アイテム番号: SCP-2559-JP
オブジェクトクラス: Pending
特別収容プロトコル: SCP-2559-JPは未収容です。現在、SCP-2559-JPの詳細についての情報収集が進められています。SCP-2559-JPの最重要関係者としてPoI-2559-JP(三浦 秀樹氏)の勾留が維持されます。SCP-2559-JPの捜索には、暫定的な手段としてカント計数機を用いた日本国内の現実改変並びに過去改変によるヒューム値の変化の形跡を用います。
説明: SCP-2559-JPは情報上存在するとされているGoI-8139("超電救助隊")の構成員です。当初はGoI-8139の構成員が行っていた薬剤によるミーム災害を受けた一般人より、"命運逆転士アーム・ザ・トランスペアレンシー"の名前が述べられていただけでしたが、後述のPoI-2559-JPの確保により個別のアイテムナンバーが割り振られるべきという判断がなされました。SCP-2559-JPの持つ異常性については過去改変に近しいものと推測されています。しかしながら、GoI-8139の持つ技術力が未知数であることとPoI-2559-JPらから得られた情報が不完全である事から、この推測はあくまで暫定的なものと留意してください。
補遺2559-JP-1: 20██年██月██日、GoI-8139("超電救助隊")の構成員であるPoI-2559-JP(三浦 秀樹氏)が██県の路上を彷徨っている所を財団に確保されました。財団発見時のPoI-2559-JPは憔悴状態であり、確保の際に目立った抵抗を見せませんでした。
インタビュー記録2559-JP-1 - 20██年██月██日
対象: PoI-2559-JP(三浦 秀樹氏)
インタビュアー: 高田研究員
付記: インタビューは初期収容として送られたサイト-8122で行われています。
<録音開始>[PoI-2559-JPの目隠しが取られる]
PoI-2559-JP: [差し込む光から顔を庇い]うっ、私は。
高田: インタビューを開始します。三浦さん、よろしいでしょうか。
PoI-2559-JP: その言いよう、まさかここが例の財団って組織なのか。
高田: 財団についてご存じなのですね、話が早いです。まずは。
[高田を遮るようにPoI-2559-JPが身を乗り出す]
PoI-2559-JP: [目を見開きながら]そうか、あんたらならあいつを見つけられるに違いない!
[興奮したPoI-2559-JPによって不明瞭な発言がなされる]
PoI-2559-JP: 教えてくれ、私のヒーローの居場所を!
[興奮したPoI-2559-JPによって不明瞭な発言がなされる]
高田: 三浦さん落ち着いてください。[スタッフに向けて]誰か鎮静剤を。
[同席していたスタッフによりPoI-2559-JPに処置が行われる]
[インタビューが一時中断する]
[インタビューが再開される]
高田: 落ち着かれましたか、それでは先ほどおっしゃられたのはどなたの事でしょうか。
PoI-2559-JP: [深いため息をついたのちに]アーム・ザ・トランスペアレンシー。私の作った最高のヒーローの事だ。
高田: なるほど、そちらのヒーローについて教えていただけますか。
PoI-2559-JP: そちらのヒーローについて?
