 司令室、穴の中はどうする?
司令室: 探索してください。ただし、現場の判断で引き返しても構いません。
アルファ: 了解。私から突入する。壁や床の破壊には注意しろ。[機動部隊は壁を通過して内部の空間へ突入する。内部はSCP-2557-JPと同様の構造をしているが、棚や壁、床や天井が崩れかけ、蛍光灯が明滅している]
ガンマ: ここ、元のところ4と同じ構造ですよね。でも、戻ってきたわけじゃないですよね……こんなボロボロじゃないし。
司令室: 回収できそうなアイテム5はありますか?
アルファ: 今の所、崩れ落ちた金属の棚くらいしか……いや、あるな。
[アルファのカメラ映像にSCP-2557-JP-A-540と同種のものと思しきオブジェクトが映る]
司令部: もし動作しそうな兆候があれば、即座に退避してください。
アルファ: 了解した。もっとも、かなり劣化していて壊れかけに見えるが。
ベータ: こちらもアイテムらしきものを発見しました。老人らしき人型実体です。確認したところ、生体反応はありませんね。
ガンマ: その人型実体の着ている服、財団の標準制服ですよね。
アルファ: その死体、紙か何かを持っているな。劣化しているようだが、ギリギリ読めるか?
[アルファが紙を拾い上げる。紙にかかれている内容は映像のノイズのために判読不能]
アルファ: 無理だな。持って帰って復元してもらおう。ベータ、ガンマ、他に発見したものはあるか?
ガンマ: あれ、あそこで光ってるのって……
[カメラ映像に光が映る。後にSCP-2557-JP-A-540が発していた光と同様のスペクトルであると確認された]
アルファ: 全員撤退!急げ!
[映像のノイズが悪化し、カメラ映像が途絶える]
[音声通信が途絶える]
<記録終了>
通信途絶から5日後、機動部隊に-6("コレクター")の3名は司令室のあるSCP-2557-JPへ帰還しました。装備やSCP-2557-JP-A等、隊員が所持していた物品は通常では考えられないほど劣化し、一部は破損していました。また、身体検査により、3名はおよそ4-5年分の老化を経験していることが判明しました。この時点で、拡張領域内で不明な事象が発生していることから、閾値の引き上げによるSCP-2557-JP利用の継続は中止されました。
追記5: 上記の探査記録においてアルファが回収した紙資料が復元されました。以下はその抜粋です。
Clearance Level 3: Confidential
内部ユニット操作マニュアル
[中略]
4. 倉庫内部での設定
- アクセス装置右側のコントロールパネルを起動し、表示されたメニューから[概念定義のアップデート]を選択します。
- 画面の案内に従って、虹彩認証装置で自分の虹彩をスキャンします。
- 表示された案内に従い、概念定義データが記録された『1』と印字された白色のUSBメモリを挿入します。アップデートはおよそ2分ほどで終了します。
- 画面に表示された[再起動]ボタンをタップし、再度虹彩スキャンを行ってください。
- 再起動を確認したら、再びコントロールパネルを起動し、[プラグイン]をタップします。
- 『2』と印字された黒色のUSBメモリを挿入し、『Timer.uec』を選択して[適用]ボタンをタップします。
- コントロールパネル上部に『残り20日23時間59分』と表示されていることを確認します。
5. 最後に
お疲れ様でした。
事前の説明の通り、持続的な基底宇宙への概念流出を実行するため、以上の設定が完了した後はいかなる物体もアクセス装置を通過することは禁止されます。
これから、あなたの身体は具現化した『破壊』『劣化』の概念に晒され、急速に老化していくでしょう。
一切行動せずともあなたは5時間程度で終了されると見られていますが、老化による苦痛を避けるため、事前に供給された自殺用の錠剤を飲むことをおすすめします。
我々は、貴方の犠牲のおかげでやり直すことができます。地上は一度全て破壊されますが、そう遠くない将来、再び地上は我々の天地となるでしょう。貴方は、その第一歩を踏み出したのです。どうか最期のその時まで、誇りを胸に抱いていてください。
――《プロジェクト・アナイアレーション》メンバー一同
