アイテム番号: SCP-2680
オブジェクトクラス: Keter Euclid
収容プロトコル: 感染者はサイト-75の拘禁房48に監禁して常に警備下に置き、1日あたり3回、糧食を差込口から与えます。警備員は感染者との肉体的接触を回避するためのあらゆる合理的な試みを行うべきであり、脱走を試みた感染者は射殺して焼却処分します。SCP-2680またはSCP-2680-1と接触する可能性がある全ての職員は、ワックスコットン製の衣類と呼吸マスクを着用のうえ、全身を包む一枚布のレインコートで身体を覆ってください。SCP-2680-1の流出物もしくは起爆によって汚染された衣服は速やかに焼却されねばなりません。
感染者には遠距離武器を用いて対処し、遺体は火葬します ― 接近戦は厳しく禁じられており、感染者との肉体的接触を伴う対処法は成されるべきでありません。SCP-2680の症状を示す人物およびSCP-2680感染が人口の大部分に拡散しているコミュニティの発見と根絶は、本収容における重要な要素であるため、この任務を割り当てられている調査班I-3(“ペスト医師団”)には.56口径コルト・モデル1885リボルバー拳銃、1インチ口径モデル1861ガトリングガン、ゼリグナイトおよびダイナマイト爆薬をはじめとする攻撃用装備品が供給されています。
コミュニティの1/4以上がSCP-2680に感染していた場合、当該区域の人口集団全体を隔離します。コミュニティは爆薬を用いて破壊し、全ての生存者は安楽死させた後に上述の手段で処分してください。
注記 1900/07/16:
調査班K-3 (“絶対禁酒主義者”)は、合衆国全域の商用アルコール飲料の全てに防御措置を施すため、化合物ジェンナーを1ブッシェルあたり茶匙1杯の濃度で混入させる任務を開始しました ― この濃度はSCP-2680が頻繁に再発する領域における化合物ジェンナーの割合を倍増させたものです。商用アルコールを消費しないような合衆国の地域への浸透や、アルコール摂取を控える/禁酒運動をサポートしている故に化合物ジェンナーを摂取する可能性が無い各地の合衆国住民に対しては、種痘に1瓶あたり3滴の割合で混ぜた後、大々的な予防接種キャンペーンを通じて拡散させます。一連の過程は調査班K-4(“ウィッチドクターズ”)が監督します。
SCP-2680の治療における化合物ジェンナーの有効性は3ヶ月ごとに再評価します。有効性が減じてきた場合は、新たなは生物が文書2680-1に概説されるプロトコルに従って開発・拡散されます。
SCP-2680にGoI #001 (“シカゴ・スピリット”)が関与している可能性については調査が進行中です。
注記 1906/09/08
合衆国の居住者および市民へ化合物ジェンナーが行き渡ったことにより、合衆国への配布の更なる努力は不要と見做されるレベルに達しました。監督司令部は化合物ジェンナーの一次生産停止と、SCP-2680収容のリソースおよび努力を残る感染者の追跡および根絶に向ける旨を宣言しました。感染者根絶は調査班I-3によって監督されます。
説明: SCP-2680は天然痘に似た異常なウィルス性疾患であり、変則的な膿疱の形成、炎症を伴う発疹、倦怠感、譫妄などの類似する症状を示します。しかし、SCP-2680には3種類の大きな違いがあります。第一に、SCP-2680には既知の治療法が存在せず、接種の試みは全て異常疾患の発現までの期間を短縮させるだけに終わっています。第二に、膿疱は感染者の四肢と胴体だけでなく、肝臓や腸などの体内空洞にも形成されます。そして第三に、膿疱を膨潤させている緑色の混合物はただの膿ではなく、他の状況下であれば人間が消費するのに適した品質のアルコールを含んでいます。この流体との接触は、SCP-2680がヒトからヒトへ感染する主要な原因です。感染源は空気中にも広がると仮定されていますが、汚染が確認された感染者のうち問題の症状を示すのは僅かに1/3であり、残る2/3はごく一般的な疱瘡に罹患します。
