SCP-2666-JP
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通知: 2020/08/12現在、第一次アラバ計画は進行中です。


監督評議会命令
以下のファイルはSite-298の現状を描写しており、レベル4/2666-JPに分類されています。許可なきアクセスは禁止されます。



アイテム番号: SCP-2666-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: サイト-298の座標を中心とした半径10kmをレッドゾーン2666-JPに指定します。レッドゾーン内部には臨時サイトが建設され、SCP-2666-JP担当職員、並びに機動部隊イプシロン-4("空の箱")が配備されます。それ以外の人員の配備は全て却下されます。当該オブジェクトのヒューム値は常に担当職員によって監視が行われ、大規模な変動が確認された場合は速やかに特殊対応班("スペリオル")、並びにイプシロン-4によってレッドゾーンの指定座標にSRAパネルの設置、拡大の阻止が実施されます。

職員の混乱を防ぐため、SCP-2666-JPに関連する情報は担当職員、機動部隊、特殊対応班、並びに特例セキュリティクリアランスを保有した職員のみ閲覧可能です。RAISAデータベース、SCiPネット上ではサイト-298に関するデータは全て機能中であるように改竄が実施されます。

説明: SCP-2666-JPはサイト-298の座標を中心として発生した異常空間、並びに空間内に存在する湖沼です。

現在、サイト-298の全ての人員、並びにオブジェクトに関する所在は不明です。サイト-298は主に現実改変やヒューム値の変動に関連するオブジェクト20種類を保有する収容施設でした。その中には現実改変者に指定されるオブジェクトも1体含まれていました。2020/06/10時点で、サイト-298におけるヒューム値の大規模な変動が周辺10の観測地点、並びに7のサイトにて観測されており、これが当該オブジェクトの起源であると推測されています。その後の2020/06/15にサイト-298は制御不能の判定を受けると共に、観測データの改竄、並びに観測関係者に対する記憶処理が実施されました。

オブジェクトの影響範囲は現在、サイト-298の座標を中心とした半径約7.4kmです。この影響範囲は不定期に発生するサイト-298の座標付近で観測されるヒューム値の変動に伴って拡大する事が確認されています。この影響範囲内に知的生命体(以下:対象)が進入した場合、対象はSCP-2666-JP内の別座標の陸地へと転移します。転移の際、対象が直接身に着けていた装備は同時に転移しますが、それ以外の乗車物等は転移の対象とならず、影響範囲内に残存します。空間内の風景は固定されており、霧に包まれた乳白色の湖沼の様相を示しています。対象が湖沼に進入する事により、SCP-2666-JPは活性化します。

湖沼は活性化する事により、高濃度の記憶因子1を水面上に表出させます。これらの因子に含まれる記憶表象は凡そが知的生命体由来であり、それに伴い、湖沼に進入した対象はあらゆる追体験を得ます。その結果として殆どの対象は複数の情動反応の崩壊、統合失調症に類似した症状を発症させます。湖沼内では歩行を続行しない限り底土に身体が沈下しますが、上記の症状のため最終的に対象は湖沼に埋没します。なお、浮具や現地で設計したイカダを用いての探索は、追体験における思考能力の低下に伴い失神した職員の窒息、並びに湖沼そのものの幅員の急激な増減に伴う座礁が記録されており、推奨されていません。


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SCP-2666-JP


以下はSCP-2666-JPへの探査記録、並びにアラバ計画の立案、その承認に伴う追加の探査記録の一覧です。現在、アラバ計画の続行は倫理委員会の承認待ちとなっています。

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    探索映像ログの書き起こし

    日付: 2020/06/13

    探索者: D-442K

    対象: SCP-2666-JP

    探査目的: SCP-2666-JPの初期偵察。

    追記: 探索はウェイブラー博士の監修の下実施されました。D-442Kは財団指定の探索用標準装備を保有した上で探索を行いました。


    [ログ開始]

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    D-442Kによって撮影。

    ウェイブラー: こちらウェイブラー、D-442K、応答せよ。

    D-442K: ドクター。今、説明を受けていた所に入った。霧がかかっていて、周りが見えづらい。とりあえず、湖とか木が見える。

    ウェイブラー: なるほど。では湖の周辺を探索していただけますか?

    D-442K: わかった。

    D-442Kによって湖沼周辺の探索が実施される。周辺状況は湖沼の出現に伴い、一部地形的な変化が確認されるが、サイト-298周辺の記録と97%で合致する。なお、サイト-298の座標と反対方向に進行したが、D-442Kは空間を脱出できなかった。

    D-442K: 湖まで戻ってきた。なぁドクター、俺はここからそっちには戻れないのか?

