SCP-2619-JP
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アイテム番号: SCP-2619-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: 超常証跡データベースにおいて、SCP-2619-JPとの関連が疑われる情報が自動的にフラグ付けされます。SCP-2619-JPに関連すると推定される人物に対し、クラスA記憶処理をはじめとする標準的な隠匿業務が実施されます。

説明: SCP-2619-JPは成り済まし詐欺の電話をかけた際にランダムで不明な応対者(SCP-2619-JP-A)につながる現象です。財団の検証により、SCP-2619-JPの発生確率は通話者が成り済まし詐欺を繰り返すほどに増加することが判明しています。また、一度SCP-2619-JPによる改変を受けた人物が成り済まし詐欺の電話をかけてもSCP-2619-JPが発生しないことも判明しています。

SCP-2619-JP-Aは通話を行った者(以下、通話者)の身元に関連した質問を行います。この質問は通話者を「ケン」という人物と断定した内容であり、この際に言及される情報はほぼ同一です。また、この質問は肯定か否定で答えられる形式となっています1。SCP-2619-JP-Aの質問に肯定すると現実改変が発生し、通話者の性質が質問に沿ったものとなります。この改変は通話者と通話中の機器から流れる音声を直接聞いた人物にしか認識できません。通話者が質問を否定した場合SCP-2619-JP-Aは通話を打ち切りますが、通話者への改変は残留します。肯定とも否定ともつかない曖昧な返答をした場合には通話は続行されますが、そういった返答が計3回になった時点でSCP-2619-JP-Aは通話を打ち切ります。

SCP-2619-JPは2010年3月15日に「ケン」という人物が自分はケンではないという主張をする事例が増加していることを疑問に思ったエージェントの調査により発見されました。財団の捜索では当該条件に一致する「ケン」という人物は████名に上っており、現在も増加傾向にあります。

補遺1: 以下はSCP-2619-JPの質問とその改変結果の抜粋です。
質問 通話者 結果
あんたケンちゃんかい D-2253 D-2253の戸籍上の名前がケンに変化。苗字には変化はなかった。また、D-2253の確認できた範囲の知人全てに確認したところ、D-2253の名前が昔からケンであったと認識していた。
あんたケンちゃんかい D-2356 D-2356の戸籍上の名前がケン、性別が男に変化。苗字には変化はなかった。D-2356の確認できた範囲の知人全てに確認したところ、D-2356は昔からケンという名前の男性であったと認識していた。また、D-2356は改変直後に極度の錯乱状態に陥った。
あんた最近髪、染めたらしいね D-2253 D-2253の頭髪が金髪に変化。
あんた最近髪、染めたらしいね D-5437 D-5437に茶髪にしたと返答するように指示したところ、D-5437の頭髪が茶髪に変化した。
この前送った草餅、食べてくれたかい D-2253 D-2253の胃袋内に草餅が出現し、監視カメラの記録からDクラス宿舎内にD-2253宛の草餅が入った小包が出現したことが判明した。この小包に関してセキュリティ職員は違和感を抱いておらず、D-2253宛に届けられた荷物だと認識していた。
彼女さんと今同棲しているんだったよね D-2253 Dクラス宿舎内にD-2253の彼女を名乗る身元不明の女性が出現した。セキュリティ職員は始めからD-2253と女性が同棲していたと証言した。女性を検査したところ体内に臓器が存在せず、話しかけられた際はD-2253の彼女だという意味合いの言葉以外を発しなかった。現在は標準人型収容室に収容している。
お父さん、亡くなって5年目だっけ D-5437 質問前の記録ではD-5437の父親は10年前に死亡していたが、死亡届けが5年前に変化していた。D-5437の兄弟に確認したところ、5年前まで父親と共に暮らしていたという証言をした。

補遺2: 2010年8月22日にSCP-2619-JP-Aとの通話を可能な限り長く行う実験がなされました。その際、SCP-2619-JP-Aは通常とは異なる反応を示しました。以下はその時の記録の抜粋です。

実験記録2619-JP-12の抜粋:

通話者: D-6521

監督者: 板田博士

実施方法: 携帯電話をスピーカー状態にし、板田博士の指示に従ってD-6521がSCP-2619-JP-Aと通話をする。

前記: この記録は実験開始から17分経過時点のものであり、SCP-2619-JP-Aは21の質問を行っている。板田博士の指示に従いD-6521は質問に対して計1回曖昧な返答をしている。

<記録開始>

SCP-2619-JP-A: ケンちゃん、そういえばあんた目が悪くなったらしいけど、眼鏡かけるようになったのかい。

板田博士: D-6521、肯定の返事をしてください。

D-6521: ああクソ、わかったよ、すりゃいいんだろ。……そうだよ、かけてるよ。

[D-6521の顔に眼鏡が出現する。後の視力検査により、D-6521の視力が2.0から0.3に落ちたことが判明。]

D-6521: またかよ。クソ、クソ、こんなの俺じゃない。俺じゃないはずなんだ。

[D-6521が苛立たしげに頭をかく。]

