アイテム番号: SCP-2676
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: サイト-25の観測室145-Bには倍率拡大装置が備え付けられています。SCP-2676と全ての寮の間には50mの境界が維持されなければいけません。実験にはレベル3の承認が必要です。SCP-2676が認可された実験外で活性化した場合、サイト-25ではアルファ対象者が両方とも発見されるまでレベル1完全封鎖措置が取られます。サイト管理官の裁量により、さらなる措置を講じることができます。睡眠や夢に関連する異常なオブジェクトは、SCP-2676と同じ場所には保管しないでください。
説明: SCP-2676は、アフリカン・ブラックウッド材で作られた1.5×0.8×0.5mのコーヒーテーブルです。頂部および側面にはクリスタルガラスの彫刻が埋め込まれています。テーブルの中央部分には、組成の不明な、ミニサイズの街並みが見えます。建造物の高さは0.5~3.2cmの間で様々であり、その殆どは荒廃している、もしくは大規模な破損を被っています。都市インフラはひび割れて崩壊し、多くの地域が瓦礫や倒壊物によって封鎖されています。テーブルの底面には“For S (Sのために)”という語句が彫られています ― “S”の後ろに続く引っ掻き傷は、本来の文章がもっと長かったことを示唆しています。
不活性状態の時、SCP-2676の都市内部には、識別可能な発生源を持たない多彩色の光が見えることがあります。これらの明かりは、活性化中のSCP-2676の内部では常に点っています。これ以外の点では明かりは明白なパターンを有しておらず、SCP-2676が不活性状態である時にテーブルを裏返すと光は消失します。テーブルを改めて立て直した場合、灰と思しき粒子が都市の上空に出現し、8分間にわたって降り注ぎます。
SCP-2676は、以下で“アルファ対象者”と指定される少なくとも2名の人物が、当該オブジェクトから45m以内でほぼ同時にステージ2睡眠期に入る事によって活性化します。アルファ対象者は安らかで夢を伴わない睡眠をとったと一貫して主張します。
活性化中、SCP-2676の都市内部には3体の実体 ― SCP-2676-A、およびSCP-2676-Bの2個体が姿を現します。SCP-2676-Bは2名の人間の姿を取って出現し、典型的には(実験の>75%)アルファ対象者と似通った容姿ですが、建物のサイズに合わせて縮小されています。SCP-2676-Aは独立したヒト型の霊的幻影であり、外見は各出現間で変化しません。
SCP-2676-AはSCP-2676-Bを追い回して捕獲しようと試み、捕まったSCP-2676-Bは消失します。両方の投影が捕獲され消失すると、アルファ対象者は即座に飛び起きます。そうでない場合、対象者が普通に目を覚ますことによって全ての実体は姿を消します。SCP-2676-Aは速度・浮遊能力・SCP-2676内の都市のレイアウトの知識において相手を上回っているため、2/3以上の実験において両方のSCP-2676-B個体を捕獲することに成功しました。加えてSCP-2676-Aは、未知の手法でSCP-2676の上空から放射され、身を隠していない時のSCP-2676-Bを追跡する多彩色のスポットライトによって支援されています。
覚醒したアルファ対象者は、以前の面識とは無関係に、お互いに対する強い感情的な結びつきを報告します。これらの感情は実験の83%で友情、44%で愛情として表れました。特筆すべきことに、恋愛感情の発展は対象者たちの性的指向に反するものではありません。実験において恋愛感情が報われなかったケースは、両対象者の指向が両立し得なかった場合のみです。
補遺: 事案記録2676-04
████/██/██の00:34、SCP-2676は承認された実験外で活性化状態に入りました。サイト-25は封鎖され、捜索態勢が敷かれました。SCP-2676内部の見通しは塵雲のために不明瞭でしたが、片方のSCP-2676-BはM████次席研究員であると特定されました ― もう一方の個体は識別できませんでした。封鎖は最終的に、M████次席研究員とS█████博士が、後者のオフィスで性的逢引を行った後に眠っているのが発見されたことを受けて解除されました。5時間後、SCP-2676は異常な活動を示し、都市内部の全ての雲と光が吹き払われました ― この後、アルファ対象者は起床しました。
補遺: インタビュー2676-27
マッコイ次席研究員へのインタビュー記録、████/██/██、09:28
完全なインタビューの音声記録はサイト-25の記録室までお問い合わせください。
それで、俺はあの完全に荒廃した町の中にいた。建物は全部、俺たちの周りに崩れ落ちてた、そうだな?
