SCP-2590-JP

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財団施設において検証の為に製造中のSCP-2590-JP(子機)

アイテム番号: SCP-2590-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-2590-JPが発見された建造物はエリアオフィス-8199-B-15として改装・再利用されます。運用が開始され次第、SCP-2590-JPの収容権限は同施設に移管されます。

スタンリー・パライゾは要注意人物としてサイト-8199の標準人型実体収容房に自殺防止処置を施された上で収容されます。

説明: SCP-2590-JPは、かつて"DCD-コクーン"の名称でアストライオス・メディカルシステムズ社1によって開発されていた睡眠補助装置です。コントロールパネル付きの管理装置2とカプセル型の子機がセットで運用され、管理装置1台につき最大200基の子機を同時に管理する事が出来ます。子機の内部で睡眠を取った人物(以降、使用者)は事前に設定した起床日時への到達まで恒久的な睡眠状態を維持します。睡眠中の使用者は代謝を停止し、栄養補給や生理的活動を必要とせず生存し続けます。

SCP-2590-JPは他に以下のような機能を有していると仕様書に記載されています。しかしながら実際の挙動は記載と異なる場合があり、これは内部構造に存在する設計図との差異が原因であると考えられています。

  • 使用前に条件を指定する事で使用者が見る夢を操作
  • 使用者が見ている夢を専用の番号付きモニターに表示
  • 管理装置からの"起床コマンド"実行による強制的な覚醒(現在は使用不可)
  • 疲労回復効果のあるガスを子機内に散布
  • 損傷に対する顕著な耐性

発見: SCP-2590-JPは81管区Dクラス候補市民居住エリア3C地区の廃墟地下に存在していた、反財団的な市民グループの活動拠点に対する襲撃作戦の際に発見されました。拠点からは管理装置1台と子機150基、149名の使用者および1名のDクラス候補市民が発見されました。アストライオス・メディカルシステムズ社はSCP-2590-JP生産前に財団へ吸収されたため、SCP-2590-JPの実機を量産した団体についての調査が現在進行中です。


補遺 2590-JP-1(稼働ログ)

以下は発見時のSCP-2590-JP使用者および稼働状態の抜粋です。リストの完全版は要請に応じて閲覧可能です。

モニター番号: 12

使用者: 50代のモンゴロイド系男性

起床日時: 未設定(発見された子機全てが同様の為、以降は省略)

指定: 自由/平穏/家族/談話

映像内容: 一人称視点の映像。視点者は財団施設と酷似であるものの、終端部が存在しない/全長の計測不可能な廊下を走っている。左右には扉が並んでおり、内部から不明な人物の声が発されている。発言内容は視点者を糾弾する・裏切りの理由を尋ねる・発言者と同じ場所へ戻るように促すといったものが大半を占めている。扉には財団の記章が刻まれている。

モニター番号: 52

使用者: 20代のコーカソイド系男性

指定: 自由/刺激/仲間/スポーツ

映像内容: 一人称視点の映像。視点者は目の前のベルトコンベアに流れてくる機械部品をひたすら加工している。視界の端に青い作業服を着て作業を行っている人物が複数人確認できる。映像内の人物は誰一人として言葉を発することなく、断続的な機械の動作音と金属音のみが確認されている。

モニター番号: 81

使用者: 10代のモンゴロイド系女性

指定: 自由/平穏/友達/謝罪

映像内容: 一人称視点の映像。視点者は常にくぐもった嗚咽とすすり泣きの音を発している。視点者が一貫して目の前の壁に掛かった絵(ネコ科の身体的特徴を有する少年と非異常な少女、男女2組が描かれている)から視線を逸らさないため周囲の様子は不明。

モニター番号: 110

使用者: 80代のモンゴロイド系男性

指定: 自由/平穏/妻/生活

映像内容: 一人称視点の映像。視点者は複数の人物からの暴行に晒されている。視界の端には機動部隊の用いる黒塗りの輸送車が停車している。輸送車に運び込まれている女性は視点者に向かって助けを求めている。最終的に視点者は仰向けになり画面には灰色の雲に覆われた空のみが映され続ける。視点者が仰向けになると同時に車の駆動音が確認され始め、それが遠ざかると映像が暗転し最初の場面へ戻る。

モニター番号: 149

使用者: 20代のコーカソイド系女性

指定: 自由/刺激/マナ/救済

映像内容: 一人称視点の映像。巨大な財団記章の下敷きになった男性が大量に出血している。男性の顔はスタンリー・パライゾと酷似している。


補遺 2590-JP-2(インタビューログ)

スタンリー・パライゾはSCP-2590-JP回収時、管理装置付近に衰弱した状態で横たわっていました。インタビューは医療部門による治療の後に行われました。

対象: スタンリー・パライゾ、Dクラス候補市民、19歳コーカソイド系男性

質問者: 天宮博士

注記: 対象がインタビュー前に自死を試みたため自殺防止処置が施されています。


[記録開始]

質問者: 名前と所属を。

対象: 名前はスタンリー・パライゾ、所属はマナによる慈善財団。

質問者: [片眉を吊り上げる]その組織は既に解体済みDecommissionedです。

[対象は無言で質問者を睨みつける]

