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特殊対応プロトコル: SCP-000への対応方法は現在のところ確立されていません。現在、各国支部、並びにGoI、もしくはPoIとの協力体制による当オブジェクト、または影響下にあるアノマリーへの特殊対応プロトコル-オーバーラインが立案中です。
説明: SCP-000はIa型超新星SN2998sqにて発生した半永久的に継続する超新星爆発です。財団によってSCP-000が観測された時点で即時の対応は不可能、現時点でのヴェールを保存した状態での収容は困難であると判断されたため、当オブジェクトは副次的クラスTiamatに指定されました。
現時点でSCP-000の発生要因として複数の推測が立てられていますが、本質的な要因の判明には至っていません。最も有力視されているものとして、星間軌道演算システム内で致命的なエラーが発生した、或いは未知の異常性によって内部構造に変化が発生したとの推測が立てられています。なお、現時点でシステムへの進入の試みは、室内の現行装備では探索不可能な温度の変動、重力状況の変化に伴い不可能です。ただし、星間起動演算システムは他のアノマリーに関しても、システムそのものに影響を与えうる可能性があるため、現在、リスト化された複数のアノマリーに関する調査が進められています。
SCP-000は常に等級-30.76~-45.21の間で発光しており、発生する光量は太陽のものと同等、或いはそれより強いとされています。それは結果的に地球上に現存するあらゆる座標の「夜」の消失を招きました。また、当オブジェクトにより発せられる光は他のアノマリーにも影響を与えうる認識災害、ミーム、或いは行動強制のような異常を有している可能性があると示唆されています。それらは統括されSCP-2682-JPとして番号指定がなされました。影響を受けていると推測される全てのアノマリーに関する資料は、担当者に問い合わせください。また、影響を受けていると推測される人類は凡そ50000人程度と推定されています。それら全ての処分、対処は二次的なヴェールの崩壊、人員の不足によるヒューマンエラーを招くとして評議会と倫理委員会による話し合いが続けられています。以下はSCP-000の影響を受けたオブジェクトと、対応中パターンの抜粋です。全ての対応パターンに関する記述は担当者各位へ問い合わせてください。
報告者: 特殊機動部隊-レミングス ベータ
概要: SCP-000の影響を受けたと推測されるSCP-1000個体の発見報告数、並びに接触件数の増加が確認されている。また、接触に付随した現行人類に対する明確な攻撃行動の増加も認められる。攻撃行動の中には財団が未収用のアノマリーを利用した兵器や手段が用いられており、現在、財団の特殊機動部隊による鎮圧活動が実施されている。なお、特殊機動部隊においても、人類環境の保全に影響が出ない範囲内でのアーティファクトの使用が承認されている。
鎮圧活動が行われている地域はエリア-アムブロジアに指定され、指定人員を除いた職員以外の立ち入りは禁止されている。エリア外による戦闘は一般社会への被害を考慮し、可能な限り忌避され、アムブロジアへの誘導を最優先事項として設定されている。やむを得ない事情により、アムブロジアへの誘導が不可能と判断された場合、当該地域より範囲10km以内を臨時戦闘エリアに指定する。
戦闘フォーマットは能動的なSCP-1000の鎮圧、確保を目的としたパターンTと、受動的な一般社会の隔離を最優先としたパターンUに分別され、基本的にアムブロジア内ではパターンTを、臨時戦闘エリア内ではパターンUを適用するものとする。例外的に臨時戦闘エリア内での一般社会への被害拡大の可能性が低いと判断された場合、パターンTの適用が認められる場合も存在する。
確保したSCP-1000に対する尋問記録
<記録開始>
レミングス-アルファ: では質問に答えてください。どうして今になって精力的に活動を行うようになったのですか? このような戦闘を、あなた方は望むべくして行っているのでしょうか?
SCP-1000-R: ええ、理性という概念をご存じでしょうか。それは我々の社会形態にあっても、あなた方の社会形態においても、同様の意味を持つ言葉として用いられていると、我々は理解しています。
アルファ: 私たちの多くはその言葉を推論能力といった意味で用いています。もしくは、自らを縛り付けるための枷とも、抽象的には捉えることができるのでしょう。それがどうかなさいましたか?
SCP-1000-R: 我々の中にも、もちろんそのような理性があります。それはあなた方が為してきた、花畑を踏み荒らすような悍ましい出来事を、あなた方の面に立って思案することも可能であったということです。数世代前まではそれは信じられないことでした。そして、それを許すという選択肢を取ることもまた、当時からは考えられないような結論でありました。徐々に我々は、理性で我々を縛ることに成功し始めていたのです。しかしその時、夜が瞬いたのです。
アルファ: 私たちの知るところの、あの超新星爆発の観測ですね。それによって、あなた方の理性に何かしらの変化があったのだと、その文面からは推測できますが。
SCP-1000-R: そうですね。最初は、あなた方がコインを投げ損なったのかと考えました。今までにも何度か、そのような現象は観測してきましたので。ただそれによって私たちは [思案] 常に、白日の下に晒されざるを得ない状況となりました。その結果、何が起きたと思いますか? 我々が白日の下を歩くということの意味が、あなたに理解いただけますか?
