アイテム番号: SCP-2587
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-2587は海洋サイト-05の水に沈められた30×30×15mの収容チャンバーに収容されます。SCP-2587が摂る食物の都合上、食事のために海水がSCP-2587の収容チャンバーを流れるようになっています。SCP-2587の収容チャンバーを流れる全ての水はタンクに保管します。この水はサンプルを採取して何らかの異物が無いかを試験した後、海に戻すことが認められます。SCP-2587には週1回の超音波検査を行い、如何なる行動の変化も現在のプロジェクト主任まで通知されます。
SCP-2587-A8とSCP-2587-Bは標準的なヒト型生物収容チャンバーに収容し、週1回の心理検査を行います。
説明: SCP-2587は体長20m、体高10mの不定形生物です。当該オブジェクトは連続的な表皮および真皮に包まれた、分布にパターンの見られないヒト組織で構成されています。真皮を穿刺する試みは全て成功していませんが、表皮は従来的な手段で傷付けることができます。
未分化組織が当該オブジェクトの質量の約80%を占めており、現在これは断熱ないし保護の役割を果たすものと考えられています。SCP-2587の残り20%は対象の消化器系に取り込まれています。この器官系は、対象の皮膚の一部に接続されている複数の食道から成ります。これらの皮膚区画はSCP-2587の周囲を移動して水流に面し、小生物の濾過摂食と吸収によって栄養素を集めるために使用されます。注意すべき点として、SCP-2587の栄養摂取量は同じ大きさの生物にとっては生命維持に十分ではありません。これは当該オブジェクトの単純構造に起因しているということも有り得ますが、別な異常効果を有する可能性は排除されていません。食道は対象の胃として機能する中央房に繋がっています。胃には15ヶ所の小房が追加の食道で接続されており、それぞれの房にSCP-2587-A個体がいます。
SCP-2587-Aは16人の人間を指します。15体のSCP-2587-A個体がSCP-2587の二次的な房の中に収まっており、SCP-2587-A8は解放されています(補遺2587-02参照)。SCP-2587-Aは年齢の様々な男性10人(SCP-2587-A1からA10)と女性6人(SCP-2587-A11からA16)で構成されています。全ての個体は思春期もしくは思春期後です。SCP-2587-A個体群は停滞状態に維持され、SCP-2587の胃から臍帯を通じて栄養を供給されています。個体群は時折四肢を曲げる、手を握ったり緩めたりするなどの簡単な動作を行います。12/8/13現在、回収された個体はSCP-2587-A8のみです。
SCP-2587-Bは遺伝的にSCP-2587と一致する成人女性です。SCP-2587-B、本名マーサ・ファーンは2007年に失踪し、その後間もなくUIUに発見されました。SCP-2587-Bは地球外存在に拉致された際のものと主張する複数の傷を受けており、腹部には回収以前に焼灼された大きな傷跡があります。また、大腿部にも皮膚の除去を示す複数の傷があります。
補遺2587-01: SCP-2587-Bインタビュー
インタビュー2587-B-03
質問者: エイヴリー・フィンチ博士、サイトの心理学者
回答者: SCP-2587-B
序: インタビューは、宇宙人による拉致についてのSCP-2587-Bの主張に関して、詳細情報を得るために行われた。インタビューはポーランド語から翻訳されている。
フィンチ博士: 記録のためにお名前を述べてください。
SCP-2587-B: マーサ・ファーン。
フィンチ博士: 貴方が仰るところの拉致の間に何を経験したか、説明して頂けますか?
SCP-2587-B: ええ。何処から始める?
フィンチ博士: 貴方が拉致された夜からお願いします。
SCP-2587-B: 分かった。私は帰宅したばかりで、夜の11時頃だったかしら。ベッドに入ろうとしてて、いつもと変わらず眠りに就いたわ。目が覚めたら、どこか固くて平らな場所に横になってて、周りは真っ暗だった。
フィンチ博士: 細かい点までは見えましたか?
SCP-2587-B: いいえ、暗すぎてダメだった。
フィンチ博士: 他に覚えている事は?
SCP-2587-B: ええ、あそこに何時間もいたのを覚えてる。帝王切開の時みたいだったけど、もっと酷かったわね。自分の身に起きてる事は何もかも感じ取れたけど、どれも痛くはなかった。何か湿った物が何度か触れたのを感じたわ。しばらくしてから、誰かがブロートーチを点けて、奴らが見えたの。
フィンチ博士: 奴ら?
SCP-2587-B: 人が中に入ってるデカくて青いブヨブヨ。そいつらが私に手術してたのよ。奴らは切開した傷跡を焼いてから私を下に降ろして、目が覚めたら私は森の中だったわ。
フィンチ博士: 他に覚えている詳細事項はありますか?