質問者: あれだけ徹底的に潰してやったのにまだ生き残りがいたなんて驚きです。次は[資料を捲る]あなたの父親について質問があります。彼はアストライオス・メディカルシステムズでDCD-コクーン研究の根幹に携わっていたとありますが、開発経緯が曖昧で、誰がどのような手段で量産を行ったのかも不明です。

対象: そっちが持ってる資料には色々書いてあるだろうけど、本当のところコクーンは大切な人への贈り物だ。母さんは小さい頃のトラウマにいつも怯えていた。いつ財団のエージェントが家のドアを叩いて攫われるんじゃないか、実験や戦闘に巻き込まれるんじゃないかって。父さんはそんな母さんを安心させたがっていた、せめて悪夢にうなされたり夜中に飛び起きなくても良いように。

質問者: なるほど。しかしあれだけの数をどうやって調達したのですか。

対象: 父さんがコクーンの設計図を完成させた時、既に財団の魔の手が会社に伸びていた。お前たちに悪用されることを恐れた父は僕にコクーンの設計図と仕様書をくれたんだ。それからMCFに出会い理念に共感して参加させてもらった。MCFで働いている時、プレス・マーキンという男に会って"工場"を紹介された。彼は"コクーンを量産する契約を結びたい"と申し出てきた。提示された料金は格安で、僕に提示された条件は"他のMCFスタッフに口外しない事"だけだった。気味が悪くてその場では断ったけど今回どうしても数が必要になったから縋る思いで彼に連絡してみた。そしたら"労働力の提供を報酬とする契約"を結んでくれた。捕まったせいでキチンと契約を果たす事は出来なかったけど。

質問者: そちらの通信記録を完全に解析しましたが、そのような相手へ連絡を取っていたことを示す記録は存在しません。

対象: そんなこと僕に言われても困る。こっちがまともな隠蔽技術を持ってないのは先刻ご承知だろ。

質問者: ふむ、この問題は時間が掛かりそうですね。質問を変えます。3C地区の廃墟はどのような目的で使用していましたか。

対象: お前たちの傲慢で理不尽な弾圧から逃れた人たちが身を寄せ合って安心できる場所[1拍置いて]だった。

質問者: 財団の理念に非協力的な市民の集会場ということですね。

対象: [沈黙]

質問者: 次はこちらの資料について質問があります。

質問者: これを見るにあなた方はDCD-コクーンが仕様書通りには動かないと知らなかったようですね。それは何故ですか。

対象: [俯く]本当は検証を重ねてから使うはずだったんだ。特殊資産は慎重に扱わなければならない。それなのに、お前たちが襲ってきたせいで[対象は興奮の兆候を示す]

質問者: DCD-コクーンを使うよう強要した覚えはありません。全てあなた方が勝手にやったことです。実際の様子を具体的に話してください。

対象: [沈黙]あの日、お前たちに建物を包囲されて市民の多くはパニックに陥っていた。食料や水、医薬品が不足し始めて余裕の無かった所にあんなダメ押しをされれば仕方ないだろう。僕は恐慌を抑えようと他のMCFスタッフと一緒に奔走していた。そんな喧騒の中で計画書が市民に見つかった。

事務室で計画書を見つけた市民が大声で叫ぶと、彼らは僕たちMCFスタッフに詰め寄ってきた。"なぜ教えてくれなかった"、"お前たちだけ夢に逃げるつもりなのか"、"今すぐ計画を実行しろ"と。やむを得ず、市民たちには正体を伏せて地下に運び込んでいたDCD-コクーンの元にみんなを連れて行った。僕やMCFスタッフたちは彼らにもう少しだけ待ってほしいと呼びかけたが誰も聞いてはくれなかった。市民たちは我先に夢の条件を指定するとカプセルに飛び込んで"早く眠らせろ"と叫び始めた。どうしようか悩んでいる間に地上階から大勢の足跡が聞こえてきたから、僕は他のMCFスタッフたちにも入るように促して、全員が入るのを見届けてから管理装置を操作して子機を稼働させた。

質問者: あなたはなぜ外に残ったのですか。

対象: あの装置を動かすには誰かが外で操作しなきゃならない。誰かが残らなきゃならないなら、それはコクーンをMCFに持ち込んだ僕であるべきだと考えていた。父さんが設計したマシンだから、という部分もあったと思う。

質問者: なるほど。では、なぜ管理装置の前で倒れていたのでしょうか。

対象: 財団に捕まるのは避けられないし、パスワードを聞き出されたら管理装置を掌握されてしまう。そうならないように操作を終えたら死ぬつもりだった。だけど、最期にみんなの夢を見ておこうとモニターを見たら[沈黙]訳が分からなくなった。幸せな夢の楽園にいるはずのみんなは悪夢に苦しんでいた。

質問者: 管理装置を操作して彼らを起床させる事も出来たはずです。

対象: 試したさ!起床コマンドを何度実行しても反応は無かった、起床日時の変更も同じだ!出来る事は全部やった。やって、やり尽くして、それでも駄目だったんだよ。[対象は涙を流し嗚咽し始めた]

質問者: 今日はこれくらいで良いでしょう。インタビューを終──

[質問者の発言は対象によって遮られる]

対象: 眼を瞑ると声が聞こえてくるんだ。みんなの恨みつらみ、怒号、啜り泣き、もう、もう無理なんだ。頼む。僕を終わらせてくれ。お願いだ。

[記録終了]


備考: スタンリー・パライゾの自殺は許可されません。

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