SCP-2670-JP
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作成者: エドワード・アッカーマン研究員

ステータス: スロット未登録

アイテム番号: 未定

収容クラス: Euclid(暫定)

特別収容プロトコル: 未定

説明: 当該オブジェクトはサイト-Ψです。サイト-Ψにおいて複数の異常現象の発生が確認されていますが、エドワード・アッカーマン研究員を除くサイト-Ψ全職員は異常性を認識していません。


補遺1: 映像記録

映像記録


<ログ開始>

カメラが起動し、映像が記録され始める。

アッカーマンがカメラを覗き込んでいる。暫くして、アッカーマンは少しカメラから離れる。

アッカーマン: あー、あー。…よし。記録は問題ねえみたいだな。では、えー、始めよう。俺はエドワード・アッカーマン、サイト-Ψに勤務してる財団研究員だ。俺は今、ここで起きてる「何か」を調査している。

カメラが持ち上げられ、サイト-Ψ内の様子を映す。清潔に保たれた施設内を、数名の研究員が往来している。

アッカーマン: まあ、一見するとごく普通のサイトだ。が、よく見てみると…。

カメラが往来する研究員の1人にズームする。当該研究員はサイトの壁に語りかけており、時折大きく笑う。当該研究員が、カメラの死角に出ていく。

アッカーマン: …こんな感じだな。違和感に気づいたのはここ最近だ — サイト内の人間の行動が狂ってるという事実、って言うべきか?まあとにかく、俺はこの異常に気づき始めたわけだ。

アッカーマンが深呼吸する。

アッカーマン: 数年間勤めてきたこのサイトで何が進行中なのかはわからねえ。だが、俺は財団研究員として、この異常現象の調査を進めようと思う。その為にこのカメラを作った。記録した映像をAIが自動で文書に書き起こしてくれる優れものだ。まあとにかく、これから何かがある度にこのカメラで…。

背後から、ジョン・リックウッド研究員の声がする。その声に反応してか、アッカーマンがカメラと共に振り返る。やや離れた位置に、リックウッドが立っている。

リックウッド: エディ、そろそろ飯にしないか。

アッカーマン: お…おう。わかった。今行くぜ!

カメラの電源が落とされる。

<ログ終了>

映像記録


<ログ開始>

カメラが起動し、映像が記録され始める。

サイト-Ψ内のカフェテリア内にて、リックウッドがサラダを食べている。その対面に、アッカーマンは座っている。

リックウッド: …ん?エディ、何だそれ?

アッカーマン: あー、いや。ただ、こういう何気ない日常っていうのを記録しておきてえんだよ。

リックウッド: ふうん。まあ良いが、お前もサラダ残してないで早く食べろよ。

アッカーマン: わあってるって、ジョン。

カメラを片手に、アッカーマンがサラダを食べ始める。リックウッドもサラダを口に運び、やがて完食する。リックウッドはトレーを持って立ち上がり、カメラの死角に出ていく。

[省略]

リックウッドが戻ってきて、再びアッカーマンの前に座る。そして、ポケットから取り出したスマートフォンの画面を操作しつつ、空いている手で何もないテーブルの上を探る。

アッカーマン: …ジョン?

リックウッド: ん?

アッカーマン: いや、その…何探してんのかな、って思って。

リックウッド: え?いや、眼鏡を…ん?

リックウッドが、スマートフォンの画面からテーブルへと視線を移す。

アッカーマン: いや、お前眼鏡なんてしてねえだろ、いつも。

リックウッド: …あ、そうだったな。何を言ってるんだ、私は?

リックウッドが笑う。

アッカーマンがカメラを手元に戻し、カメラの電源を落とす。

<ログ終了>

映像記録


<ログ開始>

カメラが起動し、映像が記録され始める。

アッカーマンが、サイト-Ψの廊下を歩いている。歩くスピードは速く、時折他の研究員とぶつかりそうになる。

アッカーマン: やっぱり、ここの人間はどっかがおかしい。ある程度は普通の人間を装ってるようだが、それでも時々変な行動をしだす。特に…。

アッカーマンの肩と女性研究員の肩がぶつかる。

アッカーマン: おっと、失礼。

女性研究員: いえいえ、問題ありません、問題ありません、問題ありません、問題ありません、問題ありません、問題ありません、問題ありません、問題ありません、問題ありません、問題ありません、問題ありません、問題ありません、問題ありません、問題…。

