SCP-264
評価: +4+x

アイテム番号: SCP-264

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-264は現在天山山脈に位置するエリア-264に収容されています。当初の収容室と構成物は修復されており、保護護符の有効性を確認するため、毎月損傷の兆候がないか検査されます。

SCP-264の訪問を希望する巡礼者は、エリア-264の外部ゲートで登録と身元調査を受ける必要があります。試験や観察を除き、職員はSCP-264自体から半径1 m以内に入ってはいけません。

説明: SCP-264は、約1万2千年前のヒト亜科1の女性の保存された死体です。常時脚を組んだ姿勢で地面から数cm浮遊しています。独特のヒューム及びアキヴァ特徴を有し、周囲のヒューム値が高いことから、錨として用いられていることが確認されています。

SCP-264は宗教的に重要な山々の付近に位置していたため、遮蔽効果により発見が不可能でしたが、第一世代のATMOS2軌道ネットワークによってより詳細な山脈の分析が可能となり、最終的に1982年にSCP-264の特定に至りました。

SCP-264の所在地に派遣された遠征隊は、オブジェクトが仏塔3の中に収容されており、基本的かつ象徴的な身振占術で入場可能でした。この入場方法は仏塔を観察しただけで理解することができました。SCP-264に加え、建築物内部にはテングリ思想、ユダヤ教ヒュプシスタリアン、太平天国、キリスト教聖公会など、様々な主要宗教やマイナー宗教の宗教的遺物や身辺用品が収蔵されています。これらの物体は本質的に異常ではありませんが、SCP-264のアキヴァ増幅器および/またはコンデンサとして機能すると理解されています。

SCP-264内部には現在異次元生物の共同体が生息しており、死体内部に完全に構築された構造物の建造と維持を行っています。これらの生物(以降、GoI-264と呼称)は、ヤンガードリアス期4の終焉以前にSCP-264が死亡して以降、継続的に居住しているものと理解されています。SCP-264のアキヴァ特徴は、GoI-264及び現存する宗派による崇拝に起因する可能性が高いです。

SCP-264は、内部機構を通してGoI-264により複数回部分的に蘇生させられており、発話と周囲の知覚が可能となっています。記録された事例では、これはGoI-264と財団職員を含む外部関係者との意思疎通を容易にするために行われています。

補遺264.01: 初回接触インシデントログ


ログ-264-001-940416

エリア-264、キルギスタン


«記録開始»


(カーナヴォン博士とタナカ博士は仏塔の中にいる。機器や検出器に接続された配線が、付近に整然と並べられた多数の遺物や工芸品の間を縫うように注意されて伸びている。両研究者は折り畳み式のスチール製の椅子に座り、機械がエネルギー特徴や放射線のレポートを生成するのを待ちながら、社交辞令や世間話を交わす。二人の気付かないうちに、SCP-264は部分的な蘇生状態に入り、目を開く。)

カーナヴォン: ……だから俺は死体の世話の方が好きなんだよ。感受性トレーニングが必要な —

SCP-264: ごきげんよう。

カーナヴォン博士は椅子から落ちる。

SCP-264: 失礼、私たちに驚かせる気はなかった。

カーナヴォン: まだ生きてる! 喋ってる!

タナカ: あぁ、でも「私たち」?

SCP-264: その通り。コミュニケーションを試みる前に正しい語彙を読み込めているか確認するために少々盗み聞きさせてもらったことを許してほしい。

タナカ: 1万2千年前の死体の割には随分と上手いですね。あなたは何者ですか? 何かの集合意識?

SCP-264: あなたたちの混乱は理解しているが、私たちはゲシュタルト知性体ではない。これはかつては死体だったが、今は船であり、「私たち」はこの船を操る者だ。近くに来てもらえればわかるはずだ。

タナカ: お申し出はありがたいですが、私は—

カーナヴォン博士は立ち上がり、ためらうことなくSCP-264に向かう。彼は熱心にそれを調べ、死体の皮膚をペンで突く。

カーナヴォン: どこを見たらいいのかな……?