アルファ: それは [沈黙]
SCP-1000-R: 一般社会の発見例が増えれば、あなた方は動く。あなた方が動けば、我々はあの息の詰まるような棺桶の中に押し込まれる。それは我々の求めるところではないのですから、もちろん抵抗します。そしてそのような暴力性を伴った思考と行動は、いつしか、かつて確かに存在していた理性を溶かし尽くしました。お分かりですか。我々はもう、自らの腕と脚を、自らの意思で留め置くことなどできないのです。
アルファ: あなたはこうして我々とのコミュニケーションを取ることができています。あなたから、今この地球上で起きていること、私たちの現状を、少なくともあなたと交流のある仲間らに説明していただくことは不可能でしょうか。そしてまた、こちらに協力していただくことはできないのでしょうか。お互いにとっての未曾有の危機。ここから、私たちでやり直しませんか?
SCP-1000-R: とても魅力的な提案です。私たちはその言葉を待っていました。
[SCP-1000-Rがアルファとの握手を求める。アルファが手を伸ばそうとしたとき、SCP-1000-Rは懐からいくつかの宝石によって装飾の施されたナイフを突き出す。ナイフが接触したアルファは黒い霧に覆われ、消失する。待機していた機動部隊によってSCP-1000-Rは取り押さえられる。]
SCP-1000-R: もう待てないのですよ、愚か者。
<記録終了>
パターン2:SCP-096の脱走
報告者:ブレイナー博士
概要: 不明な要因により、SCP-096は自らの顔部が認知された場合と同様の反応を示し、サイト-017からの収容違反が確認されました。SCP-096はおおよそ北北東に向けて進行を行う様子が報告されており、すでにサイト内職員の半数はそれらの阻止のためにSCP-096によって殺害、或いは無力化に準ずる負傷を受けており、対策本部の設立時点でオブジェクトの収容に関連するシステムを除いたサイト機能の放棄、並びにオートマチック・セキュアシステム「Mask」の起動が認められていました。しかしながら「Mask」は夜間を含む複数の要素から構成された認知離断機構であり、それらの効果的な作用は期待できないという結論が出ています。そのため、本部はSCP-096への早急な対応策を思案した結果、評議会はサイト-017より半径10kmの範囲をエリアИ-エイクロメジアに指定し、その設定を極限状況である旨を認定しました。
その結果として、認定に伴い、作戦コードИを元にした機動部隊オメガ-9("スクラブ")の派遣が実施されました。オメガ-9所属職員は、作戦コードИに従う限り"あらゆる手段による対応方法"を承認されています。作戦コードИは評議会によって決議された臨時作戦コードであり、それらは以下の主目的から構成されています。
・SCP-096のエイクロメジア内からの脱出の阻止。
・「Mask」の再起動までの戦闘行動の継続。
脱出の阻止方法として半永久的な戦闘行動の継続が挙げられます。SCP-096は顔を認識した対象の中でも特に自らに危害を与える対象を選択して攻撃を行う傾向があります。オメガ-9所属職員はその特性上、複数回の再出現を可能としており、上記の条件を満たすものとしての派遣が認められました。ただし、それらの一時的な全滅はSCP-096にとっての敵性反応の消失と見做され、即時のSCP-096の一般社会への解放を意味します。なお、戦闘行動は現在も継続中ですが、SCP-096の再収用、並びに破壊に準ずる無力化には至っていません。以下は直近の戦闘ログが表示されています。
<再生開始>
[SCP-096はオメガを標的とし、叫び声をあげながら岩陰に隠れた標的へと向かって突撃する。オメガはM-134ミニガンにて応戦を行うが、SCP-096は全弾が命中しているにもかかわらず、一切負傷する様子を見せることはない。オメガはミニガンでの射撃を停止し、サーメート式のテルミット焼夷弾を複数投擲する。SCP-096は燃焼する様子を見せるが、そのままオメガに覆いかぶさるように飛び掛かる]
オメガ: いつまでこんな地獄のような鬼ごっこが続くんだろうね!!
[押し倒された状態でオメガがジャケットの前面を開く。ジャケットの内側に配置されていた複数のディフェンシブ・グレネードの信管がジャケットに付随して引き抜かれる。オメガ、並びにSCP-096がグレネードの爆発に巻き込まれ、撮影カメラはアルファ視点のものに切り替わる。それと同タイミングにてアルファの隣にオメガが再出現する。SCP-096は爆発地点から200mほど離れた地点で起き上がる。]
オメガ: どう?
アルファ: ダメ。少し煤けた程度よ。
ベータ: ちょっとそれってノーダメってことじゃん。カスダメすら入ってないのかよ。
[SCP-096は苦悶の声を上げながらオメガ-9のメンバーを探索している。その額部に対して、アルファが改造されたバレットM82-アンチマテリアルライフルによる狙撃を試みる。発射された3発の弾は正確ににSCP-096の額部に直撃し、狙撃時の反動によりSCP-096は数m後ろへと後退し、数秒間、身体行動を停止する。行動を停止したSCP-096に続けざまにアルファが四肢、胸部、腹部を狙撃する。それらはすべて命中し、SCP-096は更に後退する。]
ベータ: ナイスショット。オーバーキル気味だけど。
アルファ: この程度でオーバーキルになるとしたら、あたしたちはこんなにロスタイムで戦ってないわよ。
[SCP-096が狙撃方向よりオメガ-9の位置を認知する。凡そ記録上の最大速度でSCP-096はオメガ-9に向けて再び走り出す。その間にもオメガ-9はSCP-096に対して複数の重火器による攻撃を連続して加えるが、減速する様子も見られず、それら全ては効果的ではない。]
オメガ: チーターよりチートだな。ゲームでは何度もリスポーンするより、一度も死なない方が強いって分かってるヤツ。
アルファ: 暴力的ね。ならこちらにだって手段はある。C4の準備は?
