SCP-2636-JP
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SCP-2636-JPのメインスポットに位置する大水槽。他の水槽と同様に底面が欠落しており、その内容物は画像のように全て喪失している。


アイテム番号: SCP-2636-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-2636-JP周辺の区域は封鎖され、土地開発を理由に一般人の立ち入りを抑制制限限定します。施設内部は遠隔による監視のみが実施されており、警備責任者が必要と判断した場合を除き、あらゆる人員の侵入は推奨されません。また現時点において、水槽底面の空間に関連した探査試行計画は暫時的に凍結されています。

全ての担当職員には、定例的な精神健康検査試行の受診が義務付けられています。その検査結果に基づき、対象となった職員は現担当区画からの異動となるか、もしくは一定期間を監視下拘束下監察下に置かれる可能性がある点に留意ください。

説明: SCP-2636-JPは███████に位置する水族館であり、████年██月特定されていない不明な時点に生じたとされる、従業員及び来場客を含む約███名の失踪事案に関与していると考えられています。当該施設内における特筆すべき異常要素は、設置された全ての展示用水槽の底面が不明な原因から喪失欠落消滅している点です。

この喪失に伴う影響で、各水槽の底面から階下の天井部までは、非常に滑らかな切削面を有する吹き抜け構造が形成されています。加えて最下階の水槽内の場合では、地下方向へと異常に延長された深い縦穴が存在している状態にあります。しかしながら、これら縦穴内部に対する探査試行は、全てのケースで人員と資材を喪失失堕遺失する結果に終始しており、現時点において更なる調査は予定されていません(各調査記録は別紙参照要資料請求のこと)。

また、SCP-2636-JPに侵入滞在実在した観測者からは、水槽の底から響く出自不明なノック音の発生や、水槽表面の埃に浮かぶ要領を得ないメッセージの出現が極稀に報告されます。それにもかかわらず、いずれの場合も報告内容と一致する現象や物品が施設内で確認されたケースはなく、それら信憑性実在性確実性所在も証明されていません。以下は報告例からの抜粋です。

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イルカ展示用水槽。空になった水槽のガラス表面には、画像のように子どもの手形が確認できる。

記録████████

報告: 水槽の内面に出現した簡易的な顔の落書き

備考: 落書きは埃の上に指で描かれていたと報告されたが、他同様に実物は確認されていない。また、発見者は描かれた顔の表情がどのような感情を示唆するものであったのか、不明な理由から説明することができなかった。

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サンゴ礁展示用水槽。天井部には吹き抜け構造が後発的に構成され、画像のように昼間は光が差し込んでいる。

記録████████

報告: 水槽内から聞こえる反復的なノック音

備考: ノック音は水槽の底より響いて来ていると報告されたが、底面直下の吹き抜け位置に当たる下階では音源となる要因を発見できなかった。また、ノック音は1つのみではなく、同時多発的に発生していたとされている。

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大水槽(最下階側)。この展示規模にもかかわらず、水槽内に存在していた内容物は依然未発見である。

記録████████

報告: 突然の広場恐怖症の発露、もしくは虚夢感

備考: 当時、報告者は空白ができた水槽既に失われた底面に対する由来不明の恐怖感情から、一時的にパニック発作の症状を示した。後に症状は解消されたが、報告者は最下階での更なる活動に対する明確な忌避感嫌悪感不快感を評した。

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メインプール観客席。他の展示水槽と同様に底面が抜け、ショー用に使用されていた足場も失われている。

記録████████

報告: 現実感の喪失デジャブ体験[?]

備考: 報告者からは眩暈と混乱の症状が報告されたものの、それ以上の詳細な聴取は、回収直後に発生した当該人物の失踪により成功しなかった。また、報告者であるエバンス博士が警備責任者の許可なく当該地点に立ち入っていた点は注目に値する。

発見来歴付記: SCP-2636-JPにおける異常事態異常実状は、████/██/██に初めて財団へと報告が為されました。財団による施設封鎖時点において、少なくとも█日前までは通常通りに運営されていたという事実が確認できたにもかかわらず、施設内から人間を含むあらゆる生物種の痕跡を発見することができなかった点には留意注目すベきです。

加えて更なる調査の結果は、同月の██日から██日の間に施設へ訪れたと推測証言される人物の大半が、既に行方不明の状態にある事実を明らかにしました。その一方で、最初にSCP-2636-JPに関する通報を受けたはずの地方自治体や、いずれの失踪者家族も、失踪事案及び施設自体の異常がどの時点で生じたのか正確に回答できず、記憶の混乱錯誤異常を訴えました。

現時点において、SCP-2636-JPの現状に起因すると思わしき施設自体の来歴や、他オブジェクトの関与は発見されていません。

追記補遺事案: ████/██/██、当時の主任担当者の1人であったエバンス博士は、前日の睡眠中に自らが経験した異常な夢見にて、SCP-2636-JPと関連する重大な重要な隠れた事実事柄真相を認識したを目撃したを発見したを理解したと報告を行いました。しかしながら、当該職員はインタビュアーからの質問に対し、自らが主張する夢見の詳細について一切説明することができませんでした。この状況について、当該職員自身は激しい焦燥感を示し、単純な忘却を理由として分析しています。

それ以降、█名のSCP-2636-JPと関連した職員から、上記内容と酷似する夢見の報告が為されましたが、同様に詳細は説明されていません。加えて、いずれの財団職員も、各自の報告後から数日以内に失踪している点には留意すべきです。これら現象に対する後発的な如何なる調査も、失踪の要因を特定するには至りませんでした。












別紙何か[?]: 以下の音声資料は、縦穴内部の探査試行時に記録されたものです。当該試行に際しては前回と同様、調査員にワイヤー接続された専用ハーネスを装着した上で、上方の大水槽より徐々に降下させていく形で調査が行われていました。

・・・


リース研究員: 調査員、応答しなさい。穴の中に何かが見えますか?