    ウェイブラー: それは今のところ不明です。貴方の頑張りによっては戻ってこれるかもしれません。

    D-442K: この仕事が終わったらこんなクソったれな職務から解放されるんだ。頼むよ。

    ウェイブラー: 私たちも最善を尽くします。湖の様子はどうですか?

    D-442K: 特に最初に見た時と変わりはないな。

    ウェイブラー: なるほど。では水のサンプルの採取をお願いできますか?

    D-442K: ああ、わかった。

    D-442Kによって湖沼の水のサンプルが採取される。後に現地での調査により、湖沼内への進入を実施しない場合は水に異常性は存在しない事が確認された。

    ウェイブラー: ありがとうございます。確認ですが、周囲に出口らしきもの、建物は発見できていませんか?

    D-442K: ああ。さっきも歩きながら話したけど、ずーっと霧の中に森が続いてるだけだ。戻ってくる時は、森の中を歩いた距離より明らかに短かったけどな。

    ウェイブラー: では、そちらの湖沼には進入できますか?

    D-442K: ちょっと待っててくれ。[5秒の沈黙] ああ、水底に足は着く。だから

    D-442Kは陸地から10秒間、湖沼に脚部を浸す。D-442Kからのバイタルサインに異常が確認されると同時、D-442Kは湖沼から脚部を引き抜く。

    ウェイブラー: D-442K?

    D-442K: [22秒の沈黙] [荒い息で] 本当にここに入っていかなきゃダメか?

    ウェイブラー: 周囲の環境が変化しない以上、残された道はその湖沼のみだと考えられます。湖沼に入った時、バイタルサインに異常が確認されましたが、何があったのかご説明いただけますか?

    D-442K: [30秒の沈黙] 娘に。

    ウェイブラー: 娘に?

    D-442K: 首を、絞められた。体温、匂い、感触、間違いない娘のものだった。ワケわかんねぇまま抵抗しようとしたけど、体が動かなくて、足だけが動いた、だから、引っこ抜いた。

    ウェイブラー: できるだけ詳細にお願いいたします。

    D-442K: 湖に脚を突っ込んだ途端、周りが俺の家になったんだ。幻覚じゃない。アレは俺の家だった。俺の家族の家だった。そうしたら、娘が座り込んでた俺に駆け寄ってきたんだ。前にそうしていたように、受け止めようとした。だけど、足しか動かなかった。だからそのまま娘に押し倒された。アレは娘だった。そのまま、アニー2は俺の首を、その手で絞め始めた。子どもの力で、絞め殺せるはずがない、けど、俺の首はちっちゃな手に、そこだけ、ありえない力で、絞められた。抵抗しようとして、だけど、足しか動かせなかった。そこでようやく俺は、湖に脚を付けた事を思い出した。だから、引っこ抜いた。これで全部、だ。

    ウェイブラー: なるほど。湖沼に脚を付けた瞬間、幻覚、いえ、何かしらが働いたのですね?

    D-442K: 俺はアンタほど、こういうのに精通してないからよくわかんねぇ。やった事があるのは化け物の餌付けくらいで、こんなのは、相手にしたことない。なぁ、俺はここに入らなくちゃいけないのか?

    ウェイブラー: では、他の脱出口を探しますか?

    D-442K: 俺、は。 [32秒の沈黙] [荒い息で]進む、しか、ないんだな?

    ウェイブラー: 強制は致しません。陸地に残り続ける事で何が発生するかを調査するのも、脱出口を探して彷徨うのも、立派な仕事です。

    D-442K: 行くよ。進むよ。ドクター、あんたは、卑怯だ。

    ウェイブラー: よろしくお願いします。何があったか報告できる時は、できるだけ詳細に。

    D-442K: ロボット野郎が。

    D-442Kが湖沼に足を踏み入れる。そのまま、やや急ぎ足で進行を開始する。しかしその12歩目にしてバイタルサインに異常が確認され、D-442Kは進行を停止する。D-442Kの沈下が開始する。

    ウェイブラー: D-442K?

    D-442K: おい、聞いてない、聞いてないぞ。これは誰の? 本当に?

    ウェイブラー: どうかしましたかD-442K。報告をお願いします。

    D-442K: ドク、ドクター。なぁ記憶処理ってなんだ?

    ウェイブラー: 文字通り、財団職員に使用される、悪影響のある記憶を取り除く技術です。それがどうされましたか?

