SCP-2577-JP
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アイテム番号: SCP-2577-JP

レベル-

収容クラス: KETER

撹乱クラス: KENEQ

アイテム番号: SCP-2577-JP

レベル-

収容クラス: KETER

撹乱クラス: KENEQ


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SCP-2577-JPの影響を受けたエージェント・ストラウトマン(左: 影響前に撮影、右: 影響後に撮影)

特別収容プロトコル: 一般社会へのSCP-2577-JP拡散を防止するため、常に類似する技術についての調査・追跡が行われます。SCP-2577-JPがインターネット・口コミなど何らかの形で流布されていることを発見した場合速やかに停止させ、その情報発信者をSCP-2577-JP-Aとして確保します。

新たにSCP-2577-JP-Aが確保された場合、特別な理由の無い限り、記憶処理を施してSCP-2577-JPに関する技術を可及的速やかに忘却させます。この際、処理作業が完了するまでの間いかなる形でもSCP-2577-JP-Aが発声を行うことのできないよう拘束を行ってください。情報の提供を求める際は、それを筆談などの非音声的コミュニケーションにより実施することが求められます。

説明: SCP-2577-JPは特定のリズム/音程/抑揚で発声した際に異常な現象を引き起こす数節の文言です。オブジェクトの異常性は、SCP-2577-JPを発声した人物(以下、SCP-2577-JP-A)へ認識的偽装効果を付与し、SCP-2577-JP-Aを認識する人物に対して「SCP-2577-JP-Aはネコ(Felis silvestris catus)である」と視覚/触覚/嗅覚的に誤認させることにあります。

誤認されるSCP-2577-JP-Aの姿形は一貫性が無く、いずれも一般的なイエネコに対する観念の範囲内ではあるものの、毛並み・体長・体重などについての報告は個々人の認識によってそれぞれ異なっています。しかしながら、動作についての認識にはネコ-ヒト間に対応する身体構造に基づいてSCP-2577-JP-A本人の動作がある程度反映されるようであり、例としてSCP-2577-JP-Aが直立している場合、それは周囲の人物に「後ろ足2本で立つネコ」として認識されます。

これまでの実験により、SCP-2577-JPの効果はSCP-2577-JP-Aの発声技術の熟達度にある程度の影響を受けることが判明しています。自身の肉体だけでなく衣服や装備、所持品にまでSCP-2577-JPの効果を広げるのは多くの場合難易度が高いものと見なされており、担当研究班の中ではSCP-2577-JPを正確に発声することだけではなく、文章の構成など何らかの要因を適宜変更することでも影響範囲を変化させることが可能であるとの仮説1が立てられていますが、同種のアノマリーに対する財団の知識及び研究の不足により未だ立証には成功していません。そのため、現状ではSCP-2577-JPを使用する際に最も適した格好は全裸であると考えられています。

発見/起源: SCP-2577-JP発見の切っ掛けとなったのはAO-████-JPに関連して発生した負傷事故です。AO-████-JPは元々「観測者によって形体が異なるネコ」として財団サイト-81AMにてAnomalousアイテム登録され、財団職員とふれあうことが許可されていました。

しかし81AM所属職員である幅木博士がAO-████-JPを抱き上げようとした際、その実重量と見かけ上の重量との差異により幅木博士は急性の椎間板損傷2を受け、またそれにより床に取り落とされたAO-████-JPが痛みを訴える叫び声を上げたことから再調査が行われ、SCP-2577-JPの発見に至りました。なおAO-████-JPとして登録されていたこの実体は、SCP-2577-JPによってネコに擬態した裸の40代日本人男性であったことがその過程で判明しています。

発見当初SCP-2577-JPの異常性は、これを聴取した人物の認識に影響を及ぼす音声的認識災害であると推定されていました。しかしSCP-2577-JPを直接聴取していない職員もAO-████-JPをネコとして誤認していたことから再検討が行われ、現在ではSCP-2577-JPの真の性質が、それを発した者に認識偽装効果を付与する侃諤災害3であることが特定されています。