板田博士: 実験中の私語は控えてください。

D-6521: ……わかってるよ。

SCP-2619-JP-A: ケンちゃん、あたしねぇ、ほんと嬉しいんだよ。こんなにいっぱい話してくれてさ。あんた昔からおばあちゃんっ子だったものねぇ。

板田博士: 肯定してください。

D-6521: ……そうだな。そう、だったな。

SCP-2619-JP-A: ほら、前に送ってあげた写真覚えてるかい。あたしと、お前のお母さんとお父さん……だいぶ前に死んじゃった犬のゴローも写ってるやつだよ。

板田博士: 肯定してください。

D-6521: ……覚えてるよ。

[Dクラス宿舎内に10歳頃のD-6521と他若い男女1組と年配の女性1名、犬1頭が写っている写真が出現した。D-6521は孤児であり家族がいないことが確認されている。調査の結果、写真の男女1組はD-6521の実の両親であることが判明したが、年配の女性1名と犬1頭の身元は現在も不明。]

SCP-2619-JP-A: この時は楽しかったねぇ……みんなで縁日に行ってさ。お父さん、めったに家に帰ってこない人だったからさ、ケンちゃんとっても嬉しそうでね。この時お父さんに買ってもらったなんかゴテゴテした指輪、今もまだ持ってるんだってね。

板田博士: 肯定してください。

[沈黙。]

板田博士: D-6521、肯定してください。

D-6521: まだ、持ってるよ。肌身離さずな。

[D-6521が涙ぐむ。]

板田博士: D-6521、どうかしましたか?

D-6521: ほら、見ろよ博士。笑えるだろ。

[D-6521がズボンのポケットから髑髏の装飾が施された指輪を取り出す。]

D-6521: なんかさ……すごくあったかい気持ちになって。俺、俺さ、家族なんていなかったから、こんなおばあちゃんとかいなかったから、いたらこんな感じなんかなって思ったら、急に涙が出てきて。いいなあ、羨ましいなあ。

板田博士: 実験中の私語は――

SCP-2619-JP-A: ケンちゃん。あの日一緒に海に行ったこと覚えてるかい。カニを見つけるなんて言って、ケンちゃんが波にさらわれたときはどうしようかと思ったよ。

D-6521: うん、うん。俺も、そんな日を過ごしたかったよ、おばあちゃん。

板田博士: D-6521、勝手な返答をしないでください。

D-6521: どうせあんた、肯定してくださいって言うつもりだったんだろ!? なら俺が先に言ったってかわんねぇじゃねぇか!!

板田博士: 指示には従ってください。従わなければ処罰しなければなりません。

D-6521: ……わかったよ、従えばいいんだろ。

SCP-2619-JP-A: ケンちゃん、あの時のことは覚えてるかい。お前がアイロンが気になるって勝手にお母さんが離れてる時に触って、足に大きな火傷をした時のこと。あの時の火傷、まだ残ってるんだもんねぇ。

板田博士: 肯定してください。

D-6521: そうだな。……はは、ほら、見ろよ、博士。

[D-6521がズボンをまくり上げる。そこには三角形の火傷の痕がある。]

D-6521: この痕があるってことはさ、俺、ほんとにケンなんじゃねぇかな。ほら、見ろよ。こんなにはっきりあるんだよ。

板田博士: D-6521、落ち着いて、実験中の私語は控えてください。

SCP-2619-JP-A: そういえばケンちゃん。今度、温泉に連れていってくれるんだってね。

板田博士: ……「時間があれば、いつかね」と返答してください2

D-6521: 畜生、なんだってそんな答えを……ごめんな、ばあちゃん。時間があれば、いつかね。

SCP-2619-JP-A: ケンちゃん、ケンちゃん。そういえば……うん? あれ、え? どういうことなんだい。

[電話口からインターフォンのような音と、SCP-2619-JP-A以外の男性のものと思われる声が聞こえる。]

D-6521: なんか、ばあちゃんの様子が変なんだが、どうするんだよ博士。

板田博士: そのまま通話を続けてください。

[電話口から言い争うような声が聞こえる。]

D-6521: え、えっと……大丈夫か?

SCP-2619-JP-A: ……あんた、ケンちゃんじゃないね。

D-6521: は? 何言って……

SCP-2619-JP-A: ケンちゃん、さっきこっち来たよ。あんた、誰なんだい?

[SCP-2619-JP-Aが一方的に通話を打ち切る。]

D-6521: え、待て、待てよ。俺はケンなんだろ。待てって!

<記録終了>

終了報告: SCP-2619-JP-Aが通話を打ち切りました。この実験の結果により、D-6521は周囲からケンではないと認識されるようになりましたが、D-6521への改変はそのまま残留しています。D-6521は実験後、強い離人性障害3に陥りました。また、実験中のD-6521の言動においてケンという存在に執着する様子が見られたこと、その後に行った同条件の実験でも通話者に同じような反応が見られたことから、SCP-2619-JPは精神影響を有しているのではないかと推測されています。

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