SCP-2667-JP
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発見時のSCP-2667-JP。カリフォルニア、マンザナー国定史跡、石碑前。

アイテム番号: SCP-2667-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-2667-JPの収容されている個体は一部を除き、サイト-20KKの外圧式エアロックの搭載された、標準生物収容セルによって管理されています。未収用のSCP-2667-JPが発見された場合、当サイト勤務のフィールドエージェントによって収容作戦が実施されます。

説明: SCP-2667-JPは折紙によって整形された鶴(Gruidae)に類似した外見的特徴を保有する生物群です。当オブジェクトは生物学的要素によって形成されており、飛行を伴う移動能力、周囲状況の認知能力、並びに一定以上の命令遂行能力が実験によって確認可能な他、身体部の大部分の破損、並びに喪失に伴う機能と異常性の停止、群れとしての行動を好む様子が収容担当者より報告されています。

SCP-2667-JPは任意の人物が直接当オブジェクトに接触した際に異常性を発生させます。SCP-2667-JPに接触した人物は即時の一部記憶の健忘、並びにその記憶に関連する情動反応の消失を見せます。その際、消失する記憶、並びに情動反応の殆どは「悲哀」「苦痛」といった単語で示される、一般的に「負の感情」として知られるものに限定されています。ただし、異常性を発生させる記憶に関しては一定の法則性が存在することが実験記録より推測されています。なお、異常性が発生した場合、結果的にそれらは接触者の精神的意欲の向上、並びに鬱状況の改善等の症状を見せます。

実験記録2667-JP-A1

対象: エージェント・ローレンツ
付記: 初期収容時に直接接触。任意的なものではなく、自然発生的な実験であることは留意されるべきである。
実施方法: SCP-2667-JPに接触する。
結果: SCP-2667-JPの初期収容終了後、エージェント・ローレンツによって違和感を基にした自己申告が行われた。結果としてエージェント・ローレンツは以前の勤務サイト-18NNで発生した、職員4名の死亡を含む収容違反事例に関しての記憶を健忘しており、また、1ヵ月の観察によって事例より確認されていた軽度の鬱症状に関しての改善が確認された。

実験記録2667-JP-B

対象: D-9089
付記: 自らの妻を含む10名を殺害し、Dクラスとして雇用される。
実施方法: SCP-2667-JPに接触する。
結果: SCP-2667-JPは動作を見せることなく、D-9089に触れられた。しかし、記憶の健忘、並びに情動反応の消失は確認できなかった。

実験記録2667-JP-C

対象: D-10987
付記: 実験中、他のオブジェクトによって右腕を喪失。以来、異常存在に対しての強い恐怖心、並びにPTSD症状が確認されている。治療の一環として実験に動員する。
実施方法: SCP-2667-JPに接触する。
結果: SCP-2667-JPのうち、1個体がD-10987の胸部に飛び込むように飛行し接触。接触後、D-10987は右腕を喪失した事例、並びに異常存在に対しての記憶の健忘が確認された。右腕を喪失した理由に関しては「生まれつきである」と供述。異常存在に対しての恐怖心、並びにPTSD症状の改善が確認された。

実験記録2667-JP-F

対象: ヴァーミリアン研究員
付記: 自己申請によって実験に参加。財団参加以前に異常存在によって妻を殺害されており、鬱的症状は確認されないものの、重度の不眠症を患っている。
実施方法: SCP-2667-JPに接触する。
結果: 全てのSCP-2667-JPが接触を拒絶するように収容室内を飛行する。追跡、並びに説得を行った上で研究員は接触を試みるが、いずれの場合も失敗。当オブジェクトへの接触に失敗した初めての事例である。

実験記録2667-JP-G

対象: ヴァーミリアン研究員
付記: 担当者指示。強制的なオブジェクトへの接触を命令。
実施方法: 固定具によって拘束したSCP-2667-JPのうち1個体に接触する。
結果: SCP-2667-JPは拘束から逃れようとし、右翼部分を破損するが、研究員は問題なくオブジェクトへの接触を行った。接触後、ヴァーミリアン研究員は自身の妻に関する記憶を健忘し、不眠症の改善が確認された。右翼部を破損したSCP-2667-JPは拘束を解除すると、収容室のドアへと近づくようにして左翼を使用し跳ねるようにして移動。ドアに到着すると、左翼をドアに叩きつけるように動作させた。その29秒後、当個体は異常性を喪失した。

実験記録2667-JP-K

対象: ウェイブラー博士
付記: 自己申告によって実験に参加。多数のオブジェクトの収容違反事例に立ち会っており、当オブジェクトによる対象となり得る記憶が複数存在する場合においてのサンプルとして、評議会判断により実験が許可される。
実施方法: SCP-2667-JPに接触する。
結果: SCP-2667-JPが接触を拒絶するように収容室内を飛行する。追跡、並びに説得を行い博士は接触を試みるが、いずれの場合も失敗。当オブジェクトへの接触に失敗した2例目である。ヴァーミリアン研究員と同等に、SCP-2667-JPのうち1個体を破損可能性の低い空気圧式固定具によって拘束し、二次実験を実施する予定。

補遺1: 実験記録2667-JP-Gの後、ヴァーミリアン研究員への定期的なカウンセリングを実施していたサイモン・グラス博士より、研究員の著しい精神評価の変化が確認されたとの申告がありました。その事例を鑑み、今後予定されていたSCP-2667-JPに関連する実験の停止、並びにヴァーミリアン研究員への緊急インタビューが実施されることとなりました。以下はその書き起こしです。

回答者: ヴァーミリアン研究員

質問者: サイモン・グラス博士


<記録開始>

グラス: 何故、財団を辞めたいと?