当該研究員は同じ言葉を繰り返しながら前進し、壁にぶつかるとそのまま壁の中へと入っていく。一連の現象を見届けた後、アッカーマンは再び歩きだす。

アッカーマン: …こんな感じで、宿舎から離れるほどに行動の異常さが増していく。研究区画の廊下でこれなんだから、きっと収容区画なんか行ったらとんでもないことになってるんだろう。…恐ろしくてまだ行けてねえが。

アッカーマンが深呼吸する。

アッカーマン: 兎に角、俺はまず外の連中と連絡を取んないといけねえ。だが、この異常に関連してんのかは知らねえが、個人用端末じゃ連絡が取れなかった。だから、研究区画端のオペレーション・ルームの端末を拝借する。上手くいきゃあ良いが。

<ログ終了>

映像記録


<ログ開始>

カメラが起動し、映像が記録され始める。

アッカーマンは、サイト-Ψの休憩室の隅でうずくまっている。アッカーマンが荒い息を立てている。しばらくして、アッカーマンが2回深呼吸する。

アッカーマン: …あー、その。と、取り敢えず、オペレーション・ルームには行けた。で、そこの端末で適当な別サイトにかけてみたら、まあ、繋がった。だが…だが、ありゃ何だ?あんなの会話じゃねえ、壁打ちしたボールがそのまんま返ってきてるだけだ。あんなの…。

アッカーマンが咳き込み、再び深呼吸する。

アッカーマン: …落ち着け。落ち着くんだ、エディ。…結局、どのサイトともまともなコミュニケーションは取れなかった。いやあ違う、どうせ端末が狂ってるだけだ。財団が全滅してるわけじゃ…やめろ、考えるな。そんなこた有り得ねえ。

アッカーマンが立ち上がる。

アッカーマン: …だが、正直それだけなら良かったんだ。さっきも言ったが、端末が狂ってるって考えりゃそれで納得できたんだ、あれだけだったら。

アッカーマンが休憩室から廊下に出る。廊下では男性研究員が歩いており、アッカーマンは当該研究員の肩を掴む。アッカーマンが息を吐いてから掴む手の力を強めると、当該研究員の肉体は膨張し、やがて破裂して内部から大量のポップコーンを吐き出す。再び、アッカーマンがしゃがみ込む。

アッカーマン: 何だよ、こりゃあ。

<ログ終了>

映像記録


<ログ開始>

カメラが起動し、映像が記録され始める。

アッカーマンは宿舎の自身の部屋にて、ベッドに横たわっている。部屋の床には17人の、部分的に肉体が破裂して内部から様々な物品が覗いている職員が転がっている。

アッカーマン: あれから、何度も試した。やっぱり、俺は同僚の身体をクソにできる。…本当に、人間でも何でもねえクソに。

アッカーマンがため息をつく。

アッカーマン: 相変わらずどの端末でも外部との連絡は取れねえし、取れてもコミュニケーションが成立しねえ。だが、それを確かめてる内に気づいた。

アッカーマンが立ち上がり、部屋の開けっ放しのドアの向こうの廊下を映す。部分的に肉体が融合した状態で歩いている2人組の女性研究員や、廊下の天井に立って歩いている男性研究員などが横切る。

アッカーマン: 同僚たちの異常さは、基本的には宿舎から離れるほど増していく。だが、その中心が宿舎じゃなくて、研究区画の時もある。つまり…中心が、移動してやがる。その中心に、恐らくこの異常の原因がある。

アッカーマンが再びベッドに横たわり、部屋の天井を映す。散乱したおもちゃやキャンディなどが天井に貼り付いている。

アッカーマン: この悪夢はいつ終わんだよ、なあ。

<ログ終了>

映像記録


<ログ開始>

カメラが起動し、映像が記録され始める。

サイト-Ψ内のカフェテリア内にて、リックウッドがサラダを食べている。その対面に、アッカーマンは座っている。

リックウッド: ん?おお、エディ。まだそれを…。

アッカーマン: ジョン。

リックウッド: 何だ?

アッカーマン: お前も、気づいてんのか?

