SCP-2653-JP

肆のいろは ハブ » SCP-2653-JP

評価: +32+x
blank.png

アイテム番号: SCP-2653-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-2653-JPは、サイト-81██の低脅威度物品収容室に収容されます。

一部のSCP-2653-JPには特別な収容手順が必要です。詳細はこちらを参照してください。

説明: SCP-2653-JPは、様々な草本植物に類似した実体です。網状の葉脈など、双子葉植物(Magnoliopsida)に類似する特徴が共通して確認できますが、より具体的な植物種の特定は困難と結論付けられています。SCP-2653-JPは破壊耐性を有しており、枯死することも確認されていません。現在財団は47種・47本のSCP-2653-JPを収容しており、それぞれにSCP-2653-JP-1~-47の枝番号を指定しています。

それぞれのSCP-2653-JPには、その上部に、明朝体の艸部(くさかんむり、艹)に酷似した器官が存在しています。この器官は、外部からの力によって外すことには成功していない一方、しばしば落下することがあります。この落下に伴って、何らかの異常な現象が発現します。以下はその一例です。

  • SCP-2653-JP-3: 艸部の落下に伴い、SCP-2653-JP-3全体が右方向に90°回転する。
  • SCP-2653-JP-15: 艸部の落下に伴い、SCP-2653-JP-15を視認している者に精神的安定感がもたらされる。
  • SCP-2653-JP-24: 艸部の落下に伴い、周囲の霊子濃度が上昇する。
  • SCP-2653-JP-32: 艸部の落下に伴い、周囲の時間を加速させる。ただし、SCP-2653-JP-21が「艸部の落下に伴い、周囲の時間を逆行させる」という異常性を有しており、これらは相殺されている。
  • SCP-2653-JP-46: 艸部の落下に伴い、隣に位置しているSCP-2653-JP-47の艸部を落下させる。

落下した艸部は、即座に"塵のように"消失します。また、この後、SCP-2653-JPの艸部は約1時間で再生し1、これに伴い「艸部の落下によって発生した異常性」を発現させなくなります。なお、一部のSCP-2653-JPは、艸部の落下が確認されていません。

補遺: 当該異常性に対して、戦術求解部門2の神野研究員より以下の提言がなされました。

器官の形状より、SCP-2653-JPの異常性には、「艸部を部首に持つ漢字」が関与している可能性が高いと言えます。この仮定に基づいて考えると、以下のような推測が可能です。

  • SCP-2653-JP-3: 艸部の落下に伴い、SCP-2653-JP-3全体が右方向に90°回転する。SCP-2653-JP-3は「若」を示しており、艸部が落下すると「右」となるため、「右」に関する異常性が発現した。
  • SCP-2653-JP-15: 艸部の落下に伴い、SCP-2653-JP-15を視認している者に精神的安定感がもたらされる。SCP-2653-JP-15は「薬」を示しており、艸部が落下すると「楽」となるため、「楽」に関する異常性が発現した。
  • SCP-2653-JP-24: 艸部の落下に伴い、周囲の霊子濃度が上昇する。SCP-2653-JP-14は「花」を示しており、艸部が落下すると「化」となるため、「お化け」「化けて出る」などにおける「化」に関する異常性が発現した。
  • SCP-2653-JP-32: 艸部の落下に伴い、周囲の時間を加速させる。ただし、SCP-2653-JP-21が「艸部の落下に伴い、周囲の時間を逆行させる」という異常性を有しており、これらは相殺されている。SCP-2653-JP-32は「苦」、SCP-2653-JP-21は「薪」を示しており、それぞれ「古」「新」に関する異常性が発現した。
  • SCP-2653-JP-46: 艸部の落下に伴い、隣に位置しているSCP-2653-JP-47の艸部を落下させる。SCP-2653-JP-46は「茨」を示しており、「次」に関する異常性が発現した。

また、SCP-2653-JP-7では15分程度と早く再出現するのは、SCP-2653-JP-7は「草」を示しているためでしょう。一部のSCP-2653-JPは艸部の落下が確認されないのは、「華」「蔑」「葬」のように、艸部を外した単体の漢字が存在しないものを示しているためだと推測できます。

なお、当該法則はSCP-425-JP3を連想させます。しかしながら、外見的特徴が大きく異なる点、異常性がそれなりに異なる点より、起源などにおける関連性はほとんどないと思われます。

ただし、この推測が正しいとすると、少々懸念すべき点が浮上します。部首が艸部の漢字は非常に多い4ため、未収容のSCP-2653-JPが大量に存在する可能性が否定できないのです。また、SCP-2653-JPが発現させる異常性は小規模ですが、全ての漢字でそうであるとも言い切れません。一刻も早く全SCP-2653-JPの収容を完了することが望ましいといえます。

当該提言を受け、未収容のSCP-2653-JPに対する調査を実行することが検討されています。




更新: 以下は、SCP-2653-JPの管理に伴う、戦術求解部門職員の音声ログです。

<記録開始>

反田博士: さて、SCP-2653-JPの調査管理についてだけど  

木村研究員: このSCP-2653-JP、噛んできたんですけど5? こいつら本当に安全なんですか?

反田博士: ……私には懐いてる。 それに、異常性の規模はごく小さい。

木村研究員: 第一、これ以上のSCP-2653-JPが存在するっていうのも、本当なんですか? 丁度47個ってだけでは?

反田博士: 部首が艸部の漢字は2100個もある。

木村研究員: 全てのくさかんむりの漢字に対応するSCP-2653-JPがある訳じゃないのでは? 例えば、常用漢字だけが対象である、とか?