補遺1: AO-████-JPに対する尋問により、SCP-2577-JPの起源がGoI-101("エルマ外教")4に所属するPoI-1622にあることが判明しました。PoI-1622は"その男はユニバース88からやってきた!類い希なる呪文の紡ぎ手・ラティゲ"[原文ママ]を名乗り、AO-████-JPを含む複数のGoI-101関連人物へSCP-2577-JPを伝授していたと考えられています。

以下は、財団の襲撃に伴い確保されたPoI-1622に対して実施されたインタビュー記録の書き起こしです。映像・音声記録から職員によって書き起こされた当文書の性質上、多くの記述や描写がSCP-2577-JPの視覚的な認識偽装効果の影響を受けたものであることに留意してください。

インタビュー記録2577-JP

Record 20██/██/██


回答者: PoI-1622

質問者: 幅木博士

序: 多くのGoI-101構成員が発揮する異常な空間移動能力への対策として、インタビューが実施されたサイト-81AMのAウィングではあらかじめゴートン・フィールド生成器5がPoI-1622の周囲に配備されていた。


[記録開始]

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インタビュー中のPoI-1622。

幅木博士: では、あなたがSCP-2577-JPを作成した動機を話して下さい。

PoI-1622: ウケが良くてね、ネコは。

幅木博士: ウケ……人気や反応が良かったということですか?

PoI-1622: そう。この世界だと人気だろ?ネコ。[後ろ足で耳の後ろを掻く] 街中に居ても変な目で見られないし、積極的な警戒や駆除の対象にもなってない。それでまあ、僕らエルマの調査や探索、あと観光だったりにはちょうど良い擬態先だったんだよね。人間もアリだと思ったんだけど、ディティールが難しくて。

幅木博士: つまり、あなたはSCP-2577-JPを異次元人のための擬態ツールとして作成したと。

PoI-1622: その通り。僕の身体もまあ、細かい所なんかはこの世界での「ヒトっぽさ」から逸脱してるし?今はネコにしか見えないだろうけど。[前足で自身の身体を指し示す]

幅木博士: ええまあ、そうですね……あの、服は着ていらっしゃいますか?

PoI-1622: は?何言ってんの、当たり前でしょ。あ、ここがそういうマナーの地域なら申し訳無いけどさ。

幅木博士: いえ、こちらこそすみません。

PoI-1622: まあとにかく、そういう目立つ部分、君達の言う異常性を公にバレないようしておいた方が都合が良いんだろう?正直めちゃ保守的だなあと思うけど、これが僕らなりの気遣いってわけさ。ホラあれだ、"郷に入っては郷に従え"ってやつ。だからさぁ、君達の方もこの善良な一市民を見逃してくれても良いんじゃ無いかな?

幅木博士: その"気遣い"に異常な手法を用いられても困ります。貴方の身柄に関しては、今後の研究調査への協力によっては解放される可能性もあるでしょう6

PoI-1622: 今すぐはダメ? もうこのインタビューにも飽きてきたよ。

幅木博士: ダメです。次は貴方がSCP-2577-JPを流布した相手、地域、その手法について伺います。

PoI-1622: [鼻を鳴らす] わかったわかった、じゃあ1つだけあの呪文についての秘密を教えるよ。さっきはウケが良いからって言ったけど、僕がネコを選んだ理由はそれだけじゃない。

幅木博士: 先ほどの質問に答えて下さい。

PoI-1622: 君はネコにどんなイメージがある? 僕にとってその象徴は「狭間」だ。初めてこの世界に来たとき、僕はこの生き物の二面性に対し非常に感銘を受けた。例えばエジプトのネコの神格、バステトは人間を罰する殺戮の女神でありながら、人間を守護する豊穣の女神でもあった。黒ネコは不吉の象徴とされる一方で、招きネコは幸運のシンボルとしても扱われる。