俺たち? ああ、そうだな。なぁ、アンタは、自分が夢の中に入った時、どうやって物事を把握するのかってのが分かるか? 俺はあそこに若い女と一緒にいた、一度も実際にあったことは無くて、顔をやっと思い出せる程度だ。でも俺は、彼女がジュ… いや、ソーヤー博士だろうと分かってた。彼女は怯えていたよ。俺は町を抜ける中で、ずっとあの人を腕にぶら下げていた。
走って、光から逃げようとした。そこら中に色付きの、そう、ありとあらゆる色とりどりのスポットライトが空から降り注いでた。そして俺は、もしあのライトが当たったら俺たちは捕まるってことが分かってた、ただ単純にそう理解してたんだ。何によって、或いは何が起こってそうなるのかは分からなかった、ただそれはマズいことだって知ってただけなんだ、分かるか? だから俺たちは建物の間を這い回って、物陰に留まりながら、俺たちを探して街を滑り回るライトのパターンを見つけようと目を先に向け続けていた。
それがしばらく続いたな。どのぐらい長くかは分からない。夢の中の時間ってやつさ、な? その間ずっと、何と言うのか、ソーヤー博士は俺に何か見せようとしているみたいに、自分のことを見てほしいと叫んだり泣いたりしてた。でも俺は安全を確保する方がずっと心配だったんだ。確かそんな事をあの人にも言ったと思う。
でも、最終的には、あの野郎が姿を見せた。担当の連中は“ -A ”ダッシュ エーとか呼んでたはずだな。デカい、宙に漂う死神みたいな化け物だ。奴には、アレだ、1ダースぐらいの眼があったな。口とかそういうのは抜きで、顔中が眼だけで覆われてやがって、あとは殆ど骨だけみたいな長くてひょろ長い腕だ。俺はただ、そうするよう催眠術にかけられたみたいに奴の顔を見つめるばかりで、身動きが取れなかった。仮に逃げられたとしても、ライトにすぐさま見つかっちまうし、奴は壁をすり抜けて動けるから何にもならなかったけどな。
とにかく、俺はもうお終いだと分かってたから、ダッシュAが俺たちに向かってくるのを見て目を固く閉じた。でも相変わらず俺には周りが見えてたんだ、分かるか? それで、ソーヤー博士が腕を上げて、何か「ダメです! 止まりなさい! あなたはそこに留まりなさい、私たちは家に帰るのです!」みたいなことを叫んだ。途端に、全く唐突に、あの人の手からデカい光のビームが発射されたんだよな。ダッシュAさえも驚いてるように見えたよ、奴は後ろを振り返って空を見つめた。
で、町は曇り空で、空一面が雲に覆われてる感じだったんだ。でも例の光のビーム、あれが雲の中に入り込んで掻き分けて、それを吹き散らしたんだよ。それで、その後ろの空模様は明るいクリスタル・ブルーだ、今まで見たどんな空より清々しく晴れ渡ってる感じのやつさ。そして俺たち3人はただそこに突っ立って空を見つめてた。
そうしたら、ダッシュAが話し始めた ― 言葉でじゃない。もっとこう、何だろうな、思考? いや、概念? とにかく奴は「ゴメンな、試しただけなんだ、お前たちはこういうのが好きだと思ってた、どうか戻ってくれ」みたいな事を言ってきたんだよ。そして、こう、俺が目を覚ます前のほんの一瞬だけ、悪い物事は何もかも消えちまった。怪物も、ライトも、建物も ― 俺と、ソーヤー博士と、あの明るく晴れ渡った空だけだった。
補遺: インタビュー2676-28
ソーヤー博士へのインタビュー記録、████/██/██、10:48
完全なインタビューの音声記録はサイト-25の記録室までお問い合わせください。