SCP-2680の膿疱はゆっくり内容物を漏れ出させるのではなく、継続的に流体で膨らみ続けた後、破裂して最大3mまでの近接領域に流体を散布します。この過程を促進するため、感染者は患部を破裂するまで衝動的に噛み続け、結果として得られる内容物を報酬の一形態として消費する様子が観察されています。自分の身体を食べるのを制止する意思を欠いているにも拘らず、感染者はこれらを自分の意思で行っていると主張し、一貫してこの行動は疾患に対処するための療法の一種であると主張します。
SCP-2680感染の致死率は90%以上に上りますが、一般的な天然痘の感染者が通常10-16日で死に至るのに対し、SCP-2680感染者は少なくとも30-50日が経過するまで死ぬことはありません。感染者は、体内・体外全ての膿疱が急速かつ即座に弾けることによって引き起こされる、身体の爆発的な破裂によって死に至ります。
最初の接触
この文書はユースタス・バッジ(調査班I-3隊長)が、SCP-2680の存在を確認した2週間後に語った事後証言からの転写です。
勿論、噂は聞いていました。接種の効果が無く、全身の開口部からビールを分泌させ、感染者を膨らませ過ぎた風船のように真っ二つに裂いてしまう天然痘。我々は財団です、何年もその手の噂は耳にしてきました。人間をグールに変えてしまう腺ペストとか、人間を水に変えて内側から溶かしてしまうコレラとか。勿論我々はそれを調査しましたし、そのうち本当に異常なモノが見つかったのは20に1つぐらいです。ですから今回も、コレラや腺ペストの件と同じように、田舎の農民たちが怯えて騒ぎ立てているだけだと思っていました。
アノマリー対処の準備は勿論しましたよ。接種を受けて、呼吸マスクを付けて、一枚布のレインコート ― あの身を守るのと同じぐらい息も詰まりそうな分厚いコートを着て、寸分の隙もなく装備を整えました。そうして例の悍ましい疫病に出会ったのが7月の半ば、ミズーリ州の真ん中にある僻地の農村でした。我々が到着したのは正午近くで、皆疲れ果て、腹を空かせ、荷物の重みで前屈みになってブタみたいに汗まみれになっていました。日中だというのにあの村は荒れ果てて、今にも潰れそうなコテージや小屋の寄せ集めのようでした、しかも見える範囲に人影は全くありません。宿のドアを開けてもらえるまで15分も叩き続けましたよ。
我々が村に来た理由を説明するのに1時間、それを信用させるのにまた1時間が掛かりました。「町医者は何処に行ったんです?」「死んだよ。酒が詰まった風船みてぇに弾けた」、宿の主人はそう言いました。「死体はどうしました?」「当然燃やしたさ」。「他に病気の者は?」「女の子が1人、診療所に閉じ込めてある。親はもう逃げちまったんだ」。「他にもいるはずでしょう」「皆、家ごと燃やされたよ」。
我々は診療所に入りました ― 正確にはその残骸にです、焼き尽くされて骨組みしかなかったのでね。地下室の落とし扉には鍵が掛かっていたので、蹴破らなければなりませんでした。中には…骨がそこら中に散らばって、信じられないほど焦げていました。空気には腐敗と酒の臭いが充満していた。何列にも並んでいたベッドは木っ端微塵に吹き飛ばされていました。そこにまだ死体が ― 膨満して腐敗した、風船のように弾け飛んだ残骸が残っていました。恐ろしかった。女の子は…部屋の一番隅にいました、何日も世話を受けていなかった ― あいつらはあの子の疱瘡を化膿するがままにしていたんです! あの子は炎症と膿疱と発疹まみれでした。しかもそれを齧っていたんです! 膿が、アルコールが、血液が身体の外に流れ出して、あの子はそれを犬のように舐めていた。我々は ― 傷口に触れないよう用心しながら ― 女の子の傍によって話そうとしました。尋問をしようと…その間ずっと、あの子は自分の身体を食べ続けていましたよ。手を口元から引き離すと、数分もしないうちにあの惨めな生き物は肩の膿疱を齧り始めるんです。あの子は自分に何が起こったか説明する気が無い ― いえ、そもそも説明できないようでした。何がきっかけで感染したか、他の哀れな魂たちに何があったか、そして自分の家族が何処に行ったのかさえも。勿論、それが我々の最大の不安でした ― 彼女の家族は何処に行ったのか? 彼らは感染していたのか? ごく当たり前の天然痘でも野火のように感染は広まります、だとしたら今回は…