ヴァーミリアン: 以前のような、意欲を感じられなくなったからです。

グラス: 意欲を感じられなくなった。それはいつごろからか説明は可能ですか?

ヴァーミリアン: わかりません。ただ、あの折り紙の鶴に触った時、そしてその後、1週間くらいは不眠症も改善されて非常に多福感に包まれていました。しかし、業務の最中、胸に穴が空いたように虚脱感を感じる事が多くなりました。

グラス: 虚脱感ですね。具体的にはどのような?

ヴァーミリアン: お腹が常に空いているような、常に喉が渇いているような、息を吸って吐く事が難しく感じるような、突然、怒り出したくなるような、言い表す事の難しい、そのような感覚です。

グラス: 言語的な説明ありがとうございます。鬱症状の患者の証言に非常に類似していますが、直接的な、身体に対する症状等は確認できますか?

ヴァーミリアン: いいえ。 [10秒の沈黙。自らの身体を眺める。] いいえ。体は至って正常だと思います。業務そのものも、恐らく、命令さえされれば実行する事はできると思います。ただ、その命令を遂行したとして、望むような結果を出せるとは到底思えません。

グラス: 身体的異常はなく、精神的な異常が大きいと。以前処方した、抗不安剤は服用されましたか?

ヴァーミリアン: もちろん、症状が出た際に服用しました。それでも、症状が軽減されるようなことはありませんでした。

グラス: 薬は服用されたが、効果は確認できなかったという事ですね。では—

ヴァーミリアン: 教えて欲しいことが、あるんです。

グラス: [5秒間の沈黙] 私に答えられることでしたら、貴方にお伝えすることはできますよ。

ヴァーミリアン: 私が触れたオブジェクトの特徴は、事前に説明を受けていたために知っています。それでは私は一体、どんな記憶を忘れたいと、あれに触れたのでしょうか?

グラス: 少々お待ちください。 [SCP-2667-JP担当者に報告] 貴方の質問は、開示要求として処理されることとなりました。実験報告書のコピーを職員が送ってくださるそうです。

ヴァーミリアン: ありがとうございます。

SCP-2667-JP実験報告書のコピーを持ったサイト職員が入室。資料をヴァーミリアン研究員へと手渡す。研究員はコピーを読んでいる最中に「どうして」と呟き、泣き始める。インタビューの続行は不可能とグラス博士は判断し、記録官に終了の合図を送る。

<記録終了>


後書: ヴァーミリアン研究員に対し、記憶処理剤等の投与が実施されましたが、症状が改善されることはなかったため、本人の希望通り解雇処理が実施されました。以後、SCP-2667-JPへの実験はサイト担当者の許可によってのみ実施されます。

補遺2: SCP-2667-JPのうち1個体がウェイブラー博士のオフィスより、当人の報告によって発見されました。捕獲作戦が実施されましたが、作戦の実施中に収容されている全てのSCP-2667-JPが形態を1枚の折り紙の状態に変化させ、収容ロックの隙間などから収容違反しました。それら全てはウェイブラー博士のオフィスへと到着すると、形態を鶴の状態に復元させ、ウェイブラー博士に接触することなく、博士を取り囲むように飛行を開始しました。SCP-2667-JPの命令遂行能力を考慮し、サイト担当者による説得が実施された結果、2時間48分後、1個体を除いた全てのSCP-2667-JPが自己的に収容状態へと戻りました。以降、ウェイブラー博士のオフィスには特例的に、追跡、並びに自爆機能付きタグを装備したSCP-2667-JPのうち1個体が常備されます。以下は事案後、当オブジェクトに関しての発言が含まれる、ウェイブラー博士への定期カウンセリングの書き起こしです。

回答者: ウェイブラー博士

質問者: サイモン・グラス博士


<記録開始>

グラス: 調子はいかがですか、ウェイブラー。

ウェイブラー: 特に変化はないよ、グラス。ああでも、少しだけ、忙しくなったかな。

グラス: 忙しく? 具体的には?

ウェイブラー: あの折り紙の鶴だよ。今朝も部屋のティッシュを全部引っこ抜いて、私が起きた頃にはそこら中がティッシュまみれになっていた。一昨日にも同じことをして怒ったんだが、アレには本当に命令遂行能力があるのかい?

グラス: ええ。少なくとも、収容担当者の実験命令等には一部を除いて従事しています。

ウェイブラー: それならどうも私は問題児を送り付けられたようだよ、グラス。私の命令にアレは従った事がない。ああ聞いてくれ、この前なんかは机の上のコーヒーを零しそうになってな。アレは元は折り紙だろう? もし濡れて異常性を喪失したなんてことになったら—

グラス: ウェイブラー。

ウェイブラー: なんだ?

グラス: そんな事を言っていますが、貴方、にやけてますよ。

ウェイブラー: そんなはずは [5秒間の沈黙] あれは手のかかる— ペット— ああいや、そうではなくて。例えるなら—

グラス: もしかして、息子や娘のような?

ウェイブラー: [沈黙]

グラス: ウェイブラー?

ウェイブラー: そう、だな。そうかもしれない。それなら— それなら、私はその記憶を全て忘れて楽になりたかった、わけではなく。ただ、もういなくなってしまった、隣にいたはずの誰かを求めていただけなのかも、しれないな。

グラス: 理解しました。ウェイブラー、顔色が悪い、今日はこれで終わりにしましょう。また次のカウンセリングの時に、話を聞かせてください。

<記録終了>


後書: 以後、ウェイブラー博士の精神状況は改善しつつあります。結果、SCP-2667-JPは直接接触だけでなく、間接的接触によっても精神の改善効果が得られる可能性がある事が指摘されています。

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