リックウッドがサラダを食べる手を止める。

アッカーマン: 中心は、お前だった。お前から離れるほど同僚は…いや、世界は狂っていった。わかってんだろ、ジョン?

沈黙。

アッカーマン: ここは、お前の夢の中だ。

リックウッドは立ち上がり、テーブルに手を伸ばす。テーブルが瞬時に消失する。

リックウッド: …ここが夢だと、どうしてわかった?

アッカーマン: はっ、じゃあ逆に訊くぜ、ジョン。一体どうしたら、人間の破裂した中身がポップコーンっていうのが現実だと思えるんだ?

リックウッド: …そう、だな。そうだ。君の言う通りだ、ここは君の夢の中…。

アッカーマン: お前の、だ。

沈黙。

アッカーマン: 俺も、結局はあいつらと同じなんだろ?

リックウッド: …君は、狂ってなどいないだろう?

アッカーマン: もう一度言ってやろうか?中心は、お前だ。お前だったんだ。お前の周囲だけ正常で、他は狂ってた。それに、2人で夢を共有してるなんて希望的な仮説よりも、俺があのクソどもと同類っていう仮説のが現実的だ。違うか?

沈黙。

リックウッド: …エドワード・アッカーマン。彼は、サイト-990で発生したオブジェクトの収容違反による施設倒壊に巻き込まれ、死亡した。君は…私の作り出した幻影なんだろう。

アッカーマン: …ああ、そうかい。

アッカーマンがカメラを放り投げる。

アッカーマン: いつから気づいてた?ここが夢だって。

リックウッド: …君がカメラを持ち出した、次の日だ。研究区画から中庭越しに見えた収容区画で、人間が消えたり現れたりしていた。それで。

アッカーマン: …はっ、夢の主が幻影に先越されてちゃ世話ねえな、全く。

リックウッドが力無く笑う。

リックウッド: …正直な気持ちを話しても良いか?

アッカーマン: んだよ。

リックウッド: 私は、嬉しい。君とまた、こうして話すことができて。君とまた、こうして同じサイトで働くことができて。

沈黙。

アッカーマン: …はっ、勝手な言葉だな。

リックウッド: ああ、そうだろう。でも、君は夢の中でも、私が憧れていたような優秀な研究員だった。そんな君と、またこうして話すことができて、私は嬉しいんだ。

アッカーマン: 幻影だとしてもか?

リックウッド: ああ。君はエディ本人じゃない。でも、それでも君はエディなんだ。

沈黙。

リックウッド: …この夢は、きっともうすぐ終わる。

アッカーマン: どうして?

リックウッド: 全部思い出したんだ。私は最近、事故に遭ってね。それでしばらく昏睡状態になっていたのだと思う。だが、今私の意識が、少しずつ引っ張られているのを感じる。現実の、私の肉体へと。

沈黙。

アッカーマン: どんな、事故だったんだ?

リックウッド: ただの交通事故だ。そうさ、君みたいな英雄的なものじゃない。…だから、私はずっとここにいる訳にもいかない。まだ、私には沢山やるべきことがある。

アッカーマン: そうか。

アッカーマンが笑う。

アッカーマン: じゃあ、ここで俺は消えるんだな。俺という幻影は、ここで無くなるわけだ。万々歳ってやつだな。

沈黙。

リックウッド: …なあ、エディ。

アッカーマン: 何だよ。

リックウッド: 1つ、約束してくれ。

アッカーマン: はっ、良いぜ。どうせ消える身だ、約束だけしていなくなって…。

リックウッド: また、話そう。

沈黙。

リックウッド: また、きっと、夢の中で。仕事の話でも、他愛のない話でも。肩を並べて、一夜中話していよう。

沈黙。

アッカーマンが笑い、鼻をすする。

アッカーマン: …へっ、良いぜ。いくらでも駄弁ってやろうじゃねえか。なあ、親友。

リックウッド: …ああ。ありがとう、親友。

リックウッドが涙を拭う。

リックウッド: じゃあ、またな。

突然、アッカーマン以外の全てが急速に黒く変色していく。同時に、アッカーマンとカメラは足元の暗闇に落ちていく。カメラの映像と音声にノイズが走り、徐々にノイズが強くなっていく。アッカーマンが何かを叫んでいるが、ノイズに掻き消される。

<ログ終了>














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