    既にD-442Kの脚部は膝まで湖沼に埋没している。

    D-442K: じゃあなんで、それが俺に使われてるんだ?

    ウェイブラー: 先ほど貴方はありえない体験をしましたね? それもありえない体験の一つです。それは幻です。前へ進むか、最悪、戻ってください。

    D-442K: 違う、これはだって。じゃあなんで、[荒い息] 俺にアニーなんて、娘はいたか?

    ウェイブラー: D-442K、進行可能であれば前へ進むか、戻ってください。

    D-442K: 俺、知らない、アニー、アニーって誰だ、ドクター、ドクター、ドクター!俺、知らないよ。だって、

    ウェイブラー: D-442K。前か、後ろへ。

    D-442K: 俺の娘は、俺が殺したのに。

    D-442Kは完全に埋没し、反応がロストする。

    [ログ終了]

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      SCP Foundation

      Official Documentation

      Project Arabah


      前書: SCP-2666-JP内部の調査を行うため、複数人の財団職員による調査計画が立案されました。それに伴い、一部研究物資の小型化、装備可能な移動手段等の研究が同時進行で実施されます。

      抜粋: この計画はSCP-2666-JP内部における複数の探査記録を元に、潜入人員及び物資の選定が行われました。詳細は別紙:アラバ計画における人員と物品評価 を参照してください。

      計画内容: 現在までの探査記録において、SCP-2666-JP内部、並びに湖沼は以下のような異常性を有している事が推測されています。

      1. SCP-2666-JP内部では装備品であれば撮影機材、並びに通信機能を持ち込んだ状態での探索が可能であり、GPSの機能も一部確認されている。ただし、装備品の定義は不明であり、乗車物等は同時に異常空間への転移が実施されない。
      2. SCP-2666-JP内部には脱出口と呼べるものは凡そ存在しない。影響範囲から離脱を試みると、GPSの挙動では数m進行し、同m分だけ後退するといった現象が確認されるため、一種の環状空間のようになっている事が推測されている。
      3. 唯一進行可能である、空間内部の湖沼は進入を実施した時点で精神影響、実体験を伴う幻覚症状、記憶の混濁等の症状が発症する。また、湖沼底部の土質はやや柔軟であり、静止をし続けた場合、身体が埋没する。また、進行した場合、GPSの挙動においてはサイト-298の座標へ接近している様子が確認できる。
      4. 上記の幻覚症状等の中には一部機密情報、並びに記憶処理において削除した情報も含まれる。

      上記の異常性を考慮した上で、Dクラスを用いた実験では専門的な研究資材の取り扱いに限度が存在するため、現時点でセキュリティクリアランスが3以上の人員を選定し、実地での調査を実施します。最終的な目標として、サイト-298への到達、並びに状況確認、場合によっては異常物品を用いた脱出口の確保等が予定されています。なお、人員、装備の回収は困難である事から、選定には一か月を要するものとします。


      搬入資材一例:

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      ウィンストン揮発式蒸留装置

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      スクラントン式対改変簡易展開施設


      選定結果: 2020/07/19を以て、職員の選定が終了しました。以下は職員の簡易的な人事的評価、並びに所感です。

      • ウェイブラー博士

      セキュリティクリアランス4。現SCP-2666-JP担当者。複数の部門、並びに298を含む複数のサイトに勤務していた経験があり、今回投入される機材に関しても一定以上の使用経験なども認められる。情動反応への自制力も高く、認知抵抗値のスコアも15を記録済。

      [これ以上の当該人物の人事評価、並びに所感に関しては検閲が実施されています]

      なお、実際にはウェイブラー博士のみの運搬では困難な装備を運搬する目的として、Dクラス1名が先にSCP-2666-JP内に配備されます。

      計画実行日は2020/07/26を予定しております。また、結果によっては第二次、第三次計画の実施が検討されています。 第二次、第三次計画は現在、倫理委員会の介入に伴い評価待ちとなっています。

        • _

        第一次報告 2020/07/29

        報告します。

        ウィンストン揮発式蒸留装置を用いて湖沼の水に関しての調査を実施しました。
        結果として微弱ながら、不明な記憶因子が複数検知されました。これらが先の実体験を伴った幻覚症状、記憶の混濁を引き起こしているのだと推測されます。
        また、その記憶因子の中に財団に関する機密事項が含まれている事を考慮すると、この湖沼は沈んだ生命体の記憶を参照にして記憶因子を生み出しているのだと考えられます。