上記資料から推察可能な事項として、第4回遠征で発見された施設(以下、SCP-2557-JP-B)を運用していた並行宇宙において何らかの破滅的シナリオが発生し、その解決策としてSCP-2557-JPと同様の施設を用いての『破壊』『劣化』の概念の具現化を試みた可能性があります。結果として、前述の概念に晒された不安定存在誘引安定化機構及び外次元建造物指向性概念保護ユニットが破損し、基底宇宙におけるインシデント(ICD-96██████)と同様のプロセスで拡張領域が生成され、SCP-2557-JPの拡張領域と衝突したと考えられます。
追記6: さらなる詳細な調査の結果、SCP-2557-JP-Bを起点とした壁面や床面の破損が、遠征調査時よりも広範囲に広がっていることが判明しました。拡張領域内部における不安定存在誘引安定化機構及び外次元建造物指向性概念保護ユニットの破損はさらなる構造の不安定化を招きかねないとして、SCP-2557-JP管理チームはSCP-2557-JP-Bの機能を停止させる決定を下しました。以下は、スクラントン現実錨を搭載したドローンによる作戦の実行と、その際に発生したアクシデントを記録した映像の書き起こしです。
SCP-2557-JP-B停止作戦記録映像書き起こし
30:23:05 ドローンがSCP-2557-JP-B入口に到着する。現実性は1.35Hmとやや高い値を示す。
30:23:07 SCP-2557-JP-B内部全体がカメラに映る。前回の探索で確認されていたSCP-2557-JP-A-540らしきオブジェクトは存在しない。人型実体の全身には直径5cm程度の穴が複数個空いていることが確認された。
30:23:10 施設コントロールパネル周辺にドローンが到着する。USB挿入口のみXACTSの保護範囲から僅かに範囲外にあり、USBメモリはコネクタを残して脱落している。コントロールパネル画面はファイル読み込みに関するエラーを表示している。
30:23:12 コントロールパネルの操作・ハッキングを開始する。
30:31:22 SCP-2557-JP-B内に存在する人型実体の死体を元にした生体眼球模倣により、セキュリティが解除される。死体が破壊されていることが原因で、操作には想定の2倍程度の時間を必要とした。
30:34:20 SCP-2557-JP-Bの機能停止が確認される。
30:34:23 ドローンのプロペラ2機が制御不能になる。想定より長時間『破壊』『劣化』の概念に晒されたことが原因と見られる。
30:34:31 制御を失ったドローンが、設置されていたアクセス装置に偶発的に侵入する。アクセス装置が起動し、転送が開始され、映像が白く染まる。概念の転送のため部分的に接続されていた空間を通して、通信が継続される。現実性の値が急激に上昇し、4.5Hmを記録する。
30:34:37 転送が完了する。非常に長期間放置されたと思われる建造物の構造が確認できる。搭載された気温計は83℃を示している。
30:34:44 プロペラの不調のため、ドローンは搭載されたアームを応用してアクセス装置から脱出する。夕焼けや朝焼けとは異なる赤い光が差し込んでいるのが確認できる。
30:35:01 ドローンのカメラが回転し、背後を映す。廃墟と化したビル群が遠くに確認でき、一部は倒壊しているように見える。空には非常に巨大な赤い恒星と思われるものが確認できる。
30:35:04 カメラの方向転換機能が失われ、偶発的に地面が映される。未知の巨大な生物の骨格と、焼け焦げた防護服らしきものを着用している人間の骨格が多数散乱している。また、SCP-2557-JP-A-540らしきオブジェクトが多数存在している。最もドローンに近い当該オブジェクトの側面には、かすれた『現実性溶解砲』の文字が確認できる。
30:35:12 ドローンとの通信が途絶する。
仮に、SCP-2557-JP-Bを構築した宇宙と同様の試みを行う財団施設がSCP-2557-JP拡張領域内に存在した場合、基底宇宙にも影響が及ぶ可能性があると考えられるとSCP-2557-JP管理チームは提言しました。SCP-2557-JPの運用及び調査は無期限に停止されます。