PoI-2559-JP: [再度やや興奮した様子で]それを知りたいのは私なんだ、私が。
[先に投与された鎮静剤の効果でPoI-2559-JPは急速に落ち着いた様子になる]
[静寂]
高田: 確認いたしますと、あなたが作られたヒーローについて、あなた自身が理解していないという事であっていますか。
PoI-2559-JP: その通りだ。私の作った最高のヒーローの事を、私も覚えていない。誰も覚えていない。他のスタッフも、上層部も、誰も覚えていないんだ。
高田: なるほどなるほど。どういった異常性が存在するか、という点も、何も覚えていらっしゃらないのでしょうか。
PoI-2559-JP: 辛うじて覚えているのは"因果分解腕 甲型"という装備だ、私が中心となって設計開発したはずなのだが。
高田: それはどういった効果があるのですか。
PoI-2559-JP: [頭を左右に小刻みに振りながら]因果をさかのぼり、悲劇を無かったことにする。もう既に手遅れな人を救う事が出来る、究極のヒーローの腕。そう銘打って開発に臨んだことは覚えている。
高田: 結局、その装備は完成されたのでしょうか。
PoI-2559-JP: [うなだれ、気を落とした様子で]確かに完成したはず。だが分からない、分からないんだ。
[PoI-2559-JPが少しの間沈黙する]
PoI-2559-JP: 気付いた時には全ては無くなっていた。私は職務怠慢と資金の使い込みを指摘され、組織から追われる身になっていた。そんなはずは無いのに、私自身が弁明する材料を持っていなかった。
PoI-2559-JP: [大きくため息をつき]ああ、私の最高のヒーローはどこに行ってしまったんだ。こんなことは悲劇だ。
[PoI-2559-JPが目を閉じ、口を閉ざす]
<録音終了>
終了報告書: その後、GoI-8139("超電救助隊")の情報に関する尋問が行われましたが、得られた情報は全て既知のものでした。これがGoI-8139による情報統制の結果か、当人の記憶障害の影響か、もしくは当人が秘匿したのかは不明です。SCP-2559-JPの所在、並びに状態に関しては現在議論がなされています。
インタビュー記録2559-JP-2 - 20██年██月██日
対象: PoI-2559-JP(三浦 秀樹氏)
インタビュアー: 高田研究員
<録音開始>高田: PoI-2559-JP、気分は大丈夫でしょうか。
PoI-2559-JP: 高田さんですか。[ややためらいがちに]大丈夫、だと思います。
高田: よし、でしたら前回の話の続きをしていただきたいです。
PoI-2559-JP: 前回の、ああ、超電救助隊についての話ですか。
高田: ええ、正直あなた方の情報は喉から手が出るほど欲しいもので。
PoI-2559-JP: [自嘲気味に笑い]確かに妙に情報共有がされない組織だったと、今更ながら思いますよ。
PoI-2559-JP: [短い沈黙ののち]そうですね、私の知ってる範囲だと██の█████という人物は組織の連絡役として動いていました。
PoI-2559-JP: それに██の█の████、███・████、ああ、████もそうでしたね。
[静寂]
高田: ずいぶんと話しますね、どういう心境ですか。
PoI-2559-JP: [溜息ののち]これも、アーム・ザ・トランスペアレンシーのためです。組織の手から零れ落ちた以上、あなた方に頼るほかもうありません。
高田: 思い入れが強いのですね。
PoI-2559-JP: 私の最高のヒーローなんだ。諦めるわけには。
PoI-2559-JP: [かぶりを振ったのちに]ああそうだ、まだ情報は持っています。
[以降、PoI-2559-JPからの情報提供が続く。財団運営に関する機密に影響する情報が含まれているため、全文の閲覧はオブジェクト担当者経由で許可を受けてください。]
[静寂、高田が得た情報を連絡している]
<録音終了>
終了報告書: 新たにPoI-2559-JPから得た情報を精査した結果、一部は財団に在籍している人物と情報が合致しました。その後、当該人物はGoI-8139("超電救助隊")の潜入スパイであることが判明1、捕縛されました。今回の案件より、継続的に情報を得るためにPoI-2559-JPを懐柔するプランが考案され、精査されています。