我々は、あの子が死ぬ前に3時間ほど、何でも良いから役立つ情報を絞り出せないかと努力していました。彼女は何か話そうとして、突然その体が膨れ上がりました。私は即座に、部下に屋外への退避命令を出しました。走りながら振り向いた時、私はあの子の眼に恐怖を見ました…直後に、ガトリング銃を1ダースも同時に発砲したような音がして、部屋が爆発しました。爆風から私たちが立ち直った時には、部屋の中に残っていたのは血と膿とアルコールの飛び散った物だけです。私たちは遺体の残骸をバッグに詰め、家を燃やして去りました。
2週間後、キャンベルが倒れました。あいつがなぜ感染してしまったのかは遂に特定できませんでしたが ― おそらくレインコートに裂け目があったんでしょう ― 何が起こったかは疑うべくもありませんでした。我々が念のための検疫下に置かれていたことを神に感謝しましたよ。キャンベルもまた別個に隔離されて、そしてその期間を通して、我々はあいつが自分の身体を食べる様子を観察することが出来ました。あいつが爆発したのはその2週間後です。
注記 1891/02/18: 現在、全ての天然痘患者のうち30%はSCP-2680に既に感染していると推定されています。これに鑑みて、監督司令部はこの事案に対する非常事態宣言を発令し、SCP-2680-1個体の安楽死を収容の主要手段と見做す旨を発表しました。
注記 1896/06/16: 最小限の鉛と水銀を組み合わせ、アルコールに混入させた[編集済]分泌物の実験は、被験者の99%においてSCP-2680感染の根絶および予防に効果的であることが証明されました。当該物質の生産を拡大する努力が進行中です。
アイテム番号: SCP-2680
オブジェクトクラス: Keter
収容プロトコル: 1リットルのSCP-2680が、ガラス瓶に封入された状態で現在サイト-75の生物学的収容室に収容されています。この試料は手で触れてはならず、防護服を着たDクラス職員が取り扱わなければいけません。サイト-75の全従業員はアルコール飲料の摂取を厳密に禁止されており、同様に如何なるアルコール飲料もサイト-75には持ち込みを許可されません。汚染の懸念があるため、違反への制裁は正式な懲戒から即時終了まで幅広く実施されます。SCP-2680の実験の提言はBハザード委員会からの評価を受けなければいけません。
全ての財団職員は、アルコール摂取を控え、アメリカ禁酒連盟などの地域的な禁酒運動に参加することを奨励されています。現在、これら禁酒運動の幾つかは財団フロント企業から控えめな資金提供を受けています。合衆国政府が公式にアルコールを違法とする見通しだという噂があるのは事実ですが、そのような決定は、特に世界大戦の結果を見れば到底ありそうもないと見做されており、依然としてこの問題は人口集団の(また従って同時に財団の)手に委ねられています。
現時点では、SCP-2680への対抗手段として、提言L109“神の憤怒”が選択されています。この目的を達成するため、監督司令部は合衆国全域の資産に対して、大量検疫・消毒・滅菌活動の実行に備えることを義務付けており、財団の兵装調査開発資産はプロトタイプの“燃料気化兵器”および空中散布型記憶処理薬の製造促進に指示されています。
注記 1919/01/16
アメリカ合衆国憲法修正第18条の議会通過および批准によって、合衆国における商用アルコールの製造・流通・販売が事実上禁止され、思いがけずSCP-2680の拡散に歯止めをかけたことによって、提言L109は中止になりました。他の任務を割り当てられていない全ての財団資産はSCP-2680の治療薬を開発するように指示されています。
収容試行は、アルコールを備蓄している犯罪組織などの保有下にあるSCP-2680の完全撲滅に主眼を置きます。商業アルコール生産企業・犯罪組織・密造団体・もぐり酒場などには、作用剤ソークの生産に必要とされる情報と機材、およびSCP-2680の影響を受けない醸造飲料を提供します。合衆国政府内の財団資産は、影響を受けていない飲料の普及を促進するため、連邦捜査局と各州の当局との間で行われる連絡・集中化・捜査の透明性向上を妨げるためのあらゆる手段を行使するように指示されています。