        この仮説が正しいものであるならば、サイト-298には既に財団職員は存在しない可能性が高いです。
        また、この湖沼が現実改変によって出現したと仮定するのであれば、「サイト-298座標に近づけない」といった人為的、作為的な目的を以て、改変が施されているように思えます。

        結果として、298に収容されていた現実改変者によって、この空間が誕生したものだと私は現在考えています。

        引き続き、間接的な調査を実施します。

        第二次報告 2020/07/31
        添付データ: [データ破損]

        報告を実施します。

        今回は報告が主ではなく、支援物資の追加の提案です。
        現在、ウィンストン揮発式蒸留装置を中心とした、様々な調査機器を用いてSCP-2666-JPの湖沼に関しての研究を行ってまいりました。しかしながら、結果として有効な作用を示したものはウィンストン揮発式蒸留装置のみでありました。

        そのため、更に記憶因子の詳細な調査を実行するために、エッケルカンプ式の調査機構の小型化、並びに支援を希望いたします。また、食品類、並びに飲料水の追加も申請したいと思います。

        つきましては最終的な調査結果、並びに所見を記述した添付ファイルを参照してください。
        よりよい返事がいただける事を、期待しております。

        不明 2020/08/02
        添付ファイル: 1件

        これはなんでしょうか?

        %E8%96%AC

        なぜ、Y909化合物、エレミタ873、アドラス124、フルエン295、ガバナス676といった、リストに存在しない物品が、私の装備の中に紛れ込んでいるのでしょうか?
        特に、ガバナス67に関しては、指定薬品に設定されており、持ち出しには薬品部門の許可が必要であるはずです。

        もしかして、最初から、そういうつもりだったのでしょうか?

        ガバナス67を無許可で持ち出したという言い訳があれば、処分は容易です。かといって、私がそれに絶望して、ここで無駄死にするだなんてあなた達は思ってもいないはず。それに、私には298に辿り着かなければいけない責任がある事も、きっとあなた方はご存知なのでしょう。

        もしかして連絡が取れないのも、それが理由なのでしょうか。報告に対して一度たりとも返信が来ないのは、私にその道しかないのだと示すためのものなのでしょうか。

        お前らはやっぱり、あの時から何も、変わっていない。

        第三次報告 2020/08/06
        添付ファイル: 1件

        「連絡が送れない状況にあった」という可能性を考慮して、もう一度支援物資の提案、並びに湖沼に関して判明した事象の報告を実施いたします。
        添付ファイルをご覧ください。

        第四次報告 2020/08/08

        これ以上、私たちはあなた方の決定、あなた方の意思を待つことは物資的、精神的にも難しくなりました。

        もうこうなったからには、私は元の世界で朝日を拝むことはできないのでしょう。
        月や星空を見て、感嘆の息を漏らすことも、許されはしないのでしょう。

        それでも私は、進みます。それが私に与えられた仕事だというのなら、そう考えるしか、なかったのでしょう。

        2020/07/30から2020/08/10時点まで、受信サイトはサイト-298の変動を検知したカオス・インサージェンシー、並びに蛇の手による立て続けの攻撃を受け、メッセージへの返答が不可能な状態にありました。加えてアラバ計画そのものの有用性について、倫理委員会による評議の対象に計画が指定され、当委員会によってこれ以上の計画の進行は無意味であるとの判断が下されました。
         
        また、蛇の手の構成員の一部がアラバ計画に関連する機密文書のコピーを保有していた事が、後の拘留調査によって判明しました。これが要因となり、今回の襲撃が引き起こされたと推測されています。詳細は以下の特例クリアランスを保有する職員のみ閲覧可能です。なお、文書の経路については保有構成員が拘留中に死亡したため、判明していません。

          • _


          [再生開始]

          ウェイブラー: 通信機材の電源には限りがあるため、手短に。

          ウェイブラー: 私は [18秒の沈黙] ああ、すまない、D-442K。それは私の所為だ。好きに嬲ってくれて構わない。だが、私は進むよ。

          ウェイブラー: 既に、10時間以上、歩き続けている。時たまある湖沼内の陸地で体を休めたりはしているが、体力面よりも、精神面の消耗の方が、激しい。

          ウェイブラー: そちらから連絡が来なくなって、既に一週間前後、か。私の装備の中に、あれらの薬が紛れ込んでいた時から [10秒の沈黙] わかっていた。これが、私の仕事で、これしか私にはないのだと。