インタビュー記録2559-JP-3 - 20██年██月██日
対象: PoI-2559-JP(三浦 秀樹氏)
インタビュアー: 高田研究員
付記: 本インタビューはPoI-2559-JPから更なる情報を引き出すための布石として、インタビューの体でPoI-2559-JPにある程度自由に会話をさせ、態度をより軟化させることが目的となっています。
<録音開始>高田: こんにちはPoI-2559-JP、体調はお変わりないですか。
PoI-2559-JP: 高田さん、私の事はいいんです。それよりアーム・ザ・トランスペアレンシーは見つかりましたか。
高田: [少しの思案ののち]いえ、現状では進展はありませんね。
PoI-2559-JP: [落胆した様子で]そう、ですか。[溜息を付き]いえ、まだそれほど財団さんに情報をお伝えしてから時間も経っていませんし、当然ですよね。申し訳ありません。
[高田が研究チームと通信機で多少のすり合わせを行う]
高田: PoI-2559-JP、いえ三浦さん。あなたはどうしてそこまで自身の作られたヒーローに固執されているのですか。
高田: 我々の中の全員がそうというわけではありませんが、あなたのいた組織について、開発者は現場の人員に対して、その、[やや言葉をつぐんでから]ドライな関係の者が多いと判断されていました。
PoI-2559-JP: はは、それに関しては私が特殊だとしか言えませんね。アーム・ザ・トランスペアレンシーは私が求めたヒーローなんですよ。
[PoI-2559-JPが目を閉じて思案する様子を見せる]
PoI-2559-JP: そうですね、唐突になってしまいますが██████一家惨殺事件2をご存じですか。
高田: ██████一家惨殺事件、あの当時世間を騒がせた政治家の██氏の一家の事件ですね。
高田: [一瞬の思案ののち]ああ、まさかとは思いますが、そういうことなのですか。
PoI-2559-JP: [息を吐きながら]そうです。その事件で生き残った長男が私になります。
[静寂]
高田: それは何といいますか、お辛かったでしょう。
PoI-2559-JP: 気を使わなくて結構です。もう大昔の話ですので。
高田: [ややためらいを挟んだのちに]つまり、あなたがヒーローを作ることを選んだのは、この事件が原因とおっしゃるのですね。
[PoI-2559-JPがうなづくようにうつむく、静寂]
PoI-2559-JP: [目を閉じた状態で]妹は、私の目の前で殺されました。
高田: 三浦さん。辛いようでしたら話さなくて結構です。
PoI-2559-JP: [高田の静止を無視するように]兄として、本当は守りたかった。けど、現実は息を殺して隠れて見ているだけしかできなかった。
PoI-2559-JP: 今でもたまに夢に見ます。妹に必死に手を伸ばして叫ぼうとするけど、喉はカラカラで声は出ず、伸ばした手から妹がどんどん遠ざかる夢を。
[PoI-2559-JPが肩を震わせはじめる]
PoI-2559-JP: 子供の頃は、都合の良いヒーローが来てくれた展開を散々考えました。犯人を一撃で吹っ飛ばし、両親と妹を救ってくれるそんなヒーロー。でも、いないんですよ、どれだけ想像しても、現実には。
PoI-2559-JP: どれだけ、どれだけ考えても、あの日の家族を救えない。
[PoI-2559-JPが沈黙する]
高田: 申し訳ありません三浦さん、お辛い記憶を話させてしまいました。
PoI-2559-JP: [目を赤く腫らした顔を上げ]あの日の私を救えるヒーロー、それがアーム・ザ・トランスペアレンシーなんです。だから私は諦めるわけにはいかないんです。
PoI-2559-JP: [手で顔を覆い、目の横をほぐす仕草をして]こちらこそすみませんでした、大きく取り乱してしまって。
高田: いえ、話していただいてありがとうございました。
<録音終了>