全ての対シカゴ・スピリット作戦は一時中止されており、合衆国における彼らの活動は完全に妨害されない状態となります。合衆国内の財団資産は、法の執行を避けるなど、全ての取り得る手段を以てシカゴ・スピリットを支援するために可能な限りの努力をしてください。ただし、財団資産/職員がシカゴ・スピリットの活動の結果として譲歩せざるを得ない状況になった、もしくは危害を加えられた場合を例外とします。調査班K-3の元メンバーとシカゴ・スピリット団員から成る合同班I-3(“ラム・ランナー”)が、異常なコミュニティ内での安全な醸造のために情報と機材(作用剤ソーク含む)の拡散を奨励し、(プロトコルI-17に則って)生き残りのSCP-2680-1個体を発見・安楽死させるために結成されました。
説明: SCP-2680はエチルアルコールの異常な一形態であり、摂取されることによって特殊な天然痘を引き起こします。これは変則的な膿疱の形成、炎症を伴う発疹、倦怠感、譫妄などの類似する症状を示しますが、3種類の大きな違いがあります。第一に、疾患の原因物質となるのは異常な天然痘ウィルス(Variolae)ではなく、アルコールの方です。第二に、天然痘とほぼ同一にも拘らず、当該疾患それ自体は致死的ではなく、別な健康問題を抱えていない感染者は生存し続けることができます。第三に、膿疱の組成物はSCP-2680、膿、そしてごく僅かな量の鉛と水銀です。
天然痘の症状に加え、SCP-2680の感染者(以下、SCP-2680-1とする)は、自分の皮膚をむしって食べたいという慢性的な衝動に駆られ始めます。これらの皮膚は3-6週間が経過するまで消化管の内部に蓄積された後、ガラス瓶の形状および質感をした塊となって感染者から排泄されます。この瓶型に硬化した塊を排泄すると、感染者はそれを自分の炎症部位に押し付け、膿疱をつまんで破裂させることによって、瓶の中身を流体で満たし始めます。この動作によって感染者のSCP-2680症状は緩やかに良好化します ― 実際にはこれで症状が完治する訳ではなく、24時間の期間を経てぶり返すという点には注意しなければいけません。SCP-2680-1個体はこの症状の異常性を認識することが可能ですが、症状からの短期間の解放、もしくは続行によっていずれ快癒するという妄想を理由に、衝動に抗う事を拒否します。また、一部の感染者は、瓶型の形成物に詰められたSCP-2680混合物が疾患を癒したという確信の下に、出来る限り多くの人々を問題の流体に曝露させようと考え始めます。
更新 1918/10/08: ミネソタ州███████の醸造所に勤務していたSCP-2680-1個体が、SCP-2680で工場を汚染し、近隣の町に疾患を広めるという事案が発生しました。合計で453体のSCP-2680-1個体が安楽死させられ、郡の大半が焼却による対策の対象となりました(公的には野火として説明)。合衆国の他の地域でこの事案が繰り返される可能性を最小化するための努力は進行中です。
更新 1919/06/15: シリカと組み合わせてアルコールに混入させた[編集済]実験は、被験者の99%においてSCP-2680感染の根絶および予防に効果的であることが証明されました。当該物質の生産を拡大する努力が進行中です。
シカゴ・スピリットの活動
この供述書の作成当時、財団とシカゴ・スピリットは、SCP-2680の拡散を止めるための協力関係を結んでいました。この証言は1926年に記録されたものであり、合衆国北西部での密売を監督していたシカゴ・スピリットの元・連絡役であるローランド・マクデルから得られたものです。
一つだけはっきりさせてもらおうじゃねぇか ― 俺は“普通の”醸造には関わらん。裏を取りたきゃ他の奴らにも聞けばいい。俺の仕事は、ここいらにいる全部の…“秘密の仲間”がウチの品を使ってることを確かにすることだからな。
酒を配って回るのは簡単だ。サツは俺たちを止めようとはしねぇし、もしそうするアホが何人かいても、そう、そいつらにはお前らとウチのボスが対処してくれる。俺たちがやるべきことは、ウチの息が掛かってるもぐり酒場でお前らの渡してきたもんが醸造に使われることを確実にすること、それだけだ。俺たちが酒と醸造設備を持ち込めば、連中はそれを引き取る。連中が醸造して売れば、市民が買ってく。正直なところ、順風満帆とまでは言えん商売だが…お前らには感謝してるさ。