タナカ: 手袋をはめずにオブジェクトを触るな。

カーナヴォン: はいはい、プロトコルは忘れてないよ。別に直接—

カーナヴォン博士は消失し、SCP-264はぐったりと力を失う。数秒後に体制を直し、カーナヴォン博士の声と話し方を真似る。

SCP-264: おぉこりゃ変だ。あー…… タナカ? 聞こえるか?

タナカ: カーナヴォン? どうなったんだ?

SCP-264: オブジェクトの中にいる。何かの船、潜水艦っぽくて、眼窩が観察窓になってる。そっち見えるぞ。

タナカ: どうやってSCP-264越しに話してる?

SCP-264: ここに人がいっぱいいる。音声操作しか駄目みたいだけど使わせてもらってる。おっと、ちょっと待って。

カーナヴォン博士は仏塔の中に再度実体化する。SCP-264は再び力を失ってから、操作者を変える。

カーナヴォン: とんでもないな。眼窩だけでも数百人はいた。

SCP-264: 私たちが何者か、直接そちらの目で見てもらうのが早いと思った。

タナカ: あなたたちはどういった方々なのですか?

SCP-264: そちらの言葉では直接翻訳できないな。一番近い言葉で言うと、「巡礼者」か。

«記録終了»



この交流の後、職員の無許可のSCP-264内への転移を防ぐため、接近制限を含むよう収容プロトコルが改訂されました。前回のインシデント後直ちに、カーナヴォン博士とタナカ博士が正式なインタビューを行いました。

ログ-264-002-940416

エリア-264、キルギスタン


«記録開始»

タナカ: あなたたちが集合意識でないこと、それと現在、そちらの組織の特定の一個人と話しているということはわかりました。お名前を教えてくださいますか?

SCP-264: そのような名称はずっと前に捨ててしまった。私たちは、何よりまず巡礼者だ。他に何も関係ない。私たちの総計は、個々の部位よりも大きい。

カーナヴォン: 前回あなたが何者かと訊いた時の話を広げたい。何の信仰の巡礼者なんですか?

SCP-264: 全ての信仰。あらゆる信仰。この仏塔の中には、生者も死者も何十億の人々の信仰と献身の対象が眠っている。彼らを中心に私たちがいるとわかってもらいたい。

SCP-264: この船はエルサレムであり、メッカであり、ヤズドでもある。確かにこの世界での類似品に過ぎないが、翻訳の許す限り近しいものだ。

カーナヴォン: 巡礼者ってことは巡礼するんですよね。どこ行くんです?

SCP-264: 答えは単純、何度も答えてきた答え。あらゆる世界に存在する言葉で、私たちの神聖なる道を強く肯定してくれるもの。天国への旅。涅槃への。楽園。アタラクシア。好きな言葉で呼ぶといい。

タナカ: どういった方向のですか? 天国は、信仰によって複数の解釈があります。

SCP-264: 誤った解釈だ。それらは模造の天国で、改作の派生の更に複製だ。真の天国はその先にある。私たちは信仰によって結ばれ、世界を越え、圏を越え、存在の次元を越え、全ての生命に約束された完全な終わりへと達する。

カーナヴォン: ちょっと待った。「圏」? 「存在の次元」?

SCP-264: 始めから、私たちがこの次元の者ではないと推量してもらえているものかと思っていた。あらゆる世界は木の枝で、私たちの集合的な信仰は森を越えて広がっている。

カーナヴォン: ほのめかすんじゃなくて直接確認させてほしいですね。つまりそちらの巡礼は多次元的なものだと理解しているが、何故?