終了報告書: インタビュー後、当該事件並びに、その後の唯一の生存者である長男の足取りを確認したところ、被害者長男が保護の観点から改名され三浦姓になっているなどのPoI-2559-JPの発言の裏付けが取れました。そのためSCP-2559-JPをPoI-2559-JPが開発した経緯について、PoI-2559-JPの個人的な来歴が動機として信憑性が高いと判断されています。
インタビュー記録2559-JP-5 - 20██年██月██日
対象: PoI-2559-JP(三浦 秀樹氏)
インタビュアー: 高田研究員
付記: 前インタビューより2週間の期間を空けています。
<録音開始>高田: お久しぶりです、PoI-2559-JP。
PoI-2559-JP: [ぼんやりとした表情で]ああ、高田さん。もう私から得る情報なんてないんじゃないか。
高田: いえPoI-2559-JP、あなたは協力的を装いつつも、未だに我々に話していない情報があります。
PoI-2559-JP: [やや緊張した表情になり]一体何をおっしゃるんですか、あの組織について私が知りうる情報は全てお話しました。
高田: あなたが研究開発を行っていた、その場所ですよ。
[静寂]
PoI-2559-JP: [明らかに困惑した様子で]いや、それは、私は。
高田: あなたはGoI-8139、超電救助隊を裏切りつつも、未だにどこか後悔を残している。
PoI-2559-JP: 違います、そんなことはありません。私はもうあの組織とは切れた存在です。
高田: [小さく息を吐き]言い方を変えましょう。あなたは自身が開発したとする異常実体の存在が完全に否定されるのを恐れている。だから、自身の研究していた施設の場所を隠した。どうでしょうか。
PoI-2559-JP: [唾をのみ込む]
高田: 我々があなたの研究施設を占拠し、資料を根こそぎ調べたとして、そこにあなたの開発した存在の証拠が残っていなければ、あなたが頼る背が無くなる。それを恐れているのでしょう。
PoI-2559-JP: [小さく震え、言葉を発しない]
高田: その沈黙は肯定とみなしてもよろしいですか。
PoI-2559-JP: [口を開くも、声が出ていない]
[静寂]
PoI-2559-JP: [大きく息を吸い]そ、そうだ。その通りだ。私のヒーローが、完全に否定されるのが恐ろしくて、言えなかった。
PoI-2559-JP: [歯の根が合わない様子で]本当はもうあの組織に忠義を尽くす気持ちなどありはしないのに、それだけが怖くて、恐ろしくて、駄目だったんだ。
PoI-2559-JP: すみません。ごめんなさい。
<録音終了>
終了報告書: その後、PoI-2559-JPから彼が研究を行っていた施設の所在が明かされました。当情報は緊急性並びに重要性の高いものとされ、施設制圧のための火急のプロジェクトが組まれる事となりました。
補遺2559-JP-2: PoI-2559-JPから得られた情報より判明したGoI-8139の拠点に対して機動部隊に-83 ("バンカーランナー")による制圧作戦が実行されました。この結果、一部のGoI-8139の裏方に当たる構成員3と資料が捕縛並びに押収されました。押収された資料の中にはSCP-2559-JPと思われる開発計画資料が存在し、以下にその資料を概略を示します。
| 装備名 | 説明 |
|---|---|
| 索敵頭部ユニット(仮) | SCP-2559-JPの頭部に装備される予定とされている装置。周囲の事故並びに事件、並びに人の泣き声などを察知する機能を持たせるとされている。 |
| 隠蔽隠密装甲(仮) | SCP-2559-JPの胸部を中心に全身に装備されるスーツ状の装置。限られた設計に関する情報からは、SCP-2559-JPに光学迷彩と反ミームに近しい効果を持たせることが狙いと窺えた。 |
| 因果分解腕(仮) | 前述のPoI-2559-JPの供述した装置。設計上は効果対象の人物の手を握ることによって、対象の過去の情報を引き出し、不明な機能によってその出来事を現在に至る因果まで消し去り改変するとされている。 |
上記の開発計画は資料の制作時期から判断すると実行に移されているのが自然と考えるべきタイミングであり、計画凍結とされる資料も発見されませんでしたが、同様に開発経過を示した資料並びに完成、運用されたとされる資料も発見されず、同時に捕縛されたGoI-8139構成員も存在に懐疑的であったため、計画そのものが行方不明状態と判断されました。