俺たちがクソッたれのサツと組んで仕事を始めてるって噂が巡るのは早かった。俺たちが最初にお前らの企業と、あー、提携した頃は、ウチの仲間を説き伏せて乗り気にさせるだけでも数週間かかったぞ。いわんやもぐり酒場をや、だ。’22年までは、俺たちがやってた事と言えば、カナダから飲み物をどっさり仕入れて、それにお前らのブツを混ぜるだけだった、ごく静かなもんだ。あのブツは何て言ったっけな、作用剤ソック? あの作戦を実行に移したのは俺たちなんだからな。ラベルはドイツから、瓶はイギリスから…でもって、何だ、肝心なのはブランド名だったな。そう、ゴードンズ・ジン。神さんの御造りになった緑の大地で最高のドライ・ジンってやつだ。まぁ勿論、今時のクソッたれUSAで真正のゴードンズが見つかるわけがねぇ。少なくとも…普通の連中からは。だが俺たちは普通じゃない。俺たちはトラック一杯にゴードンズを仕入れて、お前らのソックを混ぜ込んで、出荷した。お前ら以外にゴードンズの連中と渡りを付けられた奴はいなかったから、例のジュースを混ぜて商売するか、ゴードンズ抜きでやるかの二択だったわけさ。勿論、ゴードンズを呑んでる連中だけが、あの酒一杯の湿疹まみれにならなくて済んでるのを見ると事情が分かってきた。一旦、そうだ、お前らの妙ちきりんなジュースが実はビール痘予防に効くと分かれば、俺たちもゴードンズのことを心配する必要は無くなった。こっちで心配してたのは全部、競争のことだったんでな。
俺たちゃ合衆国で一番デカい…半倫理的同盟…ってやつだが、唯一のもんじゃない。このラムケーキのおこぼれに預かろうって奴らは山ほどいるんだ、俺の言いたいことは分かるだろ。蛇野郎スネークとか、鉛頭どもリードヘッドとか、そういう魔法のあれこれを知ってる奴らだ。お前らは一体、普段あいつらにどう対処してるんだ? 連中がお前らを相手にするときはなかなか苦労してる様子じゃないか。実際、お前らとタッグを組むまで、あいつらは相当しつこくウチに絡んできてたんだ。タフに振る舞いやがって、ド派手な手品やライトショーで俺たちをビビらせて町から追い出そうとしやがる。だがな、魔法はただそれだけありゃ勝てるってもんでもないんだぜ。ポートランドを知ってるだろ、そうだ、ウチはあそこにミシシッピ川のこっち側で最大級の支部を構えてたのさ。去年の冬、俺たちはあそこで鉛頭のカチコミを喰らった。皆が犬の毛づくろいなんかしながら古き良き時間を過ごしてる最中に、いきなりドアが蝶番から吹っ飛ばされたんだ。そこに鉛頭どもが山ほど雪崩れ込んで ― 連中、自分の腕をハジキに改造してやがった。
あの晩、俺たちのうち12人が死んだ。鉛頭どもに何かお目当てがあったのか、単なる鉄砲玉が飛んできただけかは分からねぇ、とにかくそんな事は問題じゃなかった。連中は俺たちを圧倒する勢いだった。押し返すだけの戦力が足りなくてな…で、助けを求めざるを得なかった。まぁつまるところ、一気に巻き返したわけさ。ボスが直々に近くに来てたんだ。何処にクソ野郎どもが立て籠もってるかは分かってたから、あとはそこをノックするだけだった。全身全霊の力を込めてな。中に突入して、1階の奴らにウチの始末屋どもを引き合わせて、お偉い様のいらっしゃるドアまで一直線だよ。クソ野郎は床にインディアンみてぇな姿勢で座ってたんだが、ボスは酒樽をそいつの脳天に叩き付けた。どうやったか分からねぇんだが、ボスは樽の中身に手を加えて何かの強酸に変えてたんだ。その何だかがドッと溢れ出して、鉛頭はバタースティックみてぇに溶けちまった。ボスはそいつの溶け残りでバーに飾るトロフィーを作った。
バーのトロフィーとか、腕の代わりに銃が生えたならず者とか、人のケツ穴から沁みだしてくる魔法だとか。俺たちのゲームってのはそういう仕組みなんだよ。俺らは毎日、人をウサギか何かに変えようとする縄張り荒らしどもと顔を合わせてるんだ。そいつらに対処しながら、市民には公共サービスの提供もする。それでこそシカゴ・スピリットだ。
おい、俺たちがやって来たことを全部打ち明ける気はねぇぞ。俺はマヌケじゃねぇ ― お互いに、このクソみてぇな状況が終わったら、お前らがウチに対して強気に出るつもりなのは分かってる。多分、お前らから提供された銃の半分はドイツ地雷みてぇに爆発する仕組みになってんだろう。ただな、お前らが今度ウチのドアをノックしようってんなら、今の鉛頭どもの話を覚えとけ。スピリットは大西洋のこっち側じゃ一番デカい組織だぜ。お前らが何を分捕っていこうと、すぐさま取り返すことができるんだ。