D-812636: 先生、ダメだ。ライトで照らしているのに何も見えない。この場所はすごく嫌な感じがする。

エバンス博士: 哀れな財団職員、君も私たちの層に加わるのか。

リース研究員: 調査員、その感覚を説明することはできますか?

D-812636: 上手く説明できないけれど、ただ不安なんだ。何故だか急に、自分が今どこに居るのか分からなくなってきて、怖い。まるでひとりぼっち、周りに何もない海原に浮かんでいるような。

エバンス博士: もし私たちの声が聞こえているなら、自分を引き上げてくれるよう懇願するといい。

D-812636: 先生? 何か言ったか? よく聞こえなかった。

エバンス博士: だが注意しろ。私たちの声には答えるな。何も反応を示すな。無視を決め込め。

リース研究員: 調査員、私は何も言っていませんよ。もしも何かを聞いたのであれば、報告をお願いします。それが幻聴であったとしても、構いません。

D-812636: ああ、いや、何でもなかったんだ。たぶん、気のせいだと思う。そんなことよりも、不安や恐怖やらで、流石にパニックになりそうなんだ。だからもう、引き上げてくれないか。

エバンス博士: 何も気が付いていない振りをしろ。

リース研究員: 調査員、この調査試行をいつ終了するのか、それは我々が判断します。それに、貴方も全てを了承した上で任に就いたはずですよ。貴方自身の自由と、家族への補償のために。

D-812636: それは、分かっているけれど、これじゃあまるで悪夢みたいだ。

エバンス博士: これを単なる夢だと思え。

D-812636: ちょっと待ってくれ。

エバンス博士: 目覚めた後も、決して思い出そうとするな。

リース研究員: 調査員、どうかしましたか? 報告をお願いします。

D-812636: 何かが見える。これはだ。それに、あれはか? すごい数だ。よく見ると、人間もたくさんいるぞ。おい待て、どうしてあの中に、先生みたいな白衣を着たやつもいるんだ?

エバンス博士: 嗚呼。残念だ。

D-812636: どうなっている? 何故、こんな地の底にも水族館があるんだ?

リース研究員: 調査員、繰り返してください。貴方の声が聞き取れません。

D-812636: 先生、頼むよ。いい加減に返事をしてくれ。一体、何が残念だったんだ?

リース研究員: 調査員

エバンス博士: 彼はもう戻れない。


・・・












会話想起対話回顧: 以下の書き起こしは、失踪直前のエバンス博士と行ったらしき会話対話通話内容からの抽出です。

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[いつにこれを見たのか、思い出せない]


・・・

: [???][思い出せない][記憶にない][分からない]

博士: そうか。君も夢を見たのか。

: [???][思い出せない][記憶にない][分からない]

博士: いいや、私の時は違う。あの夢は、現実の報告書を回顧するものだった。

博士: 私がその一語一句までを記憶していなかったためだろう。

博士: 所々がボヤけて、チラつくことを除けば、その内容はまさに現実のソレと同じ内容だった。

: [???][思い出せない][記憶にない][分からない]

博士: その通りだ。夢で見た報告書の中、私は明らかに違うものを見た。

博士: 水槽の中には水があり、魚が泳いでいる。更に言えば、それを眺める人影も在った。

: [???][思い出せない][記憶にない][分からない]

博士: その確証はない。だが、もしも本当に、彼らが失踪者たちだとすれば、一体何が起こった。

博士: まさか私たちは、夢見を介して彼らが墜ち込んだ異層の光景を認識しているのだろうか。

: [???][思い出せない][記憶にない][分からない]

博士: いいや、今まで話した内容は上に報告しなかった。

博士: その時は夢で見たものを思い出せなかった、と言った方が正確か。

: [???][思い出せない][記憶にない][分からない]

博士: 残念ながら、私にはこれを報告する時間も無いように思える。

博士: つい先ほどの話だ。私は目覚めた時、気が付けば水族館のメインプール前で一人佇んで居た。

博士: もしかすれば、夢で見た真実の光景を思い出そうと努めた結果、彼らの層に近付き過ぎたか。

: [???][思い出せない][記憶にない][分からない]

博士: 君はまだ深みに嵌ってはいない。私の名を出して、記憶処理を受けろ。間に合うかもしれない。

: [???][思い出せない][記憶にない][分からない]

博士: こんなことしかしてやれず、本当にすまない。

: [???][思い出せない][記憶にない][分からない]

博士: 次に夢で、そこに写り込むはずのない存在を、そこに居なかった者の声を見聞きしたならば。

博士: 全てに気が付いていない振りをしろ。それは無意味な、ただの夢の出来事だ。


・・・


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