          ウェイブラー: っと、メアリー8じゃないか。すまなかったね。あのオブジェクトが跋扈するサイト内に、置いて行ったりして。私も苦しかった。

          ウェイブラー: また置いてくのか、って? そうだ。これも、仕事でね。進まなくちゃいけない。

          ウェイブラー: だが、その薬のおかげで、まだ、余裕があるのは、ありがたいことだ。

          ウェイブラー: 久しぶりですね、アノン先生9。私を庇って、貴方は亡くなったんでしたよね。

          ウェイブラー: だから、自分と変わってくれ、と? はは、ご冗談を。あの時、これが財団職員だと、やり直しはないと教えてくれたじゃないですか。

          ウェイブラー: まだ、サイト-298は見えない。しかし、どうも、周りの風景は、霧と森だけの場所から、変わってきた気がする。画像データを添付しておく。

          %E8%8A%B1

          花だ。

          ウェイブラー: 久しぶりだね、コニー10。娘は [16秒の沈黙] 元気、かな。

          ウェイブラー: そうか。僕らは今は他人同士だったね。やめてくれ、包丁なんて取り出して。僕が強盗にでも見えるかい?

          ウェイブラー: 見える、か。なら、そのまま刺してくれ。そうだ、僕が悪い。君まで巻き込んでしまった。アレに関わりすぎた僕が、子どもを産む選択肢をするべきじゃなかった。

          ウェイブラー: [17秒の沈黙] アドラスを、投与する。

          ウェイブラー: [荒い息で] 流石に、愛した人に、他人として扱われるのは、クるな。

          ウェイブラー: だが、まだ、足は動くさ。

          ウェイブラー: 君は [20秒の沈黙] そう、か。先生の息子、か。

          ウェイブラー: 君も財団にいるのかい? なんと、サイト-298に勤務しているのか、素晴らしいな。あそこは一種のエリートしか、雇用してくれないんだ。

          ウェイブラー: 僕に復讐をするために頑張った? 動機は不純だが、君は先生に似て、努力の天才なんだな。

          ウェイブラー: サイト-298に辿り着いても、僕は何も得られない、か。そうかもしれない。でも、これも仕事でね。ずっと、僕は仕事に誇りを持っているんだ。持っていなくちゃ、いけなかったんだ。

          ウェイブラー: すまない、僕は行くよ。

          ウェイブラー: どう、やら。私の記憶からも、この湖沼は因子を作り出しているようです。これは間違いありません。

          ウェイブラー: しかも、それだけじゃない。僕に特に効くような、そんなものばかりをこいつは見せて [29秒の沈黙] 今、名も知らぬDクラスに嘘つきだと、撲殺されました。確か彼は、そう、私の前にここに装備を持ってきてくれた、んだったかな。

          ウェイブラー: 記憶の混濁の頻度も、次第に短くなってきています。しかし、私はまだ自分が自分であると認識しています。

          ウェイブラー: ですから問題ありません。が、

          ウェイブラー: これ以上の進展は望めないので、今回はここまでの連絡で終わりにします。

          ウェイブラー: 疲れましたが、まだ、私は歩けます。

          [再生終了]


           

          + 新規受信データを表示します。

          サイト-298に辿り着きました。

          サイト-298は現存しています。外見上に変化は見られません。

          ですが、ここは私たちの想定していたような事にはなっていませんでした。

          サイト-298は今や、収容の余地がありません。

          全てのオブジェクトが、職員と共生しています。かつてのような殺伐とした風景はありません。

          まだ、彼女が暴走していた方が割り切れた。

          かつて私はこの場所に勤務していました。

          かつて失ってしまったものを、取り返そうと夢を見ていました。

          ですが、オブジェクトはオブジェクトとしてしか扱われないと知りました。

          それから、20年、心を殺してきました。

          その、20年前の父親だった私が、そこで笑っています。

          今の私が失ったものと手を取り合って、笑っています。

          湖沼の中、死に物狂いで彷徨って、心身が朽ち果てるような、夢を見ました。

          私が見捨ててきた、たくさんのものを見てきました。

          それでも、最後の、この光景だけは、あんまりだ。意地が悪い。

          私が捨ててきた全てが、今のサイト-298にあります。

          私が守りたかった全てが、今のサイト-298にあります。

          エリザへこれを使って、また、私にそれらを捨てろとでもいうのですか?

          それは、耐えがたい。

          こんな幸せな思いは、忘れていたかった。

          もう、足が動きません。

          だから、ここが、私の死に場所なのでしょう。



          評価: +252+x

おかえりなさい、パパ。

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