アイテム番号: SCP-2680
オブジェクトクラス: Euclid Keter
特別収容プロトコル: 現在、SCP-2680の実例1本がサイト-75に収容されています。これは、標準的な生物学的収容室の内部にある、標準的な生物学的異常物収容キューブに格納されます。SCP-2680-1個体が1名、サイト-75の、人間の居住に合わせて改装された生物学的収容室に収容されます。当該個体には8時間ごとに、Dクラス用カプセル糧食が3つ、糧食移送機器を介して配送されます。
サイト-75から5km圏内では、如何なるアルコール飲料も消費・保管・持ち込みを許可されません。同様に、サイト-75から5km圏内では、如何なる種類のガラス瓶も利用を許可されません。ガラス瓶がサイト-75の進入禁止ゾーンで発見された場合は、バイオセーフティ・レベル4プロトコルに則って即座に職員が焼却します。職員が酩酊の症状を示しているのが発見された場合、その人物に対する物理的接触は成されるべきではなく、即座にサイト保安部に通報しなければいけません。
機動部隊カッパ-3 (“絶対禁酒主義者”)、ベータ-7(“狂遺伝子の帽子店”)、ラムダ-12(“媒介害獣除染隊”)が、野生のSCP-2680感染を調査し、抑制するために配備されています。SCP-2680のワクチンもしくは予防法を開発するための研究が進行中です。
全ての財団職員は、段ボール箱または6パックまとめ用リングから物理的に取り出されていないアルコール飲料全ての形態の容器入り飲料の消費を避けることを推奨されています。
説明: SCP-2680は正体不明のマクロウィルスの一種です。暫定的にレトロウィルス科(Retroviridae)に分類されているこのウィルスは、様々なタイプのアルコール飲料、とりわけバドライトおよびクアーズライト・ビールの瓶に似た形状を取ります。“瓶”と“キャップ”を構成しているのは、シリカと、ソーダ石灰ガラス・紙製ラベル・金属製ボトルキャップ王冠の特性を模倣する異常なケラチンです。瓶の内部の液体はアルコールの物理的特性(擬態しているブランド名に依存)を模倣していますが、実際には水・幹細胞・キシリトール・タンパク質・RNAから成る溶液です。
人間によって消費されると、この液体は、同量のアルコールを摂取した場合のそれと類似する酩酊作用を齎します。その後、液体は消費者の体内で一連の生理的変異を引き起こし、食道の溶解および拡大を触媒すると共に、余剰食道組織をSCP-2680溶液の生産に特化した腺へと変化させます。
感染者(SCP-2680-1と指定)は自傷性皮膚症・狼咬症・反芻症候群を発症します。3-6週間かけて、感染者は自分の指・手足・胴体の周りの皮膚を徐々に消費します。
6週間が過ぎた後、SCP-2680-1個体は消費した皮膚組織を、SCP-2680の“瓶”と“ラベル”と“キャップ”に変化した状態で吐き戻し、その後にSCP-2680の溶液を“瓶”の中に嘔吐します。SCP-2680-1個体は一回あたり最大6本のSCP-2680実例を生産することが可能です。最後の瓶が吐き戻された時点で、消費と逆流のサイクルは再開します ― 逆流の最終過程においてSCP-2680-1個体は前行性健忘の症状を示し、結果的に、自分で生産したSCP-2680実例を店売りされているごく普通のアルコール飲料だと思い込みます。
SCP-2680-1個体はこれらの行動を実行するうえで異常な強制的衝動に駆られている様子がなく、このような振舞いに及ばないように調整・訓練することが可能です。しかしながら、大部分の個体は治療に抵抗し、自らの病状を秘密にしておく傾向が見られます。
補遺2680-1:
██/██/██、████の████████にあるプロテスタント信者のコミュニティが完全にSCP-2680に侵された状態になっているのが発見されました。感染者の中には約█~██歳の子供たちがおり、彼らはコカコーラおよびファンタ・ブランドの炭酸飲料に擬態したSCP-2680を生産していました。この事態発覚に鑑みて、SCP-2680はKeterに分類されました。これに応じて機動部隊カッパ-3の調査プロトコルは更新され、ベータ-7とラムダ-12が補佐として割り当てられました。