ベータ: 終わってる。あいつが位置まで来たら押せるよ。
アルファ: OK。[10秒の沈黙] 今よ。
[ベータが起爆ボタンを押す。するとSCP-096の直下、並びに付近のサイト-017付属施設の下部が爆発する。爆発によって生じた穴にSCP-096は落下し、尚且つその上から施設の破片が落下する形で穴が塞がれる。]
オメガ: これ、怒られない?
ベータ: どんな手段を使ってもいいって言われたからね。少しは時間稼ぎになればいいけど。
アルファ: そしたら次の作戦の
[ベータの足元の地面からSCP-096が飛び出してくる。その時点でSCP-096の右腕がベータの心臓部を貫いており、ベータの死亡が確認される。即時、オメガがデザートイーグル式ハンドガンをSCP-096に発砲し、命中するものの、効果的な損傷は見られない。]
オメガ: ベータのリスポーン時間は?!
アルファ: 自殺じゃないからペナ入って1分!!
オメガ: ああクソ、マジで今まで会った中で最悪の相手だ!!
[オメガが液体窒素爆弾をSCP-096に投げつける。爆発と同時にオメガの左腕の一部、並びにSCP-096の全身が凍結する。オメガの左腕はプファイファー式ハンドガンを保持しており、銃口はSCP-096の胸部に向けられている。]
オメガ: 俺と少し遊んでくれよ。
[ハンドガンによる十数発の絶え間ない発砲がSCP-096の胸部へと命中する。SCP-096は一切の反応を示すことがない。]
オメガ: 弾切れか、少しくらいは効きやがれ
[SCP-096の口部が開かれる。同時に不明な触手が口部より飛び出し、オメガの心臓部を貫く。オメガの死亡が確認される。SCP-096の脚部の氷が破壊され、触手を口部から振り回しながらSCP-096がアルファに向かって突進する。アルファは複数の重火器で応戦するが、SCP-096への損傷は見られない。]
アルファ: 全滅だけはっ、避け
[SCP-096の触手がアルファの左腕を切り落とす。アルファの左腕は保持していたアンチマテリアルライフルと共に真上へと切断され、バランスを崩したアルファが倒れ込むと同時、馬乗りになるようにしてSCP-096がアルファの右腕、両足を押さえつける。口部の触手がアルファの胸部付近へと突き立てられる。]
アルファ: アタシ達はっ!!
[SCP-096の触手が振り上げられる。]
アルファ: 殺人モンスターにだけは、負けられないの!!
[切断されたアルファの左腕が、落下し、SCP-096の眼前で保持していたアンチマテリアルライフルを発砲する。SCP-096とアルファの左腕はその衝撃で真後ろに吹き飛ばされる。自由になったアルファの後ろにベータが再出現する。]
ベータ: 無茶するね、アルファ。
アルファ: 負けられない、このマッチだけは。絶対に。
<記録終了>
パターン3: Y-909化合物の不足
報告者: エヴァレット博士
概要: SCP-000による「夜」の消失への対処として実施されたアンニュイ・プロトコルに伴い、一時的なY-909化合物の不足が認められました。そのため、アザック・プロトコルの、実施間隔の短縮、並びに手順の簡略化が提案され、それらは評議会承認の元で実行に移されました。
しかしながら、当該プロトコルによって取得可能なY-909化合物の生成率は正規の方法を以てしても従来の半分以下に減少し、また、それらの化合物から生成された記憶処理剤は機密事項を含む不特定多数の記憶の想起を引き起こすことが判明しました。これは当プロトコルによって生成されたY-909化合物、並びに関連するアノマリーがSCP-000によって性質が変化した結果だと推測され、現時点で化合物を除く安定した記憶処理剤の生成方法は確立されていないために、凡そ3年程度で財団の保有している記憶処理剤の在庫が枯渇することを意味しています。
以下はY-909化合物の加工、並びに記憶処理剤の生成を行っているサイト-151にて、それらの指揮を実施しているエヴァレット博士による報告の書きおこしとなります。
SCP-000の発生以来、最初のプロトコルは簡略化された手順によって速やかに実施されました。しかし、その過程によって発生したY-909の回収作業を行う際、一人の職員が急ぎ帰還し、私にこう告げたことを鮮明に覚えています。「異常な事態が起きている」と。
私はモニターを確認しました。「かの者」は変わらずにそこで沈黙し続けていましたが、そこから流れ出る我々がY-909と呼称する揺らぎ— 即ちエーテルの量が、明らかに少ない。回収に準じている他の職員も、動揺している様子でした。私は909の全部分の回収を終えた後、速やかにエレミタ内へ帰還するように彼らに命令しました。確かにプロトコルは簡略されたとは言え、あれだけ早く事が済んだのは、金輪際ないことでしょう。