地面がゴツゴツして、瓦礫に覆われていたことを覚えています。鉄筋の混ざったコンクリートの大きな塊と、時には妙な角度にねじ曲がったガラスの欠片も。一番よく覚えているのは地面のことです、私はあの夢を通して、自分の手にばかり執着していましたから。私は一本の鍵を、或いは鍵束のようなものを持っていました。多分鍵のようなものだったと思うのですが、よく分かりません。重要なのは、私がそれを持っていて、それが世界で最も重要な何かであり、もし1秒でも目を離したら全ての希望とともに消えてしまうだろうと感じていたということなんです。
周辺風景ですか? 今言ったように、私は専ら地面に集中していました。大火災が起こった後のように、空気が灰と、おそらくは煤で満たされていたことは覚えています。建物を破壊したのが何であれ ― 私たちは確か建物の間を走り回っていたと思うのですが ― 何であれそれを破壊したのはつい最近のことだという感覚がありました。破壊の後の降下物が、空中から周りの至るところに降り注いでいましたからね。
ええ、マッコイ次席研究員もいました。いえ、彼が夢の中でどんな姿だったかは覚えていません。
大部分の出来事はぼんやりとしか覚えていません。はっきりと思い出せるのは鍵のことです。何かおかしな感じはありましたが、私はまだ広げた両の掌の上に鍵を持ち続けていました ― まるで飲み水を求めて手を差し出すような格好で。
もう一つ明瞭に詳細まで思い出せるのは例の実体、2676-Aのことです、多分。恐ろしい姿でした。私は夢の中で心の底からあれに恐怖していました。あれを見た瞬間、私は、鍵が奪い取られないようにと胸に固く手を押し付けました。あれは確かトミーと言葉を交わしていたと思います。少なくとも、私は彼らが話しているという印象を受けました。かつて私たちと同じような存在だった、というような事を言ったのは確かです。ええ、“お前たちの一人”と。誰を意味したかは判然としません。
その時も奇妙に思いましたし、こうして振り返ってもそうなのですが、私たちを常に追い回していたはずの怪物が、この時だけはただ会話するばかりでした。それに、トミーもそれを気に掛けてはいないようでした。
あぁ、夢の中の行いは、全く以て私が制御してやったことではありません。まるで読んだ台本に従って演技するように、いえ、むしろ劇が私に合わせて進行したと言うべきでしょうか。私は鍵を一層固く握りしめて、叫びました ― 「止まりなさい! 貴方が私たちを去らせないのならば、それが壊れゆくのを見届けなさい!」 ― どうしてこんな事を言ったのか分かりません。あまり意味のある言葉でもありませんしね? しかし、この言葉はとてもはっきりと覚えています。多分、夢の中で最も明瞭な部分でしょう。
そして、眩い光が走りました。何故、どこからそれが来たのかは判然としませんでしたが、スモッグと灰と雲は全て吹き払われました。空は実際のところ、とても素晴らしい光景でした。自分がトミーを見上げたこと、彼が実体に目線を向けていたことは覚えています。今思うととても奇妙な生物でした、黒いローブに骸骨的な特徴に、色々とあって非常に幽霊的と言うべきでしょうか。あの時、私が目を向けると、あれは顔を空に向けて腕を広げていました。宗教的エクスタシーの真っ只中にいる人々が取るような姿勢です ― 描写としてドラマチック過ぎなければ良いのですが。
そして、私が目を覚ます寸前、夢で覚えている一番最後の瞬間に、私はあれの顔を涙が流れているのを見ました。私には何故なのか憶測することしかできません。
補遺: 文書2676-13
サイト-25心理学者、アイダ・ディマウロ博士のデスクより。
私は、事案2676-04に関するサイト管理官の決定を通知するため、次席研究員トーマス・マッコイ、並びにジュリアン・ソーヤー博士の当該事案に続く陳述を以下に提出するものであります。
次席研究員トーマス・マッコイの陳述:
なぁ、もし良けりゃ、こいつはソーヤー博士の目に触れないように取り計 ― あぁダメだ、こいつは公式調査になるんだな? 気付くべきだったよ。こう、俺たちは慎重にやってたはずだったんだ、だがあの2676が…