SCP-2587-B: いいえ、これで全部。
フィンチ博士: ありがとうございました、SCP-2587。ここまでと致しましょう。
[記録終了]
補遺2587-02: 事案2587-01
12/9/17の超音波検査中、SCP-2587の二次小房の1つがSCP-2587の中心部から遠ざかり始めました。3分間の移動後、SCP-2587の表皮の一部がSCP-2587-A8を収めた房の接触に際して開放されました。SCP-2587-A8の臍帯は切断され、無意識状態の個体はSCP-2587の外部に排出されました。ダイビングチームが派遣され、問題なく個体を回収しました。事案後の検査で、SCP-2587由来と考えられている現在未特定の青い流体が水中に存在することが明らかになりました。
SCP-2587-A8は2008年に失踪したワシントンD.C.の住民、アダム・スミスと特定されました。MARSの数値が8/10である点を除き、SCP-2587-A8は如何なる特異性も示しません。対象へのインタビューは補遺2587-03で閲覧可能です。
補遺2587-03: SCP-2587-A8インタビュー
インタビュー2587-A8-02
質問者: エイヴリー・フィンチ博士、サイトの心理学者
回答者: SCP-2587-A8
フィンチ博士: 記録のためにお名前を述べてください。
SCP-2587-A8: アダム・スミスです。
フィンチ博士: 貴方がSCP-2587に取り込まれるに至った経緯を説明してください。
SCP-2587-A8: ある晩、僕はベッドに入りました。特に変わったことの無い、ごく普通の夜でした。眠ったら、病院用のガウンを着せられて独房みたいな場所で目が覚めたんです。
フィンチ博士: 独房の内装について教えていただけますか?
SCP-2587-A8: 暗かったです。とても暗くて、とても寒かった。床はコンクリートのような感じで、僕が起きたのは隅にある簡易ベッドの上でした。ドアの開く音が聞こえるまで10分ほど待ちましたね。何かを押し潰すような音が近付いてくるのが聞こえて、その後、何かしら湿った物から腕を掴まれて廊下に引っ張り出されました。そこはもう少し明るかったので、相手をしっかり見ることができました。
フィンチ博士: その実体について説明してもらえますか?
SCP-2587-A8: はい。僕の倍ぐらいある、巨大な肉の塊でした。透き通って、青みがかってました。真ん中で一人の男が頭を項垂れているのが見えました。男は腕で僕のいる方を指し示していて、拳を握っていました。
フィンチ博士: 他に何か廊下にあった物は?
SCP-2587-A8: ええ、鎖で一緒に繋がれている人たちが沢山。僕と同じようなガウンを着ていました。ブヨブヨした奴は僕を列の最後部に並ばせてから、皆を廊下の向こうへ連れて行きました。あいつは他にも何人か連れて来て、その人たちを僕と一緒に繋ぎました。全員合わせて10人から20人はいたと思います。
フィンチ博士: 続けてください。
SCP-2587-A8: で、そいつは僕らをある部屋に誘導して、僕はそこで初めてあの… アレを見たんです。
フィンチ博士: SCP-2587ですね。
SCP-2587-A8: はい。でも、当時は見た目が違いました。皮膚は無くて、もっとずっと小さかった。ブヨブヨは列の先頭の鎖を外して、彼女をその塊に突っ込みました。アレは少し大きくなって、何秒か後に彼女のガウンを吐き出しました。ブヨブヨは皆に同じ事をしました。僕も塊に突っ込まれたのを覚えてますけど、その後の記憶は曖昧です。
フィンチ博士: その次に明確に思い出せるのは何ですか?
SCP-2587-A8: 意外ですけど、はっきり思い出せる瞬間もあるんです。完全な暗闇の中で、息ができずにいたのを覚えています。僕は、ああしろこうしろと語りかける囁きを聞き続けていました。
フィンチ博士: 何をしろと言われたのですか?
SCP-2587-A8: 単純な事をです。足で蹴れとか、体を丸めろとか、頷けとか、そういう事を。僕は何をするのも怖かったので、完全に身動きしないままでいました。これが暫く続いて、そして僕はここで目が覚めました。
フィンチ博士: 最近の経験のことを考えると、貴方はやけに落ち着いてらっしゃるようですね。
SCP-2587-A8: 多分、五体満足に出られたのが純粋に嬉しいからですよ。他の皆はまだあそこですけれど、僕は運良く逃げることができました。きっと僕は何か、正しい事をしたんだと思います。
フィンチ博士: 今日はここまでと致しましょう。お時間をありがとうございました。
SCP-2587-A8: お気になさらず。
[記録終了]