そして回収された909を加工場で見た時、さらに私は違和を感じました。本来であれば、人間の精液のような強い粘性を保っているはずのそれが、私が手に取った瞬間、さらさらと砂のように指の合間を通り抜けていったのです。ただ、そのような明らかな異常にも関わらず、私たちはそれを使わざるを得なかった。評議会へ判断を問いましたが、今までと変わらず、記憶処理剤を製造し続けろと彼らは言いました。同様の手順で化合物に加工したY-909は、従来のものと変わらないように見えました。ただ、圧倒的に数が足りない。またプロトコルは実施されました。今度はたくさんの餌を連れて。そうして加工したそれを、私たちは各サイトへと出荷しました。
結果はすぐに出ました。それを服用した職員が、次々に異常行動を繰り返すようになったとの報告を受けました。特にSCP-2682-JP暴露者への投与は致命的であり、一度完全に封じ込めた認識災害のキャリアに指定される者も現れたほどです。だからこそ、私たちは再び、「かの者」の元へと向かいました。そして、最大の異常に直面したのです。
「かの者」は沈黙していました。同時に、「かの者」が口を開くことはもう二度とありませんでした。それは、私たちの終わりを、光の届く事のない闇から覗き返しているように思えました。それは、笑っているようにも見えました。
プロトコルは続行されています。正しく、正確に、周期的に実施されています。ただ、もう私たちには神の気まぐれにあやかることはできないようです。あれはまだ笑って、私たちを見つめています。
SCP-073は事象の発生から3日後、専属の研究員を通して評議会への直接の談判を申し出ました。ただし、評議会とオブジェクトとの接触は忌避されるべきと判断され、上級議員によりヒアリングを実施し、それらの情報を伝達するという形式での対談が双方の合意により決定しました。以下はその対談記録の書き起こしとなります。
会話ログ000-073
インタビュー対象: SCP-073
インタビュアー: ケロス上級研究員
<記録開始>
ケロス上級研究員: あなたから積極的にコミュニケーションを取りたいという要望が出るのは珍しいですね、SCP-073。
SCP-073: 一つご確認したいことがございまして。私が尋ねたいことは恐らく、評議会、或いはそれに類する方のみがご存知であるかと。
ケロス上級研究員: わざわざそのような前置きをした上での確認とのことです。[思案] つまり、あの星に関連することですね?
SCP-073: ええ。あの星の放つ光は [思案] 非常に、私たちにとって都合が悪い、と言いますか。少なくとも私にとってはあまりにも、心地よいものではないのです。それはきっと、あなた方にとっても。
ケロス上級研究員: それには同意します。あの光は貴方にも影響を与えているのですか?
SCP-073: そうですね。非常にすわりの悪さを私は感じています。あの光によく似たものを、私は知識として知っています。それはいついかなる場合においてもタルタロスの蓋が開いた時、黄昏が瞬いたあの時でした。ただ、今回は少なくともあなた方もそういったものに対応している様子は見られず、私にもそういった変化を認知できていない以上、それは無いと判断しています。それとも、セキュリティクリアランスの問題で開示ができないということなのでしょうか?
ケロス上級研究員: [思案] 恐らくあなたの発言の半分をも理解することはできていませんが、そのような悍ましい名前のそれを私が見たことはありませんね。であるならば、それは無いに等しいか、私より上の人間が対処するべきでしょう。では、あの光は過去にも出現したことがあるのだと、貴方はそうおっしゃるのですね?
SCP-073: はい。ですがそれそのものが何なのか、というところまでは私の知る場所ではないようです。つまるところ、私は直近に再び駆り出されるようなことのないように、釘を刺しに来た、といったところでしょうか。フィールドワークの名目を与えられ、ある程度の自由の元、新たな知見を得られるメリットと、あの光の中を大手を振って歩くリスクを考えた時、私はリスクの回避に専念したいと思っています。この体も、それを明確に拒否しています。
ケロス上級研究員: なるほど。では知識者としてお尋ねしますが、その居心地の悪さというのは、他のアノマリーに見られるような、精神影響のようなものであるとお考えですか?
SCP-073: [沈黙] 回答に困ります。例えるならば、個々人のヴェールが捲られた状態であると表現できるでしょう。私たちが押し隠そうとしたものを周囲に曝け出さざるを得ないような、忘れようとしていた物を引き摺り出されるような— 少なくとも、私たちがそれまで認識していたあの闇が、私たちを、このような状態から守ってくれていたのかもしれません。そして、それは間違いなく精神影響ではあるのですが、この光の本質はもっと遠い場所にあると感じるのです。
ケロス上級研究員: 遠い場所、ですか。
SCP-073: ですからここでクエスチョンです。罪とは何だと思いますか?
ケロス上級研究員: 罪、ですか。[思案]それは、枷だと考えられます。檻とも言えるでしょうか。
SCP-073: そうですね。ただ、解釈次第では、それは民衆を殺す大義なのです。
ケロス上級研究員: 大義?