いや、オーケイ、正直に話す。責めを負うべきは俺一人だよ。俺はこのクソみてぇな出世道を手っ取り早く登りたかったんだ、こんな言葉で悪いが。俺は今の地位に延々と留まって、しょうもない仕事ばかりさせられてる。これからもずっとそうあり続ける。俺はもうそういうのは疲れたのさ。
俺が求めていたのは昇進だけだ、それとも、もしかしたら只の給料アップか? 誰も傷付けたくはなかった。もしあの人が既婚者だって知ってたら、あんな真似はしなかっただろう。多分異動願かなんかを出したはずだ。でも俺は機会に目を付けた。あの人は色んな職員を一人の女として弄んでて、そこに繊細な面は見せなかったからな。こう、俺は女に惹かれるタイプの男ですらないんだが、こう思った ― “やってみろ、たとえ最悪の場合でも何が起こるっていうんだ? 訊きもしないのは馬鹿がやることだ、あの人の誘いを額面通りに受け取ってやろうじゃないか”。
だから、こうして後知恵で考えると、どんな感じだったかあんたにもはっきりと分かるはずだ。いや、今のは取り消す。あんたが理解してないことを望みたい。今後も決して理解してもらいたくない。
なぁ、俺は本当に、本当に済まなかったと思う。誰も傷付けるつもりなんか無かったんだ。もし知ってたら100%あんなことしなかった。俺はただ… 何だ、あの人を俺が憎んでるとか、そういう事をあの人には思ってほしくないんだよ、言ってることが分かるか? つまりだな、あの人はすごく素敵な人で、俺はあの人が考えてるような、或いはそうあってほしいと求めているような人間像には実のところ当てはまらない。でもあの人は良い資質に恵まれてる、そうだろ? あの人は時々自分のことを卑下してる、俺はそういう事をしてもらいたくない。あの人にそんなのは似合わない。俺は心底あの人のことを気の毒に感じるんだよ。あの人はただ、もっと注目を集めたいだけなんだ。それが俺の見当はずれの考えじゃないと思いたい。
ジュリアン・ソーヤー博士の陳述:
私は馬鹿じゃありません、彼が私を利用しているのは分かっていました。裏の動機が無ければ、若い男が私のような年頃の女と寝るわけがない。それが道理です。肢体の曲線は単なるシワになり、光ることも輝くことも無く、火花は消え去っているのですから。
心から正直に話しますが、私は実際、彼のことを気にかけていましたよ。馬鹿な事をしていると思いました、しかし私にはそれが止められなかった。彼と一緒にいる事によって落ち着きを感じ、守られていることが。彼がいれば私の悩みなどは全て消え去るように感じたのです。…こうして口に出すと酷く陳腐な響きですね?
そして今は… ええ、私はSCP-2676が齎す効果を知っています、おそらくそれが今私が感じているものの源なのでしょう。辛いです ― この気持ちが本当の意味で私のものでは無いというのは知っているのに、それでもまだ私は彼を手放したくない。言い表すことさえできませんよ、私がどれほど困惑しているか、そして…そして、正直なところ、お互いの指向が双方向ではない稀な事例の一人であるということにどれほど苛立っているか。その解釈で正しいのでしょう?
ああ。いえ、勿論違います。
何故あんなことをしたか? 明白な事ではありませんか? 私の家庭ではかなり長い間、色々な物事が大丈夫ではありませんでした。私は妻を嫉妬させたかったんですよ。
マッコイ次席研究員は、配属を再割り当てされる。ソーヤー博士には、彼女の行為に対する正式な戒告が与えられる。収容プロトコルは更新しなければならないだろう。 -サイト-25管理官、ウト博士
ページリビジョン: 4, 最終更新: 29 Aug 2021 16:30