インタビュー記録2559-JP-6 - 20██年██月██日
対象: PoI-2559-JP(三浦 秀樹氏)
インタビュアー: 高田研究員
付記: 高田には拠点制圧の情報をPoI-2559-JPに与えて、更なる情報が引き出すことが期待されています。
<録音開始>高田: PoI-2559-JP、あなたの研究していた拠点を財団は制圧しました。
PoI-2559-JP: [一瞬で覚醒したような顔となり]本当ですか!それで、アーム・ザ・トランスペアレンシーの情報は。
高田: 率直に言わせて頂きます、我々が発見できたのは計画書まででした。
PoI-2559-JP: [明らかに落胆した表情を見せ]そう、ですか。
高田: PoI-2559-JP、あなたがヒーローと称される異常実体を製作したことは、間違いないのですよね。
PoI-2559-JP: [うつむき、やや間を空けて]はい、その通りです。私は間違いなくアーム・ザ・トランスペアレンシーを、最高のヒーローを作ったはずなのです。
[静寂]
PoI-2559-JP: [顔を上げて]私のヒーローは、どこにもいないのでしょうか。
高田: 証拠の有無という観点から言いますと存在しません。存在可能性はあなたの証言だけとなります。
PoI-2559-JP: はは、おかしいですね。何のために私はあの組織に入ったのでしょうか。
PoI-2559-JP: [涙を流しながら]家族を取り戻そうと必死に開発に取り組んで、それを否定されて、組織に追われて、挙句こちらからも裏切って、そうまでして信じたヒーローがいないなんて、あんまりだと思いませんか。
高田: ノーコメントとさせて頂きます。
PoI-2559-JP: [自嘲気味に笑い]そりゃノーコメント、違いない、こんな私の事を簡単に言い表されてなるもんですか。
[静寂]
高田: [ややためらいがちに]私個人の意見としては。
高田: SCP-2559-JPとされる、あなたの開発した異常実体は存在する可能性があると考えています。
PoI-2559-JP: [不意をうたれたように顔を上げ]それは。
高田: あなたがこれだけの執着を見せている、それだけで存在を疑う理由になると私個人としては判断するという事です。
PoI-2559-JP: [口を開くも、何も声を発しない]
高田: 人の執着が異常実体を生むというパターンも嫌というほどあります。記憶や記録を疑い、記憶や記録に無いものを探す事だって数多くあるのです。
高田: 探させてもらいますよ、あなたの作ったというヒーローを。
PoI-2559-JP: [嗚咽]
<録音終了>
終了報告書: 高田研究員の判断はSCP-2559-JP担当チームで精査をされ、正式に担当チームの判断として決定されました。SCP-2559-JPの捜索は引き続き行われます。
補遺2559-JP-3: SCP-2559-JP担当チームが前述の補遺によって取得した暫定的SCP-2559-JP開発計画資料の再精査を行った際に、新たな仮説が挙げられました。これは、SCP-2559-JPの装着者候補の条件とPoI-2559-JP本人の肉体的条件が合致している事から、"PoI-2559-JP自身がSCP-2559-JPを着用、そして自身に対して異常性を行使した"というものになります。この場合、SCP-2559-JPの異常性によってSCP-2559-JP自体が消失する可能性が生じることで、現在SCP-2559-JPが未発見であることに説明が付く事が信憑性が強い理由となっています。
インタビュー記録2559-JP-9 - 20██年██月██日
対象: PoI-2559-JP(三浦 秀樹氏)
インタビュアー: 高田研究員
付記: 補遺2559-JP-3の仮説を踏まえた上で、インタビューからその裏付けが取れるかの確認が目的となります。
<録音開始>PoI-2559-JP: 高田さん。アーム・ザ・トランスペアレンシーについて新たに確認したいことがあるとは、いったいどういう事なのですか。
高田: PoI-2559-JP、こちらの資料に目を通していただけますか。