SCP-073: 申し訳ありません。珍しく私はこれ以上を言い表すことに不愉快を感じています。言及するだけでも、影響を受けてしまいそうで。あの光を一度浴びた日、悪夢を見ました。私は二度と小麦の輝く野原を歩く夢など見たくはないのです。
ケロス上級研究員: 分かりました。ありがとうございます。
SCP-073: だから、ああ、こと簡単に言えば— それに限れば、この光は私であろうと、弟であろうと、神であろうと等しく殺すことができるのでしょう。
<記録終了>
補遺2:「星守」実体に対するインタビュー
SCP-073の発言を受け、SCP-000において大きな影響を受けたとされる、財団によって収容されたアノマリーに対してのインタビューが実施される運びとなりました。以下は特に当事象に関連した発言を行ったとされるアノマリーである「星守」実体に実施されたインタビューの書き起こしとなります。インタビューは担当管理者である国都博士によって実施されました。
会話ログ000-539-JP
インタビュー対象: SCP-539-JP-A
インタビュアー: 国都博士
<記録開始>
国都博士: 失礼いたします。こんにちは。こちらはお変わりはなく、
[SCP-539-JP-Aは怪訝そうな表情で国都博士へと向き直る。フロア内には一切の物品が見られず、それまでに確認されていた全ての物品が消失している。]
SCP-539-JP-A: ああ、あなたでしたか。申し訳ありません、こちらを引き払わなくてはならない事情ができてしまいまして。ただいま、その準備をしている所でございます。
国都博士: 引き払う? それはまた何故でしょうか。
SCP-539-JP-A: 私の上司にあたる人物が、そちらにお戻りになって欲しい、と。どうも、星を動かす必要が出てきたとの事で、私のような老いぼれにもお鉢が回ってきたようです。
[国都博士は発言を聞き届けると、手元の資料を確認する。資料内には北斗七星、並びに北極星の位置座標の極端な移動が確認されたことが記されている。ただしそれは他のオブジェクトによる影響であると推測されていた。]
国都博士: 私たちの側でも星が— まことに信じられないことではありますが、物理的に、非常に長い距離を動いていることが確認されています。それは先ほどの話から推測するに、あなた方の仲間が動かしているということで間違いありませんか?
SCP-539-JP-A: そうですね。早く招集に参加した者らが既に仕事を始めているのでしょう。我ら星守は星に触れ、星を捏ね、結び、座を現実に即した形で表すことが可能です。それはあなた方のよく知るところでもあるかと思いますが、同時に、もう一つ、星を動かし、他の星とそれらを縛ることで新たな座を造ることも可能なのです。もちろん、それは私一人でできることではありませんが。
国都博士: つまり、貴方のような方が他にもその、上司の元へと招集されていると。聞き及んでいた限りだと、私たちの社会に存在する株式会社などの組織上の上司と、あなたのお話しする上司とは全く違うもののように思えます。その上司とは一体、何者なのですか?
[SCP-539-JP-Aは目を見開いて国都博士を見つめる。その後、静かに目を伏せ、ゆっくりと話し出す]
SCP-539-JP-A: 私たちの遠く及ばぬ方。太古の時代より、他の者に裏切られつつも、たった一人で生きてきた神聖なる女神様にございます。ですから、いくらあなた方といえども、私ごときがあのお方のお名前を申し上げるなど、恐れ多く、そうそうにできることではありません。
国都博士: わかりました。では、かの上司はあなた方を招集し、何を [思案] 北斗七星と北極星とを結ぶことで、一体何の座を作ろうとなさっているのですか?
SCP-539-JP-A: それはまだ私どもには理解することはできません。ただあの方はその目的を「鉄槌を下す」とだけ仰りました。かつてにも、私たちが同じように招集がなされたことがございました。今から数千年も前、私の先々代にあたる人物がそれを受け取ったそうです。その際は、投石器、こちらの言葉で例えるならトリシューラにて目的を果たそうとしたと聞き及んでいます。
国都博士: トリシューラ、そのような名前があなたの口から発せられるとは思いもよりませんでした。ですがしかし、我々の記録上にはそのような事態が発生したという証拠は存在していません。遡及改変による記録の改竄も考えられはしますが、可能性は低いと判断します。では、そのトリシューラとやらは、どのように用いられたのですか?
[SCP-539-JP-Aは再び目を伏せる。目元からは一筋の涙が確認され、それが頬を伝うことを気に留めることのない様子で、当オブジェクトは国都博士に向き直る。]
SCP-539-JP-A: ええ、文字通り、巨大な質量を持つ石、つまり星を打ち出したのです。まだあなた方の存在していなかった時代、青い蕾への手向けとして。何故それを行ったのかは私には理解することはできませんが、もしもう一度それを為さるのだとしたら [思案] あなた方はどれだけの遠回りをして、そこまで辿り着いたのですか?