SCP-264: 真の天国はその先にあるんだ。私たち一人ひとりを遥かに越えている。バビロンの塔の話を考えてほしい。古い話で、ほとんどの世界に何かしらの形で書き残されている。馬鹿正直さと傲慢さから、人類は天への塔を建てようと試みて、挙句怒れる神により打ち倒された。人類は何かしら罰を受けるが、それは神々や彼らのごく僅かな領域を軽視したからだ。真の天国は神を越えたところにある。

SCP-264: それは痛ましい教訓だが、それでも教訓だ。ほとんどの世界が神への依存を捨てるに至った道だ。その後、科学、論理、理性が人類を支配することとなるが、私たち皆が理解に達した通り、真の天国は空を越えた先にある。この世界もまたこの結論に達したものと理解している。「地球は青かった、神はいなかった」。

カーナヴォン: (咳払い) ユーリ・ガガーリンは実際にはそんなこと言ってない。

SCP-264: ガガ - 誰だ?

タナカ: 重要ではありません。続けてください。

SCP-264: 最終的に、真の天国は世界を越えた先にあるという理解に至った。他の世界へのトンネルを掘る技術と科学を習得すると、他の多くの世界も同じ啓示を受けたという深遠な認識に達した。私たちは無知と誤った信仰の霧から抜け出した巡礼者であり、常に同じ道を歩んでいた者たちがいたことに気付いた。

カーナヴォン: そっちの言う真の天国ってのが本当に存在する証拠は?

(タナカ博士は、節操なくこの質問を持ち出したカーナヴォン博士を睨みつける。)

SCP-264: 心配するな、頻繁に訊かれる質問だ。真の天国は山の峰に例えられる。山は山であるがゆえに必ず峰があるが、どの峰が一番高いかは、登ってみて、その先に何もないことを見て初めて分かる。天国は存在するに決まっているがゆえに存在する。でなければ、あらゆる世界でそれに相当する言葉が作られた理由がない。

タナカ: もしその真の天国を見つけたとして、あなたたちはそれがわかりますか?

SCP-264: わかるはずだ。君たちも、私たちと同じように心で感じられるだろう。意識に深く沁み込んだ暗黙の了解だ。これについて、私たちも記録を取っている。医療記録。剖検。ごく稀に、自発的に真の天国を視覚化する者がいる。若者、老人、病人の眠りのさなかに清明な感覚として訪れ、その間に圏間の転移プロセスを開始する。私たちの機器は独自の脳活動を記録し、精神測定から真の天国は純粋な光の圏であることなど様々な要素を知った。根底にある要因は理解できていないし、単なる偶然かもしれないが、残された情報から、この人々が真の天国へのトンネルを掘ったと確認した。

カーナヴォン: 要するに、真の天国が次元間空間に存在するって証拠は、哲学的推測と、ランダムな転移かトンネル掘りプロセスとやらから成り立ってるってことですね。

SCP-264: これは多元宇宙の真理だ。概念が存在する以上、存在しなければならない。私たち全員には、終焉の先に何かがあるという本能的な認識がある。真の天国を知っているのは、自分自身を深く掘り下げ、この真実を発見したからだ。そして私たちは世界を渡る巡礼の旅に出発し、天国へ向けて螺旋状に上昇していく。あるいは下降するかもしれない。そちらの世界の文化構造がどのように紡がれてきたか次第だ。

タナカ: 船とおっしゃいましたが、この女性の死体を指しているということでよろしいでしょうか?

SCP-264: そうだ。彼女はこの世界で初めて会った者だった。この世界と私たちの世界の隙間から話しかけた。彼女は私たちを野生の精霊だと考え、この世界への錨となることを申し出た。私たちは彼女の犠牲を受け入れ、真の天国へと入る手段を与えた。

カーナヴォン: 彼女を殺害して死体を船に変えたということで?

SCP-264: 厳しい言葉だが、完全に間違いではない。トンネルを掘るプロセスは複雑だ。生きている精神に投影し、なんとかゆっくりと意識に足掛かりを繋げる。それは繋がりであり、まだ船ではない。彼女が腸癌で自然死した後になってから、私たちは身体の内部構造を今の船へと変換し始めた。

タナカ: この船の性質について詳しく教えてください。何故これが必要なのですか? 潜水艦に近いものでしょうか、あるいは宇宙ステーションのようなものでしょうか?