[高田がPoI-2559-JPに、SCP-2559-JPの装着者の選定基準に関して判明している点をまとめた資料を渡す]
PoI-2559-JP: これは、[軽く上から下まで目を通し]装着者に関する情報ですか。
[PoI-2559-JPが資料に目を通す]
PoI-2559-JP: 読み終わりましたが、こちらの資料の内容は私の記憶と基本的に一致していると思います。
PoI-2559-JP: [少し思案ののち]とはいっても、私の記憶の方が抜けが多く、資料の方が信憑性が強いと思いますが。申し訳ない。
高田: なるほど、少なくともこちらの資料で間違っている点は無いという事でよろしいですね。
PoI-2559-JP: それはそうだと思います。
[高田が通信機で他の研究チームと簡単な確認を行う]
高田: それではPoI-2559-JP、本題に入らせていただきます。
高田: [一呼吸挟んだのち]我々は今、あなたこそがSCP-2559-JP、アーム・ザ・トランスペアレンシーの装着者だったのではないかと考えています。
[静寂、PoI-2559-JPは目を泳がせ始める]
高田: 先ほどお渡しした資料に載っている装着者の条件はお読みになったでしょう。それならば、あなた自身も条件に合致している事は理解できるはずです。
PoI-2559-JP: ありえない。
[静寂、PoI-2559-JPの顔が青ざめ始める]
PoI-2559-JP: ありえない、そんな可能性はありえない。
PoI-2559-JP: [首を振り]だって、私がそんな。私自身がなんて、それじゃあ。
[静寂、高田が通信機で研究チームと確認を行う]
高田: あなたの語っていた内容、部分的に発見された資料より、あなたの開発したSCP-2559-JPは対象の人物をベースとしてその過去を改変する能力を持っていたと推測されています。
高田: あなたが以前語っていた過去を消す為に、あなたが自身にSCP-2559-JPの効果を適用した場合、SCP-2559-JPの開発理由そのものを消し去ることになります。
高田: 過去を改変する中途でSCP-2559-JPが自己削除と言える処理を行ってしまった結果、SCP-2559-JPの開発前後の時間までで改変が止まってしまったと考えれば、今の状態は説明が付きます。
[静寂]
PoI-2559-JP: 信じられない、そんなことは。
高田: 改変前の世界であなたは自身の開発したヒーローにふさわしい人物を選定する段階だった。
高田: しかしそんな人物は現れない、あなたは焦りを感じ始める。
高田: そしてある時、あなたは思いつく。あなた自身が装備を使って能力を行使すればよい。
PoI-2559-JP: [首を振りながら]違う、違う!
高田: 落ち着いて考えてください。本当にその可能性はありませんか。
[静寂]
高田: あなたのモチベーションは、自らの過去を変えるヒーローを生み出す事だったはずです。
PoI-2559-JP: それはそうだが、違う!
PoI-2559-JP: 私はただ、私のような人間を救える最高のヒーローを作りたかっただけだ!
高田: その手に力を得た時、あなたは妹を救おうと思わないと言えますか。
PoI-2559-JP: それは。
[静寂、高田が通信機で研究チームと確認を行う]
PoI-2559-JP: [頭を抱えながら]いや、でも、それじゃ、私の最高のヒーローは。
PoI-2559-JP: [机に突っ伏し]嘘だ、いるはずなんだ、私のヒーローは。
[静寂、PoI-2559-JPの動きが止まる]
高田: 薬剤の効果を確認、インタビューを終了します。
<録音終了>
終了報告書: PoI-2559-JPが予め投与されていた時限式記憶処理薬によって意識を失ったため、インタビューは終了しました。これは前述の仮説をPoI-2559-JPを伝えた場合に、錯乱や激昂等でこれまで行ってきた態度を和らげ情報を引き出すための関係構築が無為に帰すことが想定されたため、必要な処理として認可されました。今後、前述の仮説に関するインタビューを行う場合は同様の手順が必須であると研究チームからは提言されています。