<記録終了>
このインタビューの24日後、SCP-539-JP-Aの所在の確認が不可能となりました。事前に装着されたGPSによる追跡の試みは失敗に終わっています。現在、SCP-539-JP-Aの捜索が進められると共に、SCO-000の関連事象として北斗七星、並びに北極星の移動事象の追加調査が行われることとなりました。
補遺3:試行案D「ドメスティカ」
「星守」実体の発言を受け、財団は詳細な情報提供を可能とするいくつかのアノマリーとの接触、並びに追加実験などを試みました。その結果、SCP-3063との契約によってもたらされたいくつかの情報が、SCP-000の本質的な真実を示している可能性が高いと判断されました。以下はその際に実施された実験ログの抜粋です。全ての実験を参照とする場合は、担当者への連絡と承認を得てください。
SCP-3063追加実験ログ
それを知るということは、
実験#: 3063-7
担当者: クライン上級研究員
パラメータ: “SCP-000の真の性質に関する知識”。
結果: SCP-3063顕現体は燃焼した。Ia型超新星SN2998sqに関する詳細な情報の記述された印刷コピーがクライン上級研究員の前に出現した。ただし不自然に文字化けが確認される箇所が散見される。
解釈: SCP-3063はSCP-000をIa型超新星SN2998sqと認識したと解釈が可能である。ただし、SCP-3063が完全に正しいコピーを出現させなかったことから、何かしらの介入を受けた可能性があると推測される。
同時に、蠅になるということ。
実験#: 3063-8
担当者: ヴァニタス上級研究員
パラメータ: “SCP-000の恒久的な収容方法の提案”。
結果: SCP-3063顕現体は燃焼した。財団が未収容のものも含めた複数のアノマリーを組み込んだ、人類環境の保全を考慮しないアーティファクトの設計図の複製コピーがヴァニタス上級研究員の目の前に出現する。
解釈: 人間側の都合など、お構いなしらしい。
永遠に等しい孤独を埋めることを、
実験#: 3063-9
担当者: エルメス上級研究員
パラメータ: “SCP-000の人類を保全した状態でのあらゆる活動の恒久的な停止方法の提案”。
結果: SCP-3063顕現体は燃焼した。宇宙風景を撮影した衛星写真のコピーがエルメス上級研究員の目の前に出現した。一部に赤い丸の書き込みが確認されるが、中央部の物体が1ドット程度のため、現在の技術ではそれを知ることはできない。
解釈: それ自体が恒久的な停止を可能とする、未収容のアノマリーである可能性は高いが、宇宙上の不特定の座標を、この写真一枚のみで特定するのは不可能に近い。
彼女は期待している。
実験#: 3063-9
担当者: カルヴァン上級研究員
パラメータ: “SCP財団が現在既に保有している知識を除く、明確に理解可能なSCP-000に関する知識”。
結果: SCP-3063顕現体は燃焼した。ギリシャ神話に関する複数の書物がカルヴァン上級研究員の目の前に出現した。
解釈: ギリシャ神話に関連する神格的存在による顕現の可能性があると考えられる。
翅の嘆きが聞こえるか?
補遺4:神格実体「ケデッシュ-ナナヤ」からの情報提供
「星守」実体、並びに試行案Dにより認知された神格実体との関連性があるとの疑いのある、SCP-4960に対してのインタビューが実施されました。インタビューは情報提供という名目の元、処置166-アナーヒターに特に貢献が確認された職員であるウェルシュ博士によって実施されました。以下はその書き起こしとなります。
会話ログ000-4960
インタビュー対象: SCP-4960
インタビュアー: ウェルシュ博士
<記録開始>
ウェルシュ博士: ご機嫌麗しゅう、偉大なる美しきご婦人よ。本日はまた、あなた様の新しき知恵をいただきたく、対談の許可をいただきました。よろしくお願いいたします。
SCP-4960: 構いません。我が敬虔なる信徒の一人よ。あなたがこの官能的な肢体に見惚れ、その全てに性的な衝動を感じてしまうこと、それらすべてを許し、褒美を与えましょう。して、この度はどのような知識を望むのですか?
ウェルシュ博士: 豊穣の女神、ケデッシュ-ナナヤよ。もし、現在この地表で起きていること、その全てをご存じでしょうか?
SCP-4960: [思案] ええ、ええ。存じておりますとも。あの美しき愛の星のことですね。
ウェルシュ博士: 愛の星、そう私たちが求める知識はあの輝かしい愛の星についてのことなのです。あれがなんであるか、我が女神たるケデッシュ-ナナヤの宝玉の如き慧眼であれば、ご明察であると思考し、ここに至った次第であります。
SCP-4960: なるほど。あなたの願いは承りました。ただ、信徒ウェルシュよ。豊穣の女神たる私と言えど、干渉のしようのない事物は存在しているのです。それが当事者間での諍いであるのなら猶更、他者がそこに入り込む余地など存在していないことは、この人間の言う社会においても同じことであると私は考えています。ですから、私はこの問題に積極的に関わろうとは思っておりません。ですが、必要なだけの知識を伝えることは敬虔なるあなたの願いということであれば、吝かではありません。
ウェルシュ博士: お言葉ありがとうございます。ではかの美しき愛の星に関して、ご婦人はあれがどのようなものであるのかご存じということでしょうか?
SCP-4960: もちろん存じております。ですがその前に、一つ、私の質問にお答えなさい、信徒ウェルシュよ。まず、あなたはあの星の在り方をどのように捉えていますか?
ウェルシュ博士: あの星の在り方、ですか。 [思案] 私といたしましては、女神ケデッシュ-ナナヤがごとく、人の理より外れた異なる存在によってもたらされた脅威として、そこにあるように感じています。事実として、我々の同胞はあの星を見て、盗掘者のような気狂いを起こすものまで現れている有様です。
SCP-4960: では、あなた方はあれを悪意であると、そう感じているのですね? その捉え方からして明確に違っているのです、信徒ウェルシュ。私が評したように、あれは愛より生まれた善性のものであるのでしょう。
ウェルシュ博士: 善性ですか。それは、どのような根拠があり、女神様はそうおっしゃるのでしょうか?
SCP-4960: その気狂いを起こした者は、なぜそれを起こしえたのでしょう。全てのものがそうではないように、必ずそこには理由があるのでしょう。察するにそれは、私の力が弱まりつつあることを鑑みるに、あなた方を今まで覆っていたヴェールが剥がれ落ち、自らのありのままを直視しなければならなくなったから、ではありませんか?
ウェルシュ博士: そのことが善性につながるのだと、考えているのですか?