幅木博士: もう一度言います、質問に  

[PoI-1622は椅子に立ち上がり、幅木博士に向かって身を乗り出す]

PoI-1622: そして。何より文明に隷従する家畜でありながら他の種と違い、ネコは野生を失っていない。家の敷居を平気で越えて外に出歩き、時に自力で餌を見つける。聖と邪、自然と文明、内と外……ネコは狭間に居て、いつもその境界線上を歩くんだ。そしてその性質は、我々エルマと非常に相性が良かった。

エルマはすべてを曖昧にする。次元の境界、宇宙の境界、そして認識さえも。『あらゆる離れた二点の境は我らを隔て妨げるものであり、それら全てはあなた方によって取り払われなければならない。我らは世界桎梏に縛られぬ真に混沌の魂であることを希う』。僕らは曖昧で、自由でありたいのさ。ネコ達がそうであるように。

そして思うに、君ら財団ももっと自由であるべきだ。さっき言ったように僕は、もうここに飽き飽きしてしまったからね。

幅木博士: 収容違反の脅迫をしているのですか?あなたがどんな移動能力を持っていようが、既に我々はそれらに対する防止策を取っていることを忘れないでください。もちろんネコに化けても無意味です。

PoI-1622: うん、おかげさまでこの施設の壁は僕の指一本すら通さないだろうね。でも僕が言いたいのは、ただそういう堅っ苦しいのをやめてネコのようになるべきだってことさ。一種の啓発だよ。

幅木博士: 啓発?

PoI-1622: そう、それにはたった一言で十分だ。[改変されたSCP-2577-JP文言]。

[突如としてPoI-1622の触れている机、椅子の表面が獣毛に似た質感へと変化し始めたように見える。それらの変化は拡大し収容室の内壁や室内設備にまで広がっていく。やがてそれらの毛並みに規則的な分け目が発生し、最終的に観測できる範囲の室内全てが、無数のネコがブロックのように積み重なった状態で構成されていることがわかる]

[先ほどまで幅木博士が座っていた地点には白毛のネコが力の抜けたように座り込んでおり、自身の体を困惑したように見回している]

白毛のネコ: これは……あなた、私に何を。

[警帽を被った3匹のネコが、先ほどまでドアであったであろうネコの一団を押しのけて収容室に入室し、白毛のネコを保護する。PoI-1622はその場で取り押さえられ、恐らく机であろうネコの集合体に体を押し付けられる]

PoI-1622: [呻きながら笑い声を漏らす] にゃーん。

[記録終了]

補遺2: インタビュー内でPoI-1622がSCP-2577-JPを使用した直後、サイト-81AMのAウィング全域は何らかの手段で増幅されたその認識偽装効果の影響を受けたと推測されています。結果として、Aウィングの建物・設備、及び同時刻に建物内で勤務中であった38名の財団職員は全てネコの一個体、もしくはその複数体が合体したものとして視覚/触覚/嗅覚的に評価されるようになりました。

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除染のため屋外に運び出された事務用品。

この現象が及ぼした影響は認識上でのみのものであり、81AMのAウィング及び職員は物理的観点において何ら変容することなく存在し続けていると考えられています。しかしながら対象となった職員の自己認識には一部悪影響が見られ、後日行われたカウンセリングでは「自身はネコである」と主張する、もしくは「ヒトであったことに確信が持てない」などといった混乱が多くの職員に見られています。現在、これらの職員の治療が行われているとともに、Aウィングのミーム的除染作業が進行中です。

当インシデントの報告、及び既に不特定多数へ拡散した当該オブジェクトの収容難易度から、SCP-2577-JPのオブジェクトクラスはKeterに再指定され、SCP-2577-JP-Aに関連する収容プロトコルの改訂が実施されました。

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