反田博士: ……その線は、既に考えられてた。しかし、部首が艸部の常用漢字は、46個6、丁度1個オーバー。

木村研究員: あれ? 「墓」とか「夢」とか「繭」とかは?

反田博士: ……艸部を含むけど、部首がそれじゃない。それぞれ「土」「夕」「糸」。

木村研究員: 本当ですかねぇ?

反田博士: そこに漢字辞典がある。引いてみれば、分かる。

木村研究員: ……ああ、本当でしたね。でも、これらの漢字に対応するSCP-2653-JPがないとは限らないのでは?

反田博士: いずれにせよ、収容されてないSCP-2653-JPがあるということ。

木村研究員: そうですか……

反田博士: ただし、戦術求解部門は、SCP-2653-JPの対象とする漢字に対する何かしらの規則性を疑っている。なぜなら、これまでに漢字が特定されているSCP-2653-JPは全て常用漢字だし、部首が艸部だから。

木村研究員: ……なるほど、その「規則性」を見出して、収容チームの補助をしろ、って任務ですね。

[約5分間、各自が未収容のSCP-2653-JPについて考察する]

木村研究員: こ、「苔」は……常用漢字ではないのか……あっ、ちょっと待ってください!

反田博士: ……どうしたの?

木村研究員: この辞書、間違ってますよ! 間違った部首で載ってるんです!

反田博士: それは……考えにくいかもしれないけど。

木村研究員: いや、「台」ってあるじゃないですか。「台」って、部首はきっと「厶」か「口」じゃないですか。でも、この辞書には、部首が「至」だって書いてあるんです! おかしいですよ!

反田博士: ……いや、実は、合ってるともいえる。

木村研究員: どうしてです?

反田博士: 「臺」と「台」という漢字は元々別の文字だったけど、簡略化のために統合された……「辨」と「弁」のように。現代では、「臺」は「台」の旧字体として扱われる。「臺」の部首は「至」、「台」の部首は「口」。でも、同じ漢字なのに部首が違うとなると、辞書の上では扱いにくい。そこで、辞書では、どちらか一方の部首として掲載する。だから、「台」の部首を、「臺」の部首である至部とする辞書もある。

木村研究員: えぇ!? そんなの、初見じゃ分かりませんよ!

反田博士: でも、注釈とかで書いてない?

木村研究員: ……書いてありましたね。ごめんなさい。

反田博士: ……ちゃんと見なさい。

木村研究員: ……他にも、こんな経緯のある漢字ってあるんですか?

反田博士: 例えば、「聲」……新字体の「声」は士部だけど、旧字体の「聲」は耳部。だから、辞書ではどちらか一方で載ってるかもしれない。

木村研究員: なるほど  

反田博士: ……いや、待って……ある、あった……!

木村研究員: 何があったんですか!?

反田博士: ……部首が、新字体では艸部ではないが、旧字体では艸部だから、辞書上では艸部で分類される漢字……

木村研究員: そんな漢字があるんですか?

反田博士: ……あ、「万」、旧字体が「萬」だから、部首が艸部に分類されうる。しかも、「万」は、当然常用漢字。

木村研究員: だ、だとするとですよ、くさかんむりが部首である常用漢字は、47個とも言える訳ですよね?

反田博士: その通り。……だけど、常用漢字なのは「万」であって、「萬」は常用漢字ではない。「万」に対応するSCP-2653-JPがあったとして、その艸部はどうなる……?

木村研究員: そうですよ、「万」の部首がくさかんむりでも、「万」にくさかんむりはありませんよ!

反田博士: ……ならば。

[反田博士がSCP-2653-JP-44へと向かう。SCP-2653-JP-44の艸部は、他のSCP-2653-JPの艸部と異なり、ごく僅かな傾きを有している]

反田博士: もし、これが「万」に対応するとすると  

[反田博士が、SCP-2653-JP-44の艸部を引き抜く。]

木村研究員: 抜けた!? くさかんむりって、外から外すことはできないんじゃなかったでしたっけ!?

反田博士: ……本来確認される「塵化」も起きない。この艸部は、明らかに他の艸部と異なった性質を有している……

木村研究員: そんなことが……ともかく、これ、担当の人に連絡しましょう!

<記録終了>

後の調査により、SCP-2653-JP-44について以下の性質が判明しました。

  • 艸部が消失しない。
  • 艸部が復活しない。
  • 「艸部を除いた漢字の部分に関連する異常性」を発現させない。
  • 艸部が、精巧な竹細工で構成されており、人為的に作成されたものであることが示唆される。

以上により、SCP-2653-JP-44は「万」を示しており、本来艸部は存在していなかったが、何者かが他のSCP-2653-JPと統一させるために作成・接着したという推測がなされています。

当該推測が正しい場合、SCP-2653-JPは47本で全てであること(すなわち、未収容のSCP-2653-JPが存在しないこと)が導かれます。一方で、SCP-2653-JP-44に艸部を接着した人物ないし知的生命体が存在することが強く予想されます。対策班は、SCP-2653-JP自体ではなくSCP-2653-JPに関連する人物/団体へと調査をシフトすることを決定しました。




更新2: 収容以前のSCP-2653-JPへ(本来不要である)水やりなどの管理をしていた人物(黒浦 幸三氏)を発見しました。同氏は植物栽培や盆栽を趣味としており、その一環としてSCP-2653-JP群を発見・栽培していたことが判明しました。なお、SCP-2653-JP-44に艸部様の部品を作成・装着したのも同氏でした。その理由について、同氏は、「他のSCP-2653-JPは艸部を有するのに-44だけは持っていないのがかわいそうであった」旨の主張をしています。

特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。