SCP-4960: 信徒ウェルシュ。どれだけあなたが敬虔な信徒であろうとも、一つだけ覆しようのない事実があります。この美しき私の前では殊更ですが、つまり、人間という生物は絶妙に、醜悪であるということです。騙り、裏切り、おぞましいほどの同族を嫌悪し、殺し、それでもなお平然と振る舞う。その形はひどく歪で、均整が取れているとは到底思えません。ですから、どこかで己を見つめ直す機会が必要であったのです。ですが、罪の感覚を、嘘の罪悪感を、あらゆる五感を覆い隠し、薄めてしまう超自然的な夜という名のヴェールを前に、機会が与えられることはありませんでした。ですから私は、どなたかは存じませんが、方法はどうあれ、それを実行したことを評価しているのですよ。
ウェルシュ博士: 私たちに己を見直すことを善とするのですね。なるほど。それが女神ケデッシュ-ナナヤからの視点といったわけですか。
SCP-4960: ですが、非常に残念です。これだけの敬虔なる信徒を失うというのは、私としてもひどく悲しいと感じられます。次に眠りにつくのは、そしてもう一度このように目覚めるのはいつの日になるのか。
ウェルシュ博士: [思案] なぜ、信徒を失う事態になると?
SCP-4960: おかしなことを尋ねますね、信徒ウェルシュ。罪というものは自覚しただけでは、赦されることはありません。人類が脆弱であるということ、それは生命として存在する上で受けるべき苦しみを、自分で受けとろうとしないことです。つまり、自覚した罪は何者かに裁かれることで初めて、赦されたことと同義になるのです。
<記録終了>
補遺5:特殊対応プロトコル-オーバーライン
評議会判断に伴い、各支部財団は複数のGoI、もしくはPoIとのコミュニケーションを実施しました。結果としてSCP-000への早急な対応が必要だと考えている複数のGoI、PoIとの協力体制「プロトコル-オーバーライン」の制定が行われました。以下は各国支部に対応したプロトコル-オーバーラインの進捗状況のリストです。全詳細への開示請求は各プロトコル対応チームへ行ってください。
序文-000-JP
以下はプロトコル-オーバーライン関連の文書・資料の日本管轄による部分的な集約です。
これらの文書群は、特殊000クリアランスを有する職員、現任のサイト-8100管理官、評議会指定の職員のみ閲覧が許可されます。
前書: SCP-000、並びに影響下にあるオブジェクトへの対応策としてプロトコル-オーバーラインが制定にあたり、日本支部理事会による判断の元、複数のGoIもしくはPoIとの協力体制の制定が行われました。それとは別に日本支部は独自の計画の立案、並びに対処法の模索が行われました。
前提: SCP-000への物理的な介入は、超新星爆発という"現象"に対しての対応であるために基本的には不可能とされています。以下の計画草案は、そのための概念的なアプローチによる、複数の認可済みアノマリーを用いたものとなります。
計画草案1: タイプρによるSCP-000、或いはその概念そのものの消失、もしくは改変。
検討結果: 知識者による指摘として、具体的なSCP-000の改変前、改変後のイメージが保持できないとして却下。不定形のイメージによる改変は宇宙構造そのものへの変化を招き、財団、並びに人類種の存続が保証されない。
計画草案2: 文明の保全を最優先に考慮した、ガニメデ・プロトコルに基づく神的実体の一時的な顕現、並びに地球環境の再構築、再配置。
検討結果: シミュレーターは日本内の全人口の消費を行っても尚、環境の再構築と再配置は不可能との結果を示した。各国支部に対してガニメデ・プロトコルの手順の説明、計画説明を行っているものの、現時点では凍結扱いとする。
計画草案3: SCP-000影響範囲をD・I・Gプロジェクトを実行し、日本列島にのみ留める。
検討結果: クインツ粒子障壁によるテストは、SCP-000の発生光は障壁を通過する限りなく自然光に近いものであるという結果を示した。結果からして、D・I・Gプロジェクトは当オブジェクトへの対抗策になり得ないとの判断が行われた。
製品番号
ざ-Z-000
"弊型 オーバースクリーン・システム"
価格
[測定不能] 0円
製品特徴
当製品は、地球に訪れた不可視の脅威に対して"特別に" "オーダーメイドで" "二度と作りたくない" SCP財団様にご提供させていただく最高級の一品となります。その分お値段は後々ご相談という形となってしまいますが、最高のパフォーマンスにて製作に取り組ませていただきます!
そう、これはただ「光を通さない」一種のヴェールを地球上の重力引力斥力その他諸々を利用して一定周期で展開する、そのような言葉にするだけなら簡単な夢のような物品でございます。尚且つヴェールの中には過去に存在した月光と星屑もばら撒かせていただきまして、ヴェールの中では正しく「夜」を認識可能な出血大サービスでございます! このためだけにライブラリから情報をぶっこ抜いてきたんだからマジで感謝してくれよ。
注意
・当製品は地球の諸々の力が正しく作用することを前提としている為、それらが正常でなくなった場合、予期せぬ事故を誘発する恐れがあります。
・製作に必要ないくつかのアノマリーをご用意していただく必要がございます。また、その際に人体を用いた実験を行う可能性があることにご留意ください。
・設備の異常が感知された場合は、諦めてください。チャンスは一度きりです。もしくはあなた方なら直せなくはないのではありませんか?
・当製品に関する事故、事件に関して東弊プロジェクトは一切の責任を負えません。
頼むよ。
ブラック・ドッグ
品番 |
型番 |
口数 |
1口有効内重量 |
価格 |
ざ-Z-1000 |
Bd-3N-B |
1口 |
【不定】kg/1体 |
【未定】円 |
特徴
- ダイレクトに巨大な質量を喰らいつくす、圧倒的な破壊力。
- 使用は一度きりの使い捨て。喰らった太陽の熱量によって自動的に消失します。
- ターゲットを喰らった後は四次元へと移動。仮に飼いならす事に失敗した場合でもこちらの世界に被害は及びません!
