SCP-2620
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アイテム番号: SCP-2620

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 現在のプロジェクト管理者は、WordPressでSCP-2620のブログの所有権を維持します。このブログ上での投稿を作成/削除できるのはSCP-2620のみであるため、財団の介入は現時点では投稿の監視に限定されており、機密情報の自動投稿フィルタリングが必要です。フィルタがクラスB以上の情報漏洩の封じ込めに失敗した場合、ブログの削除とSCP-2620の無力化が承認されます。

SCP-2620はサイト-19の収容ロッカーに保管します。全ての実験要請はレベル3研究者1名に提出するものとしますが、低優先度と見做されます。

説明: SCP-2620は、寸法0.7m×0.7m×1.1mのトップロード型洗濯機です。正面パネルにはタッチスクリーンがあり、『カスタム』、『テンプレート』、『レビュー』、『設定』という4種類のメニューと、『洗濯開始』ボタンが表示されています。『カスタム』では入れた物を選択する際のオプションのカスタマイズが可能であり、設定を保存するオプションも付随しています。『テンプレート』は過去に保存されたそれぞれ異なる使用オプションと“デフォルト”テンプレートを表示します。『設定』では日付・時間・言語・フォント・“感覚”のカスタマイズが可能とされていますが、全てのオプションは変更不可能です。

数量を問わず、何らかの物品をSCP-2620に入れてから蓋を閉めて『洗濯開始』を押すと、SCP-2620は活性化し、水が内部に流れ込んで内容物が回転する洗濯機に典型的な物音を発し始めます。この途中に蓋を開けることは出来ず、内部は如何なる手段でも検査不可能です。プロセスが完了すると蓋を開けることが可能になり、全ての投入物は内部に配置されています — ただし、SCP-2620が“食べられる”と判断した物は消失しています。

不定期間1が経過した後、『レビュー』の項目を強調する通知が現れます。『レビュー』にアクセスすると、消失した物体をあたかもSCP-2620が食したかのような形式で批評する内容のブログ記事が、前記消失物の写真を添えた状態で表示されます。批評文の下部にはブログのリンクがあります。

補遺2620-B: 以下は、研究員ジェフリー・アッシュおよびブライアン・デイヴィスが実施した、SCP-2620の特性を試験する実験からの選定したものです。特に注記が無い限り、実験時には洗剤と水を一緒に投入しています。全ての批評は抜粋のみです — 完全版の批評は、必要に応じて要請すれば提供されます。

実験#1:

日付: 14/04/14

投入物: 手織りの緑色の綿スカーフ1枚、メーカー品の白の膝丈靴下1足。

批評文:…だが勘違いしないでほしいのは、これが驚くほど杜撰なものだったという事だ。シェフには明らかに私を重んじる気が無い。手を掛けた前菜を準備してそれ一つだけを持ってくるなら話は別だ。明らかに店売りされている食材を“アントレー”と称して提供するのもまあ大目に見よう。だがその二つを組み合わせて“料理”として出すのは如何なものだろうか? この新しい店舗には技巧が欠けているのだろうか? 残念だが、劣悪な料理とまずまずの料理の区別も付けられないのであれば、経営を続けてもどうしようもないのではあるまいか。

実験#13:

日付: 14/04/19

投入物: 多彩色のウールのセーター1着、手織りの綿靴下1足、洗濯サイクルを記録し転送先を追跡するための耐水・耐衝撃ビデオカメラ1台。録画はSCP-2620の内部に配置する前に開始した。

批評文:…今回の食事は大して楽しめなかった。言っても詮無い事かもしれないが、料理は的確に準備と調理がされていたし、間違いなく前回までより格段に向上している。料理に違いを出すための配色は価値を高めているし、多様性も今回こそは称賛に値する…

"しかし、食事の終わりに、私は見苦しく胸が悪くなるような異物を差し出された。食物ですらない! あのように不快を催す物を食べたくは無かったので、速やかに厨房に送り返した。このような経験が続くようなら、これ以上ここでの食事を続けようとは思わない…"

注記: カメラはSCP-2620の蓋を開けた際に発見された。軽い擦過傷しか負っていなかったものの、カメラの電源を入れることはできなかった。メモリーカードに記録されていた動画は、SCP-2620が洗濯サイクルを開始した瞬間に途切れていた。

実験#21:

日付: 14/04/23

投入物: レザージャケット1着、“こんにちは。これを理解できますか?”という手書きのメモ1枚。

批評文: "…歯ごたえ自体は特別なものではない。しかし、提供された料理は食べる価値があるだけの滑らかさであった。紛れも無く相当なコストがかかった一品で、この場所は利幅を上げるためにかなり苦心したに違いない。しかし、あらゆるビジネスは何処かから始めなければならないものだ。料理人たちに改善の余地があることは明確に言い切れる。しかし、見た目の観点から言うと失望させられた。何の驚きも無いが、私はタチの悪いサプライズよりもむしろ普通の軽食のほうが好みだ…"

"重要な点; 私は“こんにちは。これを理解できますか?”というメモを手渡された。当然、私はこれを完全に理解できる。言うまでも無いだろうが、言葉を話せなかったり理解できないようでは料理評論家などやっていられないのだ。こんな風に私の知性を侮辱するのは止してほしい。"

注記: SCP-2620のブログの公共的な本質と、与えられたメモに反応する能力を踏まえ、同様の趣旨に沿った実験はこれ以降禁止された。

実験#42:

日付: 14/05/28

投入物: 熟したトマト1個、ロメインレタスの葉3枚。洗剤と水は無し。

批評文: "ちょっと想像して頂きたい — 給仕人が君の注文を受けにやって来る。君のために料理を作っているシェフが2人、彼に同行している。君の注文が置かれ、その後、3人全員から顔面に唾を吐きかけられる様子を想像して頂きたい。"

"それが私が経験したことだ。全く以て不愉快である。"

補遺2620-C: SCP-2620の実験が打ち切られてから4ヶ月後の14/10/05、SCP-2620のブログは8日間かけて3つの記事を更新しました。記録および映像は、実験の終了以来、如何なる物品もSCP-2620に投入されていないことを示しています。

非常に奇妙だ。これほど長く何も食べずにいるのは初めてなのだが、未だに空腹を覚えない。無論、また別な食事に行くのも悪くない、例え平均以下の質でも。だが… 批評的な文脈の外であれこれ話すというのもユニークな体験だ。今ひと時は脇道に逸れても良いのではないか?

ブログの更新を続ける必要はあるだろうか。恐らく、私は料理界にすべき貢献は全て成しているように思う。そして、そう、私は料理界をなんと燃え立たせたことか! 私の批評文は数多くのシェフを、数多くの組織を、成長を続け常に全力で物事に臨むように触発している。この他にも手掛けて征服すべき目標はあるだろうか? うーん。

決めたぞ! 食べ物や料理文化についての漫ろ言に続けて勤勉な人たちに働きかけ続けるための、私にとっての最善の道とは、実体験について、私の霊感についての話をする事だ! そのための道は既にあるではないか? そして道がある限り、私は進み続ける。今から、私は料理への情熱をひとまず脇へ置く。しかし無駄にする時間は無い。私について未来へと進もう、友よ、ファンよ、家族よ! 共に新たな地平を探検し、味わおう。

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