SCP-264: その通り。これは現実感の時空間の不一致を遮断するものだ。ほぼ常時必要となる。場合によっては、過去特定の世界の先住民と問題を起こしてきた実物大の構造物よりも、この船のような目立たない大きさをとった方が役に立つ。トンネルを掘るのに使う装置もこの船に収められており、この世界と私たちのいた世界、そして次に向かう世界を繋ぐ。

カーナヴォン: だとしたら、何でこの次元に、えーっと、氷河時代から留まってるんですか?

SCP-264: 下界から真の天国へ昇ることを願う巡礼者は常に増え続けている。私たちは世界を繋ぐ架け橋としてこの船を維持している。巡礼者を次の世界へと導く。足並みは違うかもしれないが、目的地は皆同じだ。この船はとても長い梯子の一段だ。毎日何百万もの人々が昇り降りし、天国へと旅をする。この世界の上にも下にも、更に何十億と世界がある。この船の私たちは、この骨の折れる仕事を支え、促すだけだ。

カーナヴォン: 1万2千年も?

SCP-264: もちろん、スタッフは交代制だ。天国に着く前に巡礼を終わらせるわけにはいかない。巡礼者をこの船に永久に縛り付けるわけにはいかない。この船の元々の持ち主は、死後に自ら巡礼に出向くことを選んだ。彼女が既に到着していることを祈るばかりだ。

カーナヴォン: つまり、1万2千年も、その「トンネルを掘って」きたのにまだその存在を証明できてないってことですか。

SCP-264: 時間は世界によって異なり、刻々と変化する。この会話も、こちらの船では処理に数日かかっている。私たちの営為を誤解しないでもらいたい。旅にどれだけかかろうとも、必ず真の天国に到達する。

タナカ: 理解しました。いくつかの質問で少々耳障りに思わせてしまっていたら申し訳ありません。この次元の住人に、あなたはどの程度影響を与えていますか? 恐らくそちらの装備に合わせて死体をくり抜いたのでしょうが、歩き回ることはできません。まして宗教的遺物を収集することなど。

SCP-264: 私たちは、あなたたちの無数の姿に出会ってきた。王国、領地、あなたたちのような組織。友好的なものもあれば、敵対的なものも。これらの行為者の憤りを買わないよう、特に布教活動は行っていない。だがしかし、啓示はいつまでも閉じ込め鍵をかけておくわけにはいかない。真の天国の概念化は、韻も理由もなく自発的に生じることがある。異端、受け入れ難きもの、ハラームなどと呼ぶかもしれないが、この世界の信者たちはそれでもここに引き寄せられる。彼らは、この世界の信仰で約束される以上のものがあると理解している。彼らは自らの意志と能力によってこの船にたどり着く。彼らの天国への道を拒む権利などない。思い出や記念品として、そして何よりかつて信じていたものが真実が何か、天国が何かから目を背けるだけのものに過ぎないという認識の証として、彼らはよくかつての信仰のアイテムを持ち込む。

(カーナヴォン博士は口を開けて喋ろうとするが、脚をタナカ博士に蹴られ、沈黙を保つ。)

タナカ: わかりました。インタビューは終了です。ご協力ありがとうございました。

SCP-264: 最後に少しだけ。そちらの組織が今後、私たちやこの船とどう関わっていくかを協議する際に考慮してほしいことがある。私たちはとても長い梯子の一段だ。数多ある世界の一段。この繋がりを断ち切ることは、全ての世界の怒りを掻き立てることとなる。前にもこれは起こった。ここでは起きないようにしてほしい。

タナカ: ご安心ください、懸念事項は上司に伝えておきます。

«記録終了»


補遺264.02: SCP-264分析補足資料

追加インタビューで、「真の天国」の証拠に関する文書を受けとり、財団医療職員により分析されました。「真の天国へのトンネル掘削」に関する全ての医療記録は、SCP-3966に関連する死亡者と一致していることが判明しました。SCP-264の内部メカニズムと次元間転移技術における理解に基づくと、2つのアノマリーの間に更なる重複がある可能性は極めて低いです。

この情報はGoI-264に伝えられません。

特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。