仕様
- 咢は一度開けば三次元先まで飲み込む超巨大仕様。
- 保管場所、拘束器具のご用意は承りません。
- 不具合が発生した際のお引き取りには対応しておりません。
- 第三者による破壊工作への対抗手段は他オプションとなり、出荷に時間をいただく可能性がございます。ご容赦ください。
説明書: ざ-Z-1000"ブラック・ドッグ"は当研究所とSCP財団様のスペシャルコラボによって製作が可能となった、神話の完璧な贋作、星を喰らう狼です。
星を喰らう物語というのは非常に少ない数ですが確かに存在しています。この星を喰らうというのは文字通り物理的に星を喰らったものや、概念上の星の名を冠する神を喰らったものなど様々な解釈と物語がありますが、私たちは特にそれら意味論的な現象の逆転に注目しました。つまり概念上の星を喰らえるのであれば、物理的な上での星も喰らうことが可能という発想に至ったのです。
これらを実現する事は日本生類創研のみの技術では不可能でした。しかしこの度それをSCP財団様が所有する言語的解体技術により、現象の意味論的な解体、並びに再構築により可能となる算段がついたのです!
研究者コメント
本当に悔しい限りではありますが、こちらはコメントを見ていただければ分かる通り、あくまで「算段」がついた段階の、いわば企画書となっています。この商品は私たちが今まで手掛けてきたものの中で最も巨大で、最も醜悪で、尚且つ最も道理に反した異常物品となるでしょう。だからこそ、我々も取り組み甲斐があるというものです。
正直な話、これを作り上げるまでには私の寿命を全て使っても間に合うことはないのかもしれません。ただそれでもこの一つの大きな「区切り」に指導者として参加できることを非常に嬉しく思います。私たちの集大成が、あの忌々しい光を喰らいつくし、再び私たちが必要とされる世界に正しく戻りますように。
—哺乳類部門鯨偶蹄目動物研究主任 黒田くろだ 恭一きょういち
現時点で連絡のつかないGoIの存在も含めたプロトコル・オーバーラインの進捗は17%であり、複数の提案内容と相似的なテストに辿り着いた実例は0です。
補遺6:SCP-2399に関連した複数の事象
2021/06/27、修復率75%達成以前にSCP-2399の活性化の兆候が確認されると天文台に潜入しているエージェントより報告がなされました。調査報告によるとSCP-2399は明確にSCP-000へと進行を開始しており、当該オブジェクトが受信していたとされていた指令ログによる命令と矛盾しています。また、この時点でSCP-2399は不定の通信機器を使ってサイト-アレフに対して以下のメッセージを送信していました。以下のメッセージの内容の真偽については現在調査中です。
僕を解き放った先生方に届いていると信じてこの通信を送ります。
僕があの場所より空に落ちてからどれだけの時が経ったのか、それは定かではありません。ただ、暗闇を流され続けていた僕は、どうも星と踊っているうちに本来のルートを逸れ、何かに引っ掛かったようです—先生、知っていますか。隕石というものは、とんでもなく痛いのです。言葉で言い表すことのできないほどに。もしかしたらその時、僕は本当に死んだのかもしれません。
そしてどれだけ気を失っていたのかはわかりません。が、私はこの場所にたどり着きました。もしここが天国ではないとしたなら、言いえて妙ではありますが、宇宙船—我が軍やあのドイツ野郎でもたどり着くことができないような、少なくとも先生方が手掛けていたような異常と呼べるそれの中にいました。
中は無人のようで、見たこともない人工光がチカチカと、暗闇と自然光しか見えていなかった僕には眩しく光っているのです。時間だけは無限にありました。船内の探索を続けるうち、僕はこの船の説明書とも呼べるような、或る機関に触れました。するとたちまちに僕とこれは一体となったようです。そう、それは十分な浮力を求めていました。僕が最後の歯車でした。水を得た魚のように、船は星を縫って動き出しました。
ただ、一体化したこれの意識はひどく混濁、混乱? しているようでした。なぜなら、ターゲットが明確に二つ、示されていたためです。一つは、僕が解き放たれた星です。わざわざ話すまでもなくお分かりですね、先生。そして二つ目は— いつも煩わしいほどに輝いていた— 二つ目の太陽、もしくは、月。おそらく表現上は正しくないのは理解していますが、それでもそのように表現する他にないほどに煌めくかの星です。そして船は操縦根を投げ出しました。信じられません。それを僕に握らせようというのです。
ただ、同時に安心したというのもあります。もし母が生きていたとするなら、母のいる地球を守るために僕は全力でこの船を「持ち上げ」なければなりませんでした。操縦根を押し込んで、僕は全速力で、かの煌めく星に向けて船を走らせました。ああ、そういえばなぜか、この場所はあのクソッタレのフェアリーバトルのコックピットによく似ている気がします。あれよりははるかに素晴らしい乗り心地ではありますが、居心地はよくはありません。
先生、もしこのメッセージが届いたのであれば、船を止めるようなことはしないでください。きっと僕はこのために、空に落ちてきたのだと思いますから。先生、僕にしかできないことを、成し遂げられないことを、どうか止めないでください。きっとこれが、本当に最後のミッションだと思うから。