本報告書の閲覧はクラスY記憶補強薬の摂取が必要です
アイテム番号: SCP-2598-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 都営███団地の周囲は工事用フェンスに偽装した障壁で隔離されます。一般人の立ち入りは侵入監視センサとカバーストーリー「老朽化のため取り壊し予定」によって禁止されます。収容チームは財団webクローラを用いてインターネット上に存在するSCP-2598-JPの情報を削除してください。
SCP-2598-JP敷地内で生命損失の可能性がある実験を行う場合は、セキュリティ・クリアランスレベル4以上を保有する職員の許可が必要です。SCP-2598-JPの収容担当者は一週間ごとにクラスY記憶補強薬を服用してください。
説明: SCP-2598-JPは東京都██市に存在する都営███団地4-1-16棟と、それに隣接する公園を含む敷地一体です。4-1-16棟は5階建て56戸の集合住宅であり、建物の北東に存在する総面積███ m2の公園をL字に囲うように建てられています。4-1-16棟共有玄関から近接する道路、公園への導線上はインターロッキングとコンクリートによって舗装されており、その両脇には小規模な花壇が設置されています。公園には遊具やベンチの他に、ハナミズキが植栽された緑地が設けられています。SCP-2598-JPの外観は1970年代に建設されたニュータウンに見られる典型的なものであり、築年数相応の老朽化が認められます。
SCP-2598-JPの異常性は敷地内で生物個体が死亡することで発現します。敷地内で死亡した生物の死体は他のあらゆる生物に対する自己隠蔽特性を獲得します。この反ミーム的特性は死亡した生物の死体、それに由来する現象、及び死体の付属物に作用します。特筆すべき点として、SCP-2598-JPの特性は死体に関する情報認識を阻害するのみであり、死亡した生物が生きていたころの記録や記憶には影響を及ぼしません1。植物はこの異常性に対して例外的な振る舞いを示し、多くの場合根を張っていた地点から切り離されることや、個体全体が枯死することでSCP-2598-JPの影響を受けます。また、SCP-2598-JP内で死亡した生物は腐敗の兆候を示しません。これは菌類や細菌類が死体を認識できず、分解を行わないことが原因と推測されており、外的な要因がない場合は非生物的な分解2のみが進行します。
SCP-2598-JPが属する都営███団地は1972年に██████株式会社が元請となって建設されました。これらのうち4-1-16棟は下請であった建設業者が作業中に死亡事故を起こして撤退し、それに代わる形で要注意団体"如月工務店"が参画したことが判明しています。回収された業務書類からは██████株式会社が「死亡事故による悪いイメージを感じさせない清潔で安心できる建物を造って欲しい」という発注を行ったことが明らかになっています。また、如月工務店はいくつかの設計変更を行ったものの3、事故による工期の遅れを十分取り戻す早さで施工を完了したと報告されています。
補遺1: SCP-2598-JPは2001年12月、██氏一家4が入居中の305号室において一家心中の形跡が見られたことで発見されました。団地の管理会社が部屋を訪問した際、305号室の開口部は内側から完全に目張りされており、室内からは燃焼した形跡のある炭と七輪が発見されましたが、入居中の██氏一家の遺体は発見されませんでした。明らかな自殺の形跡が見られたものの、死体が発見されない異常性が目を引き、本事案の捜査は警察から財団に引き継がれました。
4-1-16棟は財団による住民の完全退居が完了した2002年2月までに、過去合計168名が生活していました。これらの住民のうち1980年4月に入居した███氏、1988年10月に入居した████氏、1999年5月に入居した██氏一家は正規の退去手続きを取らないまま行方不明となっています。
補遺2: SCP-2598-JPはその特性上、探査記録の人的作成が困難です。そのため、SCP-2598-JPは自動探査システムとアブリ-アルゴリズムによる内部探査が行われます。自動探査システムは事前に行われた人的探査の記録を元にSCP-2598-JP内を調査することで、人的探査によって認識されない要素を抽出します。これらの解析結果はアブリ-アルゴリズムによって解析・文章化されます。
以下の探査ログは自動探査システムとアブリ-アルゴリズムによって自動作成されたものです。自動探査システムは人的探査の結果とシステムによって認識された要素との差が大きいほど長時間探査を行うよう設定されています。
探査記録: SCP-2598-JP(抜粋)
地点: 公園緑地帯
探査時間: 68分
状態: 地面から生える雑草は曲がりながら伸びており、その多くが日影に生えるものです。緑地内のベンチは使用困難であると判断されました。
補足: 緑地に植樹されたハナミズキは完成時に比べ、半数まで数を減らしています。
地点: 4-1-16棟、北側共同玄関階横。
探査時間: 105分
状態: 階段横は建物の構造上、吹き溜まりになっています。
補足: 共同玄関から先は地上階の部屋に続く廊下と階段に分かれています。また、共同玄関付近の舗装は1992年12月に破損5しており、翌年2月に修繕されました。
場所: 4-1-16棟、504号室郵便受け
探査時間: 5分
状態: NA
補足: 1999年に█氏夫妻が入居し、SCP-2598-JP収容に伴い退居済みです。
場所: 4-1-16棟、101号室
探査時間: 23分
状態: NA
補足: 住人の居住年数や清掃頻度によってばらつきは見られますが、4-1-16棟の部屋における一般的な状態です。以降の探査記録では、特記事項がない場合、各部屋の探査記録は省略されます。
中略
場所: 4-1-16棟、206号室
状態: NA
探査時間: 44分
補足: 行方不明となっている███氏が住んでいた部屋です。███氏の行方が分からなくなってから1年後、本部屋は管理会社によって清掃され、新たな入居者に貸し出されていました。システムは主にリビングドア横のスペースと冷蔵庫下の調査に時間を費やしました。
中略
場所: 4-1-16棟、305号室
探査時間: 214分
状態: NA
補足: ██氏一家が入居していた部屋です。上述の事案以降、警察と財団による複数回の内部捜査が行われており、本探査は██氏一家が自殺を行ったと推測される日から3か月後に行われました。システムは主に寝室の調査に時間を費やし、リビングから寝室への導線となる床の状態、玄関に続く廊下の状態についても詳細に記録しました。
中略
場所: 4-1-16棟地上階、南階段
探査時間: 25分
状態: 階段横に両開きの扉が設置されています。扉は木製で、塗装や防腐処理は行われていません。扉の奥は階段になっており、地下に続いています。
補足: 4-1-16棟設計図並びに事前の人的内部調査において扉の存在は確認されませんでした。
場所: 4-1-16棟地下の空間
探査時間: 349分
状態: 地下階には4つの部屋が存在しましたが、その全てが満たされており、システムが侵入可能なスペースはありませんでした。
補足: 記録上4-1-16棟に地下階は存在しません。
本調査後、小型の掘削機を用いた自動探査がシステムから提案されました。これを採用した内部調査の実施は現在保留されています。









